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シャルトル公爵の愉しみ/名香智子

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著者: 名香智子
巻数: 7巻

名香智子の新刊
シャルトル公爵の愉しみの新刊

最新刊『シャルトル公爵の愉しみ 第7巻


『シャルトル公爵の愉しみ』(シャルトルこうしゃくのたのしみ)は、1985年から2000年まで「プチフラワー」に不定期掲載された名香智子による漫画作品。もともとは一話ごとに異なったタイトルがつけられたシリーズ作品で12巻分単行本化されていたが、2004年の文庫化に伴い上記のタイトルで統一され、現在小学館文庫で全7巻が刊行されている。フランスの名門貴族で大富豪のシャルトル公爵家三世代にわたる描写を中心に、ヨーロッパ上流階級における恋愛や結婚などがゴージャスな筆致で綴られている。

登場人物

ラウール・ド・シャルトル公爵
金髪で青い眼で長身痩躯の美中年。基本的に女性嫌いだが性的にはノーマル。妻のヴィスタリアと妻公認の愛人サラをこよなく愛しており、娘のアテネーを溺愛している。息子のアンリ曰く「人の上にたつ器ではなく経営能力も低い」らしいが、きわめて誠実で固いほど生真面目な好人物。アンリの悪友のフランソワによると大抵の人間は息子のアンリよりラウールの人格を尊重しているという。冒険家の弟アランと妹が一人いる。変わった性格の人間ばかりに囲まれている中では比較的常識人であるがゆえに気苦労が絶えない。初出はおそらく文庫版『花の美女姫』第2巻収録「銀鼠色のマドモアゼル」で、なぜか眉が点々で描かれていた。
シャルトル公爵夫人ヴィスタリア
「ヴィスタリア」はあくまで愛称であり、本名は不明。グランサニュー侯爵令嬢。夫のラウールとはいとこ同士。夫の愛人のサラとは、愛人だと了承しながらも親しい友人。エメラルドのような緑の瞳にゆるくウェーブしたショートカットの亜麻色の髪が全編通してのスタイル。初期には男性と間違われるほどスレンダーな少年体型で描かれていた。ラウールと結婚後、一男(アンリ)一女(アテネー)をもうける。夫以外に関しては極度の男嫌いで、夫とも新婚当時から別居生活だった。生理的に男性を受け付けず女性を偏愛し欲情するのは通常は女性に限られる。常に自宅である館に美女や美少女を同居させている。特に黒髪が好み。もっとも超美形の男性ならば許容範囲だが通常の精神状態では肉体関系までは持てない。また美少年が女装して美少女に見える分には好ましいらしい。才能ある女性たちのパトロンでもある。落ち込むと酒に逃げるが深酒すると蕁麻疹が出る体質。夫ラウール曰く「いつまでも30歳に見えるタイプの女性」。
シャルトル公爵子息アンリ
ラウールとヴィスタリア夫妻の第一子。実質、本作品の主人公。フルネームは「アンリ・シャルル・フランソワ・アルベール・オーギュスト・ド・グランサニュー・ド・シャルトル」。父親譲りの金髪と母親譲りの緑の瞳の甘いマスクの持ち主で、幼い頃より神童の誉れ高く、知性・容姿・家柄・財産全てに恵まれたプレイボーイ。あらゆる語学に堪能で、旅行や冒険を好む。結婚後も3年にわたり家を出て放浪していたこともある。誘拐されたことがあり、その時に片足を失い右足は義足。一時期南米で行方不明になったこともある。父が現「シャルトル公爵」であり、本人は現在母方の「グランサニュー侯」を名乗っている。ちなみにバイセクシュアルで最愛の人はソンモール・ド・ロシュフォール伯爵。
シャルトル公爵令嬢アテネー
ラウールとヴィスタリア夫妻の第二子。兄アンリとは20歳以上年が離れている。先祖譲りの超能力を持ち、電気や物体を手を使わずに操ったり、言葉を使わず他人と意思疎通したりする。ソフィー・ド・ロシャンボーが大好きな親友で専属家庭教師の娘ギャランス・ブーリエが遊び相手。ミカエルを慕っていて、ふたりは将来泥棒仲間になるのだと宣言していた。超能力のせいか普通と違う思考回路を持つらしく、ミドルティーンの頃まで文字も覚えられず計算もできなかった。作中言葉を話さなくなった時期もある。成長してからは能力を多少残しつつもそれなりに社会に適応できるようになり、リオン皇太子と結ばれることになる。
レオポルディーネ・ハプスブルク
今でこそ暮らしぶりは一般市民だが苗字の示すとおりハプスブルク家出身のお嬢様。ラウールの友人の娘。豪華な美女でしかも豊満。特技は空手。紆余曲折を経てのちにアンリの妻となる。性格は奔放、大胆、わがまま。本能の命ずるまま行動しがちで目的のために手段を選ばない。周囲の人間を混乱に巻き込むこともしばしば。信じやすい性格で勘違いの思い込みをよくする。幼い頃からラウールに大変な好意を寄せており、ラウールの後妻に納まることを至上の目的にしていた。アンリとの結婚に踏み切ったのもラウールが義父になるからという理由からだった。それでもアンリとの間に二人の子どもをもうけ、良好な夫婦関係を築いているようだ。
リオン・カルロス・デ・ロノス大公
宝石産業を基幹産業とする地中海の島国「ロノス王国」の皇太子。母はイギリス人で本人もイートン校からオックスフォードへ進み、お忍びでは「ダグラス・ホジキン」と英語名を名乗る。黒髪に深い青の瞳の美青年。レオポルディーネとは親戚。ミカエルに魅かれている。王国はあまり裕福ではなく、自然災害からの復旧のため彼が宝石泥棒をしながら窮境をしのいでいるらしい。そのため18歳の時、持参金目当てに当時4歳のシャルトル公爵令嬢アテネーに求婚したが、ストーリー半ばでスペイン人大富豪の娘イザベラと結婚。夫婦仲は良好だったが、彼女は子どもを身ごもったまま飛行機事故で死去。その後は独身でいるつもりでいた。
ミカエル
アンリの初恋の女性シルヴィと怪盗銀鼠の間の一人息子。親譲りの泥棒の技術に長け、変装(女装)も陰謀もお手のもの。シャルトル家に頻繁に出入りしアンリの信頼も厚く、若いながらもシャルトル・グループの事業を一部任されている。出会いで盗みの上手を取られたリオンに対抗心を抱きつつも時には\行動を共にし良いコンビぶりを発揮する。おそらくは父親譲りのたいへんな美形で頭も切れるが軽いところがあり不遜な言動をしがちで人に激しく誤解を与えたり殴られたり(時には殺されかけたり)することも。長らくプレイボーイだったが、ソフィー・ド・ロシャンボーに再プロポーズしてからはすっかりそのなりを潜めているようだ。
フィリップ
アンリとレオポルディーネ夫妻の第一子。父アンリと同様に生意気な神童で、14歳時点で既に大学を卒業している。だが、祖父ラウールの教育方針のせいで田舎のコレージュ(中学校に相当)に通学させられている。コンピューターに精通しており、(ジェネラリストで万能家の父アンリに対し)どちらかといえば一つのことを究める学究肌の人間らしい。
クロウディア
アンリとレオポルディーネの第二子。外見は父アンリ似だが、性格は祖母ヴィスタリア似のわがままなお嬢様。2話しか登場していないが、キャラクターの特性は名香の次作『パンドラ・パニック』のヒロインに受け継がれたものと思われる。
パリス
ラウールの妹の子供でアンリの従兄弟。アテネーが生まれるまで一人っ子だったアンリの弟のような存在。純情で誠実な性格でレオポルディーネに振り回されたりもした。本人はアンリが行方不明になった時に捜索・救出を共にしたアンリの元婚約者であるアネモネを長年一途に慕っていて、アンリの結婚に先駆けて思いを実らせる。
アネモネ・ド・マレー男爵令嬢
アンリの元婚約者。赤毛が印象的な女性。ラウール曰く「かわいらしくて楚々としているが芯が有り思いやりがあって優しい理想的な女性」。アンリと出合った頃はソンモールに憧れていたがアンリと相思相愛になり婚約。しかしアンリの行方不明中の出来事が原因でアンリのことを慮り自分から婚約解消した。その後海外でボランティア活動などに従事し尼僧になるつもりでいたがパリスの一途な思いに応えて結婚する。
フランソワ・ド・ギーズ
ギース侯の次男の遊び人のバイセクシャル。アンリはフランソワが嫌いだと言い放つが何だかんだで付き合っている悪友。遊びに関してはアンリも認める天才らしい。働くことが嫌いで、結婚するのは資産家の女性と決めていた。作中で希望が叶って年上の財産家夫人と財産目当ての結婚をするが、相手もそれは納得済みで夫婦仲はとても良い。
ソフィー・ド・ロシャンボー
黒髪の美少女でアテネーの同年代の友だち。ソフィーの曽祖父が超能力者であったことを知ったラウールが幼年のアテネーの遊び相手になってもらいアテネーの大好きな友だちとなった。美少女なだけでなく聡明で利発で優しく、自他ともにストレスを生み易いアテネーが心安く付き合える相手。アンリ曰く「ソフィーには全てが備わっている」。アテネーの縁で少年時代のミカエルと出会い幼いながらも結婚の約束をする。その後外交官の父親の仕事の関係でボリビアに転居したため一時アネテーともミカエルとも疎遠になったが、その間もラウールとはミカエルのことで文通を続けていた。ソフィーのいない間、ミカエルはプレイボーイぶりを発揮していたが、再会したソフィーへの愛を再確認して改めてプロポーズした。
銀鼠
ミカエルの父。恋人のシルヴィと共にかつて名の知られた怪盗銀鼠として世間を騒がせた。シルヴィはシャルトル家での盗みに入るための潜入で少年アンリとシャルトル夫妻に出会っている。シャルトル家での盗みの成功をもって怪盗業は引退しシルヴィと結婚。ミカエルをもうけるもシルヴィは病没し今は古本屋の親父。ミカエルがアネテーに接触したことでアンリと再会しシャルトル家との付き合いが始まった。アンリに裏社会関係の情報を提供している。かつては前髪で、今は髭とサングラスで容貌が隠されているが、昔一目だけ素顔を見たアンリは見たこと無いようなスゴイ美貌、自分の何倍もかっこいいと評していた。名前が出てこずアンリたちはムッシュウと呼んでいる。
エマニエル・ブーリエ
アネテーの家庭教師。夫と離婚後にギャランスを連れて学校に通えない事情を持つアネテーの住み込みの専属教師となる。後にフィリップの世話もする。修道院の院長の推薦だけあって地味で堅実で生真面目で誠実な性格。物腰は優しいが少し卑屈で引っ込みがちなところもある。娘のギャランスがいいかげんで不真面目だった夫の性格に似てきていることを悩んでいた。
ギャランス・ブーリエ
エマニエルの娘。アネテーの同年代で母親に連れられて共に住み込み、アテネーの遊び相手をする。美少女で賢いが生別した父親似の性格をしているらしく、俗っぽく功利的で小ずるく立ちまわるところがある。
アルフレッド・カイザー
ラウールの学生時代からの自称友人。カイザー財団主宰。アメリカ一の資本家で大富豪の愛妻家。登場時は文句のない金髪美青年だったが再登場では飽食から肥満していた。ラウールを困らせることに喜びを感じるという歪んだ迷惑な友情を抱いている。仕事上ではシャルトルと権益を争うこともあり、アンリは毛嫌いしているがアテネーと末っ子のエドウィンを結婚させようと目論んでいる。妻の名はイリス。アルフレッド四世とのことだが長男はジュニアと呼ばれる。
アルフレッド・カイザー・Jr
アルフレッドの長男。初婚の相手とは結婚一週間で離婚したらしい。再婚相手とは上手くいっているとのこと。
バート・カイザー
アルフレッドの次男。17歳でフランスに来たとき、ヴィスタリアに花嫁探しを頼んだ。ヴィスタリアが憧れの女性らしい。
スコット・カイザー
アルフレッドの三男。ミカエルが初めて付き合った銀行家の娘であるヴィヴィエンヌ・フーケとカイザー家としての意向で結婚しようとしている。
エドウィン・カイザー
アルフレッドの四男。幼少時にアテネーと会って一目惚れして以来、ずっとアネテーを想っていた。父や兄はカイザー家とシャルトルの縁結びを望んでいるが本人は純粋にアテネーを想っていて、そのような政略的意図に悩んでいる。カイザーを毛嫌いしているアンリも認める性格の良い子。

あらすじ

他作品との関連

  • アンリ・ド・シャルトルは名香智子の作品『花の美女姫』に主人公たちの友人として登場し(作中「スール・アーリン」と呼ばれていた)、徐々に出番を増やしながら主役級のキャラクターに成長した。
  • アンリが右足を失った理由は文庫版『花の美女姫』第3巻収録「樹海の虜」「黄金の少年」を参照のこと。
  • 『ファンション・ファデ』に登場したマダム・フルールは本作第1巻収録「純毛は生娘の愉しみ」や第2巻収録「ヘルメースは虚言する」内でサラ・ヴェルシニとしてその経緯が明らかにされている。また主人公のファデも養父(ラウールの弟の縁)を通じてシャルトル家と繋がりがあることになっており、養母はサラと深い因縁がある。

既刊

プチフラワーコミックス (小学館)

  • 純愛はジゴロの愉しみ 1986年6月20日 ISBN 4-09-178601-4
  • アポローンは嫉妬する 1988年2月20日 ISBN 4-09-178771-1
  • 貴婦人は頷かない 1993年6月20日 ISBN 4-09-178772-X
  • 向日葵が恋をしたのは誰? 1994年4月20日 ISBN 4-09-178773-8
  • 黒の皇太子 1995年2月20日 ISBN 4-09-178774-6
  • 少年は贔屓される 1996年2月20日 ISBN 4-09-178775-4
  • 悪趣味な美学 1996年10月20日 ISBN 4-09-178776-2
  • 籠の中のお姫様 1997年8月20日 ISBN 4-09-178777-0
  • 秘密はバラしてもいい 1998年5月20日 ISBN 4-09-178778-9
  • エメラルドは気取り屋 1999年6月20日 ISBN 4-09-178779-7
  • 縦横無尽の風 2000年3月20日 ISBN 4-09-178780-0
  • 薄情が薄氷を踏む 2000年3月20日 ISBN 4-09-178602-2

小学館文庫 (小学館)

  • シャルトル公爵の愉しみ 1 2004年2月10日 ISBN 4-09-191551-5
  • シャルトル公爵の愉しみ 2 2004年2月10日 ISBN 4-09-191552-3
  • シャルトル公爵の愉しみ 3 2004年3月10日 ISBN 4-09-191553-1
  • シャルトル公爵の愉しみ 4 2004年3月10日 ISBN 4-09-191554-X
  • シャルトル公爵の愉しみ 5 2004年4月10日 ISBN 4-09-191555-8
  • シャルトル公爵の愉しみ 6 2004年4月10日 ISBN 4-09-191556-6
  • シャルトル公爵の愉しみ 7 2004年5月10日 ISBN 4-09-191557-4