七色いんこ 4
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『七色いんこ』(なないろいんこ)は、手塚治虫の漫画作品。1981年から1982年まで、週刊少年チャンピオン(秋田書店)に連載、全47話。2000年に稲垣吾郎主演で舞台化。
概要
代役専門で舞台役者を請け負いながら、幕間に金持ち客の金品を失敬する役者泥棒・七色いんこと彼を追う女刑事千里万里子の物語。
登場人物
- 七色いんこ
- 代役専門の泥棒役者でギャラを貰わない代わりにその劇場での盗みを黙認させる。優れた変装と声色の技術を持っており、老若男女を問わず変装できる。その演技力は有名演出家や一流の女優を唸らせるほどだが、本人に言わせると「モノマネがうまい素人役者、そしてドロボー」らしい。最近は「いんこのホンネ」という幻覚に悩まされることがある。
- 盗みをする理由は本人曰く、かつて演劇が大道芸だった頃は見物人のうち金持ちが気前よくお金を払い、貧乏人はお金を払わなくても黙認されていた、かつての美習を踏襲したという事だが、どうにも言い訳くさく、実際には演劇とは全く関係無く盗みをする場合も多い(作中では何らかの事情で結局は失敗、もしくはいんこ自身が盗みをやめることが多い)。
- 演技をする時以外は青みがかった緑色のおかっぱのカツラとサングラスで変装しているがこれはカツラの裏に変装道具を隠しているためである。また、有名な劇場などには必ずと言っていいほど変装道具を隠している。お気に入りのコーヒーショップがあり、いつもそこでコーヒーを飲んだり漫画を読んだりしてくつろいでいる。
- 出演の依頼をするには「新宿区私書箱5826432」に速達で手紙を郵送すること(第1話参照)。
- いんこのホンネ
- いんこにしか見えない幻覚(姿は「ママー」そっくり)。いんこは度々これのせいでひどい目に遭っている。医者によれば常日頃から他人を演じ続けることで潜在的な自分の欲求が幻覚として現れたものらしい。他人にはボロ切れにしか見えない。
- 男谷マモル(おたにまもる)
- 万里子の見合い相手として登場。アメリカ、バークレイ大学の研究室に籍を置く心理学者。
- 千里万里子(せんりまりこ)
- いんこを追う女性刑事。捜査二課、詐欺・知能犯担当。実はかつて遭遇したある事故の影響で、鳥を見るとじんましんが出て体が小さなときに戻ってしまう。演劇や恋愛を好む奴はひ弱な奴だと言って馬鹿にしていたせいか、あまり教養は無い。女らしい服装や言動は好まず、怒るとすぐに手が出る。いんこを追っているがその一方で好意を抱いている。
- 高校時代は関東女番長連合の中ボス「スケバン千里」として名を馳せていて、3番目の子分「ロリコンのヨーコ」の話によると、R高校の番長の肋骨を3本折ったことがあるらしい。
- 玉サブロー
- いんこの相棒と呼べる犬。演劇界の元重鎮だった老人に芸を仕込まれたため、犬を超越した演技力を持ち、二足歩行や人間の子どもに変装したこともある。流し目が得意。よく酒を飲む。ホモ。
- 鍬潟隆介(くわがたりゅうすけ)
- いくつもの会社を経営している日本の財界のドン。裏では際どい事をちょくちょく行っており、そのため黒い噂も絶えない。一人息子の事は不器用ながら愛していたふしがある。
結末で明かされる登場人物の素顔など
- 七色いんこ(本名:鍬潟 陽介(くわがた ようすけ))
- 七色いんこの正体は鍬潟隆介の息子の鍬潟陽介であることが明かされる。また、かつて父である鍬潟隆介が朝霞モモ子(後述)を殺しかけた経緯などから実の父である鍬潟隆介に復讐を誓っている。
- 男谷マモル
- 七色いんこ(鍬潟陽介)の変装であったことが明らかになる。
- 千里万里子(本名:朝霞 モモ子(あさか ももこ))
- 実はかつて七色いんこと仲が良かった「朝霞モモ子」という女の子だった。彼女の父親は新聞記者で鍬潟隆介の悪事を暴いたのだったが、鍬潟隆介は口封じに事故を装ってモモ子の家族もろとも殺害しようとした。訓練された鳥に車を襲わせ、車に事故を起こさせたため、モモ子は鳥が苦手になっていた。運良く彼女だけは一命を取り留めたものの記憶喪失となり、現在の養父が引き取った。
サブタイトル
タイトルのほとんどが実在する演劇や小説からとられている。括弧内はその由来となった作品の作者。
- ハムレット (ウィリアム・シェイクスピア)
- どん底 (マクシム・ゴーリキー)
- 人形の家 (ヘンリック・イプセン)
- 修善寺物語 (岡本綺堂)
- ガラスの動物園 (テネシー・ウィリアムズ)
- 検察官 (ニコライ・ゴーゴリ)
- 電話 (ジャン・カルロ・メノッティ)
- ゴドーを待ちながら (サミュエル・ベケット)
- アルト=ハイデルベルク (マイヤー・フェルスター)
- 誤解 (アルベール・カミュ)
- ピーター・パン (ジェームス・マシュー・バリー)
- ヴァージニア・ウルフなんかこわくない (エドワード・オールビー)
- 幕間
- 化石の森 (ロバート・シャーウッド)
- じゃじゃ馬ならし(ウィリアム・シェークスピア)
- 彦市ばなし (木下順二)
- シラノ・ド・ベルジュラック (エドモン・ロスタン)
- 青い鳥 (モーリス・メーテルリンク)
- 南総里見八犬伝 (曲亭馬琴)
- オンディーヌ (ジャン・ジロドゥ)
- 12人の怒れる男 (レジナルド・ローズ)
- 悪魔の弟子 (ジョージ・バーナード・ショー)
- 棒になった男 (安部公房)
- タルチュフ (モリエール)
- ピグマリオン (ジョージ・バーナード・ショー)
- 靭猿
- 森は生きている(サムイル・マルシャーク)
- セールスマンの死 (アーサー・ミラー)
- 三文オペラ (ベルトルト・ブレヒト)
- 王女メディア (エウリピデス)
- 犀 (ウジェーヌ・イヨネスコ)
- R・U・R (カレル・チャペック)
- 結婚申込 (アントン・チェーホフ)
- 俺たちは天使じゃない (アルベール・ユッソン)
- ベニスの商人 (ウィリアム・シェイクスピア)
- 仮名手本忠臣蔵 (竹田出雲・三好松洛・並木千柳)
- 幕間II
- コルネヴィルの鐘 (ロベール・プランケット)
- 恋わずらいのなおし方 (ソーントン・ワイルダー)
- サロメ (オスカー・ワイルド)
- 欲望という名の列車 (テネシー・ウィリアムズ)
- 作者を探す六人の登場人物 (ルイージ・ピランデッロ)
- オセロ (ウィリアム・シェイクスピア)
- 十一ぴきのねこ (馬場のぼる・井上ひさし)
- 探偵(スルース) (アンソニー・シェーファー)
- 終幕
- タマサブローの大冒険
その他
- 『鉄腕アトム』の『盗まれた太陽』というエピソードに、シャーロック・ホームスパンというゲストキャラが登場する(勿論シャーロック・ホームズとアルセーヌ・ルパンのもじりである)。原作ではホームズもどきだったが、『鉄腕アトム (アニメ第2作)』ではスターシステムにより、七色いんこがキャストされた(声:富山敬)。
- 『アストロボーイ・鉄腕アトム』においても、爆弾魔カトウに七色いんこがキャストされている(声:子安武人)。
- 『アストロボーイ・鉄腕アトム』のゲーム版『ASTRO BOY・鉄腕アトム -アトムハートの秘密-』では、前述のシャーロック・ホームスパン役で登場している。
- ニンテンドーDS用ゲーム『ブラック・ジャック 火の鳥編』では七色いんことして登場するが、泥棒稼業を休み『七色いんこ探偵事務所』にて安楽椅子探偵をしている設定。
- スパイダーが、大勢で登場したシーンがある。
コミックス
- チャンピオンコミックス『七色いんこ』秋田書店、全7巻 - 各話冒頭に辻真先、西村博子、辻啓子によるモチーフとなった作品の解説を収録
- 手塚治虫漫画全集『七色いんこ』講談社、全7巻
- 秋田文庫『七色いんこ』秋田書店、全5巻