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坂口尚

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坂口 尚(さかぐち ひさし、男性、1946年5月5日 - 1995年12月22日)は、漫画家・アニメーター。東京都出身。

略歴

  • 埼玉県に生まれ、すぐに東京に移る。
  • 1963年、定時制高校在学中に虫プロ入社、学業との両立が困難となり高校中退。虫プロでは『鉄腕アトム』、『ジャングル大帝』、『リボンの騎士』で原画・演出等を担当。
  • 1968年、フリーとなりコマーシャルフィルムのアニメーションなどの制作に携わる。
  • 1969年、「COM」9月号『おさらばしろ!』で漫画家デビューし、以後「COM」「ぼくらマガジン」などに作品を発表、
  • 1970-71年、『ウルフガイ』を連載。
  • 1973年、「COM」が休刊となると、フリーの立場で竜の子プロ、日本サンライズ、東映などでアニメーションの仕事をする。
  • 1977年、自主制作アニメのグループ「我楽苦他」を結成。
  • 1978年から「24時間テレビ」のスペシャルアニメ『100万年地球の旅 バンダーブック』『海底超特急マリンエクスプレス』『フウムーン』などに参加。

柔らかなペンタッチと力強いストーリー運びで作品を発表しつづけ、一部からは手塚治虫の後継者と目されるも、『あっかんべェ一休』連載終了直後の1995年12月22日に急性心不全により49歳の若さで逝去した。

『石の花』で旧ユーゴスラビア政府より表彰。また没後の1996年、遺作となった『あっかんべェ一休』に日本漫画家協会賞優秀賞が贈られた。

作品について

  • 実験的作品
    • 「COM」のSERIES『霧の中』を始め、初期作品には実験的作品が多い。「希望の友」1971年3月号掲載作品『魚の少年』の原稿を見て、当時の編集長が「これは漫画かな?! イラスト・ポエムとして発表するしかない」と言った程だったが、この時期の作風をとりわけ高く評価するファンも存在している。
  • マンガニューウェーブ
    • 「COM」休刊、『ウルフガイ』連載終了後、ほとんど漫画を発表していなかった期間もあったが、1978年を前後して「Peke」「コミックアゲイン」「マンガ奇想天外」などマンガニューウェーブ系の雑誌に短編作品を発表しはじめ漫画家として本格復帰した。「坂口尚短編集 (1)」への書評(「サンデー毎日」2001年1月7-14日新年合併号)で村上知彦が大友克洋、高野文子らが登場したニューウェーブの波の渦中でこれらの短編作品が描かれたことを紹介している。日常の中にあるファンタジー、また宇宙を舞台にしたSF作品もこの時期から1980年代に多く発表された。
  • 12色物語
    • 1980年から「コミックトム」掲載。人と人との関わりや人生観を描いた作品。主人公が揶揄される存在として描かれる事が多く、自身が好きな作家としてあげているテネシー・ウィリアムズの作品との共通点が見いだせる。12色物語の一編であっても違和感の無い短編作品も数多い。
  • ウルフガイ
    • 原作平井和正、後の小説シリーズの原型。
  • VERSION
    • 近未来で自己増殖するバイオチップを巡る物語。瀬名秀明が『パラサイト・イヴ』を執筆する上で大きく影響を受けたと語っている。
  • 長編3部作
    • 坂口尚自らの発言から『石の花』、『VERSION』、『あっかんべェ一休』が長編3部作と呼ばれている。

単行本リスト

  • クレオパトラ (1970年) COM増刊号 原案:手塚治虫
  • トム=ソーヤーの冒険 (1970年) 講談社 原作:マーク=トウェン
  • ウルフガイ (1)~(2) (1979年) 奇想天外社
  • 魚の少年 (1979年) 奇想天外社
  • たつまきを売る老人 (1980年) 奇想天外社
  • 星の動く音 (1981年) 奇想天外社
  • 3月の風は3ノット (1981年) 潮出版社
  • 12色物語 (上)(下) (1982年) 潮出版社
    • 12色物語 (2002年) 講談社漫画文庫
  • 無限風船 (1982年) ブロンズ社 
  • 電飾の夜23:59発 (1983年) 東京三世社(マイコミックス)
    • 電飾の夜23:59発 (1984年) 東京三世社(シティコミックス)軽装丁版
  • 石の花 (1)~(6) (1984年~1986年) 潮出版社
    • 新版 石の花 (1)~(5) (1988年) 新潮社
    • 石の花 (1)~(5) (1996年) 講談社漫画文庫
    • 石の花(愛蔵版)(1)~(4) (2002年~2003年) 講談社
    • 石の花 (上)(中)(下) (2008年) 光文社
  • 紀元ギルシア (1987年) 双葉社
  • 戦士の休息 (1987年) 双葉社
  • ともしび (1987年) 双葉社
  • 星降る夜 (1987年) 双葉社
  • 月光シャワー (1987年) 東京三世社
  • レート・ドッグ (1989) 大都社
  • VERSION (1)~(3) (1991年~1992年) 潮出版社
    • VERSION (上)(下) (2000年~2001年) 講談社漫画文庫
  • あっかんべェ一休 (1)~(4) (1993年~1996年) 講談社KCデラックス
    • あっかんべェ一休 (上)(下) (1998年) 講談社漫画文庫
  • 坂口尚短編集 (1)~(5) (2000年~2003年) チクマ秀版社
  • 坂口尚作品集 すろををぷッ (2004年) チクマ秀版社
  • 月光シャワー-SF作品集- (2005年) チクマ秀版社
  • 3月の風は3ノット (2007年) チクマ秀版社

海外版

VERSION
  • VERSION (Dark Horse Comics, カナダ)
  • VERSION (Glénat, フランス)
  • VERSION (Verlag Thomas Tilsner, ドイツ)
あっかんべェ一休
  • 一休和尚 (東立出版社有限公司, 台湾)
  • Ikkyu (Glénat, フランス)
  • Ikkyu (Vents d'Ouest, フランス)
  • Ikkyu (Desnivel Ediciones, スペイン)
  • Ikkyu (Glénat, スペイン)
石の花
  • Fleur de Pierre (Vents d'Ouest, フランス)
  • 石之花 (玉皇朝出版集團, 香港)
  • 石之花 (東立出版社有限公司, 台湾)
  • 石之花 (台灣東販股份有限公司, 台湾)

イラスト提供作品

  • 月と太陽の魔道師 (タニス・リー、ハヤカワFT文庫43番) 表紙 (1982年)
  • アイソトープ・マン (チャールズ・エリック・メイン、ハヤカワSF文庫472番) 表紙および挿絵12点 (1982年)
  • バブル・ゲーム調書 (森哲司) 挿画 (1992年)
  • ワニの豆本「冒険スポーツ入門」(戸井十月) イラスト数点 (1977年)
  • ワニの豆本「アッ!?心理試験 神秘の能力に挑戦するゲーム」(浅野八郎) イラスト数点 (1978年)
  • ワニの豆本「タモリのケンカに強くなる本」(タモリ) イラスト数点 (1978年)

アニメーション参画

  • 鉄腕アトム(原画)
  • ジャングル大帝(原画)
  • リボンの騎士(作画チーフ・演出)
  • わんぱく探偵団(原画)
  • バンパイヤ(動画監督)
  • ダメおやじ(演出)
  • ラ・セーヌの星(作画監督)
  • グレートマジンガー(作画監督)
  • ヤッターマン
  • 一休さん
  • UFO戦士ダイアポロン(原画)
  • 魔女っ子メグちゃん(作画監督・演出)
  • まんが偉人物語(絵コンテ・演出)
  • ろぼっ子ビートン(作画監督・絵コンテ)
  • チャージマン研!(絵コンテ)
  • 無敵超人ザンボット3(作画監督)
  • 100万年地球の旅 バンダーブック(アニメーションチーフディレクター・キャラクターデザイン・作画監督)
  • 海底超特急マリンエクスプレス(設定デザイン)
  • フウムーン(監督・演出)
  • ブレーメン4 地獄の中の天使たち(メカデザイン)
  • 火の鳥2772(原画)
  • 安達が原(監督・絵コンテ・原画・キャラクターデザイン)

他の作家との関係

手塚治虫
坂口尚は虫プロダクション、手塚プロダクションのアニメーターとして手塚作品を数多く手がけている。『石の花』(潮出版社)第1巻、や『たつまきを売る老人』(奇想天外社)のカバー見返しに手塚による推薦文あり。原案手塚治虫のアニメラマ「クレオパトラ」のコミカライズを坂口尚が担当している。
永島慎二
同じ虫プロのアニメーターとして親密な関係にあった。永島が「COM」編集に携わっていた鈴木清澄を紹介したことが、雑誌「COM」に執筆するきっかけとなった。
安彦良和
ガンダムエース2002年11月号の貞本義行との対談で、「坂口尚?えっあの天才が?もったいないあなたのような人が!」とサンライズの面接に来た坂口尚に驚いたエピソードを紹介している。ろぼっ子ビートンでは坂口尚が絵コンテを担当したが、もっと別な作品でやって欲しかったと安彦は述べている。
金山明博
「まんだらけZENBU」に連載されている自伝的作品「まんが・アニメ奮戦記あめんぼうの詩」に虫プロ時代の坂口尚との交友を描いている。
樋口雅一
同人誌若人時代からの友人。虫プロでの縁も深い。樋口雅一監督作品『まんが偉人物語』にグループ我楽苦他として坂口尚が参加している。
石原はるひこ
親友。単行本『海猫の城』のあとがきを坂口尚が寄稿。
さべあのま
ライトブルーペイジ(奇想天外社)のカバー見返しに坂口尚が推薦文を寄せている。
すがやみつる
編集者として坂口尚の『トム=ソーヤーの冒険』を担当。単行本に取りかかってもらうために、「プレイコミック」連載のハンマー坂口名義『探偵ブラカン』のアシスタントをした事がある。また講談社の別館に坂口尚とともにカンヅメになり原稿を執筆したエピソードも。
瀬名秀明
「パラサイト・イヴは直接的にではないにしろVERSIONにインスパイアされて書かれた小説なのである」と角川ホラー文庫パラサイト・イヴのあとがきに書いている。坂口尚短編集第5巻『ドレみ空!』に解説を寄稿している。
村上知彦
「ぱふ」1980年11月号特集坂口尚に「光の匂い、風の色 - 坂口尚論・未遂」を執筆している。1981年の潮出版社刊『3月の風は3ノット』の解説と、2007年に出版されたチクマ秀版社刊「3月の風は3ノット」の解説も村上によるもの。自著『まんが解体新書』に朝日新聞掲載コラム「入魂の遺作『あっかんべェ一休』-追悼・坂口尚さん」を収録している。
幸村誠
「Beth」創刊号のインタビュー記事で目標は坂口尚と答えている。

アシスタント

基本的にアシスタントを使わず背景も含めすべてひとりで執筆。現実以上に美しい風景を描く事を得意としており、木漏れ日など光の描写などにも卓越した表現力を発揮していた。 ウルフガイでは土山よしき、細井雄二らがアシスタントを担当し週間連載をささえた。

別ペンネーム

  • 坂口尚三
    • 虫プロ時代のクレジット、本名。
  • ハンマー坂口
    • プレイコミック連載の「探偵ブラカン」1969年9月10日号-11月22日号 で使用。
  • 砂川尚志
    • 無敵超人ザンボット3、21話「決戦! 神ファミリー」でのクレジット。のちのデーターベースには「坂口尚」と記載されている。

参考文献

  • 『ぱふ』1980年11月号(「特集 坂口尚」)

外部リンク