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拳児/藤原芳秀

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著者: 藤原芳秀
巻数: 21巻

藤原芳秀の新刊
拳児の新刊

最新刊『拳児 21


出版社: 小学館
シリーズ: 小学館文庫


拳児の既刊

名前発売年月
拳児 1 2001-05
拳児 2 2001-05
拳児 3 2001-07
拳児 4 2001-07
拳児 5 2001-09
拳児 6 2001-09
拳児 7 2001-11
拳児 8 2001-11
拳児 9 2002-01
拳児 10 2002-01
拳児 11 2002-03
拳児 12 2002-03
拳児 13 1991-01
拳児 14 1991-05
拳児 15 1991-08
拳児 16 1991-10
拳児 17 1991-12
拳児 18 1992-02
拳児 19 1992-03
拳児 20 1992-04
拳児 21 1992-05

拳児』(けんじ)は、週刊少年サンデーに1988年2・3号から1992年5号まで連載された松田隆智原作・藤原芳秀作画の漫画作品である。単行本は全21巻(うち外伝1巻)、ワイド版全11巻、文庫本全12巻、コンビニコミック版全8巻が刊行されている。

概要

あらすじ

父、母と三人で暮らす小学生・剛拳児は、田舎の祖父・侠太郎から八極拳を学んでいた。そんなある日侠太郎は、日中戦争時代に恩を受けたかつての知人を訪ねるため単身中国へ渡り、そのまま消息を絶ってしまう。時が経ち、拳児は中学生、やがて高校生となり拳士としても成長したが、侠太郎の行方は未だ杳として知れない。トニー・譚との抗争事件で学校から無期停学処分を言い渡された拳児は、侠太郎を探すため、台湾・香港を経由して中国へと旅立っていった。

解説

  • 中国武術をテーマとした作品であり、格闘シーンも頻繁に登場するが、戦闘そのものがメインとなっている一般の格闘漫画とは異なり、主人公・拳児の成長を軸に、中国武術の技術論や思想・哲学などを描いた物語となっている。
  • 本作のストーリーそのものはフィクションだが、現実の武術史、実在した過去の武術家に関するエピソードが多数紹介されており、連載当時の高名な武術家がモデルとなったキャラクターも数多く登場している。
  • 本作において八極拳は、主人公が主として学ぶ武術ということもあり、非常にダイナミックに描写されている。そのため、劇中の八極拳には漫画的な誇張が多く、実際の八極拳の姿とは大きくかけ離れた部分も少なくない。しかし、本作が国内における八極拳の知名度向上に果たした役割は非常に大きく、特にそのアクションシーンは後の格闘漫画・格闘ゲームなどに大きな影響を及ぼしている。
  • 特にドリームキャスト用ソフト「シェンムー」は、ストーリーや拳法等において本作のオマージュといえる点が多数みられる。

登場人物

本作品は全編に亘ってフィクションとして描かれているが、連載時点で存命中の武術家をモデルとして描いた場合は別名で、没後の達人は実際の名前で描かれている。

メインキャラクター

剛拳児(ごう けんじ)
本作の主人公。正義感が強く、激情的で負けず嫌いな一面を持つ。幼少期は腕白で向こう見ずな子供だったが、やがて大人しく礼儀正しい少年へと成長。
教育熱心な母親の方針で、進学校の乾清大学付属中学に通っていた。しかし、暴走族との諍いに巻き込まれて付属高校に上がれず、不良校である紫竹院学舎高校へ進学。その後、トニー・譚との抗争で無期停学処分を下されたため、その期間を利用し、音信不通となった祖父・侠太郎を追って一人中国へと旅立った。
幼少時より侠太郎から八極拳を習い、侠太郎が中国に旅立って以降は、八極拳の稽古を続ける傍ら、様々な武術・格闘技を学んでいた。その後、張仁忠に本格的に八極拳を師事し、日本を出国した後は蟷螂拳や八卦掌など、数々の中国武術を修行している。
剛侠太郎(ごう きょうたろう)
拳児の祖父であり、八極拳の師匠。明るく子供っぽい性格だが、義侠心に溢れ曲がったことを許さない。武術家としての技量は非常に高く、暗勁

を使いこなすこともできる。

青年時代、日中戦争に従軍した際に滄州で負傷。その時に命を助けられ友人となった中国人農夫の縁で、八極門の拳士・孟修齢に弟子入りした。終戦後、一門の協力を得て日本に帰国。老境に入り、友人との再会の約束を果たすべく中国に旅立ち、消息不明となった。
トニー・譚(たん)
ベトナム出身の華僑。洪家拳と流星錘の使い手で、愚連隊を率いている。戦争によって家族と離れ離れになり、シンガポール、香港を経て横浜へ来訪。異国でたった一人幼少時代を生き抜いてきた過去から、強くなることに執着する粗暴で残忍な性格となった。
張仁忠に何度となく八極拳を師事しようとして、その都度拒否された。そのため、張から直々に技を学び、かつ生い立ちや境遇も正反対の拳児を激しく敵視している。その後の対決で拳児に二度敗れた後、修行のため中国本土に渡り、心意六合拳を学んで拳児に復讐戦を挑んだ。
モデルはアメリカ在住の南派拳法家、トニー・チェン。チェン自身も本人役で劇中に登場し、譚とは義兄弟の間柄という設定になっている。本作品において連載時点で存命の人物は架空の人物として描かれたが、唯一トニー・チェンだけは存命かつ本名での登場であった。

日本

市村太一(いちむら たいち)
拳児の友人。小学校、中学校と拳児の同級生で、高校は付属高校に進学。肥満体型で、小学生の時は気の弱いいじめられっ子だったが、侠太郎から形意拳の手ほどきを受け、自ら克服した。
風間晶(かざま あきら)
拳児と同い年の少女で、テキ屋・関東大和屋一家の元締の娘。小学生の時の縁日で拳児と出会い、以来拳児に対して好意を寄せている。中学生時代は暴走族「鉄羅漢」に入るなど、非行に走っていた。拳児との再会をきっかけに自分の目標を見つけ、名門高校に進学、後にオートバイレーサーとなる。
井上(いのうえ)
暴走族「鉄羅漢」のリーダー。拳児が中学生の時に一対一で戦い、実力を認めて友人となった。対立グループとの乱闘を機に暴走族をやめ、張仁忠の店でコック見習いとして働いている。
堀田豪士(ほった たけし)
松濤館流空手を学ぶ少年。高山と一緒に侠太郎を訪ねた時に、拳児と知り合った。後に高校チャンピオンとなり、ニュースでそれを知った拳児と再会、それをきっかけに高山から、空手以外の技の手ほどきも受けるようになる。
高山双八(たかやま そうはち)
侠太郎と親交のある空手家で、松濤館流の師範。空手以外の武道・武術にも精通しており、拳児と堀田に様々な古武術の技を指導した。モデルは國際松濤館空手道連盟最高師範・金澤弘和。
張仁忠(ちょう じんちゅう)
横浜中華街で中華料理店を経営する中国人。八極拳の達人で、井上の縁で出会った拳児を弟子に迎え、本格的に八極拳を伝授。拳児が中国へ渡る際には、ユニオンの一員として台湾の劉月侠に引き合わせるなど、様々なバックアップを行った。
モデルは在日華僑の中国武術家・張世忠。張は李書文の孫弟子にあたる八極拳の達人であっただけでなく、銀座で中華料理店「東生園」も経営していた。

台湾

劉月侠(りゅう げつきょう)
李書文の最後の弟子。台湾総統府侍衛隊の武術教師をしており、その傍らで自ら見込んだ数人の高弟に八極拳を指導している。後に拳児を直弟子とし、正式な八極門の門人として迎え入れた。八卦掌の達人でもある。
大陸・滄州の出身で、青年時代は中華民国の工作員として活動していた。戦後は台湾に渡り、武術と関わることなく静かに暮らしていたが、総督府に武術師範として招かれたのをきっかけに、自らの技を後世に伝える作業に乗り出す。モデルは李書文の実在の関門弟子・劉雲樵。
蘇崑崙(そ こんろん)
劉月侠の高弟。台北で診療所を営みながら、学生に蟷螂拳を指導している。生まれ故郷の台南で張徳奎から蟷螂拳(秘門蟷螂拳)を学んだ後、劉に弟子入りし八極拳を学んだ。小柄な体格の明るいお調子者だが、その実力は高い。拳児の台湾滞在中、自宅に拳児を寝泊りさせ、蟷螂拳と八極拳をコーチした。モデルは劉雲樵の直弟子・蘇昱彰。
田英海(でん えいかい)
蘇崑崙の台南時代の兄弟弟子。蟷螂拳の他、硬気功、ムエタイをはじめ様々な武術を学び、兵役中は陸軍で格闘技教官を務めていた。張徳奎から破門されたことと劉月侠への弟子入りが叶わなかったことを恨み、黄銀山と共に張一門と蘇崑崙に嫌がらせをしている。一度は試合で拳児を圧倒するも、その後蘇の下で修行を積んだ拳児と再戦し惨敗、この敗北を機に自らを改めた様子が見られた。モデルは松田隆智の元教え子で、「フルコンタクトKARATE」誌の編集長だった山田英司。
黄銀山(こう ぎんざん)
蘇崑崙の台南時代の兄弟弟子。台南の有力者の息子で、権力を笠に着て好き放題振舞っている。田英海と同じく、自らを破門した張徳奎と蘇崑崙を恨み、数々の嫌がらせを行っていた。中国から渡来した黒社会の殺し屋を雇って蘇の命を狙おうとしたところを、単身邸宅に踏み込んできた蘇に殺し屋共々叩きのめされる。

香港

閻大旺(えん だいおう)
香港・九龍城の実力者で、羅漢銭等の暗器の名手(羅漢銭は金銭鏢とも呼ばれる)。ユニオンの幹部でもあり、拳児にユニオンの様々なしきたりを教育した。通称・閻魔大王。
閻勇花(えん ゆうか)
閻大旺の姪。大旺から羅漢銭、劉月侠から剣術(崑吾剣)を習っており、その強さから小説の主人公にちなんで「十三妹」と呼ばれている。
ボビー
九龍城の住人で、閻大旺の身内の一人。大陸出身。勇花とよく行動を共にしており、映画スターになることを夢見て日夜蟷螂拳の修行に励んでいる。
ジョニー・王(ウォン)
香港の愚連隊「天友楽」のリーダー。蛇拳の使い手で、トニー・譚の香港時代のライバルだった。黒社会とも繋がりがあり、閻大旺の失脚を目論んでいる。拳児はジョニー・王との戦いで、実践における虚実の重要性を学ぶ事となる。

中国

朱勇徳(しゅ ゆうとく)
ユニオンの一員。強氏八極拳の使い手で、八極拳の腕は滄州一と称されている。気性が激しく、初めは日本人ながら八極拳を学んでいる拳児を敵視していたが、やがてその実力を認め侠太郎探しに協力、別れ際には強氏八極拳の歩法(活歩)を伝授した。モデルは強氏八極拳の名手・朱宝徳。
尹東侠(いん とんきょう)
侠太郎の恩人・尹春樹の孫。腕力はあるが肥満体で動きが鈍く、周りからは大牛

というあだ名で呼ばれている。 鄭州で決闘を強要され命を落とした父親の仇を討つため、丁清真に八極拳を師事、その後嵩山少林寺に入門した。拳児を兄と慕っている。

李長典(り ちょうてん)
趙堡鎮で農業を営む老人。拳児の使う太極拳・忽雷架を創始した李景炎の子孫。飢えて行き倒れになっていた拳児を介抱し、陳家溝の陳諸才を紹介した。気功の達人で並外れた太極拳の技量を持っているが、その拳法の実力は誰も知らない。
張猛炎(ちょう もうえん)
趙堡鎮出身の太極拳の達人。文化大革命の際に父を殺されたショックで人間性が歪み、以来、張狠子

のあだ名で呼ばれる暴れ者となった。趙堡鎮の外れにある、かつて李景炎が修行した場所を聖地と見なしており、無断で立ち入った拳児に重傷を負わせる。その後、陳諸才のもとで本格的に太極拳を学んだ拳児と再戦し敗北、改心してひとり村を後にした。

悟空(ごくう)
かつては少林寺の拳士だったが、文化大革命の際に紅衛兵と乱闘を起こし、自ら少林寺を去る。その後強盗団『夜叉王』を結成して、少林拳の心意把をメンバーに伝授、紅衛兵襲撃を繰り返していた。文化大革命が終わった後も夜叉王の活動を続け、リーダーとして老君山に篭もっている。
夜叉五(やしゃご)
夜叉王五番目の幹部。元は鄭州のゴロツキで、滄州を始めとする河北省の武術家を敵視している。少林寺へ向かう拳児を騙して紹介状を奪ったが、夜叉王幹部の証である短剣を取られ、拳児を執拗につけ狙う。
李書文(り しょぶん)
清朝末期から中華民国時代に実在した、伝説的な強さを誇った八極拳の拳士。拳児の使う李氏八極拳の祖でもある。劇中に本人が登場することはないが、侠太郎の訓話や劉月侠の昔話といった形で、その強さや人物像に関するエピソードが度々紹介されている。最後は毒殺されたとの説がある。また『外伝』には、李を主人公とした短編が6編収録されている。
実在の李書文については、李書文の記事を参照。

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