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シルクロード・シリーズ/神坂智子

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著者: 神坂智子
巻数: 7巻

神坂智子の新刊
シルクロード・シリーズの新刊

最新刊『シルクロード・シリーズ 7


出版社: 集英社
シリーズ: HMB


twitterでのコメント (関係ないのに引っかかることもあります...)

stream_net シルクロード・シリーズ(神坂智子、花とゆめ→エポ)

シルクロード・シリーズ」は1981年(昭和56年)から1990年(平成2年)にわたって、神坂智子によって描かれた漫画作品群である。執筆当初、これらは白泉社の少女漫画雑誌『花とゆめ』『エポ』などで連載された。

作品概要

このシリーズは、天山山脈に住む「」(テングリ)と呼ばれる少数民族が崇める神々と、彼らが関係する人間の生き様を描いた大河作品である。舞台は地理上のシルクロードに当たるトルコ、ペルシャ、中央アジア、インド、チベット、モンゴル、中国および日本などである。一話ごとに完結するオムニバス形式をとっている。

作品リスト

花とゆめコミックス版

『風とビードロ』収録作を除いて、作品名には原則として「シルクロード・」の副題が付く。

はるかなるシルクロード(1981年)
[収録作品]はるかなるシルクロード/シルクロード・天翔ける馬/シルクロード・キャラバンの鈴
風とビードロ(1982年)
風とビードロ/風の子守唄(ララバイ)/風のメモリアル
/イシククル天の幻影(*シリーズ外のSF作品)
宇宙(そら)ゆく帆船(ふね)(1983年)
ペキネンシス50万年/バンボレットの谷/バルマンの鉄柱/宇宙ゆく帆船
姫君の塔(1984年)
姫君の塔-キズクルガン-/青いビビ・ハヌィム/カラキタイの娘/天のはごろも(あまのはごろも)
ゾマの祭り(1985年)
ゾマ神の嗤う夜/ロンドン花吹雪/ゾマの祭り/イエチャブ・ツォの月
巻毛のカムシン(1986年)
巻毛のカムシン/緑の王宮/白い神々(テングリ)の伝説/波斯(ペルシャ)の井戸
砂漠幻想(1986年)
砂漠幻想/聖者の湖/金の紙 金の繭/黒水城(カラホト)の魔女
ヘディンの手帳(1987年)
ヘディンの手帳/ソグリアナの娘/ヤグノブの谷/ウイグルの砂/青い柘榴
雪の朝 -ホワイトカングリー-(1988年)
雪の朝 -ホワイトカングリー-/テイサの記憶/サーハスの鏡/王女の首飾り/百合の咲く谷/綿の城
欠けたもの満ちるもの(1989年)
湖面の月/赤い山白い神/欠けたもの満ちるもの/マルゥの空ツヴィは砂色/金目(きんめ)のツヴィ
永遠を見る娘(1990年)
天と地の神/永遠(とわ)を見る娘/そしてカレーズ/星の落ちる谷/月の宴/月の宴・II/エンディング

あすかコミックスDX版

あすかコミックスDXで復刊時の巻名

  • キャラバンの鈴
  • 宇宙ゆく帆船
  • 姫君の塔-キズクルガン
  • ウイグルの砂
  • 永遠を見る娘
  • 風の輪・時の和・砂の環 - 『風の輪・時の和・砂の環』(初出:1984年新書館)はそれ自体はシルクロード・シリーズの作品ではないが、ここではコミックスのタイトルとして使われている。

設定について

(花とゆめコミックス『シルクロード-姫君の塔』巻末、「シルクロード年表」を参照の事)

この漫画には、過去・現代・未来の物語が順不同に含まれ、そのうちの「現代」は20世紀であるとされるが、一連の物語の中では、最初に来るのは「未来」に相当する部分だとも考えられる。つまり、“シルクロード・シリーズ”は、実は読者のいる現代に対して、すべてが遠い未来のまだ起きていない出来事だと解釈できる(もしくは読者のいる宇宙とは別の、パラレルワールド上の出来事と読むこともできる)。

すなわち、高度文明に達しながら地球環境を破壊し、種としての絶滅を迎えた「人間」の中から、「宇宙(かみ)」によって選ばれた10人の子供が超能力と不老長寿を与えられ、再び興る文明を人間が破壊しないよう見守り続けている-その彼らが「テングリ」すなわち天山山脈の「神」と呼ばれているのである(なおテングリたちと共に生き残りながらも、退化した人類が北京原人であるとされる)。

その根底にあるのは「地球も輪廻する」という概念であり、破壊される度に何度も何度も、ほとんど同じ経過をたどって歴史が繰り返されると考える。この設定があればこそ、作者は我々の知っている「史実」を自由自在にアレンジできるのである。

従って、神坂智子の“シルクロード・シリーズ”は、ただの瞑想的物語ではなく、れっきとしたSF漫画に分類できる。もっとも、そこまで深く考えなくとも、各作品の大半は素直に読めるような素朴な人間賛歌的物語である。

「神」(テングリ)たち

前述のように、彼らは元は人間として生まれたが、超能力を持ち不老である。人間が生殖能力を完全に失い滅亡へと進もうとしている時代、子孫を残そうと尽力する夫婦、セーヤとアーニャの遺伝子から、人工子宮によって生まれた(『バルマンの鉄柱』)。脳波を刺激し歩む道を示してくれるという作用のある銀鈴を受け継ぎ、長(おさ)がこれを持つ。全員が長い金髪に翠色の瞳、白い肌をしている。10人揃わないと完全に力を発揮できないが、途中で長が抜けて9人になり、現代になって長の子孫であるシオリ(詩織)を迎えて再び10人となる。シオリ(詩織)以外は全員が男性。

オリジン
長男。「起源」の意(命名は父。他の9人は母が命名)。テングリ達を統率する長である。ある事故により失踪、銀鈴を失い精神が破壊されたため、他の兄弟達と意思の疎通が不可能となる(『キャラバンの鈴』)。日本に漂流し、二度と大陸に戻ることなく数百年後に衰弱死するが、人間の娘との間に己の超能力を受け継ぐ子孫を遺す(『天のはごろも』)。
テイサ
次男。「楽神」の意。オリジン失踪後、シオリ(詩織)を迎えるまで銀鈴は彼が携えていた。優雅で誇り高いが剽軽なキャラクターで、テングリ達の中でも出番の多い人物である。
マロムセイ
三男。「師」の意。兄弟で唯一、頭にターバンを巻いている。テイサとは対照的に、寡黙で冷静沈着な人物。
ナイアード
四男。「オアシス・泉」の意。ティムール王の第7后妃ビビに好意を寄せられる。一夜にしてモスクを完成させたことがある(『青いビビ・ハヌィム』)。
アッシュ
五男。「大地」の意。戦争で故郷と恋人を失い絶望にくれていた少女アゼルを、ツヴィの育ての親となるよう導いた。
カムシン
六男。「熱風」の意。巻毛の持ち主。兄弟で唯一、人間の娘と恋仲になったことがあり、彼女が死ぬまで慈しみ続けた(『巻毛のカムシン』)。
ジェナー
七男。「翼」の意。兄弟の中で一番高く空が飛べる。
スルジェ
八男。「太陽」の意。ゾマの娘ターラに恋をし、彼女を天山に導いた(『バンボレットの谷』)。
サーハス
九男。「勇気」の意。遠くの物が見ることができるという黒曜石の鏡を作ることに熱中している。また、瀕死の赤ん坊だったツヴィに自らの血を与え命を救った。
アーサー
十男。「希望」の意。彼が超能力で織り上げた、白い子羊の毛と金の髪でできた絨毯は、人から人へと時代を超えて渡り継がれることとなる(『ヘディンの手帳』)。
シオリ(詩織)
オリジンの末裔。彼女も含め、オリジン(織仁)の子孫である天池家の能力者は名前に「織」の字がつく。20世紀の日本・九州の隠れ里に生まれ、「おシラ様」と呼ばれる巫子として暮らしていた。16歳の時に銀鈴の音に導かれて大陸へ渡り、他のテングリ達と合流、長の役目を担うこととなる(『はるかなるシルクロード』)。オリジンの血を受け継いでいるため、能力は10人の中で一番高いが、テングリとなってからは年を取らず16歳の時の姿のままであり、他の9人からは常に子供扱いされ「チビ長」と呼ばれている。10人中唯一の女神。

注目すべき登場人物

真美耶・真美女(まみや・まみな)
チベットの神、ゾマによって創られた「双体仏」。額に第三の目を持ち、動物の生体エネルギーを吸って生きる。真美耶は男性体で、残忍で凶暴な性格。真美女は女性体で、優しく慈悲深い性格をしている。実は、真の能力を持つ完全体は真美女の方である。後に真美耶は、ある事件がきっかけで真美女に殺されてしまう。この作中の「ゾマ神」は、絶滅した科学文明が残した人工知性体で、“双体仏”による地上の支配を目指すが、「人形に地上の支配はできない」と異を唱えた真美女の手によって最後は崩壊する。
ツヴィ
『砂漠幻想』で最初に登場する「ミュー」(異端者)を自称する少女。彼女はチンギス・ハーン時代の中央アジアで生まれ、瀕死の赤ん坊だったところをテングリによって命を助けられた。その際、サーハスが自らの血を彼女に与えた影響で突然変異。右目は青色、左目が金色となり、しかも左目は近くが見られない代わりに遠くの物がよく見えるようになる。また、口はきけず心の声で言葉を発している。予知・透視能力を持ち不老不死である。戦争で天涯孤独となった少女アゼルに育てられる。自分がシオリ(詩織)の身代わりとして創られた存在なのではないかと誤解し、自分を普通の人間とは違う体にしたテングリ達を恨んでいる。彼女は人間社会のいずれの「枠」にも入れない孤独な者として描かれているが、テングリ達とは違い、人間社会に身を置いて生き続けている。
ターラ
真美女と同一人物。『バンボレットの谷』で登場。パキスタン国境のバンボレットの谷で、シャーマンに保護されていた。シャーマンによって「ターラ(第三の目の意)」という名前で呼ばれている。ゾマの支配を離れ一人になった後も、自分の存在について苦悩し続けている。後にスルジェの導きで天山に行き、テングリ達と共に暮らすこととなる。『宇宙(そら)ゆく帆船(ふね)』では、滅亡に向かう地球の運命を見守るため地上に残り、人類と運命を共にする道を選ぶ。この時の長はシオリ(詩織)であり、時間軸的には他の物語よりも後(未来)と考えられる。
羽間崎織花(はまざきおりか)
天池家の能力者の一人・竹織(たけお、詩織の大叔父)の娘。『風の子守唄(ララバイ)』で登場。同族の詩織に似た容貌で(ただし金髪碧眼ではない)、また「織」の字を持つ名が示すとおり強い超能力を持つ。父はその力を利用された末、織花が生まれる前に事故で死亡、織花もまた同じ能力故に軍やアメリカに追われ続けた。廃村となった父の故郷を訪れた時、テングリたちが彼女を迎えに現れたが、金の髪も翠の瞳も持たない織花は彼らと共に行くことはできなかった(『風のメモリアル』)。

関連項目

  • SF漫画

作中関連項目

一部の項目名は神坂智子の作品における名称と異なる。

  • あ行
    • アフメト3世
    • イシク・クル
    • イスラーム
    • ウイグル人
    • ウズベク人
  • か行
    • カシュガル
    • カラ・キタイ
    • カレーズ
    • 乾隆帝
    • コンヤ
  • さ行
    • サマルカンド(ビビ・ハヌィム)
    • シーア派
    • シッダールタ
    • スヴェン・ヘディン
    • スンニ派
    • 西夏
    • ソグディアナ
  • た行
    • タクラマカン砂漠
    • タジク人
    • チベット仏教
    • チューリップ時代
    • チンギス・ハーン(成吉思汗)
    • デリーの鉄柱(バルマンの鉄柱)
    • ティムール
    • 天山山脈
    • トルキスタン
  • な行
  • は行
    • ペルシア
    • ヒンドゥー教
    • ハインリッヒ・ハラー
  • '''ま行
    • モンゴル帝国
  • '''や・ら・わ行
    • 楼蘭
    • 楼蘭の美女
    • ロプノール