HOME > コミック > ブラックジャックネオ > 1の詳細

ブラックジャックネオ 1

共有

ブラック・ジャック』(BLACK JACK)は、手塚治虫による日本の漫画作品。『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)にて1973年11月19日号から1978年9月18日号にかけて連載したのち、1979年1月15日号から1983年10月14日号にかけて不定期連載された。全242話。略称はB・J

概要

無免許ではあるものの、唯一無二の神業ともいえるテクニックにより世界中に名を知られる、天才外科医ブラック・ジャックを主人公に、「医療と生命」をテーマにそれぞれ据えた医療漫画である。「漫画家生活30周年記念作品」「手塚治虫ワンマン劇場」という煽りで、手塚治虫のスター・システムによるオールスター出演がウリの作品であり、短期間で終了する予定だった(後述)が、定期不定期合わせて10年近く続く長期連載作となり、単行本の発行部数は手塚の他作品を大きく引き離す、まさに代表作となった。

読み切り連載形式になったのは、編集長の壁村耐三の編集方針であり、当時の『週刊少年チャンピオン』の連載作品すべてに適用されていた「週刊少年チャンピオン突然の黄金期! 元編集長壁村耐三氏インタビュー」『別冊宝島288 70年代マンガ大百科 こんな名作・快作・珍作があったのか!』宝島社、1996年、p122 - p129が、読み切りでないと手塚が流す回をやることから、それを防ぐためという話もあった武居俊樹『赤塚不二夫のことを書いたのだ!!』文藝春秋、2005年、p223 - p224

『週刊少年マガジン』で連載した『三つ目がとおる』とともに、手塚治虫の少年漫画における1970年代の最大にして、少年漫画家としては最後のヒット作である呉智英「『ブラック・ジャック』科学もヒューマニズムも信じない神の眼差し」『朝日ジャーナル臨時増刊 手塚治虫の世界』朝日新聞社、1989年。また、本作品によって現代まで続く「医療マンガ」のジャンルが形成されるきっかけになった金字塔でもある夏目房之介「不死鳥のごとく復活した手塚治虫ー」『別冊宝島288 70年代マンガ大百科 こんな名作・快作・珍作があったのか!』宝島社、1996年、p74 - p76

連載の推移

1960年代終盤の劇画ブームや『週刊少年ジャンプ』の新人発掘路線の影響をまともにうけた手塚治虫は、ヒューマニズムを描く古い漫画家というレッテルが貼られ、得意にしていた少年漫画の分野でヒット作品を出せなくなっていた。手塚本人が言う「冬の時代」(1968年-1973年)であり、少年誌での連載が激減し、読み切りが増加。少年誌において実験作を執筆したり、青年誌に進出するなどして方向性を模索するが、1970年には青少年向けの性教育を意図して執筆した『やけっぱちのマリア』が糾弾を受け、1973年には虫プロ商事と虫プロダクションが倒産し、まさにどん底にいた。

そんな中『週刊少年チャンピオン』編集部は、手塚に漫画家生活30周年記念作品(ただし、1973年当時手塚はデビュー28年目である)として「かつての手塚漫画のキャラクターが全部出る作品」の企画を依頼する。編集部内で『週刊少年チャンピオン』編集長の壁村耐三が担当編集者の岡本三司に「死に水をとろうか」と相談をもちかけた くらいの状況に追い込まれていた手塚はこれを了承する。手塚は以前に『鉄腕アトム』「ひょうたんなまず危機一発」(1965年)において同様のスターシステムでのオールスターを執筆していた。

間もなく、かつての手塚漫画のキャラクターが次々にブラックジャックという外科医にかかるという大体のプロットが出来上がる。ブラックジャックというキャラクターには医学生だった頃の手塚自身が反映され、また劇画ブームに対抗する(あるいは取り込む)意味でアウトサイダー的な存在として描かれた。『手塚治虫漫画40年』(秋田書店)によると「手塚漫画は正義の味方的な主人公が多いので、あえて、アウトサイダーな男の生き様を子どもにもわかるように描こうと考えた」。初期構想ではブラックジャックはあくまで狂言回しであり、メインはオールスターの方にあった。連載が安定化した後も時々ブラックジャックが狂言回しになるのはこのためである。

担当編集者の岡本によると「最初の予定では、4・5回連載して最後は無人島でエンディング…」「一種のバラエティ番組的なニギヤカシ作品のはずだった」ことからあまりやる気が出なく、手塚にタイトルが決まったか聞いた際にブラックジャックと言われ「先生、サブタイトルじゃなく本タイトルを教えてくださいよ」と失言するくらいのゆるい扱いでありBLACK JACK 300STARS' Encyclopedia p.298、いざ連載が始まっても、巻頭カラーもなく、地味な扱いが続いた。

連載開始時人気は低くほぼ最下位であり、担当編集者の岡本は編集長の壁村から「どうする?」と聞かれ困ったというが、その後、じりじりと順位を上げ、50話「めぐり会い」で2位に浮上、以降軌道に乗ったBLACK JACK 300STARS' Encyclopedia p.298

なお、『週刊少年チャンピオン』編集長の壁村耐三は反応がなければ3回で辞める約束だったともいい、手塚自らが「これが最後」と持ち込んだ企画だったとも証言「週刊少年チャンピオン突然の黄金期! 元編集長壁村耐三氏インタビュー」『別冊宝島288 70年代マンガ大百科 こんな名作・快作・珍作があったのか!』宝島社、1996年、p125 - p126しており、編集者と編集長という当事者同士の間で話が全く食い違っている。なお秋田書店自体は前述の『手塚治虫漫画40年』で、編集部が企画を持ち込んだ説を取っている。

当時の『ドカベン』『がきデカ』『マカロニほうれん荘』といった超ヒット作には及ばなかったものの、10年間にわたり安定して柱となり、『週刊少年チャンピオン』の黄金時代を支えた西村繁男『まんが編集術』白夜書房、1999年、p346 - 347。「人生という名のSL」で定期連載は終了するが、その後も『週刊少年チャンピオン』誌上で散発的に13本発表された(最終作品は「オペの順番」)。

手塚の息子である手塚眞によると、誰にも立ち入りを許さなかった手塚の仕事部屋に、担当編集者が無断で入ったことに怒った手塚が連載終了を宣言したという手塚眞『天才の息子 ベレー帽をとった手塚治虫』ソニー・マガジンズ、2003年、p136。これとは別の理由として、ロボトミーの描写に関する抗議事件の後、医学的な整合性について指摘を受けて描きづらくなったことを生前の手塚が書き残している『手塚治虫ファンクラブ会報』1号、1979年7月(安藤健二『封印作品の謎』太田出版、2004年、p207 - p208)

単行本は秋田書店の少年チャンピオン・コミックスにまとめられたのが最初で、その後も愛蔵版や手塚治虫漫画全集にも収められ、文庫版はミリオンセラーを達成し藤原邦夫『出版幻想論』太田出版、1994年、p169、1994年から始まった1990年代のマンガ文庫のブームの火付け役になった竹内オサム『戦後マンガ50年史』筑摩書房、1995年、p173安藤健二『封印作品の謎』太田出版、2004年、p199 - p200。単行本は新書版・文庫版・ハードカバー等を含めた発行部数が日本国内で4564万部2007年8月現在。『毎日新聞』2007年8月20日夕刊、全世界で1億7600万部に達している2000年度末時点。全協・出版科学研究所「出版月報」

アメリカでは1995年からVIZ社が発行した月刊漫画雑誌『MANGA VISION』に連載された『萌えるアメリカ 米国人はいかにしてMANGAを読むようになったか』日経BP社、2006年、p132

医学描写

本作には、医学的リアリティと大胆なフィクションが並存しているが、これは医学的事実よりも物語性を優先した、手塚の作劇術の一環である。異星人やミイラ、幽霊、感情を持つコンピュータを手術するなどという突飛な設定の話も存在する。架空の病気も登場したほか、ブラックジャックやピノコの医学的設定も現代の医療技術をも超越している。ブラックジャックがスターシステムで登場する別作品『ミッドナイト』では、ブラックジャック本人に人間の脳交換手術について「その様な事は漫画だから可能だ」と言わせている。手塚治虫自らが語る所によると、当時東大医学部の学生から嘘を書くなと抗議の手紙をもらったとの事である。それに対して手塚は、東大生ともあろうものが、漫画に嘘があることすら知らないのかとコメントしている講談社手塚治虫漫画全集『ブラック・ジャック』18巻あとがき

手塚は医師免許を持ってはいたが、医学的知識は昭和20年代(1945年から1954年)にとどまっており、外科医としての臨床経験がほとんどなかった手塚眞『天才の息子 ベレー帽をとった手塚治虫』ソニー・マガジンズ、2003年、p218。ブラックジャックの連載に当たり、医学書を買い込み独学したり、医療関係者に取材してはいたものの、劇中で治療困難な症例として扱われているものが、実際には連載当時の医療技術でも治療可能な症例であるというミスB・J症例検討会『ブラック・ジャック・ザ・カルテ』海拓社、2001年、p32 - p35, p48 - p51およびp58 - p61や、医学用語のミス安藤健二『封印作品の謎』太田出版、2004年、p165 - p166を多発していた。中でもロボトミーに関する描写では糾弾を受け、新聞に謝罪文を掲載、連載中止の話まで出たという安藤健二『封印作品の謎』太田出版、2004年、p176 - p182マンガと差別 - 『マンガ環境・現代風俗〈’93〉』所収

同時期に発表された医療漫画では、執筆時点での最新の知識を取り入れた『夜光虫』(柿沼宏・篠原とおる)なども存在するが、手塚は自らの作劇術を崩さなかった。手塚は「ブラック・ジャックは医療技術の紹介のために描いたのではなく、医師は患者に延命治療を行なうことが使命なのか、患者を延命させることでその患者を幸福にできるのか、などという医師のジレンマを描いた」としている手塚治虫『ガラスの地球を救え』光文社文庫、1996年、p89 - p94

== 各話タイトル

==

第28話『指』は第227話『刻印』として改稿された(扉絵もそのまま流用だが背景にビルが描き足されている)ため、完全な状態での原稿は残っていない。また、第180話『土砂降り』は第179話『メス』の続編であり、単行本では『土砂降り』として1つにまとめられている。唯一、第113話の後で増刊号に掲載された『U-18は知っていた』だけはナンバリングされていない。連載終了後の読切全13話も雑誌掲載時はナンバリングされていなかったが、連載に続けてのカウントが通例となっている。第9話・第67話・第224話は2回、第238話は4回にわたり雑誌に掲載されて完結した話であり、雑誌発表時の全扉絵が完全収録されている書籍は秋田文庫『「BLACK JACK」IllustrationMuseum』(2001年/秋田書店)のみである。

第188話『肩書き』内の台詞に登場する「J大学の鈴木教授」は実在の人物で、マンガの執筆当時に順天堂大学医学部胸部外科教授だった鈴木章夫であるasahi.com(朝日新聞社):ブラックジャック列伝:4 「宿命のライバル」が競い合う心臓手術 - ブラックジャック列伝 - アピタル(医療・健康)

単行本

  1. 少年チャンピオン・コミックス「ブラック・ジャック」全25巻(1974年-1995年/秋田書店)★8(7) ※新書版
  2. 手塚治虫漫画全集「ブラック・ジャック」全22巻+「鉄腕アトム」別巻1(1977年-1983年、1995年-1996年/講談社)★22 ※全集版
  3. 豪華版「ブラック・ジャック」全17巻+オールカラー版(1987年-2004年/秋田書店)★11 ※豪華版、愛蔵版
  4. 秋田文庫「BLACK JACK」全17巻+TreasureBook(1993年-2003年、2008年/秋田書店)★8 ※文庫版
  5. 手塚治虫漫画全集DX版「ブラック・ジャック」全22巻(2003年-2005年/講談社)★23 ※DX版
  6. 少年チャンピオン・コミックス・スペシャル「ブラック・ジャック」全17巻(2004年-2005年/秋田書店)★11 ※新装版
  7. 手塚治虫文庫全集「ブラック・ジャック」全12巻+「鉄腕アトム別巻」(2010年/講談社)★9 ※文庫全集版
  8. 「ブラック・ジャック大全集」全15巻(2012年-2013年/復刊ドットコム)★3 ※大全集版

★の後ろの数字は未収録話の数、※の後ろは愛称。単行本「1」から「8」の内、中心となる「1」「2」「4」「7」の各収録話は上の「各話タイトル」項を参照のこと。その他収録話を書くと、「3」「6」は「4」の秋田文庫「BLACK JACK」全17巻と同じ、「5」は「2」の手塚治虫漫画全集「ブラック・ジャック」全22巻と同じ。「6」・「7」・「8」は概ね雑誌発表時の順番通りに収録されている「8」は他の単行本同様。「指」・「植物人間」・「快楽の座」は未収録だが、これ以外の全エピソードを収録(第180話「土砂降り」は原典の第179話「メス」を統合する形で収録)し、「大全集」の名に相応しい歴代単行本中最大数のエピソードを収録している。なお「8」はチャンピオンと同じB5判フルサイズ装丁に全てのカラーページ(4色・2色)をフルカラー再現。ほか、連載時の扉絵を完全収録し予告カットや各種資料類も掲載。

ブラックジャックの容姿や手術シーンの描写などが影響してか、単行本化の際、少年チャンピオンコミックス8巻までは“恐怖コミックス”に分類されていたが、9巻以降は“ヒューマンコミックス”に改められた。

単行本収録の際には差別用語など表現上の問題で一部セリフの改変がある。とくに第46話・第67話・第153話の設定変更は、その印象を大きく変える。2011年発行の冊子「まんだらけZENBU」第51号には、初出と「2」に収録のものとの差異が掲載されている(第67話と第85話を除く)。「1」の第4巻に初版から1977年頃の版まで収録されていた第41話『植物人間』は、のちに第70話『からだが石に…』に差し替えられた。

その『植物人間』や第58話『快楽の座』の単行本収録が難しくなったのは、精神外科手術を取り扱っていたことから精神科医や精神外科手術反対の市民団体からのクレームがあったためとみられる。なお、実際にクレームがついたのは1977年、第153話『ある監督の記録』であった。この話では、脳性麻痺の患者の脳に電気刺激を与える手術に「ロボトミー」の語を使用しており、実際のロボトミー手術とは異なる描写が「ロボトミーの美化」であるとの抗議を脳性麻痺障害者団体とロボトミー被害者支援団体から受けた。これに対し秋田書店と手塚治虫は抗議グループとの話し合いで謝罪し、更に謝罪文を全国紙5紙に掲載した(1977年2月10日)。また、後に第153話を『フィルムは二つあった』と改題して単行本に収録する際には、脳手術の場面を別の病気(デルマトミオージス)の手術に描き換えた。第41話と第58話に関しては直接抗議があったわけではないが、手術内容を変えても話が成立する第153話と違い、脳手術そのものをテーマとしていたために描き替えもできず、単行本収録を中止したのではないかとされる詳細な始末は安藤健二『封印作品の謎 ウルトラセブンからブラック・ジャックまで』(大和書房だいわ文庫、2007年) ISBN 978-4-479-30099-1 第四章 禁じられたオペ―『ブラック・ジャック』第四一話「植物人間」・第五八話「快楽の座」 p201 - p264 を参照する。

これ以外にコンビニ売りの単行本として秋田書店からトップコミックスとトップコミックスワイドのシリーズが刊行されており、第209話『落下物』の単行本初収録はトップコミックス「ブラック・ジャック 医師の使命編」(2005年)、第171話『壁』もヤングチャンピオン増刊「ブラック・ジャック スペシャル」(2005年)に袋とじ掲載された後、トップコミックスワイド「ブラック・ジャック 死にゆくものへの祈り編」(2006年)に単行本初収録された。

初出以来一度も書籍に再収録されていないものは第28話『指』(連載時に第227話『刻印』として改稿)と第58話『快楽の座』(連載時オールカラー掲載)のみで、必然的にこれら初出掲載誌の古書価格は非常に高騰しているが、ともに国会図書館には所蔵があるため閲覧は可能であり、国際児童文学館をはじめとした図書館では遠隔複写サービスを行っている。

年表

  • 1973年(昭和48年)11月:『週刊少年チャンピオン』11月19日号(48号)にて連載開始。
  • 1975年(昭和50年)5月12日:『ブラック・ジャック』で第4回日本漫画家協会賞特別優秀賞受賞。
  • 1977年(昭和52年)7月22日:『ブラック・ジャック』『三つ目がとおる』で第1回講談社漫画賞受賞。
  • 1978年(昭和53年)9月:9月18日号(39号)にて連載終了(全229話+増刊号掲載1話)。
  • 1979年(昭和54年)1月:1月15日号(3号)~1983年10月14日号(44号)まで不定期で新作読切を13話掲載。
  • 1993年(平成5年)7月20日:秋田書店より秋田文庫『BLACK JACK』(1~12巻)が刊行される。
  • 1993年(平成5年):OVA『ブラック・ジャック』が2000年まで発売される。
  • 1996年(平成8年)11月30日:アニメ映画『BLACKJACK(ブラックジャック劇場版)』が全国松竹系で公開。
  • 1996年(平成8年):オリジナルビデオ『ブラック・ジャック』が3巻まで発売される。
  • 2000年(平成12年)3月31日:スペシャルドラマ『ブラック・ジャック』TBS系にて放映。
  • 2000年(平成12年)8月26日:スペシャルドラマ『ブラック・ジャックII』TBS系にて放映。
  • 2000年(平成12年)9月29日:スペシャルドラマ『ブラック・ジャックIII』TBS系にて放映。
  • 2003年(平成15年)12月22日:テレビスペシャルアニメ『ブラック・ジャック2時間スペシャル』よみうりテレビ・日本テレビ系にて放映。
  • 2004年(平成16年)10月11日:テレビアニメ『ブラック・ジャック』よみうりテレビ・日本テレビ系にて放送開始。
  • 2005年(平成17年)12月17日:アニメ映画『ブラック・ジャック ふたりの黒い医者』が全国東宝系で公開。
  • 2006年(平成18年)4月10日:テレビアニメブラック・ジャック』の続編『ブラック・ジャック21』よみうりテレビ・日本テレビ系にて放送開始(同年9月に終了)。
  • 2006年(平成18年)11月9日:『ブラック・ジャック』のゲーム版『ブラック・ジャック 火の鳥編』がニンテンドーDS対応ゲームソフトとしてセガ(後のセガゲームス)から発売。
  • 2011年(平成23年)12月16日:ブラック・ジャック (OVA)の新作エピソードが約11年ぶりに発売される。出崎統監督の遺作とされる。

主な登場人物

本作の謎

BJが無免許である理由

アニメ版(『ブラック・ジャック21』)では外科部長の決定に反し、病院で勝手に手術を行ったため医師免許が没収されたとあった。ただし手術自体は成功している。

ブラックジャックは無免許ではあるが、正規の医科大学で教育を受けており、医大時代からの友人の手塚、医大時代の恩師の山田野、医局員時代の同僚の如月めぐみなどが登場していることから、ブラックジャックは医大を卒業してインターンになっていたと思われる(1967年以前であるならインターンは医師免許を持っておらず、インターンを途中でやめた場合は医師国家試験の受験資格がなくなり医師免許を取得できなくなるため、如月めぐみの手術を行ったことでインターンを辞めたとすれば説明がつく)。

執筆の背景には、『少年チャンピオン』編集部から劇画っぽさを要求された手塚が、黒マントや初期のニヒルな性格、残酷描写など劇画の影響を受けたキャラクター造形にしたことが指摘されている。かつての貸本劇画には黒マントをまとった殺し屋が定番であった。BJがアウトローになった理由は劇画を取り込んだからだというのである夏目房之介「変人ブラックジャックの解剖」『笑う長嶋』太田出版、1998年、p82 - p85

手塚は主人公の名の由来として、ブラックジャックとは海賊の使う骸骨の旗を意味し、メスで荒っぽく切り刻む姿を海賊に見立てた、とコミックスの見返しでコメントしている。これに着目し、勅許状である私掠免許を持たない海賊を、同じく国家資格である医師免許を持たない闇医師に見立てたという説も存在する。

しかし、長期連載になるに従い、無免許であることに理由が必要となり、以下の様な理由が付け加えられた。

肩書きやルールに価値を見出さない
作中には「私はノーベル賞を取った人間なんかに興味はないんでね」「私は肩書きというものが苦手でね」「こんな立派な病院では、モグリの医者が作った資料なんか役に立ちませんよ」といった台詞が散見される。
法外な治療費の請求を続けるため
作中で一度、 医師連盟から、連盟に加盟し医師免許を取得し、治療費として決められた金額を請求するように勧告されているが、これを拒否している現実には保険診療ならば規定された料金しか請求できないが、自由診療(保険外診療)のみで医療を行うならば自由に治療費を設定することも可能である
BJがあちこちで患者を脅迫して、世界医師会連盟に苦情が殺到しているため
『獅子面病』では、「BJがあちこちで患者を脅迫して、世界医師会連盟に苦情が殺到しているので、医師免許を与えることは出来ない」と説明されているが、『報復』ではBJを散々罵倒していた日本医師会連盟会長自らが自身の息子の手術の依頼をするため、BJに免許状を手渡している実際に医師免許を発行するのは厚生大臣(後の厚生労働大臣)。ただし、その直後、BJは渡された免許状を破り捨てているため、BJはその後も無免許のままであった。
医師免許取得のための面接に出席できなかった
『ピノコ還る』で、特別に医師免許を交付される事になったが、失踪したピノコの捜索を優先したため、話は流れてしまった。BJは大変落胆しており、本心では正規の医師に憧れていたことがうかがえる。
ただしこの時の医師免許は「世界医師連盟」からのものであり、日本医師連盟との軋轢が否定されたものではない。
爆発事故のトラウマのため
少年時代に遭った不発弾の爆発事故の際気胸を発症し、その苦痛がトラウマとなって同症の手術の際、メスを持つ手が痙攣を起こすということがあった。手塚にそれを指摘された際、当人は「私がまともな免許が取れない理由が分かっただろう!」と発言している。ただし、この症状は山田野教授の身を挺した治療により治っている。
団体に所属することを嫌う一匹狼的気質のため
『おばあちゃん』にて甚大医師を名医、偏屈、一匹狼、がめつい所等を自分と似ていると評し、『一ひきだけの丘』では自然保護を行っていることを聞いた小学生時代の恩師が自分の所属する自然保護団体に寄付を懇願された際に「私は団体とか運動にかかわりたくないタチでね」との発言がある。
恩師、本間医師に対する医師会の扱いのため
『本間血腫』にて、BJの恩師・本間丈太郎医師が患者を治すための新治療法を試し、そのことが生体実験ではないかとの非難を受け医師界を追放されたエピソードが語られる。このことから、BJは日本医師連盟に対し非難感情を持っていることがうかがわれる。

高額の手術料金

高額の手術料金を要求するのは、無免許であることと併せて作品を面白くするための設定と思われる。BJという名前から連想されるとおり、異端児であるが独自の倫理観を持つという主人公の二面性を、この2点で表現しているといえる。

義賊のように「金持ちには高額な治療費を突きつけるが貧しい人には治療費を取らない」といったことはなく、貧しい人が依頼者であっても容赦なく高額な治療費を突きつける。要求する手術料は、相手の支払い能力の限界を呈示することが多く、その額は数百万円から100億円以上にまで及び、ほとんどの場合は元患者(金持ちの場合が多い)が債務を負うことになる(もちろん、支払いを拒む者もいる)。

しかし、特に依頼者が貧乏な場合には「●月×日までに」といった支払期限を設けることはほとんどない。その理由は作中に語られることはないが、患者の治療への意思の強さを試すためとみられている筒井康隆「ブラックジャック1〜7」『みだれ撃ち涜書ノート』集英社集英社文庫、1982年、p48 - p50。また、依頼者が「一生かかってでも」と言い、全部支払おうと努力する姿に「それが聞きたかった」とつぶやいたり、かつて瀕死の重傷から過酷なリハビリを経て復帰を目指していた当時の自分を重ね、普段は隠されている人間の精神的な強さ(底力)を信じたい気持ちが表れているともいえる。

その一方、稀ではあるが「1000円に負けてやろう」と言って治療代をたった1000円としたり、「手術料の代わり」としておもちゃの風車を受け取るなど、治療費をタダ同然にしたこともある「タイムアウト」にて。、高額の手術代を払えない立場の者に対して免除する場合が多いが、本人が慈善行為で免除すると明言したことは一度もなく、あくまで気まぐれという態度を取っている。端的な例としては、3,000万円の小切手を紛失した患者の夫に対し、手術代の代わりとして無茶な内容の契約書を作らせたが、その後にわざと契約書を落として警察に遺失物として届出したことがあるこの時は、紛失した小切手が見つかってしまうというオチで終わっている。ただし、オチの時点ではBJが警察でその話を聞いて「うらやましいですなあその人」と返すところで終わっている。。また、他の医者が「自分以外にこの手術は出来ない」と豪語し、BJの医者としてのプライドを傷つけたりした際にも、挑発相手に対する返礼として無料で難手術を行ったりもしている。そのほか、一度高額の手術料を受け取ったあと、全額またはほとんどの額を依頼者に返したこともある。

『未知への挑戦』では地球人から攻撃を受けて地球に不時着した宇宙人を手術し、高額の手術料を請求したが、宇宙人に「紙幣」の概念がうまく伝わらなかったため、100ドル札を見本として見せ、それを2000枚(20万ドル)持ってくるよう要求したところ、その紙幣をそっくりそのままコピーされてしまい、全て同じ番号で汚れやシワまでも全く同じ紙幣だったのを気が付かずに手術料として受け取った後、紙幣偽造の疑いをかけられて投獄されてしまう。紙幣を知らず悪気のない宇宙人の仕業だけに、これにはBJも苦笑するしかなかった。

義理堅い性格であり、恩を受けた際にその謝礼として手術をする場合もある。『オオカミ少女』では、ヨーロッパ某所の国境の雪山で凍死しかけたところを1人の少女に救われ、彼女の先天的な口腔および唇の障害を手術して完治し、助けてもらった礼の意味も込めて治療費を取らない旨を伝えて去っている。

病理学研究にも旺盛であり、珍しい症状の患者の手術を、実質無償で引き受けた(患者の体内から摘出した病巣を、手術代の代わりに貰い受けた)こともある(ただし、この時は寄付をねだる男につきまとわれており、手術料の半額を寄付すると約束させられたという事情もあった)。

気まぐれにシャチやイリオモテヤマネコなど、野生動物の手術も行うことがある。この場合は当然ながら手術料は取れない。ただしシャチのトリトンは報酬として自発的に真珠を運んできた。

なお、手塚作品のスターシステムをとったテレビアニメスペシャル『海底超特急マリンエクスプレス』でも、BJが通りがかりに瀕死の男性(伴俊作)を発見して手術し、その費用を本人に請求するために同行する形で、物語が始まっている。

受け取った金の使い道

治療費の使い道に関しては「無免許医は医療器具を正規ルートで買えないので必要経費が高くつくのではないか」との説がある『別冊宝島794 ブラック・ジャック完全読本』宝島社、2003年。実際に作中でBJは自分のメスを名高い刀匠に手入れしてもらっており、数千万円の報酬を渡している描写がある。(刀匠はその紙幣を炉の燃料として使用している)。さらに、ガラス製のメスや緊急手術の為の閉鎖型透明テント(絶縁体製で「ビニールケース」と呼ばれている)など特殊な器具も多数所有しているほか、オリジナルの人工心臓を製作したこともある。また、謎のルートで移植用の死体などを調達している場面もあり、それらにも多額の費用を支払っているものと思われる。また、ある時には自分の命の恩人である蟻谷を救う際に病院ごと買収する必要が生じたので20億円を現金で支払っている(その後すぐに買収した病院を手放している)。

作中で判明している物では、以下が挙げられる。

  • 過去の事故の復讐など母親がらみ
  • 島嶼を買い取り自分の看護をしてくれた人の墓とした上での自然保護。また、作中の描写から自然保護を目的とし無人島を複数所有している可能性もある。
  • 本間血腫を治すための人工心臓の開発などの本間丈太郎がらみ
  • 無実の罪で捕まったときに助けてもらった人を数十億使って治したなどの自分に親切にした人への恩
  • 無茶な治療期限を指定し、指名した自分の治療以外は受け付けないことを希望した患者の下へ向かうために各国へばら撒いたと語る多額の交通費や出入国料。

リメイク漫画

2004年10月のテレビアニメシリーズ放送開始に合わせ、秋田書店の各漫画雑誌にて複数の漫画家による『ブラック・ジャック』のリメイク作品が読切形式で掲載された(『週刊少年チャンピオン』のみ月1回掲載)。

また、『週刊少年チャンピオン』創刊40周年・手塚治虫生誕80周年記念企画として、2009年及び2010年には『週刊少年チャンピオン』にて吉富昭仁の作画によるbjリーグとのコラボ作品が数度掲載された他、宮崎克作・吉本浩二画による連載当時の製作秘話を描いたドキュメンタリー漫画『ブラック・ジャック創作秘話〜手塚治虫の仕事場から〜』など、『ブラック・ジャック』の特集企画も行われた。

以下の表は作品名・掲載誌・執筆した漫画家の一覧である。 {| class="wikitable" style="font-size:95%; line-height:1.4em; margin-right:0px;" |+ 『ブラック・ジャック』のリメイク作品・企画漫画 |- ! 題名 !! 掲載誌 !! style = "width:50%" | 執筆者(順不同) !! nowrap|単行本 |- | style="white-space:nowrap;" | ブラック・ジャック 〜黒い医師〜 | 週刊少年チャンピオン
2004年45号 - 2006年11号
※不定期 | 山本賢治 | 全3巻 |- | rowspan="3" |ブラック・ジャック ALIVE | ヤングチャンピオン
2004年20号 - 2005年15号 | たがみよしひさ / 吉富昭仁 / 高倉あつこ / 佐藤マコト / 芹沢直樹 / 井荻寿一 / 葉月京 / 北見けんいち / 近藤佳文 / 乾良彦 / きくち正太 / 高口里純 / やまだないと / 村生ミオ / 柴田昌弘 / 岡崎能士 / 八神健 | rowspan="3" | 全2巻 |- | ヤングチャンピオン増刊

2005年5月20日号 | 永井豪 |- |ヤングチャンピオン増刊
ブラック・ジャックスペシャル
2005年9月13日号 |手塚眞 |- | ブラック・ジャック | チャンピオンRED
2005年1月号 | 吉富昭仁 | 不明 |- | rowspan="2" | ブラック・ジャックM | 月刊サスペリアミステリー
2004年11月号 - 2006年2月号


Eleganceイブ 2005年7月号 | 鳥羽笙子 / 秋乃茉莉 / 吉川うたた / 風祭壮太 / 大舞キリコ / 宗美智子 / 大橋薫 / 金子玲美+月嶋つぐ美 / 佐藤千江子 / 御茶漬海苔 / 千之ナイフ / 垣野内成美 / 細馬信一 / 碧ゆかこ / 風間宏子 / スズキユカ / 大塚あきら / 西臣匡子 | 全2巻 |- | colspan="3" style="padding:0px;" | {| class="sortable wikitable collapsible collapsed" style="width:100%; line-height:1.4em; font-size:95%; border-style:hidden; margin:0px;" |- ! colspan="4" style="background-color:#e6e6e6;" |詳細 |- ! style="padding-right:1px; padding-left:1px; background:#f2f2f2;" |巻 !! style="padding-right:0px; padding-left:0px; width:5em;" |作者!!タイトル!!初出 |- | rowspan="5" style="text-align:center; width:1em" | 1

|秋乃茉莉||最後の証人||サスペリアミステリー 2004年12月号 |- |吉川うたた||汝ノ隣人ヲ愛セヨ||サスペリアミステリー 2005年1月号 {{Cite web|author=[[秋田書