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いのち/ももち麗子

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著者: ももち麗子
巻数: 5巻

ももち麗子の新刊
いのちの新刊

最新刊『いのち 5


出版社: 講談社
シリーズ: デザートKC


いのちの既刊

名前発売年月
いのち 1 2008-12
いのち 2 2009-05
いのち 3 2009-11
いのち 4 2010-04
いのち 5 2010-09

いのち』は、ももち麗子による日本の漫画作品。『デザート』(講談社)にて2008年9月号から2010年8月号まで連載された。単行本は同社のKCデザートより全5巻。

概要

これまでの作品と異なり、問題提起シリーズではない作品。双子の姉と入れ替わっている最中に姉を殺され、死んだ姉として生きることを決意した主人公の少女が無罪となった犯人に復讐しようとするが、やがて予想もしない事態に巻き込まれていく。
「問題提起」には触れられていないが、物語の後半では一事不再理や裁判員裁判など裁判に関する物事が取り上げられており、これらが物語のクライマックスで重要な意味を持つことになる。

あらすじ

明るく快活なのばらと大人しいことりは双子の姉妹。かつて父親が自分を助けようとして死んだのが原因で母・夏子と疎遠になったのばらは家を出て祖母の家で暮らし始め、それ以来妹ののばらは祖母の下で、姉のことりは母の下で別々に暮らしていた。やがて高校生になった頃、母が恋しくなったのばらは時々密かにことりと入れ替わってことりの代わりに母の家に行き、母と暮らすということを繰り返すようになった。

そんなある日、いつものようにことりと入れ替わって母の下にいたのばらは、母がのばらを迎えてことりとのばらと自分の三人で暮らしたいと話したのを聞いて喜んだ。ところがその最中、のばらと入れ替わっていたことりが何者かに殺され、遺体で発見されるという事件が起きる。

この事件がきっかけとなり、のばらと家族の運命は大きく狂い始めた。夏子は娘を失ったショックから精神に異常をきたして自殺を図り、命は助かったものの意識がことりや夫が生きていた頃まで退行してしまい、それ以降の記憶をすべて失ってしまう。更に、ことりが殺された時のばらと入れ替わっていたことに誰も気付かなかったために殺されたのはのばらだと間違えられ、のばらは死んだ事になってしまった。遺されたのばらは姉を死なせたことへの罪の意識と壊れてしまった母を支えるため、入れ替わりの事実を隠してことりとして生きていくことを決意する。

程なくして、ことりを殺した犯人・五刀田学が逮捕された。だが、裁判で彼が事件の直前に覚せい剤を使用していたことが争点となり、結果五刀田は責任能力なしと判断され、無罪の判決が下る。それを知ったのばらは、五刀田に自らの手で復讐する事を決意するが、出所からまもなく五刀田は行方をくらましてしまった。

それから3年の月日が流れたある日、のばらは街中ですれ違った男性が五刀田の免許証を落とすところを目撃する。免許証に書かれていた住所を訪れると、そこには親友・姫乃と村瀬という青年がいた。聞けば、村瀬は姫乃が現在付き合っている彼氏なのだという。最初のうちは村瀬を家に招いたりして普通に接していたのばらだったが、やがてのばらはある出来事がきっかけとなって村瀬が整形し名前を変えた五刀田ではないかと疑うようになり……。

登場人物

鈴木 のばら
物語の主人公。ことりの双子の妹で、性格は明るく快活。幼い頃に溺れていた自分を助けようとした父親が死亡したことがきっかけで母と疎遠になり、家を出て祖母の家で暮らしていた。高校生になった頃に密かにことりと入れ替わって何度か母に会いに行くようになったが、ある日入れ替わりの最中にことりが殺され、その際誰も入れ替わりに気付かなかったために殺されたのが自分であることになってしまい、結果的にことりを死なせてしまったことへの罪の意識とショックでおかしくなってしまった母を支えようとする想いから入れ替わっている事を隠し、ことりとして生きることを決意した。その後、ことりを殺した犯人・五刀田に無罪判決が下ったことを知り、五刀田への復讐を決意する。
事件から3年後、街で五刀田の免許証を拾ったことをきっかけに親友姫乃の彼氏・村瀬と出会うが、その後ある出来事から村瀬が五刀田と同一人物ではないかと疑うようになる。
鈴木 ことり
のばらの双子の姉。のばらとは対照的に大人しい性格をしており、髪を下ろしていて眼鏡をかけているのが特徴。父の死後は母の下で暮らしていたが、高校生になった頃に母親に会いたいのばらのために密かにのばらと入れ替わる事を繰り返していた。だがある日、のばらと入れ替わっている最中に五刀田学に殺害されてしまう。
鈴木 夏子(すずき なつこ)
のばらとことりの母。のばら達が幼かった頃、溺れたのばらを助けようとした夫が死んだことでのばらに怒りをぶつけてしまい、それ以来のばらと疎遠になって彼女と離れて暮らしていた。それから4年後、ことりと入れ替わって自分の下に現れたのばらに「のばらを迎え、ことりとのばらと自分の三人で暮らしたい」と語ってのばらを許す意志を見せたが、その直後にのばら(実際はのばらと入れ替わっていたことり)の遺体発見の知らせを受け、その際のばら達が入れ替わっていた事に気がつかなかったこともあってのばらが殺されたと間違え、そのショックから精神に異常をきたしてしまう。後に自殺を図り、一命は取り留めたものの記憶退行を起こし、ことりや夫が死んだことを忘れてしまった。
のばらの祖母
のばらとことりの祖母。のばらの父の死後、家を出て来たのばらを引き取って一緒に暮らしていた。ことりが死んだ後はことりと入れ替わったのばらと夏子と共に暮らす事になる。後にのばらが村瀬を疑いだしてからは、五刀田への怨みに囚われているのばらを度々たしなめるようになる。
優羽(ゆうわ)
のばらの彼氏。登場人物の中で唯一のばらがことりと入れ替わっている事に気付いており物語の序盤でことりと入れ替わっていたのばらに会った際に、彼女がのばらであることを見抜く。、のばらが唯一本性をさらけ出せる相手である。
のばらが村瀬と五刀田が同一人物かもしれないと言い出した際には半信半疑だったが、後に姫乃が事故に遭った際、病室に居合わせた村瀬の態度がおかしいことに気づいて不信感を抱く。
姫乃(ひめの)
のばらの親友。村瀬学と付き合っている。のばら以上に快活な性格で、今時の女の子。
ことりが殺害された事件から三年後にのばらの家を訪れた際にことりと入れ替わっていたのばらと出会い、彼女がのばらだとは気づかず親しくなった。しかし、のばらが村瀬を疑いだしたことがきっかけで彼女と対立し、その最中に村瀬の子供を妊娠していることが判明。そのこともあって村瀬を擁護し続け、結果この騒動によりのばらと不仲になってしまった。
物語後半で村瀬の不注意

により事故に遭い、自身は助かったものの流産してしまう。村瀬とは結婚の約束をしていたが、事故により破談となり、事故の後両親と共に田舎に帰った。なお、のばらが村瀬を疑い始めてからは度々のばらの苦しみを理解していないかのような発言をしていたが、実際にはのばらのことを大事な友達だと思っており、事故に遭う直前の場面では妊娠した子供に「のばら」と名づけようと考えていたことが語られていた。

五刀田 学(ごとうだ まなぶ)
ことりを殺した犯人。異常性癖があるとされている。事件直前に覚せい剤を使用していた事で責任能力なしと判断され、無罪となった。
村瀬 学(むらせ まなぶ)
姫乃が付き合っている男性。五刀田学が以前住んでいた部屋に住んでおり、五刀田の免許証を頼りに部屋を訪れたのばらと出会ったことで彼女と知り合う。最初は普通の男性だと思われていたが、やがて下の名前が五刀田と同じ・手首に五刀田と同じ刺青があるなど五刀田と共通点があることが判明。更にのばらと初めて出会った時なぜか五刀田の免許証を持っていたことや、刺青を消すために通っていた整形外科の病院から出てきた時に看護士に「五刀田さん」と呼ばれていたところをのばらに目撃された事から、整形して顔と名前を変えた五刀田ではないかとのばらから疑われるようになる。
後にある出来事がきっかけでのばらと姫乃に自分が五刀田だと明かすが、その後別人である事が判明した。本人の言によると過去に交通事故を起こして人を死なせ、長い間事故の被害者遺族に償いをしていたというが、後に姫乃を事故に遭わせてしまった際、姫乃の病室に居合わせた姫乃の父親の発言から彼が起こしたという交通事故は起きていない事が判明する。
ケンジ
村瀬の友人。村瀬がのばらと姫乃に自分が五刀田だと打ち明けた翌日に彼の下に現れ、村瀬と五刀田が同一人物ではないことが明かされるきっかけを作った。
田中(たなか)
ことりが殺害された事件を捜査していた刑事。眼鏡をかけているのが特徴。下の名前は不明。名前はデザートWEBでの作者へのインタビューで明らかになったデザートWEB|スペシャルサイト|講談社コミックプラス(2010年9月15日閲覧)

書誌情報

ももち麗子 『いのち』 講談社〈KCデザート〉、全5巻

  1. 2008年12月12日発売デザートWEB|いのち|既刊コミック|講談社コミックプラス(2010年9月15日閲覧)、ISBN 978-4-06-365536-0
  2. 2009年5月13日発売、ISBN 978-4-06-365552-0
  3. 2009年11月13日発売、ISBN 978-4-06-365578-0
  4. 2010年4月13日発売、ISBN 978-4-06-365596-4
  5. 2010年9月13日発売、ISBN 978-4-06-365617-6

脚注