ガンスミスキャッツ/園田健一
著者: 園田健一
巻数: 7巻
最新刊『ガンスミスキャッツ 7』
twitterでのコメント (関係ないのに引っかかることもあります...)
『ガンスミスキャッツ』(GunSmith Cats)は、園田健一による漫画作品。「月刊アフタヌーン」において1991年2月号から1997年6月号まで連載されていた。単行本全8巻、愛蔵版(Revised Edition)全4巻。1995年から1996年に掛けて全3巻のOVAが製作されている。また続編として『GunSmith Cats Burst(ガンスミスキャッツ・バースト)』が同誌2004年9月号から2008年11月号まで連載されていた(単行本全5巻)。
概要
凄腕の賞金稼ぎラリーとその相棒のミニー・メイの活躍を描くガンアクション漫画。
園田の趣味である銃器や60年代アメ車に関するマニアックな描写や、現代アメリカの市民生活のリアルな描写が見られる。
登場人物
ラリー・ビンセント
本名アイリーン・ビンセント。愛称の「ラリー」は賞金稼ぎを始めた頃に、仕事の依頼が来易い様に男性名を名乗った為。インド系イギリス人の少女。凄腕のバウンティ・ハンター(賞金稼ぎ)として活躍。その一方でシカゴで銃砲店を営むガンスミスでもある。銃だけではなく車の運転技術も高い。愛車は長年’67年型シェルビー・コブラGT500を使用していたが、『ガンスミスキャッツ・バースト』で起きた爆弾テロ事件で爆破されてしまった。2台目として’70年型BOSS302ユニットに換装したフォード・マスタング・キングコブラを対拳銃防弾仕様で使用している。ターゲットとのチェイスなどでしょっちゅう車を破壊する為、「壊し屋ラリー」としてブラックリストに載っており保険が利かないとのこと。(作中では愛車コブラの他、レンタルした車や代車のエランなど、数台を破損・或いは破壊している)
足を洗ったとは言え、元爆弾テロ犯のケン・タキザワや、相手がマフィア等の非合法活動を行う人物とはいえ復讐の為に殺人を繰り返した父親を匿ったり、フルオートモデル (単純所持でも違法) のサブマシンガンや爆弾等を所持していたり、本人自身はそうなる様に意図してないものの、裏取引の結果転がり込んできたマフィアの資金を着服したり、非合法ギリギリの事柄にも幾つか関わっている。
愛銃は本人曰く「旧モデルで進化の頂点に行き着いた」と評するCz75旧型モデル(最初の物は幼少時に父親に贈られた物だったが、敵に破壊されたために再度入手している。)。他に右袖、内腿、ブーツ内等に22口径のバックアップを装備している事が多い。チェコ製の銃が好み。武器を向けてくる相手には容赦なく銃弾を打ち込むが、銃(武器)を携帯していない相手には可能な限り引金を引かない。また、相手を打ち倒す時も、「親指飛ばし(銃を保持した手の親指を撃ち抜く)」や「銃の機関部分を破壊する」と言った直接致命傷にならない部分を狙い撃つ為、作中では咄嗟の場合や追い詰められた時以外、相手を殺す事は滅多に無い。最初のゴールディとの対決以降、麻薬を激しく憎むようになり、ビーンに麻薬絡みの仕事を止めさせる事を掛けて勝負した事もある。
ハンターという仕事を自身の正義をかけて全うしているので非常に芯まで強い女性である。初期の頃、誘拐された娘を無理やり救出に向かわされたが、娘は犯されて殺されるという物語史上最も後味の悪いストーリーがあるが、それに拍車をかけるのが、ラリー自身が人質が殺されたことに全く心を痛める描写がないことである(あまつさえ犯人が使用したCz75拳銃を後に自分の愛銃にしている)。つまり彼女にとってこの程度のことは日常的なことであり、同時に彼女の悲しいまでの強さも示している(ただしこの件については、後にゴールディに洗脳された時に幻覚に登場したり、娘の墓参りを父親に拒絶される場面があるなど、実際は少なからず遺恨となっている様子が見られる)。この事は「殺すために撃つんじゃない、信念を貫く為に撃つのよ!」というセリフに集約されている。
ゴールディとの激戦を繰り広げた後、幾つかの小事件を終えて、ハンター業を続ける事を疑問に感じる様になるが、バースデイに仲間達や事件で助けた子供達から贈られたプレゼントを見て「やめるのやーめた!」と自分なりに結論を出す。
銃の技術に関しては父親から手ほどきを受け、幼少時は母親に押し付けられた習い事を抜け出して父とプリンキングに興じていた。お守りとして父に贈られたAR7を大切にしている。ちなみに未だにバージン。
ミニー・メイ
本名メイ・ホプキンズ。ラリーの相棒。爆弾の専門家。薬品の匂いで爆発物を感知できるほど火薬の扱いに長けている。行方不明になった恋人・ケンが自分を見付けられるようにと、漢方の秘薬と鍼でケンと出会った頃のまま成長を止めて、幼い容姿を保っている。ケンと離れ離れになった後、ラリーと出会うまではチャイナタウンの「紫猫館」と言う娼館で働いており、その容姿とは裏腹にかなりのベッドテクニックの持ち主。再会したケンとは後に結婚を果たす。
爆薬の扱いに関してはケンから学び、爆弾の解体などでは腱鞘炎を患っているケンの片腕になることもある。実年齢は不明だが、結婚できている事、子供じみた感情でラリーと言い争う場面等から見て、ラリーとほぼ同年代と思われる。
普段から着用しているベストジャケットの内側には多種にわたる爆発物を縫い付けてあり、またパンプスの踵部分などにも信管と爆薬を隠し持っている。爆弾に名前をつけたり、食事に使う各種調味料の容器を手榴弾型のものにしたりと爆発物の愛好家の域に達しており、初期の頃のラリーには「爆弾魔(ボム・フリークス)」と呼ばれたことまであった。本人は「ボム・スペシャリストと呼んでよね」とさして気にしてもない様子。
その他
- ベッキー・ファーラ
- ラリー御用達の情報屋。かなりの情報網を持っているが、金には五月蝿い。愛車はBMW 2002だったがメンテナンスに金が掛かり過ぎたことからミスティに売りつけて、BMW 318tiコンパクトに乗り換えた。
- 先述の通り金に意地汚い面もあるが、ゴールディとの抗争の際には銃撃戦の中へ飛び出してラリーに銃を届けるなど仲間思いの面も見せる。ラリーは彼女に相当の「情報料のツケ」があるらしく、よくその事でラリーを泣かせる(護身用の銃のカスタム費用をツケから天引きしたり)。また情報屋としてはそれなりに経験を積んでいるらしく、犯罪組織に捕まってもパニックを起こさない、ビーン相手に顔を合わせた交渉でも一歩も引かない等、肝は据わっている。(ただしビーンとのやり取りの後、「マジで怖かった…けっこうチビったかも」と泣きそうになっていた)護身用にS&W M36チーフススペシャルを所持している。
- ミスティ・ブラウン
- 元空き巣少女。ラリーとの出会いは、彼女自身が仮保釈中に逃げ出し、保護依頼のターゲットとしてラリーに追跡されたことから。服役後ラリーの仲間に加わる。ピッキング(カギ開け)の名人で、ナイフもそれなりに使う。ラリーの相棒を志望するが、ラリーはショップとガンスミスの手伝いを希望している。レズビアンでラリーに気がある。とある事件ではビーンに体を張って助けられた事で、ビーンにも少し興味がある様子。
- 「バースト」ではベッキーから買い受けたBMWの維持費に泣かされている。作品を通して、やたらと脱がされたり縛られたりボンテージにされたりとお色気シーンが多い。
- ビーン・バンデット
- 本名不明。ロードバスターの名で知られる名うての運び屋。金さえ払えばどんなものでも確実に目的地に送り届ける。その一方で仁義は通すことで知られ、敵は思いの外少ない。特注のオリジナルマシン「バフ」の他に'69年型シボレーコーベット等数台を所有し、使い分けている。ラリーとは幾度と無く関わる因縁の持ち主。当初はラリーと対立する立場が多かったが、ラリーとの賭け勝負に敗れて以来、約束を守って麻薬を運ぶ仕事は断るようになる。以降、互いに協力する機会が増えている(彼に言わせると仕事がバッティングしているだけ)。本作におけるジョーカー的存在で、巨体にチェーンメイルとケプラー入りの防弾ジャケット少なくとも重量はメイの体重より重く、ジャケットを落としたミスティは足を骨折した。をまとい、撃たれても刺されてもお構いなしに暴れ回る。その姿には作中の裏稼業界にもファンが多い。武器はナイフを使用し、銃器類は使いたがらない投げたナイフが相手を貫いて壁や床に突き刺さるなど、「下手な銃より強力」である。。とある話で彼の部屋にラリーとミスティが潜入した際、部屋のクローゼットや机の引き出しにはシースナイフ・フォールディングナイフは当然のこと、マチェットや日本刀まで所持している事が描かれていた。意外とフェミニストで、メイやミスティを身を挺して庇ったり、自殺を図ったゴールディのペットの少女達のために大量の輸血をした事もある。意に反する取引には応じないが、車のレースで勝負を申し込まれると乗ってしまう。
- 男女の仲としてではなく「相棒」としてラリーを誘った事があるが断られた。
- ケン・ターキィ
- 本名ケン・タキザワ。日系人。メイの恋人。爆発物のプロでメイに爆弾の知識を教えた師匠でもある。出会った当初はメイの事を男の子だと思っていた。ケンがロリコン趣味である事を知ったメイに誘惑され、手を出してしまう。登場時はグレイの組織の一員だった。腱鞘炎を患い、爆弾の作成に限界を感じて組織から抜けようとした際にラリー達と関わる。その後一度はメイと離れ離れになっていたが、組織からの追求をかわし、現在はラリー達の協力者となっている。メイとは結婚するに至り、新婚旅行は故郷の日本。ビーンにはそのまま「ロリコン野郎」と呼ばれているが事実なので反論できないらしい。また、メイ曰く、アニメオタクでもあるらしい。
- ロイ・コールマン
- シカゴ市警の警部。ラリーと仲が良く、互いに協力し合っている。正義感が強く、まさに「警察官」といった感じの人物。回転式拳銃のコルト・ローマンMK-Ⅲ4インチを愛用していたが、署長から「相棒の安全の為にも多弾倉のオートを持て」と命令されてラリーの薦めでオートマチック(自動式拳銃)のSTIエッジに変更する。ラリーの良き友人ではあるが、その立場ゆえにラリーの非合法な方面での相談はしてもらえず苛ついた様子を見せる事もある。ゴールディによって洗脳されたラリーに撃たれた事があるが、それでも友情は続いている。妻の妹は他州の刑事で、ラリーを事情聴取した事がある。
- ジェフ
- シカゴ市警の刑事、 ロイ・コールマンの相棒。出番は多くないが、ラリーが警察署に用がある際にはよく顔を見せる他、ラリーとグレイとの抗争の際にはヘリで追撃するなどのシーンで登場。
- リフ・ラフ
- ラリーやビーンにスピードでのライバル意識を燃やす女運び屋。前髪に特徴的なメッシュを入れているボーイッシュな容姿をしており、園田がキャラクターデザインを担当したOVAガルフォースのルフィに酷似している。愛車はACコブラ427で、幾度と無くビーンにレースを挑むが、その度にラリーやその他の事件に巻き込まれてレースとしての決着は(作中では)一度もついてない。
- グレイ
- 「ガンスミスキャッツ」前半の宿敵。ギャングの幹部。ケンに絡むトラブルでラリー達と対立してラリーに片腕を吹き飛ばされ、以後ラリーに復讐心を燃やす。残忍かつ好戦的な性格で、腕を吹き飛ばされてからは義手に車のサスペンションスプリングを利用した射出式の巨大ブレードを取り付けていた。ビーン程ではないが9mmや22口径を打ち込まれても全く怯まず、返って攻撃的になる程打たれ強い。ビーンもろともラリー達を抹殺しようとするが、最終的にラリーに打ち倒された。
- ミズ・ゴールディ
- 「ガンスミスキャッツ」後半の宿敵。イタリアンマフィアの女幹部。薬物を使ったマインドコントロールや洗脳を得意とし、ラリーですら一時はコントロールされたことがある。ラリーの技量に注目しており、薬物抜きで完全に支配下に置こうと執拗に付け狙う。薬物と催眠暗示で洗脳した少女たちを常に侍らせており、おそらくレズビアンだと思われる。祖父の死から来る独特の美学を持っており、それに背くことは善しとしない。死亡したと思われていたが、『ガンスミスキャッツ』最終巻ではラリーなどの記憶を失った状態で姿を見せる。『ガンスミスキャッツ・バースト』にも再登場。
- デニス
- ゴールディの腹心。糸目の白人。元々はゴールディの祖父であった男の腹心だったが、彼が謀殺された際、その事実をゴールディに伝えると共に、彼女に忠誠を誓うようになる。ラリーとの戦いで記憶を失い、組織も弱体化したゴールディを献身的ともいえる忠義の厚さで補佐し続ける。その甲斐あってか、作中では部下に対して一切の信頼を持たない彼女に初めて労いの言葉をかけられた上、「お前の為ならあのハンターに対する憎しみも忘れよう」とまでの信頼を得た。
- ミスターV
- 生き別れになっていたラリーの父親。かつて妻を殺した強盗団を追って裏世界に身を投じ、組織ごと独りで壊滅させた(ラリーが賞金稼ぎになった理由のひとつは父の消息に関する情報を得る為だった)。ゴールディに洗脳され、部下となってラリーの前に姿を現す。ラリーにとって銃の師匠でもあり、戦闘に関してはラリーを凌ぐ実力を持つ。洗脳の「鍵」になっていた事が事実ではないと知って正気に戻り、ラリーを助けた後、警察の追跡から身を隠す。ラリーに電話で連絡を入れている場面から、無事に逃げ切っている様である。
- パーシー警部
- 『ガンスミスキャッツ・バースト』より登場したビーンを追ってシカゴ市警に転属してきた警部。警察官である自分は「正義の味方」なので悪人を倒すためなら何をしても良い、という誤った信念に基づき、非合法な手段まで駆使してビーンを倒そうとする。しかし姑息な手段はとらないと言う彼なりの正義感を持っている。愛車はラリーがシェルビー・コブラの代わりとして買おうとしていた'72年型マスタングマッハ1。ディック・ライアンという名の部下を持つ。
脚注
OVA
- THE NEUTRAL ZONE(1995年11月1日)
- SWING HIGH!(1996年4月1日)
- HIGH SPEED EDGE(1996年9月1日)
スタッフ
- 監督:もりたけし
- 演出:村田和也
- 脚本:金子篤二
- 総作画監督 ・キャラクターデザイン:松原徳弘
- 作画監督:小林利充
- 音楽:ピーター・アースキン
- 制作:OLM
キャスト
- ラリー・ビンセント:根谷美智子
- ミニーメイ:荒木香恵
- ベッキー:久川綾
- ロイ・コールマン:沢木郁也
- ビル・コリンズ:大塚芳忠
- ナターシャ:沢海陽子
- ジョージ:郷里大輔
- エドワード:加藤精三
- ジョナサン:池水通洋
ライディングビーン
学研刊の月刊誌「アニメV」1988年9月号から1989年2月号まで連載された高橋昌也の小説「CRASH CHASE」の挿絵コミックとして掲載され、1989年にOVA化された。
運び屋ビーン・バンデットの活躍を描いたガンスミスキャッツの前身ともいえる作品で、ラリーが白人(本編ではインド系英国人を父に持つ有色人種)であったりビーンとラリーが相棒であるなどの相違点がある。
また、「COMIC NOIZY」1988年12月号から1989年10月号まで連載された園田健一による幻のコミック版が、『ガンスミスキャッツ 愛蔵版(Revised Edition)』のコミック4巻の巻末に逆読みで収録されている。
スタッフ
- 製作:藤田純二
- 原作・監修・キャラクターデザイン:園田健一
- メカニック設定:園田健一、よしもときんじ、、うるし原智志、L.ライム、藤田幸久
- 監督:長谷川康雄
- 演出:井出安軌
- 美術監督:佐藤広明
- 美術設定:夢野れい
- ストーリーボード:園田健一、井出安軌、長谷川康雄
- 作画監督:田中正弘、上條修、大平晋也、奥田淳
- 編集:掛須秀一、石田悟、牧岡栄吾、掛須編集室
- 撮影監督:小西一廣
- 音響監督:松浦典良
- 企画:鈴木敏充
- プロデューサー:田崎廣、三浦亨
- 音楽監督:松浦典良
- 制作:アートミック・AIC
- 製作:ユーメックス
キャスト
- ビーン・バンデット:田中秀幸
- ラリー・ビンセント:松井菜桜子
- セマーリン:小山茉美
- パーシー警部:富山敬
- キャリー:林原めぐみ
- チェルシー:本多知恵子
- ジョージ:筈見純
- 署長:屋良有作
- ディック(バーシーの部下):飛田展男
- 犯人・モーリス:小林通孝
- ガードマンA:塩屋浩三
- ガードマンB:田中和実、小杉十郎太
- ウェイトレス:丸尾知子
外部リンク
hr:Gun Smith Cats
ko:건스미스 캣츠