彼方から/ひかわきょうこ

『彼方から』（かなたから）は、ひかわきょうこによる日本の少女漫画作品。『LaLa』（白泉社）で1991年11月号から2002年12月号にかけて連載された。2004年、第35回星雲賞コミック部門を受賞。単行本は全14巻、文庫版で全7巻が刊行された。

概要

作者には珍しい異世界ファンタジーで、確固とした世界観とストーリー展開、そして人物造詣の魅力から支持を集め、2004年に星雲賞を受賞した。物語は全5部構成で、その他に特別編3話とエピローグから成る。当初は毎月連載だったが、作者の体調不良による休載後に隔月連載となり、数度の休載を挟み、12年の歳月を経て完結した。

異世界を舞台とするファンタジー作品では、飛び込んだ世界でも最初から言葉が通じる設定が多い中、本作品では主人公の典子は異世界の言語が全くわからない状態から始まる。そのため、一字一句を熱心に聞き取り、発音の違いを現地の者との会話の中で覚え直すなど、独学でマスターするまでの努力が描かれている。

あらすじ

高校2年生の立木典子（ノリコ）はある日の下校途中、無差別爆弾事件に巻き込まれ、その衝撃で異世界に飛ばされる。見たことも無い樹海に落とされ、異形の虫の襲来に怯える彼女を救ったのは、渡り戦士のイザークだった。彼と行動を共にすることになったノリコは、戸惑いながらも未知の言葉や風習を覚え旅をする。同じ頃、世界に闇をもたらすと恐れられる「天上鬼」を覚醒する「目覚め」が降臨したとの噂が囁かれる。「目覚め」を手に入れようと各国がうごめく中、自由都市リェンカの首領ラチェフは傭兵ケイモスや魔の力を使い、樹海から現れたノリコとイザークを追う。旅の途中でさまざまな出会いを重ねるうち、ノリコは自分こそが「目覚め」でイザークが「天上鬼」であることを知る。しかし、世界に災いをもたらす運命と知りながら強く魅かれあう2人は、未来は変えられると信じて運命に立ち向かう。次第に世界中に邪悪な気が満ち、心に魔の種を抱いた人々がいがみ合うなどの異変が起こる中、ノリコとイザークはジェイダ左大公ら心の闇に立ち向かう人々を巡り合せていく。より強力な魔の力を得たラチェフは力を増したケイモスに命じてイザークと最後の対決に臨む。

登場人物

声優名はドラマCDで演じた人物を記述している。

立木 典子（たちき のりこ）

声 - 鈴木真仁

主人公。17歳の女子高生。友人から「少々抜けている」「とぼけている」と評される、のんびりした性格の持ち主。感情に走り過ぎることなく、状況をきちんと捉えて行動する。突然異世界に飛ばされたことにショックを受けるが、この世界に自分がいる理由を考え、与えられた環境で最善を尽くすため、前向きに暮らし始める。また、全く理解出来なかった異世界の言語も、積極的な勉強の成果により片言でコミュニケーションが取れるようになり、次第に流暢に話せるようになっていく。自分を助けてくれたイザークを心から信じ、彼が力を暴走させ異形の「天上鬼」へと変化した際も、想いは揺らがず、正面から彼を受け止めた。後に自分が「天上鬼」を「目覚め」させる存在だと知らされ悩むものの、その運命を受け入れ、イザークと支え合って切り開いていく。

イザーク・キア・タージ

声 - 三木眞一郎

19歳の青年。長い黒髪に黒目（青や緑に見えるときもある）で「東洋人とも西洋人ともつかない」端麗な顔立ち。細身の体に似合わない超人的な体力を持ち、負傷しても短時間で回復する。その誕生前から世界を脅かす超常の力を持つ「天上鬼」になると予言され、その特異な体質ゆえに母親から疎まれていた。「天上鬼」を育てることで利益を得ていた父親にも愛されず、孤独な環境で育つ。12、3歳頃に出奔し（両親は直後に何者かによって殺害された）、隊商の下働きをしていた際、そこに加わっていたガーヤに見込まれて剣術を教わる。その後、渡りの戦士として各地を放浪し、自分を「天上鬼」として覚醒させる「目覚め」を消そうと考え、殺すために入った樹海でノリコと出会った。何も知らない異世界の少女を手にかけることを躊躇い、共に旅を続けるうちに、彼女の存在に安らぎを覚えるようになる。関係を断つべく距離を置こうとしたが、ノリコへの強い想いから離れることは出来なかった。やがて「天上鬼」が辿る世界の破壊者以外の可能性に気づき、運命に対峙する。

ラチェフ

声 - 速水奨

自由都市リェンカの首領。33歳。黒髪と秀麗な容貌を持つ。「天上鬼」の力を我が物にしようと陰で企む冷酷な野心家。幼少時から優秀な子供だったが、鬱屈を抱える母親に疎んじられ、有力者から後見の申し出を受けたとき、事故に見せかけて母親を殺害した。その後も邪魔になる存在を消しながらのし上がってきた。

ガーヤ・イル・ビスカ

声 - さとうあい

かつて傭兵として名高かった灰鳥一族出身の女性。53歳。ゼーナという双子の姉がいる。傭兵引退後、店を持とうと隊商に加わり働いていたときに少年のイザークに出会い、剣術を教えた。イザークにとっては心を許せる数少ない人物。彼とノリコとの恋を応援している。

ケイモス・リー・ゴーダ

声 - 井上和彦

ラチェフに雇われた傭兵。20歳。粗暴な若者で、自らの力を常に誇示していないと自分自身を実感出来ない。イザークに戦いを挑んだものの、敗退。自分に屈辱を味わわせた彼を負かすための力を得ようと、ラチェフに言われるがまま闇の力に溺れていく。

ゼーナ

声 - 小宮和枝

ガーヤの双子の姉。グゼナ国の国専占者だったが、大臣ワーザロッテが連れてきた占者タザシーナにその地位を奪われた。また、未来は変えられると信じており、行方不明になったグゼナ国の大臣達を捜すためガーヤ達と旅に出る。

ジェイダ左大公

声 - 堀之紀

ザーゴ国の元大臣。52歳。穏健派として知られ、ケミル右大公の謀略により失脚させられ追われる身となる。昔、灰鳥一族の危機を救ったことがあり、恩人として敬われている。

バラゴ

声 - 安井邦彦

ザーゴ国の元親衛隊。25歳。力だけに頼る生き方を続けていたが、イザークと出会ったことで人生観が変わり、ジェイダ左大公の逃亡の手助けをして旅に出る。いかつい風貌とは裏腹に根は優しい青年。

アゴル・デナ・オーファ

声 - 堀内賢雄

自由都市リェンカの傭兵。ジーナの父。31歳。ラチェフの元を離れ、典子達と行動を共にする。

ジーナハース

声 - 丹下桜

盲目の占者。7歳。愛称はジーナ。幼少ながら占者として希代なる才能が現れる。典子達の秘密に薄々感付いている。

書誌情報

ひかわきょうこ 『彼方から』 白泉社

ドラマCD

CDドラマDUOシリーズ。ドラマCDにはラジオ未放送分含む。

• Vol.1（1999年1月）
• Vol.2（1999年2月）
• Vol.3（1999年3月）
• Vol.4（2000年2月）
• Vol.5（2000年3月）
• Vol.6（2000年4月）

脚注

外部リンク

• 白泉社

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