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ガッデム/新谷かおる

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著者: 新谷かおる
巻数: 2巻

新谷かおるの新刊
ガッデムの新刊

最新刊『ガッデム 2


出版社: 小学館
シリーズ: ビッグコミックス


ガッデムの既刊

名前発売年月
ガッデム 1 1989-01
ガッデム 2 1989-05

ガッデム(Goddamn)は、新谷かおるの日本の漫画、およびそれを原作としたOVA作品である。

概要

本作は、『ビッグコミックスペリオール』(小学館)で1988年から1990年まで連載された。単行本は全5巻、文庫版(スコラ漫画文庫シリーズ版、MFコミックス版)は全4巻が刊行されている。

多くのモータースポーツ漫画は、舗装されたサーキットや公道を疾走しタイムを競う華やかなものを題材にする場合が多い(新谷作品でも二輪の『ふたり鷹』やCARTの『ジェントル萬』などが、車種の違いはあるもののこれに該当する)が、本作では連載当時にはまだ日本ではそれほど一般に知られた存在ではなかったラリー(WRC)を題材としている。作中でも言及されているように、ラリーとは一般的にパリ・ダカール・ラリーのような不整路レースと認識している人が多いが、本作ではスタート地点とゴール地点が違うものをラリーレイドと呼び、スタート地点がゴールとなるものをラリーと定義づけている。本作の主題には、この定義をなぞらえたラリーが題材として取り上げられている。この定義(行ったものが帰ってくる)は日本を飛び出した源に、親元に帰ってくるように進言する新藤の台詞にも引用され、登場人物の出自や社会的立場、企業内での駆け引き、軋轢などもラストシーンに描写されたように“人生もラリーフィールドの様に過酷な道のりの連続である”と、登場人物の生き様も競技になぞらえて描かれている。

また、本作はモータースポーツ漫画であると同時に企業内部でのさまざまな思惑が絡んだ駆け引き、企業間での駆け引き、ラリーを通じて車の宣伝を行う企業側の論理など、企業そのものがクローズアップされていることも大きな特徴である。

あらすじ

うだつの上がらないラリードライバー、轟源。モンテカルロラリーでリタイヤを喫しパリへ戻ってきた彼の前に、六甲寺司と名乗る男が現れる。六甲寺は、自分の会社・聖王グループが新しく立ち上げるラリーチームのドライバーとして、源を起用したいと申し出る。六甲寺のテストを経て、晴れて聖王ラリーチームの一員となった源は、サファリラリー優勝を目指してアフリカの大地を疾走する。数々のアクシデントを乗り越えて聖王ラリーチームは初出場で2台とも入賞を果たすが、ゴールで待っていたものはチーム解散という衝撃的な事件であった。

源はサファリラリーで知り合った三沢自動車の間(はざま)からチーム参加を誘われており、今後のWRC参加のために仕方なくドライバーとナビのお買い得セットとして三沢自動車に自らを売り込んだ。そこで間から、マイナーチェンジが迫っているラレードGTI(三沢自動車が販売する架空の自動車)をエントリーさせ、好成績を出して安上がりの販売促進をさせる話を持ちかけられた。しかもお買い得セットとして売り込んだため、採用条件は宿泊・食費は自分持ち、クラス3位・総合10位以内でないと金は出せないというものであった。源はラレードの基本性能の高さに気付き、市販車、しかもATでのオリンパスラリー参加を提案する。オリンパスラリーでは大馬力でパンクに泣く他車を尻目に、軽量で適度な馬力のラレードは快進撃を続け、ついに総合2位に入賞する。

しかし、この結果は逆にラレードの過剰品質を露呈することとなった。ラレードの注文は殺到したが、対米輸出規制枠のために新車の販売が困難となり、三沢自動車の経営は逆に窮地に追い込まれる。これを解決すべく三沢自動車の会長の娘、三沢沙也子は改めてチームを編成して監督に就任、新型のレベッカを投入してWRCに参戦することを決めた。聖王ラリーチームで共に戦ったシン・ディック組も仲間となり、2月の酷寒のスウェーデンラリーでのクラス優勝を目指して走り始める。

登場人物

轟 源(とどろき げん)
本作の主人公。通称ゲン。ラリードライバー。今まで参戦してきた全日本ラリー選手権やWRCではさしたる実績は残しておらず、スポット参戦したモンテカルロラリーでも崖下に転落、リタイヤ。だが、その走りと話題性を六甲寺に見初められ、聖王ラリーチームのドライバーとして契約、サファリラリーに参戦する。走りは荒っぽい(カーブも曲がり具合で「松・竹・梅」と分類する)が決して下手なわけではなく、むしろ運転技術は非常に高い。大クラッシュに見舞われてもほとんど怪我をすることなく生還する幸運の持ち主で、そのため『ミスター・サバイバル』とも呼ばれている。短気で口が悪く手が出るのも早いが、チームに迷惑がかかるからと自身の怒りを抑えるなど、情に厚い一面も持っている。聖王ラリーチームの解散後、ロヴとともに三沢自動車のラリーチームに移籍し、オリンパスラリーやスウェディッシュラリーに参戦。ランチアやトヨタを向うに回して激戦を繰り広げる。
ロヴ・ロウ
フランス国籍を持つ、黒人のナビゲーター。通称ロヴ。サファリラリーでゲンと初めてコンビを組む。当初はラリーに対するスタンスの違いからゲンに反発することもあったが、レースが進む中でみるみる息を合わせていく。聖王ラリーチーム解散後もゲンとともに三沢自動車に移籍し、ゲンのよき相棒として活躍。後に知佳と恋仲になる。
ジョセフィーヌ・ポリニャック
愛称コティ。フランス人で、ヨーロッパ最大の流通グループを率いる資産家のポリニャック家の出身。さる事情により、生まれてから15年間、ジプシーと一緒に育った。美人だが普段の言葉遣いは非常に荒く(ただし公の場ではきちんとした言葉遣いをしている)、型にはめられる事を極端に嫌う。またポリニャック家の財産に関しても全く執着していない。ランチア・ラリー037を駆って全寮制の女学校から脱走する際、リューザンヌ峠でゲンと遭遇、崖下に落下寸前で救出される。サファリラリーでは、聖王チームと行動を共にした。
ラウール・ウズベック・シン
聖王チームの2号車を運転するインド人のラリードライバー。常に頭にはターバンを巻いている。ヒンドゥー教徒。ステディなドライビングが身上だが、内面には熱いものを持っている。聖王チーム解散後はテキサコ・フォードチームへ移籍、スウェディッシュラリーではゲンのチームメイトとしてミサワ・チームから参戦した。
ディック・ヴァン=ダイク
アメリカ人ナビゲーター。当初サファリではゲンのナビゲーターになる予定であったが、レッキでのゲンの走りに愛想を尽かしロヴとの交代を要求、シンのナビゲーターとなる。そのシンとは息が合ったらしく、シンがフォードやミサワへ移籍した時も一緒だった。

聖王グループ

日本の大手商社。

六甲寺 司(ろっこうじ つかさ)
聖王グループ海外事業部総支配人。本作のもう一人のキーマンともいえる存在。聖王グループのコマーシャル活動の一環としてラリーチームを立ち上げ、ドライバーとしてゲンを抜擢、サファリラリーに参戦するが、その行動が聖王本社内の一部でスタンドプレイと捉えられてラリーチームはサファリ終了後に解散、自身も謹慎処分を食らってしまう。
宇津木常務(うつぎじょうむ)
聖王グループ常務取締役。自身が社内での実権を握ることを考えており、その障害となりうる六甲寺のラリーチームプロジェクトを快く思っていない。
安田 妙子(やすだ たえこ)
聖王グループ本社秘書課長。29歳。六甲寺とは古くからの付き合いであり、内縁の妻とも言える存在。普段ヨーロッパにいて本社に不在がちな六甲寺を、本社から陰でサポートする。新谷の代表作『エリア88』からのスター・システムによる登場キャラである。
新藤 雪(しんどう ゆき)
聖王グループ本社第1秘書課勤務で安田の直属の部下。だが、安田とは旧知の間柄らしく、互いに『妙子』『おユキ』と呼び合っている。六甲寺の臨時秘書としてヨーロッパに渡り、スウェディッシュラリーに参加していたゲンをはじめとして、ミサワ・チームをバックアップする。本人が『性格は悪いが男を見る目はある女』と公言するとおり、妙子の存在があるにもかかわらず、六甲寺に対して積極的なアプローチを仕掛けようとした。実はゲンとは腹違いの姉弟であり、口は悪いが弟の事を気に掛けている。

三沢自動車

日本の架空の自動車メーカー。小型車と二輪車の生産がメイン。製品の品質はデミング賞を受賞するほど高い。

間 大陸(はざま だいろく)
三沢自動車技術部所属。手弁当で出場したサファリラリーでドライバーを務めたが、車を壊してリタイヤし、立往生していたところでゲンと出会う。メカニックとしての腕前は確かで、サービスに見放されてボロボロの状態だったゲンの車を見事に修理する。ミサワ・チームでは主にチーフメカニックとして活躍。
森沢 知佳(もりさわ ちか)
三沢自動車本社勤務。オリンパスラリーよりヘルパーとして参加する眼鏡っ子。後にロヴと恋仲になる。
三沢 沙也子(みさわ さやこ)
三沢自動車本社企画開発部部長。会長の末娘で男まさりの女性。三沢ラリーチームの監督に就任する。

トヨタ・チーム

ゲンのライバルとして登場する。

ハンス・シュルツ
トヨタ・チームのエースドライバー。ドイツ人。ラリーにおける、ゲンの直接のライバルともいえる男である。
飛田
トヨタ・チームのマネージャー。通称トビー。至って冷静な分析をする男。トレードマークはウェーブのかかった長い前髪。
アーノルド
トヨタ・チーム所属(役割は不名)。いかつい体格にスキンヘッドとサングラスがトレードマーク。
ユハ・カンクネン
ビョルン・ワルデガルド
トヨタ・チームのドライバー。サファリラリーで登場する。

OVA版

全2巻のOVAが1990年4月27日に日本ビクターから発売された。原作序盤のサファリラリーと聖王ラリーチームが解散となるまでを描く。

走行音などは実際に国内ラリーで活躍している東京にあるラリーショップの協力を得て使用している。

エピソードリスト

  • STAGE・1 サバイバル・チェイサー
  • STAGE・2 ゴー・アヘッド

キャスト

  • 轟源(声:山寺宏一)
  • ロヴ・ロウ(声:中尾隆聖)
  • 六甲寺司(声:鈴置洋孝)
  • コティ(声:渕崎ゆり子)
  • シン(声:玄田哲章)
  • ディック(声:江原正士)
  • ハンス(声:関俊彦)
  • トビー(声:中原茂)
  • アーノルド(声:鈴木清信)
  • 安田妙子(声:佐久間レイ)
  • 新藤雪(声:篠原恵美)
  • ジョー(声:安倍敦)
  • エリック(声:三木眞一郎)
  • 佐治専務(声:高木均)
  • (声:小野寺啓子)
  • (声:納谷悟朗)
  • (声:安永沙都子)
  • (声:津久井教生)
  • (声:中村秀利)
  • (声:橋本テツヤ)
  • (声:深雪さなえ)
  • (声:上田敏也)

スタッフ

  • 原作:新谷かおる
  • 監督・キャラクターデザイン・作画監督:古瀬登
  • 製作:野崎公明、南喜長
  • 脚本・撮影監督:藤川とも