デロリンマン/ジョージ秋山

『デロリンマン』 は、ジョージ秋山の漫画作品およびその主人公の名前である。1969年から1970年に週刊少年ジャンプにて連載（リメイク版と区別するため『元祖デロリンマン』とも呼ばれる）。1975年から1976年には週刊少年マガジンにてリメイク版として再連載された。不可思議な主人公にしたドタバタギャグ漫画の形をとりながら、正義とは何かと言う事を問いかけて来る作品である。

主人公三四郎は自殺未遂によって、顔面を般若のような奇怪な風貌になるまでに損傷し、精神にも異常をきたした（と周囲は思っているが、本当のところはどうなのか定かではない。物語の中でもこの辺りについては、曖昧にされている）。彼はデロリンマンと名乗り、人間を救う使命を帯びていると語る（本人は強い確信を持っているのだが、周囲の人間にはただの思い込みとしか映らない）。ボロを纏った姿（その下は赤褌一枚）で街を歩きつつ、自分は「神」であり、「魂のふるさと」であるという。妻のママ子も息子の四郎もデロリンマンが三四郎であると知らず、冷たくあしらう（デロリンマン自身は、自殺未遂以前の記憶を失ってはいないらしく、四郎に関わろうとするのだが。また、物語の中では過去の記憶が鮮明な物なのか、断片的な物なのかは曖昧にされており、明らかにはされない）。周囲の人々もデロリンマンを嫌い、嘲笑し、子供らも率先してデロリンマンを騙して遊ぶ。しかし、正義を担うデロリンマンは、何度踏みにじられても再び立ち上がり、「愛」と「正義」を説き続けるのだった。そんな、正義は愛に基づくと主張するデロリンマンに対して、「愚か者め！」と叱責し、力と外見こそ正義と主張する謎の仮面怪人オロカメン（その仮面はしばしば涙を流しているように見える）や、さらに悪の権化・紅トカゲも物語に加わり、悲喜劇は陰影を増していく。

オリジナル版とリメイク版では、特に、終盤の展開が大きく異なる。オリジナル版では、ペルリ星人（もちろん、黒船で来航したペリーのもじりである）という宇宙人が攻めてきて、人類が滅亡して終わる。ちなみに、ペルリ星人が侵略に使う巨大ロボットはザ・ムーンと言う名前であり、話の展開も後の作品である『ザ・ムーン』の最終話と似ている（ロボットのデザインは異なる）。この部分は、一度も単行本化されたことがない（原稿紛失説と焼き直して『ザ・ムーン』を書いたので没にした説がある）。

リメイク版では、ママ子と四郎がデロリンマンの正体が三四郎であることを知り、さらに四郎は交通事故にあったことからファシズムを賛美する異形の怪人ノーリターンと化してしまう。全てに決着を付ける決意をしたデロリンマンは、オロカメンとの最後の対決に臨む。そして、デロリンマンはオロカメンの仮面を叩き割り、勝利したかに思われたのだが、オロカメンの仮面の下に隠されていた正体は意外なものだった。

なお、オロカメンはロックバンド筋肉少女帯の1991年7月5日発売のシングル「踊るダメ人間」と同年7月21日発売のアルバム『断罪!断罪!また断罪!!』のジャケットに使用されている。 また、ジョージ秋山自身もオロカメンの意匠がいたく気に入ったのか、『ザ・ムーン』においてもバイクに乗った「連合正義軍」の若者たちに、彼と同じ仮面を被せている。