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ねじ式/つげ義春

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著者: つげ義春
巻数: 1巻

つげ義春の新刊
ねじ式の新刊

最新刊『ねじ式


出版社: 小学館
シリーズ: 小学館文庫


ねじ式( - しき)は、つげ義春により1968年月刊『ガロ』6月増刊号「つげ義春特集」に発表された短編漫画。短編の多いつげ義春の作品の中でも特に有名で、彼を代表する作品として作品集の表題作ともなっている。日本漫画だけにとどまらず、多くの分野に多大な影響を与えた。

概要

left|230px 海岸でメメクラゲに左腕を噛まれ静脈を切断された主人公の少年が、死の恐怖に苛まれながら「医者はどこだ」と言いながら医者を求めて漁村らしき奇怪な町を放浪し、不条理な目に遇いながらも、ついには必要とした女医(産婦人科医)に出会い「シリツ」(手術)を受けることができ、事なきを得るという話である。

つげ義春が下宿していたラーメン屋の屋上で見た夢が元になっているが、夢をそのまま描いたものではなく、ほとんどは創作である。実際はこうしたシュールなものを描きたいという構想はかなり以前からつげの構想にあったものの、それまでの漫画界においては、あまりにも斬新であるため、発表する機会が得られなかった。直前までのつげは、一連の「旅もの」で人気を博していた。しかし、原稿に締め切りが迫りネタに尽きたつげは、それまでに構想にあったこの作品を思い切って発表した。完成までには3ヶ月を要している。

タイトルの『ねじ式』は、シリツの際、治療のため女医によって取り付けられた血管を接続するためのバルブねじからきている。女医自身はこの治療法を『○×方式』と呼び、少年に決してそのネジを締めることのないよう注意する。ラストシーンのモーターボートが走るシーンは未完の作品「湖畔の風景」から流用している(『つげ義春漫画術』下巻)。

作品の舞台となった漁村は権藤晋によって、千葉県鴨川市の太海漁港をイメージしたものとの説が定着しているが、つげ自身は太海を想定して描いたのではないと否定している。しかし、作中で主人公の少年がキツネの面を付けた少年の運転する蒸気機関車によって連れ戻される終着の「もとの村」に描かれた民家の建て込んだ場面の絵にそっくりな場所が、太海漁港のすぐそばに今も見つけることができる。作中、少年が「イシャはどこだ」と叫ぶコマに登場するレンチ(両口スパナ)を持った中年の男は『定本木村伊兵衛』に全く同じ構図の写真が見られ、アイヌ人知里高央がモデルであることが知られている漂泊のブロガー2 :本日の発見。 date=2008年7月}}

発表当時、そのシュールな作風と常軌を逸した展開から大いに話題となり、フロイト流の精神分析による評論まで試みられたが、つげ自身はそうした解釈には反発を感じており、全く当たっていないと一蹴している。作風がシュールであるために深読みされ、作者の深層が全部出ていると誤解されやすいが、「創作の意味が分からない初期の作品では垂れ流し的に描くから自身の内面が表れやすいが、何年も描いていると作品としての構成を考え、セリフひとつにも自覚して描いているため、自身の内面が出ることは少ない」とつげ自身は述懐している(『つげ義春漫画術』下巻)。

また、つげの作品では初めてリアルな女性の裸体が登場するが、当時の漫画界においてもこれほどにリアルな裸体は例がなかった。権藤晋によれば、「つげの性的な何かが開放」された。そのため、それを描いたことで「思い切って描いた」「こんなエロ画を描いて人に見せた。自分を晒した」(つげ自身の言葉)という開放感を味わい、「ゲンセンカン主人」や「夢の散歩」、さらには私生活を赤裸々に描いた「つげ義春日記」へとつながっていく。

有名な作中の「メメクラゲ」とはつげが「××クラゲ」と原稿に表記したものを権藤が勘違いして写植したもの。誤植の歴史に名を残している。だが、つげはこの誤植について、権藤に「メメクラゲのほうが作品に合っているような気がするね。」と語ったという。

発表後、多くの漫画家によってパロディ化された。代表的なものは長谷邦夫による『バカ式』、赤瀬川原平による『おざ式』、蛭子能収による『さん式』、江口寿史による『わたせの国のねじ式』、部分的なパロディー使用例ではゆうきまさみの『究極超人あ~る』、高橋留美子の『うる星やつら』など。またポケットモンスターのメノクラゲは名前がメメクラゲからきている。

1989年にツァイトという会社によりパソコンゲーム化された。ねじ式 (ゲーム)を参照の事。1998年に石井輝男監督により映画化されている。

映画

出演

  • ツベ:浅野忠信
  • 国子:藤谷美紀
  • 看護婦:藤森夕子
  • 木本:金山一彦
  • もっきり屋の少女:つぐみ
  • 家主:丹波哲郎

スタッフ

  • 監督:石井輝男
  • 助監督:三木秀則
  • 撮影:角井孝博
  • 音楽:瀬川憲一
  • 録音:曽我薫
  • 照明:野口素胖

脚注

参考文献

権藤晋「『ねじ式』夜話―つげ義春とその周辺」喇嘛舎、1992年

関連項目

  • オムニバス
  • 目医者
  • 金太郎飴

category:石井輝男の監督映画