ジャイアント/山田芳裕

『ジャイアント』（ジャイアント）は山田芳裕作の野球漫画。講談社の雑誌「モーニング」で連載されていた。

あらすじ

アメリカに一人の見上げんばかりの大男の日本人が降り立った。彼の名は巨峰貢。日本プロ野球のドラフト指名を取り消され、就職先も野球部が廃部になった為に内定取り消し、おまけに恋人にまでフラれ、それでも野球をやりたいという夢を捨てきれずに、少年時代から憧れていたメジャーリーガーを目指し渡米したのだった。「アリゾナ・スネークス」のトライアウトを受けに来たものの、そこでもトラブルにあい、トライアウトに間に合わなかった。しかし、ひょんなことからシングルA「ホットサンズ」の試合に飛び入り参加、そこで特大ホームランをかっ飛ばし、その打力を認められてホットサンズへの入団が決定する。こうして日本の「ジャイアント」巨峰貢のメジャーリーガーへの挑戦が始まった。

登場人物

主人公と球友

巨峰貢（きょほうみつぐ）

経歴（つる舞中学→県立北大和高校→大和大学→シングルAフェニックス・ホットサンズ→トリプルAツーソン・コヨーテズ→サンフランシスコ・ゲイツ→フィラデルフィア・フェローズ）

投打　右投げ右打ち

ポジション　外野手、一塁手

本作の主人公。身長2mを超える巨体の持ち主。大学を卒業後、日本プロ野球、社会人野球の道を閉ざされ、憧れのメジャーリーガーを目指す。非常に穏やかで心優しい性格。

（中学時代）

少年時代から並外れて大きく、中学一年の時点で既に身長が190cmを超えていた。その頃の貢は皆から信頼されていたが、球技大会のバレーボールで本気でスパイクを打った際に相手に重傷を負わせてしまう。それからは怖がられて友人達からも避けられるようになってしまい、彼自身も何事にも本気になることを止めてしまった。しかし、心の中では全力で身体を動かしたいという気持ちがあり、憧れのメジャーリーグのビデオを見ながら部屋で素振りを行い、バッティングセンターに通う日々が続いた。

（高校時代）

野球の強い高校ならば思い切りプレイ出来ると思い、野球の強豪校を受験するものの体調を崩していたために不合格、三年前まで女子高だった野球部の無い高校に進学する。そこで自分と同じメジャーに憧れる小早川と出会い、野球部を作ろうと動き出す。しかし、出来たのはベースボール愛好会であり、貢が協力を求めても他のメンバーはあれこれ理由をつけて協力を拒んだ。結局高校でも思うようにいかず、野球の強豪大学の進学を目指す。

（大学時代）

野球の強豪大学、大和大学の英文科に進学。そこで後の球友となる神宮寺、高取、三島と出会う。当初はこの三人よりも格下だったため三人には敬語で話していた。大学野球では日本一を経験するものの、監督に対する貢への評価は低く、これまでのホームラン狙いのバッティングを小さく縮こまったヒット狙いのバッティングに修正され、監督の指示に従う野球ゴマに仕立て上げられてしまう。

（渡米、メジャーへの挑戦）

様々なトラブルが原因で日本で野球をやることを閉ざされた貢は、少年時代からの憧れだったメジャーリーガーを目指し、アリゾナ・スネークスのトライアウトを受けるため渡米。しかし、空港で置き引きに合って足止めを喰い、結局トライアウトには間に合わなかった。しかし、空港で出会った男の伝でシングルAフェニックス・ホットサンズの練習試合に飛び入り参加することになる。そこで初めての自分と投手の一対一の勝負の心地よさを知ることとなり、大学時代の縮こまったスウィングではない豪快なバッティングで特大ホームランを放つ。その試合を観戦していたスカウトマンの目に留まり、ホットサンズへの入団が決定した。

ホットサンズではホームランを量産し、チームメイトでありライバルであるウィルソン、ブラウンを抑えてトリプルAツーソン・コヨーテズへの昇格が決定する。しかし、貢は自分自身の守備に不満があったためもう少しシングルAに留まる事を懇願し、3日間の猶予を貰う。その間に守備面を克服し、晴れてコヨーテズに昇格した。

コヨーテズではゴールドスミス監督の元で見世物じみたパフォーマンスをさせられ、戸惑いながらも順調に活躍する。しかし、ティーレックスに入団した神宮寺に「日本の投手の投球リズムに対応しきれない」弱点を衝かれ、一転して大スランプに陥る。そんな中、ゴールドスミス監督の命により、問題児カマーチョとバッテリーを組むことに。その経験から勝負球だけに絞ってそれ以外はカットする術を身につけスランプを脱出。ティーレックスとの地区優勝争いも制し、それをきっかけにメジャーへの昇格を決めた。

サンフランシスコ・ゲイツへ昇格を決めた貢。シーズン終盤に一打席だけ立たせてもらったもらったもののピッチャーフライに終わり、メジャーとの力の差を実感する。一時帰国した際に知り合ったヴィラ・アンダーソンを代理人に迎え、スプリングトレーニングにも参加し、着々と力を付けていったが、開幕直前にフィラデルフィア・フェローズにトレードに出されてしまう。おまけにヴィラと代理人契約をする際に知らぬ間に新会社の社長になるサインまでしており、それが倒産。250万ドルもの借金を抱える羽目になる。オプションを生かして借金を返済しようと打席が稼げる一番打者に志願。自分の気持ちを押し殺して出塁や盗塁を重視したスタイルに切り替える。しかし、42sに入団した高取に完全に押さえ込まれてからはスランプに陥り、更には怪我までしてしまう。そんな中で再会した神宮寺に発破を掛けられ、復帰したゲイツ戦でカマーチョから気合入れのビーンボールを受けて縮こまっていた自分から目を覚まし、再びホームランを打つ決意を決める。一時はシングルAにまで落ちてしまうが、その際に自分の右足を深く埋め込む「もぐら（モール）打法」をあみ出しメジャーに復帰。貢がメジャー一年目のシーズンでのフェローズは42sを最終戦ダブルヘッダーで下し、ワイルドカードを手にしてワールドシリーズに駒を進めたもののそこで力尽き、ニューヨーク・ヤンクスに敗れ去る。それから五年後、貢はフェローズの不動の主砲となり、チームもナリーグ優勝を決め、ワールドシリーズでは三島が入団したヤンクスと対決。第一戦で先発した三島の100%の力で投げた球をも打ち崩し、勝利を飾る。しかし、貢は100%の球を打たれ、自らの命を絶とうとして姿を晦ました三島を救うために後を追い、三島と共にワイナリーに閉じこもって三島を説得。結局ワイナリーの主人に警察に連絡されてしまい、連行される際に三島に言い放った言葉が三島の逆鱗に触れ、裁判沙汰となって敗訴。三島を監禁、暴行したとして逮捕され、一年間の服役生活を送る。出所後は一年間のブランクを埋めるためにゴールドスミス監督が作った独立リーグでプレイし、その後フェローズに復帰したところで物語は完結する。

神宮寺武（じんぐうじたけし）

経歴（広島西商業高校→大和大学→トリプルAラスベガス・ティーレックス）

投打　左投げ両打ち

ポジション　三塁手

貢の大学時代からの球友。広島出身。短気で気性が激しく、闘争心の塊のような性格だが、皆を引っ張るリーダーシップも持ち合わせている。

（中学時代）

母子家庭で育ち、働いている母親に代わって家事は全て行っていた。その時から野球をやっていたが、妹が暴走族に絡まれている所を助けるために連中を倒したことで、その族の総長となり、最終的には広島中の族総勢700人を束ねるまでになった（但し、神宮寺は野球と家事のためよほどの事が無ければ出てこなかった）。それを切っ掛けに神宮寺は皆と一体になって目標を乗り越えたときの達成感を知ることとなる。

高取幸之助（たかとりこうのすけ）

三島剣（みしまけん）

経歴（/大和大学→東京グレイステツ→ニューヨークヤンクス）

ポジション　投手　右投げ