ビッグX/手塚治虫
著者: 手塚治虫
巻数: 3巻
最新刊『ビッグX 3』
『ビッグX』(びっぐエックス)は、1963年から1966年まで『少年ブック』に連載された手塚治虫の漫画作品、およびそれを原作とするテレビアニメである。また「ビッグX」は、薬品又はエネルギーの名称であると共に、それにより変身した主人公を指す場合もある。
あらすじ
第二次世界大戦時、無敵の軍隊を作ろうともくろむナチス・ドイツの下で、生物を鋼鉄のように強靭でしかも巨大化させる薬品「ビッグX」の開発を行っていた日本人の朝雲(あさぐも)博士とドイツ人のエンゲル博士は、「ビッグX」の軍事利用を恐れ、その秘密を守るために「ビッグX」の製法を記したカードを息子のしげるの体内に埋込んだ。両博士は射殺されたが、20年後、朝雲博士の孫・昭は、「ビッグX」の製法を狙う秘密結社ナチス同盟(指導者はエンゲル博士の孫のハンス・エンゲル)に対し、自ら「ビッグX」で巨大化して立ち向う。
アニメ版
1964年8月3日 - 1965年9月27日にTBS系で放映された。東京ムービーの初制作作品である。
提供スポンサーは花王石鹸(現・花王)一社。そのためオープニングのラストでは、朝雲昭(声:太田淑子)が「この番組を提供するのは、僕の大好きな月のマークの花王石鹸です。」とコメントしている。
放送時間は毎週月曜夜7時 - 7時30分だが、この枠でアニメが放送されるのは、今の所この番組が最初で最後。また花王一社提供のアニメも、今の所最初で最後。
当初、ピープロに企画が持ち込まれたが、既に制作中のテレビアニメだけで限界だったため、社内の反対で話が流れたうしおそうじ『手塚治虫とボク』草思社、2007年、p244-p248。このため、TBSでテレビの人形劇を制作していた藤岡豊にアニメの制作プロダクションを設立させて、TBSの社屋の4階を間借りさせ『ビッグX』を制作させた。東京ムービーは『ビッグX』を制作するために設立させたプロダクションであり、会社登記も第1話が放送された後であった「大きいことはいいことだの60年代 『ビッグX』はビッグなヒーローとして誕生した!!」『アニメージュ』1981年9月号、徳間書店、p59-p66。。
原作では、主人公の朝雲昭はビッグXの薬液をシャープペンシル型(「万年筆型」というのは間違い。当時のシャープペンシルは今より高価だった)の注射器で自ら打って変身した(後に経口薬に変更)。アニメ版でのビッグXはシャープペンシル型の装置から出る光線状のエネルギーで、それを昭が胸に当てて、目盛1で鋼鉄の体に、目盛2で20倍の巨体に変身するという設定である。言わば糖尿病治療のペン型インスリン注射器の先駆け的なアイテムである。
少年ブック連載の漫画版では、ビッグX(朝雲昭)は、超能力少女ニーナらと共にナチス同盟と戦う連続物語となっていたが、アニメ版は1話完結で、多くはナチス同盟と無関係の敵と戦う話になっている。また宿敵ハンスは、原作では中盤よりナチス同盟の兵器であるロボット・V3号に脳を移し変えるのだが、アニメ版は最後の最後まで人間であり、特に最終回では、科学者である実妹のイリーナの制止を振り切って、専用円盤でビッグXと戦い、最後は円盤と自爆して果て、墓に埋められる最後だった。
2006年より第1話及び40話 - 最終話(第59話)まで収録したDVD-BOXが発売されたが、第2話 - 39話までは未収録。その理由はフィルムの紛失が原因とされている。
なお、これより前に発売された「東京ムービーアニメ主題歌大全集 第1巻」(ビデオソフト、LD)では、第2期ED(プラス第41話「雪男の泉」の予告編)はそのまま収録されているが、OPは1999年に発売されたビデオソフト&LD用に作られた、本編の再編集版が収録されている(そのため、提供クレジットシーンは無い)。オリジナルOP及び第1期EDは、DVD版まで待たなければならなかった。
スタッフ
- 原作:手塚治虫
- 脚本:角田次朗、村野守美、広瀬正、山野浩一、山本グループ ほか
- 演出・絵コンテ:朝岡隆志、清水浩二、岡本光輝、出崎統、木下蓮三 ほか
- 動画監督:浜本征三
- 作画:鈴木英二、木下蓮三、堀口忠彦、井上晴美、中村やすお、小鷹文雄、藤井達朗、橋本吉雄、谷口守泰ほか
- 美術:半藤克美、椋尾篁ほか
- 背景:大塚綾子ほか
- 撮影指導:高橋澄夫
- 撮影:杉本伸一
- トレス・彩色:田中文世ほか
- 録音監督:清水浩二
- 録音制作:中村武雄
- 録音進行:武田晴道
- (録音)協力:東京プロモーション、東京人形シネマ
- 製作:稲田伸生
- 進行:石山卓也、花井稔ほか
- (制作)協力:東京T.V.Fプロダクション、アートフレッシュほか
- 編集:佐々木喜美子
- 音楽:冨田勲
- 音響効果:斎藤大士
- 主題歌:「ビッグX」作詞:谷川俊太郎 作曲:冨田勲 歌:上高田小学校)
- 制作:藤岡豊、久保田仁司、郷田三朗
- 制作:東京ムービー、TBS
声の出演
- 朝雲昭:太田淑子 - 主人公。
- ビッグX:島田彰 - 主人公が「ビッグX」を使って巨大化した時。
- 花丸博士:永井一郎 - 昭の庇護者。
- ニーナ・ベルトン:白石冬美 - ナチス同盟に捕まっていた超能力少女。
- ハンス・エンゲル:山本圭子 - ナチス同盟の首領。冷酷非情な少年。
- 朝雲しげる博士:仲野宏 - 昭の父。
- 昭の母:渡辺知子
山田康雄、 納谷悟朗、 村越伊知郎、 千葉耕市、 清川元夢、 西沢由郎、 田の中勇、 森山周一郎、 野島昭生、 立壁和也、 二見忠男ほか
サブタイトル
- ビッグX登場
- V3号の襲撃
- 要塞脱出
- 砂漠の対決
- ビッグXの危機
- どれい狩
- 死の湖の対決
- 黒いオーロラ
- ライオン帝国
- 悪魔の太陽
- 海の墓場
- カイザー0号との対決
- 仮面の男
- 毒ガス列車
- 大怪鳥ヒンメル
- 宇宙人スナルリ
- 無重力線
- 死火山の怪
- スペードバイキング
- 決戦20対21
- 走れビッグX
- 狂った大噴水
- 幻の海賊船
- ロボット撃破指令
- キングの電送作戦
- 蟻地獄作戦
- 空中都市
- 大竜神対ビッグX
- 大昔ミサイル
- あの耳を狙え
- ゴム人間の反乱
- 悲しき昆虫博士
- 真空人間サルベージ
- 大都市全滅作戦
- ロボット城
- 火の馬
- 海底秘密研究所
- 宇宙の虎
- 軽くて重い男
- 虹の国から
- 雪男の泉
- 銀河に向って
- パール博士の発明
- エンゼル星よりの使者
- ニーナの危機
- セントローザの秘密
- 宇宙ランドの秘密
- 大氷原の決戦
- 大くらげ出現
- グレート3
- 地球第五氷河期
- サマリンガの魔法使い
- 盗まれた実験
- 人面獣ゾンビー
- サンゴ礁の奇跡
- ハンスの復讐
- アマゾンの黒雲
- 月世界の対決
- 最後の決戦
単行本
- サンデーコミックス『ビッグX(秋田書店)』全4巻
- 手塚治虫漫画全集『ビッグX(講談社)』全4巻
- 手塚治虫名作集『ビッグX(ホーム社)』全3巻
- 集英社文庫手塚治虫名作集『ビッグX(集英社)』全3巻
- 秋田文庫『ビッグX(秋田書店)』全3巻
脚注