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グリーン・ブラッド/柴田昌弘

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著者: 柴田昌弘
巻数: 1巻

柴田昌弘の新刊
グリーン・ブラッドの新刊

最新刊『グリーン・ブラッド


出版社: 大都社
シリーズ: STコミックス


twitterでのコメント (関係ないのに引っかかることもあります...)

gariana96 グリーン・ブラッド 1 こんな感じの絵が好き。いくとこまで行ったのが皆川亮二なんでしょうな。絵ってうまくなるほど一本の線がシェイプアップガールズ。 #manga
narutotablet Green Blood (グリーン・ブラッド) vol 01-03 http://t.co/GiaE9qpU #manga #mp3
mangasic_raws Green Blood (グリーン・ブラッド) vol 01-03 http://t.co/cEoqrGXx #manga #mp3
ensetugekka 『RAINBOW 二舎六房の七人』作者、柿崎正澄先生の新作『グリーン・ブラッド』 今週の週刊ヤングマガジンから連載開始。 http://t.co/s1GVILD おっ、と来た人は今すぐチェックだ! #manga

グリーン・ブラッド』は柴田昌弘による日本のSF漫画作品。

未来世界において人間の奴隷として作られた有機アンドロイドグリーン・ブラッド達が「人間」としての尊厳を得るために戦う姿を描く。

東京三世社の『少年少女SFマンガ競作大全集』に「グリーン・ブラッド」「ファタ・モルガーナ」が、白泉社の『花ゆめEPO』に「緑のペガサス」「偽りの赤い血」「始末屋」「再生工場」「ゴースト・ライナー」が掲載された。また単行本が3冊、白泉社「花とゆめコミックス」より発行されている。(「再生工場」「ゴースト・ライナー」については単行本「サイキック・トラベラー」に収録)

ストーリーは現時点では完結していないが事実上の断筆状態である。

あらすじ

22世紀後半、宇宙殖民時代に到達した人類は、労働力としてグリーン・ブラッド(以下GB)と呼ばれる人造人間を奴隷として使役していた。グリーン・ブラッドは人間と変わらぬ外見・能力を持つが、「シグナイト」と呼ばれる鉱物を原料として化学的に合成して作られた「亜人間」であり、生殖能力を持たない一代生物である。GBの深層意識には「人間を畏れ、敬い、従う」という本能が埋め込まれており、人間への反抗は不可能であった。そして人間以下の存在の彼らは動物にも劣る「物」としてまさしく使い捨てられていた。

グリーン・ブラッド

H.S.パルマノーバ社のシグナイト採掘工場で使役されていたGBのレパとリュイ、イフェはある事件をきっかけに工場監督官の人間に目をつけられ酷使されるようになる。ある夜レイプされそうになったイフェを助けるためにレパは「本能」を打ち破り監督官を殺害、逃亡を余儀なくされる。

人質としてパルマノーバ社の社長令嬢を拉致するのだが、そこで彼女からレパ達は「人間と同等どころかハエ以下の存在」として面罵され、グリーン・ブラッドが人造人間であることを告げられる。逃亡のため乗り物を強奪するのだが、その乗り物は故障修理中のため空中分解し彼らは投げ出され社長令嬢は死亡。怒り狂った社長はGBを一人残らず抹殺することを宣言する。

そして彼らの「人間」としての誇りを得るための流浪の旅が始まる…

ファタ・モルガーナ

惑星ゼラの七不思議、ダズモーグ山塊を超えたところに逃亡したGB達がひっそりと暮らす「モルグ・ハムレット」という村があるという噂が流れていた。ある行き倒れのGBの女が、その幻の村から交易に出ていたコーバンに拾われる。そしてその村にはレパ達3人がかくまわれていた。

同じGBの仲間として彼女を受け入れるレパ達だが、彼女の口からは「あなた達が起こした事件のせいで街ではGB狩りが始まった」と告げられショックを受ける。

GBとしては不審な彼女の態度、落し物を拾いにいくといって戻らないままのコーバン、リュイとイフェは彼女が人間のスパイではないかと疑い始める。しかし純真なレパは仲間を疑う彼らを諌める。

やがて谷底でコーバンの死体が見つかる。村のGB達は彼女がスパイであると断定し、村を守るために抹殺を決断するが、レパは反対する。しかし、彼女はGBに扮した人間であり、村人たちは「本能」により彼女を殺すことができない。レパは彼女を手にかけ、そして村人達に「村を守るために仲間であるGBを殺すくらいなら、自分は人間たちと進んで戦う」と告げ、村を出て行く。

緑のペガサス

老婦人マロープとその孫で盲目の少女ペネの2人が暮らす荒野の農場。レパ達はマロープの命を助けたことがきっかけでそこにかくまわれていた。しかし追跡の手はその農場にも伸びており、辛くも誤魔化すも、その騒動でペネの両親の形見であった「ガラスのペガサス」を壊されてしまう。彼女はペガサスがいつか自分の元を訪れて光を与えてくれると信じていたのだ。

一方、密輸品を運ぶ宇宙船から逃げ出した「ペガサス」を追う謎の男の手が彼らに迫る。そのペガサスはペネの両親が違法な科学者に依頼して作ったGBのペガサスだったのだ。

テレパシー能力を持ったペガサスはペネをその力で呼び出し、追っ手をサイコキネシスで次々と殺害する。そして隠れ場所で子馬を生むが、不意打ちを喰らい子馬を残して殺される。そこにレパ達が駆け付け、ハンターを倒す。そしてレパ達は気がつく。生殖能力のないはずのGBだが、子馬が生まれたということはその制約を取り払う技術を持った者がいるはずだということに。

偽りの赤い血

猛毒に汚染された砂漠の奥にある廃工場、そこでGBを人間に「生体改造」している科学者が存在するという噂を聞きつけたレパ達は、その話に疑念を感じるレパと乗り気なリュイの間に不協和音が流れる中その工場に辿り着いた。

そこにはピグ=マーチスソンと名乗る博士とその親衛隊の元GB達がいた。そこはピグ博士の王国であり、彼は人間に生まれ変わることを希望するGB達に、大金かまたは体内で高価な秘薬である「ベリル」と呼ばれる結石を育てることを条件に受け付けているのであった。

人間社会に紛れ込み、GBのための独立運動をするためには彼にすがって人間化手術を受けるべきだと力説するリュイに折れ、手術台に上がるレパとリュイだが、土壇場でピグ博士がイフェをハーレムに入れること、ベリルの抽出には絶大な苦痛があること、実際にはベリル育てのGBはほとんど死んでしまい金儲けの手段に過ぎないことを明かす。

いよいよの時、地下病室で監禁されていたGB達が氾濫を起こし、人間化したGBを皆殺しにし、ピグ博士も殺害される。レパ達は「GBも赤い血を持ったとたんに堕落する」と呟き、センターを後にする。

始末屋

ペガサス事件のハンターの遺留品の銃を持って街にやってきたレパ達。ハンターの身元を洗えばペガサスの製造元を突き止め、GBの遺伝子に組み込まれた生殖不能の制約を外すことができ、それによりGBの将来に光をもたらすことができると考えているのであった。武器商人は「8番街にあるSHABBYという酒場に行け」と告げる。

その街でレパ達は若者グループに襲われている老人ガルディスを助ける。瀕死の重傷を負ったガルディスを家に送ろうとするレパ達。ガルディスは告げる。「8番街にあるSHABBYに連れて行ってくれ」。ガルディスはそこのマスターであった。

レパ達はガルディスに武器を見せる。ガルディスは「これは始末屋の持つ七つ道具だ」と告げる。始末屋とはGBメーカーに雇われて「不良品」のGBを抹殺するプロフェッショナルであり、ガルディスの店は賞金稼ぎの男たちのたまり場だったのだ。

店の客にGBだと見破られ、賞金稼ぎ達に追われるレパ達。追い詰められいよいよの時、賞金稼ぎ達が突然倒される。それは自分を襲った暴徒化した人間達より、GBの方がはるかに人間らしい心を持っていることに気付いたガルディスによる恩返しであった。

再生工場

レパたちはウエスカ宇宙港で人口皮膚をつかい人間に化けて働いていた。彼らはGBのペガサスを作ったタイレル社がある第七惑星「アルカ」に赴くため宇宙船に密航しようとしていたのだ。その工場では多数のGBも働いておりイフェは暴力的な班長に襲われそうになったところを親切なGBの老人に危うく助けられる。その夜街では抜き打ちのGB狩りがあり多数の人間にまぎれていたGBが逮捕された。その中にはレパたちに人造皮膚を提供した医師のメギレフとパートナーのエリスタもいた。エリスタは何故GBだというだけで殺されねばならないのか、GBには自由がないのかと群集に問うがGB弾圧組織MASSのリーダーであるシグナイト採掘工場パルマノーバ社の社長ラクストンの手によって全員が惨殺される。

レパは工場で怪我をし緑の血を流してしまうがGBの老人に助けられる、しかし班長の命令でレパとリュイはGBの老人たちを「再生工場」に連れて行くことになる。再生工場とは死んだり年老いたりして使い物にならなくなったGBたちを殺害しその細胞組織をリサイクルして新しいGBを作成する工場なのだ。ただ老人たちを見送るしかないレパとリュイ。しかし老人たちは笑って「自分たちは生まれ変わる、GBの魂は不滅だ」と去っていく。GBたちの間には「肉体は再生されても魂や記憶は受け継がれていく」という伝承による一種の宗教が生まれつつあったのだ。

レパとリュイは老人たちを見送ったあと公開処刑されたGBたちの肉体が再処理炉に放り込まれるところを目撃し意気消沈して立ち去ろうとしたが再生工場をたまたま訪れていたラクストンに見つかってしまい、ラクストンは二人を射殺しようとする。しかし炉から現れたエリスタの姿をしたGBの意識体に炉の中に引きずりこまれてしまう。エリスタは言う。個々のGBが殺されてもGBの魂は種として生き続けるのだ、と……

ゴースト・ライナー

宇宙港のある都市ソルバスでは再生工場での事件以来、ついには人間まで巻き込む爆弾テロが頻発するほどの狂気じみたGB狩りが行われていた。「魂は再生する」というエリスタの言葉が真実なら蓄積された知識を受け継ぎ続けるGBはいつしか生まれながらにして人間をはるかに超える英知をもつことになり人間はそれを恐れたのだ。

一方レパとリュイ、イフェたちはついに宇宙船への密航を実行することになった。彼らは惑星アルカに行く宇宙船ヘルメスに積み込まれるコンテナに潜もうとしていた。そのとき7番惑星アルカからゼラに向かう宇宙船"ガリオン37"が宇宙港に緊急着陸してきたのだ。傷つきながらもかろうじて着陸に成功するガリオン37だがそのとき宇宙港のGB宿舎がテロで爆破され巻き込まれ爆発してしまう。レパが見つけた乗員は虫の息の最後の言葉で「幽霊船」のことを告げて事切れる。レパはMASSのメンバーである主任にテロのことを知っていたのではないかと問い詰めるが彼は何も知らない、GBは殺すが人間を巻き込んだりはしないと答える。レパたちは酒場で宇宙船乗組員の話を聞く。ゼラからアルカに向かう航路には幽霊船が出没し出会った宇宙船は必ず沈むのだと…

宇宙船ヘルメスは予定どおりゼラから出航することとなり、レパたちはコンテナにもぐりこんで密航、宇宙船は発射される。しかしゼラの砂漠で何者かに瀕死の重傷を負わされた主任がヘルメスに向かって「出航してはいけない!」と叫ぶ。

登場人物

主人公とそれにまつわる人々

レパ
主人公の一人。GBの若者。正義感あふれる熱血漢。産まれた時からシグナイト採掘工場で奴隷として働かされていた。イフェの危機に際し「人間を殺してはならない」というGBの「本能」を打ち破り看守を殺す。これをきっかけに彼は人間の支配から脱し、GBの自由を得るための闘争を開始する。登録番号139
リュイ
主人公の一人。GBの若者。かつては富裕な家庭の下僕としてイフェと働いていた。イフェが巻き込まれた事件により当主の怒りを買い、シグナイト採掘工場に売り飛ばされる。元の労働が金持ちの召使のため相応の教養と技術を持っている。登録番号227
イフェ
主人公の一人。GBの少女。かつてはリュイと同じ屋敷でその家庭の子守役として働いていたが、その少女が自動車事故に巻き込まれそうになるところを庇い、彼女が重傷を負う。しかしGBの「毒の血」を浴びることで少女は無傷にもかかわらず死んでしまう。当主は怒り彼女を殺そうとするが、リュイの身を挺した懇願と周りの目撃した人間のとりなしでシグナイト採掘工場への売却で命だけは救われることとなる。登録番号228
コーバン
GBの村「モルグ・ハムレット」の中心メンバーで交易係り。フィーナを砂漠で拾うのだが…
ハデス
GBの村「モルグ・ハムレット」の村長。かつてはTV局の(影の)敏腕プロデューサーだったが、彼の才能を妬んだ人間により両目を潰され腕を切り落とされた。
マロープとペネ
レパ達をかくまった荒野の農場の住人。GBと知りつつも彼らの人間性を信頼する。惑星ゼラの人間ではあるが、彼女達は「普通の人間」の顔つきをしており、それゆえに妬まれていた。ペネは「普通の人間の姿」で産まれるために不正な遺伝子操作を受けたため副作用として盲目である。
メギレフ
GBの医師。人間に紛れ生活するGBのために精巧な人造皮膚を作るのだが……
エリスタ
メギレフの仲間の女性GB。ラクストンたちに捕らえられ公開処刑される。

ラクストン
シグナイト採掘工場パルマノーバ社の社長。娘マイラをレパたちに殺害されたと思い込み、GB迫害団体MASSを結成。全GBの抹殺を宣言する。
ティンキー
シグナイト採掘工場の看守。イフェをレイプしようとする。
マイラ
シグナイト採掘工場の社長令嬢。レパ達の脱出の人質となり結果として命を落とすことになる。
フィーナ
GBの女に偽装した人間のGBハンター。モルグ・ハムレットに潜入し彼らを皆殺しにしようとした。
ピグ=マーチスソン
元GBの科学者。かつての仲間であったGBを「人間に改造する」という甘言で食い物にしていた。

設定

グリーン・ブラッド

オクト=ブランク社が開発・販売している「亜人間」(アンドロイド)であり、「擬似生命体」である。見た目は「人間」と変わらず、知力・体力は人間と同等以上の能力を持つが、生殖能力を持たない一代限りの生命である(作中では子馬を産む能力を持つ「GBの馬」が登場しており、これは技術的な制約ではなく意図的な制限であると見られる)。オクト=ブランク社以外にもGBメーカーは複数存在し、そのうち第七惑星「アルカ」にあるタイレル社は生殖可能なペガサスのGBを作り上げた。

使用目的によりいくつかのタイプがあり、肉体能力(寒暖に耐える力など)が仕様により違う。惑星ゼラは酷暑の惑星なので、ゼラ仕様のGBは気温70度程度までは耐えることができる。また携わる業務に必要な知識はあらかじめ埋め込まれているようである。さらに「本能」として「人間を畏れ敬い従う」ように動機づけられており、人間には決して逆らったり傷つけたりすることはできない(ただしイフェがレイプされそうになった時のレパや、ピグ=マーチスソンの研究所のGB達のように、激しい怒りが頂点に達した時、その制限が解除されることもある)。

人間との外見上の違いは緑の皮膚と血であり、彼らの血は人間にとって猛毒かつ化学的に危険な液体であり、人間や動物はそれを浴びるだけで激しい火傷を負い死んでしまう。

前述のピグ博士が施すような特殊な生体改造を受けることで「人間」になることは可能であり、その触媒として「ベリル」と呼ばれるGBの体内にまれに発生する結石が多量に必要である。

製造メーカー名、タイプ、シリアルナンバー等は右腕上膊部に消せない烙印で記されている。人間に偽装してもこの烙印と生体電流の微細な違いを判別する装置により見破られることがある。人工皮膚を使うことで偽装することは可能だが網膜の血管を検査する装置にかかれば見破られてしまう。

人間

22世紀終盤、人間は宇宙殖民時代を迎えているが、モラル・技術力とも下降の徒を辿っており、工業力は一部の殖民星で細々と維持されている。そして彼らの社会を支えているのは「労働」を一手に押し付けられている奴隷であるが故に「業務」や「技術」に精通したGB達であり、人間はGB無しではもはや産業も文明も維持できないが、それゆえに人間はGBを疎み憎むようになっている。一部の過激派はMASSと呼ばれるGB排斥団体を作りGBを虐殺したりGBを使う工場などに爆弾テロをしかけたりしている。

各殖民星では人間は数世代を経てそれぞれの星に順応しており、例えば惑星ゼラの住人は目が惑星に順応することで、元の地球人とは異なる爬虫類のような顔つきになっている。

舞台となる惑星

惑星ゼラは地球人が殖民している17惑星のうちの1つであり、国土の大半は不毛の砂漠である。最大の都市はソルバス。特産物はシグナイトとビード酒。作中では他に「トレーファス」「アルカ」という惑星の存在が示されており、唯一の重工業技術の残る星であるとされている。

アイテム

シグナイト
惑星ゼラで産出する鉱物。GB達の「原料」となる。彼らは「仲間を掘り出すために働いていた」ことになる。ゼラには「H.S.パルマノーバ社」を始め、シグナイト生成を業とする企業が複数存在する。
MMD
グリーンブラッドの「毒の血」を中和する物質。GBの「女」を慰み者にする無法者の間で非合法で流通している。
ベリル
まれにGBの体内に発生する一種の結石。精力増強や若返りに卓効があり宝石以上の価格で取引されている。多量につかえばGBを人間に改造することもできる。ただし結石を発生させたGBは精気を吸い取られ死んでしまう。