HOME > コミック > 怪盗アマリリス

怪盗アマリリス/和田慎二

共有

著者: 和田慎二
巻数: 14巻

和田慎二の新刊
怪盗アマリリスの新刊

最新刊『怪盗アマリリス 第14巻


怪盗アマリリス』(かいとうあまりりす)は、1991年花とゆめ1号から1995年同誌22号に連載された和田慎二の漫画作品。

概要

母親とお手伝いさん、そして本人の3人で暮らす高校生の少女「椎崎奈々」が怪盗として活躍する物語である。

話はおおざっぱに3つに分かれる。最初は怪盗ものでスタートするが、中盤はアマリリスがさらに変装して芸能界入りするアイドルものになり、最後は巨大組織との対決が中心となる。

和田慎二のキャラクターとしては最も古い部類に入り、名前だけで言うならば、和田が学生時代に部活同人作として書いたスパイもの漫画作品のキャラクター『コードネーム・グリーンナンバー・アマリリス』が源流となる。

商業作品としてならば、1973年に発表された短編『快盗アマリリス』(「怪」でなく「快」)が原型となるが、この時点で連載版の設定はほとんどが出揃っている。

連載版の番外編『アルカディア作戦』におけるアマリリスの因縁はこの短編版『快盗アマリリス』がベースとなっている。

途中のストーリーで『超少女明日香』シリーズとのコラボレーションが成されており、当作にはそれに由来するキャラクターが頻出している。例えばアマリリス専任捜査官の転(ころび)警部は『明日香』の敵役で四重奏の一人・コロンボのリボーン・キャラクターである。

花とゆめコミックス版単行本は絶版されており、現在は朝日ソノラマの文庫版で再版している。

あらすじ

基礎ストーリー(怪盗編)

主人公・椎崎奈々は普段は私立皆星女子高等学校に通う普通の女子高生。しかし、その裏の顔は秘密兵器を駆使してお宝を盗む怪盗アマリリス。裏世界ではよく知られた窃盗請負の怪盗集団・華蓮(カレン)に所属する怪盗である。

奈々は、かつて怪盗白水仙(ナルシス)として腕を鳴らした母・雪乃やお手伝いのスガちゃんと共に、華蓮の連絡員であるレンタルビデオ店・店長の依頼を受けて怪盗の仕事に邁進するのである。

その日々の中、奈々は友人たちや母の知人の息子である各神遼一郎、隣家に引っ越してきた少年森村海とその仲間たち、さらには海の叔父でアマリリス専任捜査官の転警部を交え、様々なドタバタを繰り広げていく。

アイドル編

奈々はある日、弱小芸能プロダクション・アーサープロからスカウトの話を受ける。怪盗家業に支障が出かねないために当初は渋る奈々だったが、本来デビューさせるはずだったタレントに逃げられ、そのタレントが出るハズのイベントを乗り切るためだけの一日だけの活動だからと押し切られてしまい『フラワー・ドリーム(F.D.)ナナ』としてデビューする事になってしまう。

一日だけのデビューのハズが、あれよあれよと祭り上げられ、奈々は気がつけばあっという間に超人気アイドルになってしまった。かくてドタバタは加速する。アーサープロ社長の麻丘やマネージャーの江の木さんと共にアイドルとして活躍していく奈々。

しかしアマリリスとしての怪盗の星は彼女を放っておかなかった。アーサープロに対立する大手芸能プロマナベプロは、裏社会からも恐れられる闇組織『黒いオークション』の末端だったのである。驚いた奈々はF.D.ナナとして『マナベプロ』に、アマリリスとして『黒いオークション』に、面白半分も手伝ってちょっかいをかけていくことになる。

当然、芸能活動も忘れない。忍者となった作曲家の下で修行したり、大レジャーランド企業の社長と懇意になったり……ナナの活躍は止まらない。

映画編

ある日、ナナは映画の仕事を請ける事になる。しかし、監督は「所詮、アイドルの出る娯楽映画」と乗り気ではない。それどころか「娯楽映画」をミソクソにけなし、ワケのわからん抽象的芸術論に終始する始末。ついにナナはブチ切れて、この仕事を降りる事にした。

ところがこれがきっかけで映画界・映画ファンから「映画を解ってない!」と強烈なバッシングを受ける事に。ナナは彼らを見返すため「あたしの映画はあたしが撮る!」と叫び、友人たちを巻き込み裏の人脈も駆使して、映画『超少女明日香』を作り上げる。

しかし、その間にナナは海に「椎崎奈々=アマリリス」であるという秘密を知られてしまう事に。逃げようとするナナに海は「映画を撮り終えるまでは、そんなコトは許さない」とハッパをかける。

そして映画は撮り終わり、映画版『超少女明日香』は大成功を収める。一方で海は奈々のために体を張って逆行性健忘症を装う。この事によって奈々は皆と離れることなく変わらぬ日常を送れるようになった。

番外編・アルカディア作戦

  • 和田慎二作品キャラ総出演(作品内で死んだ描写のある者や異世界の者を除く)が特徴の傑作。

ナナの下にファンレターを装った手紙が届く。それは怪盗アマリリスへの招待状だった。もしも応じなければ、ナナの正体をバラすという意思表示。奈々はやむなくアマリリスとして招待を受けることにする。

招待された洋館には神恭一郎探偵事務所を受け継いだ男ムウ・ミサと伍堂家に仕える忍者飛翔の2人がいた。謎の仮面を被った招待主は彼らの弱みや援助を盾に、ある仕事を依頼する。それはナチスの遺産となったある兵器の奪回だった。

兵器の正体を知らされないまま、兵器を持つ組織の基地に潜入する3人。そこで待っていたのはアマリリスにとって因縁深い男・信楽老だった。かつてアマリリスは信楽老の企みを潰し、彼を倒した過去があった。一方でムウ・ミサにとっても彼は一度は葬ったはずの敵だった。

信楽老の狙いはナチスの遺産「人造人間・フランケンシュタイン」をもって不死の力を得ることだった。しかし、アマリリスたちの騒動によりフランケンシュタインは目覚め基地は破壊され、信楽老のたくらみは潰える。しかし信楽老は逃げ去ってしまう。

一方で洋館の主の目的は、フランケンシュタインを解放し人間の手の届かない場所に彼を逃がす事だった。洋館の主の名は本条亜里沙。考古学と地質学の権威として知られる謎の大富豪。彼女は尽力してくれたアマリリスたちの労をねぎらい、それぞれの報酬や秘密の約束を守ることを誓い、彼らの前から姿を消す。

アマリリスたちに見送られ、遠く理想のアルカディアを目指すフランケンシュタイン。果たして彼の行く手に幸福はあるのだろうか。

黒いオークション編

黒いオークションとの対立が苛烈になり、ついに彼らはアマリリスに賞金を賭け、宣戦布告を言い渡した。それと前後して、奈々はある男からシンドバットコインなるメダルを「船乗りシンドバッドに会え」との遺言と共に託される。

実はコインは『黒いオークション』幹部がアマリリスへの挑戦権として暗殺者に託したもの。そして暗殺者たちはアマリリスをおびき出すためにオークションの所有宝物をオトリとして使い、コインはそのカギとしての機能も持っていた。

迫り来る暗殺者。受けて立つアマリリス。その戦いの中でアマリリスは華蓮の重鎮たちより、花蓮を裏切り『黒いオークション』についたある女性怪盗の存在を知らされる。彼女こそ、かつて怪盗・白水仙のライバルであり、現在では『黒いオークション』のナンバー2となっていた初代アマリリスだったのだ。この暗殺騒動は他ならぬ初代が「アマリリス」の名を守るために2代目となった奈々の抹殺を狙って企てたものだったのである。

刺客たちの猛攻。しかし奈々はその中で失敗した刺客たちが自ら命を断つ場面を目撃。自分のために失われる命があってはならない、怪盗はあくまで怪盗であり命を奪ってはならないと考える奈々は、刺客たちを説得し自分の仲間となるように促す。一方で刺客たちの中にも奈々の考えに打たれ『オークション』を離れて彼女の元に集う者が出てきた。

そんな中で黒いオークションは奈々の母を拉致。オークションの本部へとつれていく。

かくてアマリリスの戦いは最終局面を迎えるのであった。母を救うため、オークションとの決着をつけるため、奈々は仲間たちと共に『黒いオークション』総本部『国家・アトラクシア』に攻め込むのである。

登場人物

主要人物

ナナ
主人公。女子高生「椎崎奈々」怪盗「アマリリス」の2足のわらじを履く少女。作中アイドルデビューし「フラワー・ドリーム・ナナ」としても活動。最終巻で「かつてアトラクシアに住んでいた」と明かされ、同時に父によって「本名もナナであること」が示唆される(曰く「新しい生活でもナナという名を与えられた」)。アトラクシアで雪乃を救出する際、アトラクシア崩落に巻き込まれて行方不明になるが、モンゴルで生き延びていた(学校は転校扱い、アイドルも引退)。性格は勝気でじゃじゃ馬、男嫌い、しかしオカルトは大の苦手。料理も苦手な模様(だが、文句を言いながらも海は彼女の作った黒豆ばかり食べていた)。また「バストは成長期(スガちゃん談)」「胸はちょっと大きい(アーサープロの社員談)」などと、たびたび巨乳をネタにされる。
海とは初対面の印象が悪かったのに加え、学校同士が仲が悪いなど当初は反発しあっていたが、映画撮影を通じて想いを寄せるようになる(FDナナとしてウェディングイベントに出る際に至っては、相手役に海を示唆されて赤面していた)。海に正体が露見した際、「今までの生活から追われる苦しみ」を訴えるが、彼が身体を張って正体を隠し通したり、日本での生活を棄ててアトラクシア侵攻やモンゴル逃亡についてきたりしたことから、その心情に変化が現れる。
怪盗アマリリス
華連に所属する怪盗としてのナナの姿。ショートボブの黒い癖毛で、これが彼女の地毛。黒いシャツの上に半袖ジャケットを胸高に結んでおり、ベレー帽・ジャケット・スラックス・靴はピンクで統一している。依頼を受けるときは元締を経由する。移動にはネコ型気球やビデオ屋のバイクを使っている。母譲りの変装技術はかなりのレベルだが、映画撮影時にはこれが仇となり「表面的な変装技術がかえって演技の幅を狭めている」と雪乃に評される。彼女が怪盗になったのは、幼い頃に自分と母を棄てた父の存在が大きく影響しているようだが……
アルカディア作戦では本条亜里沙の指示のもと、忍者飛翔、ムウ=ミサと共闘し信楽老と対峙する。
椎崎 奈々(しいざき なな)
私立皆星女子高等学校に通う、女子高生としてのナナの姿。髪型は亜麻色のロングヘアをハーフアップにしているが、これは本人曰く「よくできたウィッグ」。成績優秀だが怪盗稼業の忙しさから授業中は目を開けて眠っており(担任は気付いていないが学園理事長にはバレていた)、さらにそのまま指名されてもすらすら答える(悦子・耀子談)。悦子や耀子に言わせれば「手癖が悪い」。3人で街を歩いていたときにアーサープロにスカウトされ、アイドルデビューすることになるが、以降登校機会が減っている。
フラワー・ドリーム・ナナ(F・D・ナナ)
アーサープロのスカウトを受けてデビューした、ナナのアイドルとしての姿。桃色のウェーブがかったセミロングヘア。本来はゆかりの代役だったため、コンサート当日限りの活動という約束だったが、社長のゴリ押しもあって本格的に活動を開始する。アイドルとしての衣装は露出過多気味。のちにスガちゃん作成のステッキを使用するようになる。映画『超少女明日香』に主演。アイドルとしての活動中に黒いオークションに巻き込まれる。
椎崎 雪乃(しいざき ゆきの)/怪盗白水仙(ナルシス)
ナナの母。通称ママさん。かつては彼女自身も、華連所属の怪盗白水仙(ナルシス)として活動しており、当時は水仙を添えたメッセージカードを犯行現場に残していた。泣き黒子が特徴。男嫌いの娘を心底案じており、娘の不祥事を歓迎する向きもある。転警部に想いを寄せられている。映画では芙蓉夫人を演じる。海曰く「イヤリングとかいっぱい持ってそう」だが、実際には華連から支給された発信機つきの一組だけを身に着けており、初代アマリリスに誘拐された際に救出の決め手となった。
スガちゃん
本名・谷村スガ。椎崎家住み込みのお手伝いさん。家事は万能で特に料理が上手。さらにはアマリリスの使う各種メカや特殊スーツまでも製作。映画でもそのテクニックを活かし演出に貢献した。
さまざまな和田作品からのカメオ出演ということもあってか、劇中では漫画家・岩田慎二(和田本人)と旧知の仲。
森村 海(もりむら かい)
椎崎家の隣家に越してきた、ナナと同い年の男子高校生。皆星女子校の近隣にある男子校に通っており、学校ぐるみで仲が悪い。同級生との賭け(皆星の女子寮に忍び込み、陥落の証として黄色いハンカチを屋上に掲げさせる)がナナたちにばれ、アマリリスによって寮の外観を少女趣味にされるという手痛いしっぺ返しを食らう。当初は寮生活だったが、先述の事情を知った別居中の母に退寮させられ、叔父の転警部と同居し始める。成績優秀で動体視力も良いが、ナナにはかなわない。
中学時代の友人4人と共にアマリリスと遭遇し、5人揃ってファンになってしまうが、のちに(同一人物だと知らずに)FDナナのファンにもなり、彼女にからかわれる。ナナが戸川城太郎を訪ねる際に5人で同行し、バックコーラス「アマリリス騎士団」としてデビューする。
映画では田添一也役で、撮影中に皆星の女子からの人気No.1に祭り上げられるほど容姿端麗。当初はナナと険悪だったがのちに相思相愛になり、撮影中に「ナナ=アマリリス」だと知ったときには「撮影が終わるまでは逃げるな」と発破をかけながら、自身は逆行性健忘症を装って彼女の正体を隠し通した。アトラクシアでナナのファーストキスを強引に奪ったり、彼女を追いかけてモンゴルまでやってきたり、と深い愛を見せる。
転 兵輔(ころび ひょうすけ)
海の叔父で、アマリリス専属捜査官。階級は警部。アマリリスには逃げられてばかりいるが、隣人のナナがその当人とは知らない。雪乃に想いを寄せているが、自分自身は雛子に想いを寄せられている。映画ではコロンボ役。
各神 遼一郎(かがみ りょういちろう)
各神財閥の御曹司。当初は父の遺言に従ってナナのパートナーとして登場するが、のちに海にそのポジションを奪われる。FDナナを全面的にサポートしており、ファンクラブ会員番号1番だったが、後にジェフにその地位を譲渡してしまう。
彼の父はかつて現役時代の白水仙と出会い、彼女の怪我を治療したり審美眼を養う手伝いをしたりと交流があった。

皆星女子高校関係者

悦子(えつこ)
奈々の親友。いつも耀子と3人で行動する。ロングヘアにカチューシャをしている。酒癖が悪い。実家から通っている。映画撮影時にはタイムキーパーをはじめ、耀子の右腕として活躍する。のちの和田作品『少女鮫』にも、再び主人公の親友と言う立ち位置でカメオ出演する。
耀子(ようこ)
奈々の親友。いつも悦子と3人で行動する。おかっぱ頭で眼鏡をかけている。海にも名を知られているほど頭脳明晰で、寮長候補といわれるほどしっかり者。文芸部に所属しており、その文才とカリスマを買われ、映画撮影時には監督と脚本を務めた。映画撮影を通じ、白沢といい雰囲気になる。悦子同様、『少女鮫』でカメオ出演する。
理事長
皆星の理事長。恰幅のいい初老の女性。奈々の芸能活動に理解を示し、優しく見守っている。映画撮影時には脚本担当の4人の合宿所として自宅を開放した。奈々が授業中に目を開けて眠っていることを見抜いていた。
教頭
皆星の教頭。やや痩せぎすの中年女性。奈々の芸能活動を当初は快く思っていなかった。映画撮影時にも、海ら男性陣が敷地内に入ったことに不快感をあらわにした。
奈々たちの担任
いかつい中年男性。落ち着きのない生徒に比べて奈々を高く評価しているが、彼女が授業中に居眠りしていることに気付いていなかった。

海・転警部の関係者

倉見 雛子(くらみ ひなこ)
警視。父は転警部の先輩。転警部とは親子ほどに歳が離れている(彼曰く「オシメ替えてやった」)が、彼にゾッコンで結局最後に結婚してしまう。アマリリスと黒いオークション検挙の題目で、経費でオートクチュールのウエディングドレスを購入しようとするほど。
単行本のあとがきにて、『超少女明日香』シリーズの『救世主の血』に登場した舞からのリボーンキャラクターであることが語られている。
作中では後ろ姿しか描かれていないが、父親は『スケバン刑事』に出てくる暗闇警視である(斎藤宣彦編『こんなマンガがあったのか!』(メディアファクトリー)に収録されている「和田慎二キャラクター相関図」より)。

芸能界関係者

アーサープロ

麻丘雅(あさおかみやび)
アーサープロ社長。江の木の後輩であるゆかりの写真を見て彼女をスカウトするが、逃げられたため奈々に代役を頼む。1日だけの約束だったが、ナナの力量に感嘆し本格的にデビューさせた。ナナに新人賞を獲らせるためなら、各神に(審査員への賄賂の依頼で)頭を下げることも厭わない。秘書の早瀬からは想いを寄せられているが……
江の木(えのき)
ナナのマネージャー。いつも麻丘に怒られていて頼りない印象だが、いざというときにはナナやゆかりを守る頼もしさを見せる。ナナたちが戸川のもとに向かう際に同行する。北斗一星(ほくと いっせい)というペンネームで作詞も手がけている。ゆかりの高校のOBで、同窓会で出逢ったときから彼女に想いを寄せられており、後に電撃結婚する。モデルは作家の鷹見一幸である。
早瀬(はやせ)
麻丘の秘書。妙齢の女性。
アマリリス騎士団
海たち5人がFDナナのバックコーラスとしてデビューしたときのグループ名。フルフェイスの仮面とタキシード、マント姿で登場。5人の顔は歌っている間は隠れている。結成当時、5人は「怪盗アマリリス」に惚れ込んでおり、ナナがからかい半分に「アマリリス(の花)が好き」と発言したことでこの名称になった(後にナナの正体を知った海は、このときのやりとりを蒸し返して憤りを見せた)。5人とも歌は素人同然だったが、戸川のトレーニングを通じて歌唱力が飛躍的に向上した。
なお、5人は中学時代からの親友で、硬派グループとして知られており、現在は全員が男子高に在籍している。アマリリスにほれ込んだきっかけは、海が彼女の落としたベレー帽を奪い返すように挑発し、5人とも手痛いしっぺ返しを食らったため。以来、FDナナのピンチにもアマリリスのピンチにも駆けつけ協力するようになった。
佐々:片目が隠れるほどの長さの茶髪。小学生の頃には音痴といわれていたが、戸川のトレーニングで歌唱力が向上した。終盤、ウェディングイベントでナナのパートナーを務めるはずだった海に代役を押し付けられる(尤も、本物のナナはアトラクシアに侵攻しており、イベントに出ていたのはダミー)。
白沢:肩にかかるほどの長さの癖毛を首の後ろで結んでいる。初期のオカルト事件では、彼の姿をとった霊(殺人被害者)が現れてアマリリスを失神させた。文芸部に所属しており、映画では脚本を担当したほか、当初は険悪だった耀子と親しくなった。
背中の中ほどまで及ぶ長髪。少々ナルシスト。ベレー帽事件のときにアマリリスが変装したことがある(が、胸でバレた)。
黒髪の短髪。5人の中では最も体格がよく、映画では大道具やセット作りを担当した。

マナベプロ

黒沢 ゆかり(くろさわ ゆかり)
ナナと同時期にマナベプロからデビューしたアイドル。国民的アイドルの座をナナと二分するが、ナナのファンが老若男女問わないのに対してゆかりのファンは98%が男性である。江の木の高校の後輩で、本来アーサープロからデビューするはずだった(シルエットから順次公開し、顔はデビュー当日に明かすという手はずだったため、代役を頼んでも差し支えなかった)。江の木の頼りなさに失望して失踪し、現在に至るが、ずっと彼に想いを寄せており(「北斗一星の歌を歌うことが夢だった」とまで言っている)、終盤で結ばれる。
「ナナが戸川のもとに作曲依頼に向かったと聞きつけて自らも出発するが、彼女が教わったのはとざわ白雲だった」「ナナが出演を蹴った映画を押し付けられた」など、アイドルとしてはナナに一歩及ばない部分もある。強気かつ強引な性格で、ナナのマイペースさを「のほほん娘」と嫌っているが、ナナの策略でたびたび酷い目に合わされている。
真鍋社長
マナベプロ創始者。黒いオークションの一員。ナナに新人賞を獲らせない(=ゆかりを勝たせる)ためにナナを誘拐するが、アマリリスにオークション関係の青いファイルを盗まれ、失脚する。
八雲 翔(やくも しょう)
真鍋の後継。アンナの登場で一時失脚するが再び社長に返り咲く。「金色のCD」を探しにきたアマリリスに協力し、その報酬として居室を快適にリニューアルしてもらう。失脚中はアンナの秘書をさせられており、こき使われる様を陰で一般社員に笑われるなど、彼自身も社員からは嫌われている。
アンナ=島村
実績が出ていない八雲を押しのけて社長に就任したアメリカ時代の上司。ナナを「弱小プロのロリポップ」と馬鹿にしているが、当のナナがマナベプロにやってきたときは振り回されていた。「八雲を会社の地下室で寝泊りさせる」「自分はゴルフカーに乗り、キャディ役の八雲は徒歩で移動させる」など横暴が目立ったが、後にその座を引き摺り下ろされた。

その他

戸川 城太郎(とがわ じょうたろう)
作曲家。あばら家に住み、隠遁者のような風貌をしており、作曲依頼に来た者に過酷な体力トレーニングを課す(最後まで耐え切ったのはナナ=アマリリスのみ)ので、山のふもとの住民たちにも「とざわ白雲」だと勘違いされていた。過酷なトレーニングは発声の基礎体力をつけるためであり、現にアマリリス騎士団の5人は飛躍的に身体能力と歌唱力が向上した。彼とタイマンで勝負して勝つことが免許皆伝(=作曲引き受け)の条件である。
戸澤 白雲(とざわ はくうん)
忍者。山奥の洋館に閉じこもってピアノを弾いており、身奇麗にしていることから、ふもとの住民は彼が戸川城太郎だと思い込んでいた。ゆかりに過酷なボイストレーニングを課し、声斬波を伝授。彼女を愛弟子とまで呼んでいる。後にアマリリスにも声斬波を伝授する。
ジェフ
アメリカのレジャーランドのオーナー。各神と親交があり、ナナの海外進出にも協力する。

花連(カレン)

一様に紋付袴で覆面を被っている。

長老
花連の長老。初代アマリリスの離反を快く思っていないが、アマリリスが白水仙を救出に行くと宣言した際にも難色を示す。
元締(もとじめ)
ビデオ店の店長をしている老人。アマリリスへの依頼を取りまとめる。白水仙とも親交がある。
ダミー
映画撮影後から登場。不在がちなナナに変わって代役を務める少女。特に本物がアマリリスとして活動しているときにFDナナの芸能活動を代行することが多く、歌唱力も騎士団相手なら誤魔化せる。本物のナナを「先輩」と慕い、スガちゃんや雪乃の指示で「本物らしく」振舞おうとするが、海へのアプローチが積極的過ぎたり、極度に緊張に弱かったり、と違う部分も多々ある。ちなみに体型は本物と全く同じ。最後は「先輩(本物)が居てこそのダミー」だからと、雪乃やスガちゃんのダミーと共に引っ越していった。

黒いオークション関係者

キャプテン・シンドバッド
「黒いオークション」のリーダーにして、ナナの実父。海に語ったところによれば、「もともと黒いオークションは戦乱などで散逸した美術品の回収を目的とする組織だった」が、「次第に私利私欲に走るものが増えたため、自分の代で終わらせると決意し、各国政府に組織の存在をリークした」。本人曰く「娘には2度と会えると思っていなかった」そうで、結果的に彼女を組織に巻き込んだことを後悔し謝罪していた。海との会話はごく僅かながら、彼をナナのパートナーとして認めていた。
病で自分の命が長くないこと、それに乗じて幹部たちが勢力争いをしていることを悟っており、これがリークの一因となっている。最期はナナたちに今まで集めた美術品を託し、「自分の乗った船を見届けるのが船乗りの仕事」といって、崩落するアトラクシアと運命を共にした。
初代アマリリス
本名は麗子。シンドバッドの右腕にして組織のNo.2。かつて花連に所属していたが今は離反している。白水仙とはライバルかつ親友で、本名で呼び合う仲だった。雪乃を誘拐し、アマリリスたちをアトラクシアにおびき寄せた。黒狼の実母であり、死に際に「唯一の心残りだった息子に会えた」と再会を喜んでいた。シンドバッドと共にアトラクシアと沈んだ。
シン
アマリリスに最初に接触した刺客。コインを託した直後、他の幹部に暗殺される。彼のコインと対応するドレスは黒狼の手に渡り、FDナナがイベントで着ることとなる。
ワイズマン
2人目の刺客。筋骨隆々の大男で、アマリリスを力押しで追い詰めるが、声斬波の前に斃れる。最期は負けを認め、自ら舌を噛んで死んだ。彼が持っていた「モルフォ=クリスタル」はかつて白水仙が盗むのに失敗した因縁の美術品だった。
B・ベニー
3人目の刺客。華僑らしき喋り方をする。指先で有刺鉄線を操りアマリリスを翻弄するが、彼女の動きに惑わされて電燈に鉄線を打ち込んでしまい、感電死する。彼の死をきっかけにアマリリスは刺客たちの命を守ろうとするようになった。彼の持っていた「蜘蛛女のキス」は黒狼に奪われてしまう。
ミザリー
4人目の刺客。全身毒の女と自称するとおり、体液に強い毒性を持つ(汗1滴で池に潜んでいた敵を全滅させたほど)。長いお下げにもナイフを仕込んでいる。体術にも優れ、目が見えない状態でも正確に髪に仕込んだナイフでアマリリスを狙える。戦闘後意識を失っていたところをアマリリスに助け出され、椎崎家で生活するうちにアマリリスの味方をするようになる。ジュニアに強引なアプローチをしている。
ジュニア
5人目の刺客。爆発物のプロで、通称・ニトロボーイ。小柄で華奢な体躯からジュニアとも呼ばれており、どちらの通称も嫌っている(が、結局はジュニアで通している)。全身に爆薬をテープ化したものを巻いており、それを少しずつ千切っては両耳のピアスから送る信号で爆発させる。刺客として送り込まれアマリリスに敗れるも、命を助けられて椎崎家で生活するうちにアマリリスの味方をするようになる。ミザリーを当初は鬱陶しがっていたが、終盤ではまんざらでもなさそうにしていた。
もとは『忍者飛翔』のキャラクター。
ファントム
6人目の刺客。本名はマルカス。幻術使いで、オカルト嫌いのアマリリスとは(対戦相手としては)相性が悪い。長髪に隠れて表情が読めない。猫のミックを常に従えている。死神の通り名のとおり、鎌を得物としている。彼の直属の上司であった組織幹部は彼の実父だったが、ファントムがアマリリスに加担したことで失脚し、「顔の皮を剥がれ、体内に爆薬を埋め込まれ」た。自ら組織を離反することを選び、椎崎家に居候する。
兵士
目だけが開いた仮面を被り、黒いターバンに全身を覆う長さの黒いローブを身に着けた集団。戦闘力に優れ、アトラクシアに侵攻してきたアマリリスチームと対決する。体内に爆薬を埋め込まれており、任務に失敗した際はその場で爆発させられる(後にジュニアはこれを利用し、ピアスの周波数を変えることで任意に彼らを爆発させられるようになった)。ファントムと父親の会話によれば、失脚した幹部らも同じ扱いを受けているようだ。

その他

黒狼(くろおおかみ)
初代アマリリスの息子にして、アマリリスのライバル。本名は九鬼英臣(くきひでおみ)。黒いレザーに身を包み、髪を派手に染め分けた男。ヨーヨーの使い手。アマリリスの依頼を横取りする、ベニーから奪った「蜘蛛女のキス」をアマリリスから強奪する、など露骨な妨害が目立つ。
兄を早くに亡くしており、よく兄の婚約者だった女性の見舞いに行っている(兄の名で彼女に手紙を書いていたが、それは見抜かれていた)。彼が怪盗をやっているのは彼女の手術費の工面のためでもある。
鳴沢(なるさわ)
白沢と同じ高校で、同じく文芸部所属の男子。最初に脚本草案を書き上げた。遠間といい雰囲気になる。
遠間 雪乃(とおま ゆきの)
映画の脚本担当のひとり。鳴沢の脚本に触発されて徹夜で執筆した。鳴沢といい雰囲気になっている。
大森(おおもり)
ハンバーガー屋の店長。映画撮影時にはエース役を務め、のちにイブ役の保健医と恋仲になり婚約した。

快盗アマリリス

1973年に『別冊マーガレット』11月号に掲載された読切作品。前述の通り『怪盗アマリリス』の原型作品。1975年、マーガレットコミックス(通巻ナンバー183号)『呪われた孤島』に収録。

あらすじ

椎崎奈々は全寮制高校に通う女子学生……が、連日のアマリリスとしての怪盗家業による寮の抜け出しがバレて退学となってしまい、実家のK町へと帰る事となった。K町では信楽コンツェルンの地方開発が行なわれ、町の人達が太ってしまうと言う異変が始まっていた。

地元のでの生活の中で自身が太り始めた事から、奈々は食料に麻薬が含まれている事に気付き、信楽コンツェルンの追求をはじめる。