テルマエ・ロマエ/ヤマザキ・マリ
著者: ヤマザキ・マリ
巻数: 4巻
最新刊『テルマエ・ロマエ 3』
twitterでのコメント (関係ないのに引っかかることもあります...)
『テルマエ・ロマエ』(THERMAE ROMAE)は、ヤマザキマリによる日本の漫画作品。『コミックビーム』(エンターブレイン)にて連載中。当初は不定期連載だったが、2010年4月号から定期連載に移行した。単行本は2010年9月現在、ビームコミックスより2巻まで刊行されている(以下続刊)。
概要
古代ローマ時代の浴場と、現代日本の風呂をテーマとしたギャグ漫画である。入浴文化という共通のキーワードを軸に、現代日本にタイムスリップした古代ローマ人の浴場設計技師が、日本の風呂文化にカルチャーショックを覚え、大真面目なリアクションを返すことによる笑いを描く。単行本では、各話の間に、風呂に関する歴史資料や、作者の体験が書かれたコラムが掲載されている。題名の「テルマエ・ロマエ」は、「ローマの浴場」の意味。
書店員の選ぶマンガ大賞2010「マンガ大賞2010」にヤマザキマリの『テルマエ・ロマエ』 - エンタ - 日経トレンディネット、第14回手塚治虫文化賞短編賞受賞作品。
書店の店頭での宣伝などを通して部数を伸ばし、『コミックビーム』の連載作品としては例外的に女性読者の支持も集めている。また、東京都浴場組合による推薦や、イタリア・ローマ関係の学術的な問い合わせといった、あまり例のなかった形での反響があるといい、2010年に受賞が相次いだ際には展覧会や旅行会社とのタイアップも企画された。2010年5月現在、単行本1巻は約50万部発行されている。
あらすじ
舞台はハドリアヌス帝時代、西暦130年代の古代ローマ。浴槽を専門とする設計技師ルシウス・モデストゥスは、革新的な建造物が次々に誕生する世相に反した昔ながらの浴場の建設を提案するが採用されず、事務所と喧嘩別れしたことで失業状態に陥ってしまう。
落ち込む彼の気を紛らわせようとする友人マルクスと共に公衆浴場に赴いたものの、周囲の騒々しさに耐えかね雑音を遮るため湯中に身を沈めたルシウスは、壁の一角に奇妙な排水口が開いているのを見つけ、仕組みを調べようと近づいたところ足を取られて吸い込まれてしまう。 不測の事態にもがきながらも水面に顔を出すと、彼はローマ人とは違う「平たい顔」の民族がくつろぐ見たこともない様式の浴場に移動していた。これ以降ルシウスは自分の意志とは無関係に度々「平たい顔族」の風呂へ訪れては、それが自らの創意工夫によるものではないことに若干の後ろめたさを感じつつ、そこで得たアイディアをローマでの浴場設計に活かし名声を勝ち得ていく。
「平たい顔族」、それはアジア系有色人種の未来の姿。すなわち現代日本人であり、ルシウスは浴場を使ったタイムトラベラーとなっていたのだった。
登場人物
- ルシウス・モデストゥス
- ローマ在住の建築技師。アテネで最新の建築技術を習得しており、浴場を専門とする。質実剛健な根っからの仕事人間。
- 様々な浴室の建築に頭を悩ませる度に、現代日本の多種多様な風呂・浴場へとタイムスリップしてしまうという奇妙な能力(?)を持つ。本人は現代日本をローマと時代を同じくする未知の国家と捉えており、時間を超えているという認識はない。
- 好奇心・学習意欲が非常に強い性格であり、タイムスリップした先で出会う日本人を「異民族」「奴隷」と誤解し、「平たい顔族」と呼び、「ローマよりも軍事力で劣る未開の国家」と見なしながらも、優れた点は謙虚に認め、貪欲に学び受け入れる。また、ローマ人としての誇りが高く、生真面目で義侠心に厚く、目下と見做している「平たい顔族」に対しても気遣いを忘れない。ただ、素裸でも全く意に介さず、浴衣やバスローブなど、袖付きの服に対しても、古代ローマにおけるトーガのように片袖しか通して着ようとしない。現代日本の風呂の機構や様々な物品を、言葉の通じない中でも的確に分析し、巧妙に再現するなど、分析能力及び技師としての能力は一流であるといえる。一方で、皇帝の許に出入りするようになってからは緊張性の腹痛にしばしば悩ませられている。
- 最初のタイムスリップを経験して以来、現代日本の浴場の優れたシステムを貪欲に取り入れてローマの浴場に反映することで、(当時のローマでは)革新的な浴場・風呂を次々と生み出し、次第に名建築家としての地位を確立していく。しかし本人は生来の生真面目さから、これらの手柄は全て「平たい顔族」の模倣でしかないとして、自分の得る名声や栄誉に後ろめたさを感じており、そんな事情を知らないローマの人々からは謙虚な男とみなされている。さらに、仕事と妻リウィアの板挟みにあって懊悩するなど、苦悩が絶えない。
- その仕事ぶりが評価され、ついにはハドリアヌス帝の信頼を得て皇帝付きの技師となったが、男色家として有名な皇帝の愛人と誤解され、妻にも逃げられる等の苦悩を重ねる。更には皇帝継承問題に巻き込まれ、密かに命を狙われるようになってしまった。
- 温泉街に現れた際、二人組の女性客の片方から「イケてる外人」、「ジュード・ロウ入ってる」と評されていた。
- マルクス・ピエトラス
- ローマに住む彫刻家。老齢の師匠と共に暮らしている。
- ルシウスとは旧知の仲で、共に浴場へ出かけたり酒を飲んだりする。いかつい顔だが女好きかつ明るい性格で、仕事や妻のことで悩み易いルシウスの良き相談相手。
- ルシウスの発明品の開発も手伝っており、皇帝の目にとまるきっかけともなった。
- ハドリアヌス
- 軍事よりも内政や哲学にその才を発揮する優れた皇帝だが、すでに50代半ばを過ぎており、体力の衰えを感じている。
- 多くの革新的な浴室を生み出すルシウスの噂を聞きつけて興味を覚え、ついには自ら呼びつけて仕事を与えるまでになる。
- 男色趣味があり、マルクスら彫刻家にナイル川で溺死した愛人アンティノーの石像を多数作るように命じ、帝国中にそれを建てさせた。ハドリアヌスに重用され始めてから、「ルシウスも皇帝に見初められたのではないか」という噂が流れ始めた。
- レピドゥス第二回三頭政治で有名なレピドゥス執政官を含め、史実上レピドゥスという家名を持ち正規執政官、補充執政官になった人物は18人いる。しかし史実を見る限り、ハドリアヌス帝在位中の正規執政官、補充執政官にはいずれの人物も該当しない。
- ローマの地方執政官。老齢によりカンパニア州の別荘で療養生活を送っている。
- ルシウスの設計による公衆浴場が忘れられず、余生を彼の作り出す浴室と共に過ごしたいと願い、仕事を依頼する。
- セウェルス
- ローマ軍の将軍。ブリタニアの平定に活躍した後、バル・コクバの乱平定のため、イスラエルに派遣された。
- ハドリアヌスの命を受けたルシウスが、傷病兵の治療に役立つ浴場を設計した際に、高い評価を与えた。
- アポロドロス
- ルシウスが尊敬する高名な建築家。先代の皇帝・トラヤヌスに重用され偉大な実績を築いたが、ハドリアヌスとは折り合いが悪かったとされる。
- ルシウスから見れば大先輩の「天才建築家」であるが、ハドリアヌスにとっては感覚の古い建築家であり、別荘の設計からは遠ざけられた。
- 弩砲など攻城兵器に関する発明にも秀で、それにより、ハドリアヌスから一定の再評価を得た。しかしすでにかなりの高齢で、足腰が弱くなっている。
- ルシウスが皇帝の許に召されて以来、後継者が出来たことを喜んでいる。また大の風呂好きということもあって、すっかり風呂仲間の一人となった。
- ルキウス・ケイオニウス・コンモドゥス
- ハドリアヌスの養子となり後継指名された次期皇帝の青年。後継指名後は養子として名をルキウス・アエリアス・カエサルと改めた。
- ハンサムで機知に富む反面、好色で病弱。ルシウスからは「女ぐせの悪い軟弱男」と軽蔑されており、前途を危ぶまれている。
- ローマ元老院からは失脚を狙われており、ハドリアヌスから彼のための人気取りを託されたルシウスは更に苦悩を重ねることになる。
- マルクス・アンニウス・ウェルス
- ハドリアヌスが密かに将来の皇帝候補と認める聡明な少年。ルキウスからの信任も厚く、娘の婚約者となっている。15歳の若年という理由でハドリアヌス帝は後継指名を見送ったものの、頭脳明晰にして思慮に富むことから行政長官を任されている。
書誌情報
巻数は、表紙では背景にローマ数字、背表紙ではローマ数字を○で囲んだ表記となっている。
ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』 エンターブレイン〈ビームコミックス〉、既刊1巻(2010年8月4日現在)。