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パスポート・ブルー/石渡治

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著者: 石渡治
巻数: 12巻

石渡治の新刊
パスポート・ブルーの新刊

最新刊『パスポート・ブルー flight day 12


パスポート・ブルー』は石渡治の漫画作品。週刊少年サンデー1999年24号~2001年38号に連載。単行本は全12巻(小学館、少年サンデーコミックス)。

概要

主人公真上直進がH-IIロケットの打ち上げを見たのを契機に宇宙飛行士を目指す物語。連載時から見れば近未来にあたり、例えば作中に登場するNASDAは2003年にJAXAに改組されたり、実際にはプランだけで開発凍結となった日本版スペースシャトルHOPE-Xが実用段階に向け開発されている等、現実との相違点も生じている。

執筆時点で開発中・構想中だった現実の延長線上にある宇宙開発の他、少年犯罪や家庭・教育問題なども描き出している。

あらすじ

主人公の"まっすぐ"こと真上直進(まがみ まっすぐ)は、小学生のときに町工場を営む父親の関わるH-IIロケットの打ち上げを見たのを契機に、親友の青山空知(あおやま そらち)と共に宇宙飛行士を志す。

中森区では"がらくた町"と"あぶく町"にわかれ、大人も子供も対立していたがペットボトルロケットの製作を通し、子供たちは和解。中森小科学ロケットクラブが後のまっすぐの原点となる。

銘成学園中に進学するも、まっすぐは勉強について行けず退学も考え地元の公立中を見学。ゆとり教育の弊害で緩みきった状況に愕然とする。そんな中でも図書館でひとり勉強する観月さやかと出会い親しくなるが、彼女が性犯罪の被害に遭ってしまう。首謀者の小坂を追いつめたが、逆に襲撃を受けまっすぐは肩に怪我を負ってしまう。事件の収束後は責任を問われ、まっすぐは中学を退学。公立中に進学し「図書館の仙人」と呼ばれる程の猛勉強で、宇宙やロボットに関する知識を深める。

2007年、自由選択制度を利用し東北トップレベルの県立仙台青葉高校に進学。宇宙ロボット研究の権威・東北大学の内村教授の研究所に出入りするようになる。また、同じ高校の"真一"(まいち)こと一文字乙姫(いちもんじ おとひめ)と出会ったことで、小坂との因縁やさやかの死によるトラウマを乗り越える。中国の通信衛星が制御不能となり、あわや国際宇宙ステーションに衝突の危機を回避するのに貢献。当然東北大学に進学するものと思われていたが、まっすぐは遥か世界を見据えアメリカ留学を希望していた。一方の空知は母がアルコール中毒に陥り、家庭の事情からも防衛大学校を志望する。

2013年、まっすぐはアリゾナ州立大学"5"年生になり、パタゴニアで調査活動を行っていた。空知は自衛官、風子は世界的な女優と仲間たちもそれぞれの道を歩む。そんな折、大規模な宇宙嵐が生じ試験飛行中の民間宇宙飛行機・スターチャイルドがパタゴニアの山岳地帯に墜落。まっすぐは単独でパイロットの救出に成功し、宇宙開発関係者からの信頼を得る。一方この嵐の混乱に乗じ、インターネット上の金をかすめ取った犯人が小坂ではないかとの疑いが強まる。

2015年、いよいよNASDAが宇宙飛行士を募集した。まだ大学院生のまっすぐは実務3年間と言う規定を満たしておらず、あわや応募できない所だったがスペースカーゴ社でのアルバイトでのロボット開発を強引に実務と見なし応募。論争を招くも書類審査を突破する。翌2016年夏、試験が始まるがそこには空知に反目する自衛官・冠茂(かんむり しげる)の姿も在った。結局、まっすぐも空知も選ばれず、スペースカーゴ社で民間宇宙飛行士となるべく、また風子も一般搭乗飛行士に選ばれ、幼なじみ3人が揃って訓練を積む。

2020年、まずパイロットとして空知が真っ先に宇宙への夢を叶える。次に風子が宇宙ステーションに滞在し、観光客"コァン・マオ"を出迎える。宇宙ステーションと同調した、3機の通信衛星が不穏な様子を見せる中、"コァン・マオ"を犯人とした乗っ取り事件が発生する。計画的かつ大規模な犯行でステーション墜落までに飛び立てるのは、無人試験飛行の準備が整っていた日本のHOPE-Xのみ。真一やハルの捜査により事件の黒幕が小坂であることが発覚する。かくして、日本初の有人飛行と小坂との最後の対決が始まるが…

登場人物

原則として登場時系列順に紹介する。「○○編」とはすべて便宜上つけたもので、作品中に登場するものではない。

主要人物

真上直進(まがみまっすぐ)
愛称「まっすぐ」「ロケット」
小学校時代は下町・がらくた町一の馬鹿な悪ガキで有名だったが、宇宙飛行士になると決めてから猛勉強し、高い理数系の知識を有する人物になった。人を引きつける不思議な魅力の持ち主。大学・院時代にはロボット開発に打ち込み、アシスタントロボット・マイチの開発で成果をあげる。
銘成学園付属中学校→中森二中→仙台青葉高校→アリゾナ州立大学→アリゾナ州立大学大学院→スペースカーゴ
青山空知(あおやまそらち)
まっすぐと親友。山の手(通称:あぶく町)育ち。防衛大学校を首席で卒業。
銘成学園付属中学校→銘成学園付属高校→防衛大学校→航空自衛隊→スペースカーゴ
緑川風子(みどりかわ ふうこ)
愛称「プー子」
小学生の時からずっとまっすぐを想い続け、出しゃばりすぎることも無く、さりげなく近くにいる。UCLAで気象学を学び、日本の気象予報士の資格を持っているのも、その一つ。一方少女時代に蒲田のデパートでスカウトされ、"FU-KO"を名乗りタレントになる。やがてハリウッドでも活躍する世界的な女優になった。崖から落ちた際に言葉を失うも、"コアン・マオ"から無重力中で受けた暴力が原因か言語能力が回復する。
口癖は「プー」

主要人物の家族

真上家

祖父
町工場を営む。一見地味な仕事だが、ロケットの部品作りに参与していた。工場の閉鎖後は金属加工の技術指導のため、妻と中国へ渡る。中国共産党の要人とも親交がある。
舞(姉)
家出したあげく、離婚調停中の商社マンと不倫し出産。しかし

青山家

空知が幼い頃に死亡。旅客機のパイロットであった。
空知をやや過保護気味に育て、まっすぐと付き合うことにも反感を示すが後に理解。観月さやかの父と結婚を考える程の交際をするが、後に酒に溺れアルコール依存症になる。

緑川家

風子に嫉妬する程、夫を愛していたが死別。風子を手塩にかけて育て上げる。

小学校編

天野サトシ
代議士の息子。実は宇宙飛行士に強い憧れを持っていたが、家族はバラバラで夢を捨てかけていた。"あぶく町"のリーダー格であったが、"がらくた町"のまっすぐらと和解しペットボトルロケットを作ることで宇宙への夢を取り戻す。後に交通事故で両親を失い、小学校卒業と同時にアメリカの叔父の元に身を寄せる。空軍士官学校を経てNASAの宇宙飛行士になる。
波留
通称「ハルちゃん」
後に警察官になり、真一と結婚。
元木徹也
通称「もっくん」
"がらくた町"のリーダー。
ミツル
通称「みっちゃん」
"あぶく町"の実質的なリーダー。
伊東
まっすぐの父と同じ研究室。真上達をH2ロケット打ち上げを見せる為に種子島に招待した。まっすぐを宇宙飛行士にする契機を与えた人物である。
飯田義男
まっすぐの三つ年上。通称「イーヨ」
ロケット打ち上げを見に来たまっすぐと知り合う。モデルロケットの全国大会優勝者。
東京大学→ISAS(宇宙科学研究所)
飯田みちる
義男の妹。小学校時代から空知に想いを寄せている。高校時代の一時期吉本と付き合っていた。物語の最後にその想いは通じ、空知と結婚。鹿児島出身。
名古屋大学→名古屋大学大学院→四菱
英子
伊東の姪。真上に宇宙飛行士募集要項を手渡した人物。
森田先生
通称「ルーペ先生」
まっすぐに勉強の面白さを伝えた人物。後に三宅島に転勤となる。

コズミックカレッジ編

清水大河
愛称「トラ吉」「トラ」など
まっすぐより二つ年上。サッカー部のキャプテンかつ生徒会会長。長じて官僚となり、政治家とのコネも用い、政治サイドからまっすぐを支える。
銘成学園中学→銘成学園高校→東京大学→財務省→文部科学省研究開発局→政治家・菅野の私設秘書。菅野内閣成立の“フィクサー”
相沢満
通称「ザワ」
まっすぐより一つ年上。
栄光付属→大阪大学医学部→名古屋大学医学部大学院・宇宙医学研究センター
吉本栄一郎
通称「エーチン」
まっすぐより二つ年上。
海王中学→九州大学→NAL(航空宇宙技術研究所)
睦合 中(むつあい あたる)
暗算が得意で「暗算大王」の異名を取った。まっすぐに仙台青葉高校を勧めた。秋田出身。
雄物中学→仙台青葉高校→東北大学→東北大学大学院→NASDA(宇宙開発事業団)
土門隆生
宇宙飛行士(ミッション・スペシャリスト)。モデルはJAXA宇宙飛行士土井隆雄。

銘成学園編

ユリ
まっすぐの家庭教師をしていた。トップレベルの工業系大学卒業生で、就職浪人。”Guns”というバンドのボーカル。性犯罪に遭ったさやかに助言し支える。
観月さやか
空知と顔がそっくりな少女。菊池・小坂らによる被害を受ける。福島県会津若松市に転校するが、中学三年生の夏にトラックに轢かれ死亡。霊魂となって真一を通じ意思を伝え続ける。霊魂となった際に、自らを「死んじゃってから分かったが、まさか私がホントに宇宙人だったとは」と告白している。
小坂直也
まっすぐの一つ年上。
中学生の時点で、父の家庭内暴力により家庭が崩壊している。本編の黒幕的存在。本物の拳銃を所持するなど、中学生とは思えないような悪魔のような男。
のちに失踪し、空知と同じ顔に整形。自分と思想を共にする仲間を集め、サイバーテロ組織「TITAN(タイタン)」を結成し、悪事を働く。また、悪事を働いている自覚はなく、ゲームと称している。
空知と同じ顔に整形したのは、自身が今まで見た人間の中で一番他人に好かれていた人間だからとのこと。普段は柔和な笑顔を浮かべているが、逆上した時など、本性を表す際にはその顔は醜悪なまでに歪む。また空知やまっすぐたちの過去や経歴を徹底的なまでに調べ上げ、空知に成りすましていた(物語序盤で、宇宙にいるまっすぐと過去の回想をしている空知は小坂である)。
しかし、最後にはあまりにもやりすぎたため仲間は全員チャイニーズマフィアによって粛清、自身は過去に「エロブタ」と罵っていた菊池によって顔面を撃ち抜かれ射殺された。
菊池(きくいけ)ヒロシ
まっすぐの一つ年上。
デブなオタク少年。半ば小坂に利用されるようにして事件を起こす。銘成学園退学後、まっすぐとの誓い通りサッカーを続けているうちに筋肉質な体型となる。
さやかに加害したことを悔やみ続け、インターネット監視防衛組織を設立する。小坂に対し激しい憎しみを持つ。
終盤において死闘の末に、小坂を射殺しようとしたハルを止め、彼の代わりに小坂を射殺し、逮捕・投獄された。最終回で刑期を終え出所する。
辰野
通称「タッツ」。
清水大河の友人でサッカー部員。まっすぐや空知の2学年上の先輩。情報通。
東北大学での一件の様子から登場人物としては珍しい文系と思われる。
銘成学園中学→銘成学園高校→東京大学→新聞社

仙台青葉高校編

一文字乙姫(いちもんじおとひめ)
通称「真一文字」、「真一」(まいち)
理系オンチかつ重度のブラコンだった。高校時代はまっすぐと交際していたが、大学時代に別れる。後にキャリア組として警視庁に入庁。波留と仕事をともにする。
一文字甲矢
真一の兄。東北大学工学部。頭脳・容姿・運動神経を兼ね備え、真一をブラコンにした"元凶"。
みーこ
真一の親友。睦合中と付き合う。
れな
アメリカからの帰国子女。まっすぐに英語を教えている。
孫先生
仙台青葉高校教員。趣味として占星術を行う。まっすぐに中国語を教えている。
内村勝
東北大学教授で、宇宙ロボットの権威。
実在する東北大学教授内山勝がモデル。
若宮光一
宇宙飛行士。ロボットアームのスペシャリスト。モデルはJAXA宇宙飛行士若田光一。
星野アキラ
宇宙飛行士。モデルはJAXA宇宙飛行士星出彰彦と思われる。

アメリカ編

冠 茂(かんむり しげる)
大学校時代から空知を異常な程ライバル視している。張り合うためにNASDAの選抜試験を受け、不合格になる。空知に対し敵視し続け"コァン・マオ"(冠茂の中国語読み)を名乗り、宇宙ステーション乗っ取りの実行犯となるが、大気圏突入に失敗し死亡。最期の瞬間に小坂に利用されていたことを知る。
名前の由来は担当編集の冠茂からで、この編集者は担当漫画家に自分を登場させるようごり押しすることでも有名。
そのため、サンデーの他作品でもこの名前の登場人物が存在する。
また、彼の最期はクラウン(機動戦士ガンダム)に因む(クラウン→冠)。
剣崎
空知の教官。
アッちゃん
空知の同僚。
角村奈保子
NASDAの宇宙飛行士。登場時はISSに滞在。モデルはJAXAの宇宙飛行士角野(現・山崎)直子。
ジェーン
まっすぐと同じ研究生。
ジェローム
ロジャー
スペースカーゴ社パイロット。
菅野
東京工業大学出身の政治家。2013年に総務大臣、2025年に内閣総理大臣。理系出身であり、宇宙嵐の危機を当時の内閣中で唯一理解していた。
モデルは菅直人。

宇宙飛行士編

デニーズ教授
まっすぐの大学院での教授
能利衛(のうり まもる)
元宇宙飛行士でNASDAの要職にある。
モデルは毛利衛。
月島宙美(つきしま ひろみ)
班は違うが、真上と同じコズミックカレッジ参加者。
如月ありさ
日本の宇宙飛行士試験合格者。日本屈指の宇宙構造物のスペシャリスト。既婚者。

登場する組織・企業など

スペース・カーゴ社

その他

  • 宇宙飛行士や宇宙研究機関など多くの関係者にインタビューをして作成されている。例えば、仙台青葉高校は宮城県仙台第二高等学校をモデルにしている。
  • 作中の世界的サイバーテロ組織TITAN(タイタン)のメッセージ画面には、同時期にサンデーで連載されていた久米田康治作「かってに改蔵」の坪内地丹(つぼうち ちたん)が登場している。(謝辞にも記載されている)

関連項目

  • NASA
  • H-IIロケット
  • ISAS
  • NAL
  • 日本モデルロケット協会
  • 日本ペットボトルクラフト協会
  • 国立天文台
  • 筑波宇宙センター
  • 角田ロケット開発センター