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オヤマ!菊之助/瀬口たかひろ

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著者: 瀬口たかひろ
巻数: 25巻

瀬口たかひろの新刊
オヤマ!菊之助の新刊

最新刊『オヤマ!菊之助 第25巻


オヤマ! 菊之助』(オヤマ! きくのすけ)は、瀬口たかひろによる日本の漫画作品。秋田書店刊行『週刊少年チャンピオン』にて、1996年20号から2001年30号まで連載された。単行本は全25巻。1997年にはドラマCD化された。

概要

名門女子高「黒髪学園」に女形の勉強という名目でやって来た主人公の藤井菊之助が次々とトラブルを巻き起こす学園コメディ。

少年誌としてはかなり際どい女子生徒達の裸体描写が主体の作品。乳首はもちろん挿入寸前の性行為も日常のように描かれており、成年漫画としても遜色のない内容であった。

乳房や下着の露出などは当たり前のように描写されたがれっきとした少年誌掲載作品であり、全編通じて明瞭に性交や女性器が描写されることはなかったため法的な意味での画像修正を要することは無いようであったが単行本14巻(135話)で乳首に出版側の自主規制と思われる修正が施されたことがある。連載中期の1999年頃、児童ポルノ法などが整備され始めた時期だったこともあってか制服を着た女子生徒や明らかに未成年と判る女性の過激な描写が極端に減った時期があった。

同時期に人気のあった『魔法騎士レイアース』やその他の漫画・アニメなどの女性キャラをモチーフにしたキャラが多数登場していた。また登場する女性キャラは生徒(すなわち未成年者)のみならず、外国人や、様々な職業に就く成人女性なども含まれる。登場する女性の多彩さを特色としていたためかレギュラー化する女性キャラクタは希で、ほとんどのキャラクターは1話限りの「主演」となり、以後は出番があってもモブ扱いとなることが大半であった。

主人公、菊之助のモチーフは『東京大学物語』の村上直樹であり、菊之助と女性3人の絡みのシーンも同じく『東京大学物語』のシーンをモチーフにしている。

2009年11月19日発売の『週刊少年チャンピオン』51号で、「創刊40周年記念名作読み切りシリーズ」として読み切り掲載された。

あらすじ

黒髪編

歌舞伎の名門・藤井一座の跡取り藤井菊之助は、父親の命により巨大女学校・黒髪学園に編入することになった。目的は女生徒たちと身近に接し過ごすことによって女形の技術に更なる磨きをかけるという崇高なもの。しかしスケベが取り柄の菊之助、ただ修行のためだけに茫漠と日々を過ごすなどということができようはずもない。何かと理由を付けては美少女たちと「より身近に接し」ようと跳梁するのであった…。

健軍編

様々な理由によりついに黒髪学園を去らねばならなくなった菊之助。次に目指すは田舎町にある健軍女子高校。学校に向かう道すがらさっそく美少女と知り合い前途洋々の菊之助であったが、健軍女子高校でも数多くの騒動(と美少女)が待ち構えているのだった…。

登場人物

藤井菊之助(ふじい きくのすけ)
有名歌舞伎一座の跡取り息子。スケベな性格で学園の女の子に様々ないたずらを行おうとするが、最後は必ずあおいに見つかりお仕置きされる。ただし誰に対しても丁寧語や「さん付け」で話しかける等、女形だけあって物腰は穏やかである。女性を見下すような態度も皆無で、スケベ心の対象としつつも常にレディーファースト的な姿勢で接する。一方で誰に対しても終始明確な好意を示すことはなく、そういった意味では女性を単なる性の対象としてしか見ていないという見方もできる。あおいに対しては好意を抱いているような素振りもあったが、後に発覚する事情によって恋愛対象たり得なくなってしまったところが、健軍編の最終盤で更なるドンデン返しが発生し、あおいと菊之助の恋愛に問題はなくなった。
成績はなかなか優秀、スポーツも水泳以外は何でもこなせる。腐っても名門歌舞伎一座の跡取りなので、芸事に対する情熱やプライドも高く、時にはあおいですらたじろぐほどの熱意を見せるときがある(が、それも主にエッチ方面に向けられる)。一見弱そうに見えるのだが、実は相当な実力を持っている。だが、本編ではスケベが災いしてか、その実力を見ることは殆ど無い。着物を日常的に着用しており、清潔感のある外見だが実際はだらしなく、自室は非常に散らかっており汚い。下着は褌派。全寮制女子校である黒髪学園では男子生徒の入寮は想定されておらず、菊之助には物置として使われていた空き部屋が宛がわれている。

黒髪学園生徒・関係者

時巻あおい(ときまき あおい)
風紀委員長として学園の秩序を守るため、菊之助を追い続ける。3年生。ショートカットの髪型と凛々しい性格で女子生徒から人気があるが、同時に風紀番長などとも呼ばれ、畏怖の対象ともなっている。生徒からの人望も高いが、その少し断行的な性格に対する生徒の不満を煽るという生徒会の策謀により、五十鈴にすら離反され孤立したことがある。やや頭が固く、思い込みも強い。
常に竹刀を携帯している。鍋奉行。純情硬派で恋愛には奥手。菊之助に対しては邪魔だと思いつつも、放っておくことができず、さりとて素直に接することもできないという、いわゆるツンデレになっている。
元々は剣道の特待生であり、スケベな行動に至る菊之助を竹刀でお仕置きする…と言うのが黒髪編の基本的なオチになっていた。胸は理菜と比較して小さい。幼くして母を亡くしているが、父は非常に身近にいる人物の関係者だったことが黒髪編の最終盤に発覚する脚注1にも関連するが、全てはあおいと菊之助の早とちりによる。あおいの父が菊之助の近親者だというのは事実である。。黒髪編では第1話からほぼ全話に登場。
河原五十鈴(かわはら いすず)
風紀委員。2年生。あおいの後輩。おとなしい性格でやや天然ボケ。実家が鉄道やホテルを経営する資産家の典型的お嬢様で、あおいのことを「お姉さま」と呼んで慕っている。
菊之助に惚れているが、自身の不器用さとあおいの手前もあってか仲を進展させることはできなかった。お人好しで騙されやすく、また騙されたことに気が付くこともない。特に菊之助とあおいの言うことには盲信的で疑うことを知らない。第1話から登場し、登場回数は菊之助・あおいに次いで多い。
天野芽美(あまの めぐみ)
調理部。3年生。幼い言動と容姿ながらプロ級の調理技術とセンスを持つ。自らを「めぐたん」と自称し、周りからもそう呼ばれている。放り上げた食材を空中で切り刻んで調理することができ、また独力で自らを女体盛りにすることも可能。登場当初は高校生としてはやや幼いという印象だったが、作者の画風の変化もあってか話数を経るごとに幼女化が進み、また調理技術も人間離れしたものになっていった。
調理技術こそ天才的だが、それ以外は幼稚で天真爛漫すぎ、まったく高校生には見えない。その特技から、料理や食べ物に関するエピソードに動員されることが多く、ほぼレギュラーとして頻繁に登場した。連載中盤で行った読者人気投票でも、あおい・菊之助・くるみに次いで4位。初登場は第4話。
森川美奈子(もりかわ みなこ)
風紀委員。1年生。直情果敢で威圧的な雰囲気。風紀委員としての仕事も熱心に取り組むなど、実質的にあおいの後継者(五十鈴が不甲斐なさすぎるため)となりうる逸材だが、実は黒髪最大のレディース「怨呪会留(エンジェル)」の総長でもある。菊之助との根性試しに敗れて更生したと思われる。またその際に菊之助に惚れ込み、以後は「菊サマ」などと呼んで明確な好意を示すようになった。
元レディースだけあってか、上下関係には気を遣っているようで、上級生に対しては「○○先輩」と呼びかけ、敬語で話す。第48話初登場。準レギュラー。
名良橋かすみ(ならはし かすみ)
生徒会。3年生。生徒会長に絶対の忠誠を誓う生徒会ナンバー2。非常に暴力的で腕っ節が強く、「人間凶器」と呼ばれ、まともな状況ではあおいですら敵わない。武器を使用した格闘を軽蔑し、己の肉体を極限にまで高めた徒手空拳で戦うことを信念にしている。
首にマフラーを巻き、素肌に直接ブレザーを着るというアヴァンギャルドな格好ただしマフラーを胸元に垂らしている上にブレザーから乳首が出ないため、胸の谷間が隠れることが多い。をしているが、これは『一騎当千』の呂布よりも明らかに先行するものであるかすみが裸ブレザーで登場したのは1998年の春頃である。。だが顔立ちは長髪のお嬢様系で、夏服や体操着などは一般生徒と同じ服装を着用する。
登場当初は菊之助たちの前に立ち塞がる最強の敵であったが、和解した後は準レギュラーとして頻繁に登場した。菊之助やあおいに対しては終始態度を軟化させることはなかったものの、一目置いているようである。乱暴者だが純情で、他人の助言などを聞き入れるなど素直なところもある。一応は第9話で初登場しているが、この時は名前も明かされず、キャラクターのデザインも本登場時と比較して若干異なる(このときは夏服だった)。明確な個性を持って登場したのは第74話から。
華柳梢(はなやなぎ こずえ)
3年生。中盤で黒髪学園に編入してきた「菊之助の許嫁」。京都弁で喋る。華柳流日本舞踊の家元の子女で、女性的ではんなりとした物腰に反して傲慢で自信家。菊之助に対しても束縛するような愛情表現を示し、あおい他を単なる取り巻きのような目で見ることもある。
準レギュラーとして以後も登場するが、菊之助の許嫁という立場の割には影が薄く、許嫁であるという最大の特徴を活かす場面も少なかった。前髪を真一文字に切り揃えた、いわゆる姫カットで、眉毛が太い。
苺谷桃子(いちごだに ももこ)
3年生。ボランティアでアトラクションヒロイン「プリティストロベリー」を演じている。いわゆる変身魔女っ子モノらしく、変身中は完璧に役に成り切っているが、単なるコスプレイヤーに留まることなく普段から正義と善行を心がけている。子供の頃から仮面ライダーのようなヒーローに憧れていたようである。高校生にもなりながら、イチゴ柄の下着を愛用し、それを貶されると怒りゲージがMAXになり、「プリティストロベリー・バニー」に二段変身、正体不明の必殺技「ストロベリッシュ・バニー・オン・ザ・ムーン」を発動することができる。
本作中において数多いる単発キャラクターの一人であったが、忘れた頃に再登場した。その回(第149話)は菊之助が冒頭の数コマしか登場せず、過激な描写もなく、物語は完全に苺谷を中心に展開するなど異例の内容となった。胸は人一倍小さいらしい。初登場は第58話。
二条院みかん(にじょういん みかん)
黒髪学園理事長の孫娘。脚を怪我し入院していたが、退院後も恐怖感からか立ち上がることができずにいた。脚が不自由であることと理事長の孫娘だということを盾に、周囲に無茶な要求をする我が儘ぶり。幼げな容姿ながら傲岸な性格で、口調も常に命令形である。
例によって菊之助のスケベ心から再び立つことができるようになったみかんではあるが、その後も車椅子に乗りっぱなしであった。準レギュラーとは呼べないまでも、単発キャラクターとしては以後の出番は割と多い方である。初登場は第46話。
白鳥祐貴子(しらとり ゆきこ)
愛犬家。菊之助のクラスメートの一人。実家で101匹も犬を飼っていることやその口調や性格からして、それなりの家の令嬢だろうと思われる。あおいや菊之助のクラスメートということもあってか、顔の判別できるモブとして割と頻繁に再登場する。初登場は第2話。
白白(ぱいぱい)
中国からの留学生。シニヨンに旗袍風の拳法着、「○○アル」といった口調など非常に判りやすいキャラクターである。もちろん拳法の達人で、中国の中林寺という場所で修行を積んだという。見た目が分かりやすいためか、何度か再登場している。初登場は第3話。
紀乃式部(きの しきぶ)
黒髪学園生徒会長。生徒会長の存在は連載初期から明かされていたが、ハッキリとした姿や名称を表したのは中盤に差し掛かろうかという時期であった。また、それまで学園の大半の生徒たちは生徒会長の素性や素顔を知らなかったようである。長髪に縦ロール、マントにフランス近衛兵風の制服を纏って白馬で現れるという、まるで『ベルサイユのばら』の登場人物のような出で立ち。菊之助の対処に悩むあおいの心の隙を突いて巧みに籠絡するほどの美貌と策謀の持ち主である。
それまでは部下である生徒会に執政を任せていたようであるが、その不甲斐なさから自ら陣頭指揮を執り、学園を本格的に支配しようと画策。手始めにあおいを手なずけ、因縁深い菊之助には性格が変わる秘薬を盛って無力化に成功する。しかし思い直したあおいが造反し、計画は水泡に帰した。以後は生徒会長の座にありながら実質的に失脚し、コメディ担当の準レギュラーとして登場するようになる。
菊之助の従兄弟であり、実は芸を同じにする女形である。すなわち男性だったことが事後に発覚する。これは秘薬を用いた擬似的な性転換によるもので、準レギュラー化してからは格好こそ従来通りだが、完全な男性として振る舞うようになった。菊之助に匹敵するほどのスケベで、菊之助に敵意を抱きつつも利害(主にスケベ方面で)が一致すると見事な団結力を示すことがある。シスコン気味で、頼れる姉のようなあおいに惚れている。実はある人物と異母兄妹だったことが最終盤に発覚する。
田原綾乃(たはら あやの)
生徒会。菊之助追放を命じられた生徒会随一の策略家。手始めにハニートラップで菊之助を陥れて籠絡し、来たるべき風紀委員長選に向けてあおいを孤立させ、風紀委員長の座から追い落とす算段だった。一旦は孤立無援となったあおいだったが、その人望を知る生徒たちが再び戻り、綾乃自身の油断や菊之助の怪我の功名もあって計画は失敗に終わる。
第34話で初登場(かすみ同様、厳密には第9話)し、第44話まで出ずっぱりだったにも関わらず、その後は再登場することはなかった。
田中かんな(たなか かんな)
美術部。そのせいか、頭にゴーグルを巻いている。よく校則違反をするので、菊之助と同様にあおいから目を付けられている。彼女もかすみと同様に変形制服を着用するが、ビスチェの上にブレザーを羽織っているので露出度は低い。
菊之助は彼女が「あおいの弱点」を探っていると知り、秘密を聞き出すために彼女の作品のモデルになったことがある。出番は2回のみで、いわゆる単発キャラクターの一人である。

健軍女子高校生徒・関係者

三沢理菜(みさわ りな)
ニックネームはサワリナ。健軍女子高校を平和な学校へと改革するために菊之助とともに闘う。温厚で他人を癒す性格である。真面目で一途、動物と意思を疎通できるなど絵に描いたような典型的美少女であるが、その実、恐ろしい秘密を持っている。身体能力も意外と高く、常に背中に背負っている竹箒を三節棍状に展開して自在に操ることができる。また、この竹箒三節棍は、内部に仕込まれているチェーンが相当な長さまで自在に伸縮するため、鞭や飛び道具のようにして用いることも可能。菊之助に対しては深い憧憬と信頼を寄せており、明確な好意を示している。胸の大きさはヒロイン内でも1、2を争う。
三沢ルナ(みさわ ルナ)
理菜の双子の妹であり、健軍女子高の理事長。通称はサワルナ・理事長先生。ただし教員免許を取得しているようには思えない。非常にサディスティックな性格と外見で、理菜の正反対にあるようなキャラクターである。自身の声の音域を自在に操ることにより、超音波や超低周波で物体を破壊したり人間を傷害することができるという能力を持つ。
後に失脚し幽閉の憂き目に遭うが、その際に悟りのような心境に達し、菊之助らと黒髪学園を救うための奇策を打つ。

その他

時巻くるみ(ときまき くるみ)
あおいの姉。ストリッパーを生業にしている。あおいとは正反対の自堕落でいい加減な性格をしているが、妹思いで信義に篤い面を見せることもある。数十話に1回ペース程度で登場し、あおいを面倒事に巻き込んだり困惑させたりするような役回り。性に対してオープンで、そういった面では菊之助と意気投合している。
藤井菊右衛門(ふじい きくえもん)
名門歌舞伎役者・5代目菊右衛門。菊之助の実父。最終的には菊之助は6代目菊右衛門を襲名することになるはずである。
菊之助の父親だけあって女性に目が無く、かなりのスケベ親父である。ただし菊之助と同様、芸事には厳格である。菊之助が女形修行として黒髪学園に編入してきたのも菊右衛門の差し金であったり、あおいと菊之助が勘違いするような物言いをするなど、ある意味では諸悪の元凶。桃色視線という女性を強烈に魅了する「役者の色気」を放つことができる。

ドラマCD

1997年9月26日にキングレコードより発売された。

声の出演
  • 藤井菊之助:日高のり子
  • 時巻あおい:三石琴乃
  • 河原五十鈴:川上とも子
  • 時巻くるみ:松井菜桜子
  • 天野芽美:かないみか
  • 水前寺そら:大谷育江

脚注

外部リンク