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文庫版 コーセルテルの竜術士/石動あゆま

共有

著者: 石動あゆま
巻数: 1巻

石動あゆまの新刊
文庫版 コーセルテルの竜術士の新刊

最新刊『文庫版 コーセルテルの竜術士 2


シリーズ: IDコミックス


コーセルテルの竜術士物語』(コーセルテルのりゅうじゅつしものがたり)は、石動あゆまによるほのぼのファンタジー漫画。月刊『コミックZERO-SUM』(コミックゼロサム)で連載していた。単行本は2009年7月現在、第8巻まで刊行された。以前、他誌で連載されていた『コーセルテルの竜術士』(全4巻)の続編。また、コミックマーケットや雑誌の誌上販売で売られている「zero-sum」(コゼロサム)に番外編を掲載したり、コミックス2巻、3巻で設定資料集の応募者全員サービスを行ったりもしている。また、2007年、2008年にはドラマCDが誌上にて販売された。2009年9月には続編『コーセルテルの竜術士〜子竜物語〜』が開始(2016年5月現在、コミックス第8巻まで刊行中)。その後、2013年2月(4月号)から、新連載『イルベックの精霊術士』が連載していた。(コミックス全二巻)

概要

「コーセルテルの竜術士物語」は竜と精霊と獣人、そして少数の人間が暮らす国コーセルテルを舞台に展開する、ほのぼの子育てファンタジー(しかし、実際にはかなり詳細な世界設定がなされたハイ・ファンタジーである)。物語の主役となるのは竜の子と、彼らを守り育てる人間=竜術士たち。毎日色々な事を学びながら成長していく子竜達と、共に日々を生きる竜術士。さらには精霊や獣人なども交えての、元気で且つ穏やかな日々が描かれる。殆どが一話完結式で物語は進むが、前後編、あるいは中編を挟んだ構成になる事も。少年漫画と思われがちだが、実際は少女漫画として位置づけされている。

物語は現在までに三部構成を取り、第一部が物語全般のキャラクター・設定紹介が主な「〜の竜術士」。第二部がストーリー性と話の核心に触れる「〜の竜術士物語」。そして第二部終了から間をおいて第三部「〜の竜術士 子竜物語」の三部目が存在する。その他、公式外伝として単行本に付属する小冊子、ドラマCD、そして作者の公式サイトにて書かれる内容もここに加わる。

イルベックの精霊術士についても記載する。

世界観

生物学的に全ての種族は異性間繁殖が可能(第二部までに精霊の混血は見当たらないがそれらしいセリフはある)、生まれた子供は全て母親側の種族で生まれ、そこに父方の血筋と能力が加わることになる(例を挙げれば、人間の女性メリアと魔人の男性の間に生まれたウィルフは「半分魔人の血を持つ人間」。母親が風竜と人間のハーフで父親が人間のミリュウは「風竜の血を引く人間」)。コーセルテルの物語では多種族同士の混血が当たり前なので、混血ゆえの微妙なニュアンスが各所に存在する。

コーセルテルについて

険しい山と深い森に囲まれた、竜と精霊と獣人、そして竜術士が住む国。遥か昔には「竜の都コーセルテル」と呼ばれ、多くの竜と竜術士が住む都があったが、魔族の襲撃などによって衰退・滅亡し、現在では国というよりも隠れ里のような、穏やかでのんびりした暮らしが続いている。その広さはかなりのもので、湖や広大な森、高い山などが地平線の彼方まで続いている。特異的地理状況により人にはほとんど踏み込めない場所にあるがその気候は温暖で、かつ暑さが耐え難くなることもない、過ごしやすい土地柄である。

外界から隔絶された世界ではあるが、竜術士のほとんどが外の世界出身であることからも分かるように、時おり人間が自力で山と谷を越えてきたり迷い込んだり、引退した元竜術士が後継者候補を連れてきたりすることもある。所在についてはうっすらと知られているものの基本的には極秘的扱い(詳しくは後述)。ただしウィルフが所属する「郵便組合」は配達の都合で知られている。

イルベスについて

コーセルテル以外に国名が解っている外界は、術士の一人エレの故郷である小国イル・カレナスとそこを併合した大国カルヘーツ。そしてコーセルテルと深く関わりのあるイルベス地方のイル・レネイスである。イルベスという名は地方名なのだが、ここにはコーセルテルの大精霊(後述)の片割れである「旅の精霊イルベック」が存在する土地であり、事実上の姉妹地域のような物である。ただし、イルベスには精霊を酷使する「精霊術士の国」があり、コーセルテル側としては良い印象を受けていない。詳しいことは『イルベックの精霊術士』で語られた。

竜について

一般的にドラゴンの名称で親しまれる西洋竜と本質的には同じ姿をしている(竜本体としての平均身長は不明)。竜達は火竜(かりゅう)・地竜(ちりゅう)・水竜(すいりゅう)・風竜(ふうりゅう)・木竜(もくりゅう)・光竜(こうりゅう)・暗竜(あんりゅう)、そして今は絶滅した月の種族(何竜か不明)の計8種が存在する。卵生の生態系で言語形態はそれぞれ異なるが、共通語として人語を使用。 竜たちの暮らす「里」は族長の本家と、分家に該当する別里が世界各地に点在している。基本的に外界との接触はほとんどなく、コーセルテル以外で異種の竜と接触することは稀。里自体はパワースポットのようなものの近くにある(火竜の里なら火山など)。竜は自らの内に宿る力を用いて「竜術」という特殊な力を使う事ができる。これに関しては「竜術について」を参照。

普段は「竜術士の傍により多く居られる」「小さいと小回りが利いて暮らすのにも便利」という二つの理由により「竜人化術」を使って人間とほぼ同じ姿、大きさで生活している(特に用事がない限り本来の姿にはならない)。各竜族ごとに共通の容姿と能力が存在し、違いとしては人間より一回り大きく角ばった耳、頭の小さな二本の角がつき、身体・能力が未熟な幼竜にはこれに加えてバランスを取るための小さな尻尾がある(足など一部竜に近い者や、暗竜には背中に蝙蝠のような二枚の翼がある)。性格に関しては以下に挙げられるのはあくまで「平均的にこのような性格が多い」というものであり、同じ種族でも個人によって、また育った環境によって差はあるし、中には一族の類型に全く当てはまらない変わり者も居る。

人化状態の服装も人間が着用する物と機能的に変わりなく、各竜族ごとに特色があるものの、個人の好みで自由にアレンジ可能なようで服のデザインは様々。基本は丈の長いローブやズボン、スカートなどを好んで着ている。

それぞれの種族の性質により、光・暗は司る力が星の「外」にあるので「天の二竜」、それ以外の竜は星の「内」に眠る力を司るので「星の五竜」と呼ばれる。〜の竜術士第25話「夢を知るひと」の中で、「月の種族」について語られていたが、どのような力を有していたか、何故滅びたか、いつ滅びたかなど全く不明。現存する竜族全てに「月」をかたどったアクセサリーが伝統装束内に付属する。

竜には、8部族をそれぞれ束ねる族長と外敵行為から部族を守る守長。分里の長である里長と防衛要員の里守長が存在し里の秩序を維持。さらには全部族を統一し頂点に立つ「竜王」が存在した。竜王となるには8部族の中で「月の竜術士」によって育てられた子竜にのみ即位することができるのだが、詳しい事情はわからず現在は空位のままとなっている。

竜の中には変種と呼ばれる竜が産まれることがある。突然変異で特殊な力を持った竜が産まれることであり、多いのは一つの能力に特化した竜で、クレイベルやフェルリは木竜の変種、花の竜を見たことがあるという。花の竜は花にだけ特化していて、薄紅色(変種は各竜の既存色とは違う色で産まれる)をしていて四季の精霊の干渉すらはね除けて花を咲かせられたが、変種は体が細く、寿命も短い。治療も各竜によって違う。特に木竜は変種が産まれやすいとされている。今いる変種はプレア。

子竜について

竜の成長は本来、同種族(父母その他)の間で行われる。この状態でも問題なく成長するが、そこに人間が関わることでより巨大な術の使用や効率のいい能力の発揮を成竜以上に引き出す事ができる。そのため、竜の都時代から子竜を(主に卵の時代から)竜術士に預け、養育させる。これが竜術士の始まりとなった。当時から竜術士に教育をしてもらうのは竜社会においてエリートコースを約束されたことであり、それは現在になっても変わりない。コーセルテルに来る現代の子竜は里での決定に基づき預けられてくる。預けられた子竜は将来里長や守長、教育係など重要な役職になることを望まれているがあくまで自分の意思を優先される。それの選択基準がどうやって決まっているのかは不明。

成長する際、人間のように何年経てば何歳という年の取り方ではなく、精神の成長に伴って身体の成長速度が変わり、精神面が成長すればそれだけ成長も早まる。ただ幼い竜は話すのが苦手なので、心言(一種のテレパシーのようなもの)で相手へ意思を伝達をする(この話し方は本編中では他と異なる吹き出しで表現される)。竜術士の補佐役は補佐竜と呼ばれるが、これも上記の理由で責任感がそのまま成長に表れる一番竜がなることがほとんどである。補佐竜は弟や妹の世話をしたり、竜術士が子竜を少年竜にするときの手伝いをする。

竜は大きく分けて四つの成長段階を経る。第一段階で卵のまま生まれてくるが、この卵は人間の成人が両手で一抱えする程の大きさで大変固く、そうとうな衝撃にも耐えうるが、反面この強固なまでの殻により力の弱い子竜は自力で出てくることができず、出てくるには親竜か竜術士が手助けしてやる必要があるが、場合によっては卵側が相手を拒み、中々生まれない。卵の耐久年数もかなりのもので、卵の中の子竜はそのままの状態で一千年は生き延びることが可能。年季が入れば自我意識が確立され、簡単な術の使用が可能となる。孵化を手伝う相手が見つからない場合、この卵の時期(通称卵ちゃん)に相手が見つかるのを黙って待つしかないが、本編中で発見された三千年前の卵は流石に時間が経ち過ぎて居たために、孵ることができなかった。

第二段階として少年竜への変化がある。これにも第三者の手助けが必要となり、成長する際に数か月の眠りに付くが、そのままでは眠りすぎ目が覚めなかったりと難点ばかりがおきるので、親や竜術士がつきっきりで見守る必要がある。

上記二点は、コーセルテルの主軸として活動するマシェル家の子竜の成長と共に内容が明らかとなるため、以降の仕様は不明。なお、卵を抱いていれば竜術士(恐らく竜も)は何となく性別は分かるとのこと。

竜術士が子育てをする能力は、術資質とは別系統の力であり、竜を育成すればするほど能力は衰退する。前述した一番竜が補佐竜となるのも、竜術士の子育て能力が最大の時期に育てられたために基本能力値が他と異なるのがそもそもの理由。子竜を育てられることが術士としての条件であるため、育児能力の限界を迎えた時が世代交代の時期でもある。

竜の種族について

星の五竜 竜の都が滅んだ後も世界各地で暮らしている。

  • 火の力を司る火竜
    赤茶色の髪と黄色の目を持つ。気質は陽気で豪放。反面、短期で喧嘩っ早いが彼らの荒っぽさはコミュニケーションの一つでもあるので、後に引きずることは少ない。炎そのものを操る他、一定空間の熱温を調節することもできる。火傷をしない体質だが、水に濡れることと、寒さが苦手。極端な方向音痴が多いのもこの一族の特徴。
  • 水の力を司る水竜
    水色の目と髪の色を持つ。明るく快活で社交的。幼い頃から異性に対して非常に惚れっぽく、好みの異性を見つけると人・竜に関わらず積極的にアプローチをかける。なぜか時おり両手を広げて呆れたように首を振る癖がある。水の成分の調節から水流の導きまで操ることができ、水に濡れても風邪は引かず溺れることもないが、暑さには弱い。
  • 大地の力を司る地竜
    目と髪の色はともに濃茶。象牙のような牙飾りを一族共通で身に着けている。真面目で努力家、そして読書が大好きで知識が豊富で、「知恵の竜」と呼ばれる。ただし、気質上あまり外に出歩くことがないため、知識ばかりが先行して経験不足になりがちなのが欠点。高い所には行きたがらない。物の重みを感じない(重力を調整できる)体質が備わっており、重い物も楽々と持ち上げられる。術としては地脈を読んだり、地面に埋まっている物を見つけたりと地味なものが多い。(地震を起こしたり派手なことも出来るようだが、危険なので禁じられている)術が地味なため、知恵をもって困難に対処しようとすることも、「知恵の竜」と呼ばれる由縁。基本的に苦労性の性格になりやすい。
  • 風の力を司る風竜
    銀色の髪と、独特の光彩を放つ同色の瞳を持つ。その気質はやんちゃでいたずら好き。じっとしているのが苦手で常に面白いもの、新しいものを求めて飛び回る。地下に潜ったり水に濡れたりするのは苦手である。風を操り空を飛ぶのが最も得意。相手の身に纏う空気の匂いにも敏感で、一度会った相手は姿形が変わっても見間違えない。人化の術が余り上手くはない。風竜の里は未だに初代風竜王の血筋にこだわっているところがある。
  • 植物の力を司る木竜
    髪は浅い若葉色で、瞳の色は深緑。あらゆる植物の成長の促進補助に最も長けている。その中には薬草も多く含まれるため、コーセルテルの医療は基本的に木竜術士の仕事となっている。風竜と同じくいたずら好きだが、彼らの場合は術などを使った手の込んだいたずらを好む。暑い所が苦手。地上の里単位では竜族の中で一番数が少ない。

天の二竜 三千年前の事件で都が滅びたときに元の里から外(宇宙)に移住した竜族(移住したのか、元からそこに分里でもあったのかについては第二部までには不明)。少なくとも空気のない場所でも平気。 竜術士無しでは地上に居ることが難しい。

  • 光の力を司る光竜
    髪は鮮やかな金髪で、目の色は個人によって異なる。物腰は上品で落ち着いており、どことなく貴族的な雰囲気を漂わせ、衣装にはフリルを多用。性格も穏やかだが、自分の憧れた対象にはどこまでも一途。その力の源は太陽の光と、それを反射した月の光。自ら発光する術、陽の光の下に居る対象を探索する術などが使える。里の移住先は月。
  • 暗闇を司る暗竜
    目と髪の色は漆黒と形容できる程の黒。背中には二枚の蝙蝠のような翼があるが、これは「暗竜の不安の証」と言われており、安心しきった状態の時は仕舞われている。剛毅な火竜とは正反対で無口、無表情で感情をほとんど表に出さない。しかし自分が心を寄せる人間にはとても強く執着する。
    その力は七竜の中でも飛びぬけて大きく通常一人で複数の子竜を育てられる竜術士でもメリアは一度に二人しか育てられず、竜術士の間ではとある約束事が代々伝わっている。、戦争時代竜の都最後の竜王に暗竜がわざわざ選ばれたという程純然な能力としては竜族最強。彼らが操るのは暗闇なので辺りを暗くするのが基本術だが、「空間」を操るのも力の範疇らしく、一定空間内から対象物(空気、炎など)を消滅させたり、同調術によって空間を跳び越して移動することもできる。音の類を操る術を苦手としているためか発音に関しても上手くなく、寡黙な性格もあいまって言葉の初めに「…」が付く。
    三千年前に「竜都コーセルテル」が滅亡した後、暗竜の一族は天空に旅立ってしまっており(卵の耐久年数から考えておそらく一千年ほど前)以降のコーセルテルにいる暗竜たちはその時に彼らが残した卵から生まれている。竜術で意思疎通のやり取りはできるが、里が宇宙のどこにあるのか、一族がどういう状態になっているのということがよくわからないので、基本的に里から新しい竜が来るということはなく、他竜と違い将来を嘱望されて育てられるのではなく、卵の耐久年数が来る前に孵化させなければならないというのが実状。暗竜達は成長後一族の元へ旅立ち、メリア家の元で養育されているラルカとエリーゼ、マシェル家のナータが地上に残る最後の暗竜であったが、後に暗竜一族が孵らなかったタマゴを託し、プレアが産まれている。
    このまま彼らが全員旅立ち、女性であるラルカ・エリーゼが卵を残さなかった場合、月の種族に次いで地上から暗竜は消滅する運命にあり、闇の竜術士も同時に消滅する(暗闇の勾玉などによる補助で術そのものは残るが、術士としての存在理由がなくなる)のでメリアが最後の術士になるのではと思われていたが、プレアのこともあり、現状は先延ばしにされている模様。

竜術士について

竜の力を借りて竜術を使う人間のことを竜術士と呼ぶ。術士には生来の術資質により力の対象となる種族を幼少から守り育て、家族のようなコミューンを作っている。竜術士が得た力をコーセルテルの住人に役立てる代わりに、まだ幼い竜の子を守り育て、術を教える役目を持つことを示唆し「子守り術士」とも呼ばれる。現在のコーセルテルでは竜術士は各竜族ごとに一人ずつ、計七人と決められ、諸事情などで竜術士が交代した場合は先代は外に出なければならない(混血の場合は用途が異なる模様)。コーセルテルの場所は絶対秘密であるため外に出た者も口に正せないが、信頼のおける一人にだけは明かしてもいいということになっている(イフロフ談)。

竜術士は子竜に力を借りて術を使い、子竜はその感覚を感じることで術の使い方を覚えていく。成竜以上に力を引き出せる竜術士に育てられることは竜の将来にとって非常にプラスになるので、世界の各地に散らばる里の竜たちはこぞってコーセルテルに子竜を預けようとする。 重要となるのが、竜術においては竜が自分の意思で人間に力を貸すということが前提であり、逆に言えばいくら竜術士の資質が多く、強くても竜が力を貸さなければ術は使用できない。また術を使う際にかかる負担はほとんどが竜術士の方にかかる。前述したコミューンを築くのもこれが大きく要因する。

子育て以外の仕事に国中に残る竜都時代の遺跡の調査(昔かけられた術が不完全な状態で生きている場所や、老朽化していつ崩れてもおかしくない場所など)やコーセルテルに進入しようとする外来者の監視、外に出た者は竜術士候補の散策(一部誘拐もどき)がある。竜達も引退した竜術士に対しては出来る限りのことをしている。

現在の竜術士在任順位 ()内は在任した時の年齢、【】内は実際にコーセルテルへやってきた順番(子竜物語1巻限定版付属設定資料集より)

メリア(36)【1】→イフロフ(32)【2】→ミリュウ(14)【3】→カディオ(18)【7】=モーリン(21)【4】→ランバルス(29)【6】→エレ(20)【8】→マシェル(16)【5】

竜術について

術資質は人間に生まれつき備わる体質のようなもので、この資質が子竜を育てられる程大きいと認められる事が竜術士として認められる条件の一つである。

竜術とはその名の通り竜の力を源として発動、その系統別に火・水・風・地・木・光・暗・月の8つに分けられ、効果・種類・規模まで多彩なものがある。基本的に竜は幼竜の段階から成竜なみの力を持っているが、未熟なうちは力の使い方が分からず「術」として発動させることはできない。術を覚えるには他の竜や竜術士に使い方を習う必要がある。

同化竜術
文字通り竜と融合して力を行使する術。通常の竜術よりも大きな力を安定的に操ることができるが、その分身体への負担も大きい。
同調術
二人以上の竜の力を合わせて使う合成竜術。同化術ほど大きな力を使うことはできないが、その分負担は大きくなく、組み合わせ次第では実用的な効果を数多くもたらせるため、日常生活はもちろん子竜の術練習にもよく使われている。また同種の竜と異種の竜では組み合わせた術の効果も異なり、どれだけ多くの属性を組み合わせられるかは竜・術士の腕前と資質次第。
術道具
竜の力を込めた特殊な道具のこと。持っていると竜が居るのと同じ効果があり、子竜を育てられるほど資質が強くなくとも、ある程度の資質があればこれを用いて術を使うことができる。ただしその力は竜本人から借りるよりも低い。コーセルテルの竜術士達は、大抵自分の育てる子竜の属性の他にもいくつか術資質を持っているので、同調術の時やちょっとした術を使いたい時、竜が傍に居ない時などにこれを使用する。各術に対応した術道具は、光が「光の灯玉」、暗が「暗色の勾玉」、水が「水の小瓶」、地が「地の貴石」、木が「森の種」、火が「火の黒灰」、風が「風の小箱」、と呼ばれている。術資質を持たない人でも使える術道具もあるが、そちらは機能の限られた使い捨て。術道具にも使用限界があり、限界を超えると力に耐え切れず壊れてしまう。
後にカディオが本から術道具を組み合わせることによって、特性を組み合わせることが出来ることを発見する。

月の資質について

天の二竜・地の五竜の計七属性を使用することができる特殊な資質。これは他の先天性素質ではなく、後天的に身につけることができる。全ての資質を持つのはあらゆる種の術を操る力を使用するためであり、これを持っていることで沢山の子竜を育てられるようにもなるらしい。都の時代には月の属性を持つ人物を「竜王の竜術士」と呼び、その人物に育てられた「竜王」が存在していた。主人公マシェルは三千年ぶりに現れた「竜王の竜術士」でもあり、通常七人しかいない竜術士から例外として誕生した「八人目」である。

月の資質を得るには二通りの方法があり、幼少期にコーセルテル及びイルベスにいる月の精霊のどちらかと出会う必要がある。都の時代ではコーセルテルの「眠る精霊」と出会うことで比較的容易に月の術士を育てることができたのだが、都が滅び竜王を必要としなくなってからは次第にそれらの記憶も薄れ、資質を持つ人物も見つけようとしなくなった。しかし、この方法でナータ以下マシェル家の子竜達が資質を持つに至った。 そして、どちらかから月の資質を受け取ったかによっても力の質が変わってくる。コーセルテルから力を受け取った子竜達はシィに力の質についての話などを聞き、同じ気配に紛れて、コーセルテルから姿を隠す術を使えるようになった。これにより、コーセルテルの夢に取り込まれないことが可能となっている。

逆に「旅の精霊イルベック」は地理的に離れた場所にいることに加え、竜術士と歴史的に仲違いする精霊術士の国がそこにあるので、資質を持ったとしても竜術士として迎えられることはないに等しい(イルベス出身で資質を持つマシェルとカディオがやってきたのは偶然である)。

月の精霊について

二人居て、片方が旅の精霊イルベック。もう片方は眠る月コーセルテル。であり、イルベックの精霊術士などを通して詳しいことが語られた。 遙か昔にイルベックとコーセルテルはコーセルテルなどがある星に落ち、月に帰りたいと願うイルベックに対し、コーセルテルは星に留まることを選択した。帰りたいイルベックはコーセルテルとともに帰ろうとするが、コーセルテルは星に留まりイルベックと共に眠ろうとし、互いは相容れず、逢うたびに喧嘩となった。喧嘩は大嵐状態であり周囲の者はこれを災害と呼んでいた。

かといって仮にコーセルテルがイルベックと共に月に帰ってしまった場合、二人が居ることによってもたらされる様々な恩恵がなくなってしまう。(ヒトによってはコレも災いと呼ぶのだろうとイルベックは推測していた)
その後、始祖カレナスによってイルベックは人間の子供(女の子であり名はクレリア)に封じられた。これは人間として生きることにより人間の幸せを知れば月の力は災いではなく、護る力となるだろうと言われている。カレナス曰く「私たちの願いを聞いてくれた」。

竜術士以外の「術士」

  • 魔獣術士

魔人の力を源にする「魔獣術」を使う者達。本編では登場しておらず、唯一暗竜術士メリアがかつて魔獣術士であったことが語られている。その息子ウィルフが使う「瞬間移動術」も魔獣術の一つ。竜術同様子供の頃から育ててもらい術を身につけていたが、昔はわざわざ人をさらって育ててもらっていた。資質が必要かどうかは不明。

  • 精霊術士

精霊の力を借りて術を行使する者達のことを指す。ただし、魔人や竜が主で術士が従である竜術士とは逆に、精霊術士は中位以下の弱い精霊を司る場から無理に引き剥がして力を奪うために、精霊はもちろん竜や他の術士達の間でも忌むべき存在とされている。 成り立ちとして過去の竜術士が竜術を参考にして生み出した。そのため、資質系統などは竜術士と同一の物であり、多少の術式が異なるとはいえ基本的に精霊術士=竜術士での重複習得は可能。 また、同一であるために精霊と仲良くなれば自発的に精霊が力を貸してくれることもある。

作品に登場する竜以外の種族

術士対象

精霊

竜や人と並ぶ主要な種族の一つ。普段は人間の姿をし、言葉も交わすことができる。竜と同じように自然界の力を司っているが、彼らは数や種類が格段に多いために竜のようにはっきりと種族分けはされておらず、ただ司る対象に従って、「○○の精霊」と大雑把に呼ばれている。基本的には司るものの近くで個人ごとに好きに暮らしているが、春夏秋冬の四季を司る精霊たちはその力の性質上、長を頂点として厳しく統制され、力を振るう機会も制限されている。ただ、これ以外の精霊たちも、力の強い者が同じ種族の者をまとめたり、弱い者を守ったりする習性は本能的に備えているらしい。 コーセルテルを自分達にとっても特別な場所であると認識しており、そこに暮らす獣人や竜、竜術士たちとも友好な関係を築いている。 人間よりも寿命は遥かに長い彼らにもやがて老いる時は来るが、精霊の中には「眠りにつく」ことによって若い期間を長くできる者も存在する。ただし、余りに長い時間眠った状態が続いた場合、記憶も含めその存在そのものが消えてしまうこともある。 司る地が存在し、強い精霊ならば司る地から離れても何ともないが弱い精霊は司る地から離れてしまうと段々と弱り、消えてしまう。 同じものを司る精霊はみな兄弟のようなものであり、同じ大陸を司る者達は姉妹のようなものになる。精霊の兄弟には司る場を同じくして生まれる者と力ある精霊が分裂してなる者とがある。木の精霊は一つの木に一つがせいぜいで、お姉さんと呼ばれていても繋がりがあるわけではなく、「近所のお姉さん」のようなニュアンス。

また、人間(ひと)の世の精霊と言う種類もいる。これは人間の歴史と同じ頃に現れ始めた精霊の種類であり、人間を唆して精霊の住む場所をけがすために自然の精霊に怖れられ、人間と共にあることをのぞむゆえ、「竜術士をとられる」と竜族に怖れられている。人間が作るものから生まれる精霊で、大抵は人間の多いところで長年世代を超えて使われるものに宿ると言われている付喪神のような物、最大の利点としては司る地が移動可能な物体である事がほとんどなので、限度はあるが力が弱まることなく広範囲での移動が可能。
魔人

遥か昔、竜や竜術士たちと歴史に残る大戦争を繰り広げ、当時の竜都が滅亡した一因ともなった種族。現在はお互いの力が弱まった事もあって対立も沈静化し、竜と同じ様に自分達の里でのんびり暮らしている。マシェル家に住む魔人の幽霊ロズ・アルバはいかにも怪物然とした姿だが、これは三千年前の戦争時に彼らが術でわざと恐ろしい姿を取っていたためで、現在は竜人化した竜と同じ様な姿で生活しているらしい。コーセルテルには魔人はおらず、唯一人間と魔人の混血であるウィルフが居るのみ。

獣人

その名の通り人と獣を合わせたような外見をしており、コーセルテルの大半の住民は彼らを占め、多くはそれぞれの種族ごとに集落を作って暮らしている。彼らは食料や衣類などの生活に必要な品々を作っており、それらは竜や竜術士が生活していく上で欠かせないものである。 かつて滅んだ都の『竜術士』を復活させた千五百年ほど前に世界中から集められ、竜や竜術士の生活を支える代わりに竜術士が獣人を守るという約束が成立して今に至っている。なお外の世界では獣人の数は次第に減少しており、現在では竜たちの里の近くにしかなくなっているらしい。

  • ニアキス族

コーセルテルの獣人の中でも比較的馴染み深く、ポピュラーな種族。犬とキツネを足したような顔立ちをしており、ふさふさした尻尾を持つ。コーセルテルのほぼ中央にある湖の近くに集落を作って暮らしている。人懐こく穏やかで竜たちとはご近所付き合いをする仲。畑仕事を生業とするニアキス族は耳がピンとしており、家畜を育てているニアキス族は耳がたれている。住民の食料はほぼ彼らが生産している。

  • グイ族

背中に鳥のような大きな翼を持つ有翼人種で、グランガ山の頂上に住んでいる。服や織物を作るのが仕事で、竜や竜術士たちの服作りはグイ族の仕事である。羽根の色はすずめ色。あまり上手には飛べない。

  • ターフ族

地面に洞穴を掘りそこに暮らす種族。人間とモグラの合いの子のような姿をしており、体は小さく成人しても幼竜くらいの大きさしかない。穴の中から滅多に外には出ず、一生を一人で暮らすことも珍しくはない。武術訓練用の木剣や家具を作っているのは彼らである。

  • 水獣人ハイネリ族

地底湖の村に住んでいる水獣人の一族。(コーセルテルの竜術士物語7巻第49話で登場)陽の光が届かないため、村はうす灯り球でフワフワ光っている。地下水脈を流れてコーセルテルに辿り着いた、現水竜術士エレを助けた種族。

主要キャラクター

ここでは、コーセルテルで暮らす竜や竜術士の他、主要な登場人物について解説する。本作では人はもちろん竜や精霊など、全て「〜人」と数えている。キャストはドラマCD版のもの。

マシェル家

小高い丘の上にある遺跡(正しくは、土砂か何かで埋まった塔の露出した最上階部分)に住む竜王又は月の竜術士の家。最年長のナータから、下から2番目のカータまでは成長期が同じで、卵の孵化時期は違うがそれぞれ地・光・風・木・闇・火・水の順で頭文字がアカサタナハマになる。後にプレアとなる暗竜のタマゴを預かっていた。マシェル家の竜は全員が産まれてほぼ三年である。

マシェル
声:宮田幸季
本作の主人公である青年。冬の中頃生まれの18歳で七つの資質全てを持ち、七属性全ての術を身に着けたコーセルテル八人目の竜術士。元々はイルベス地方のある村で暮らしていたが、幼い頃に天災で家族を亡くし、唯一生き残った身内である出稼ぎ中の叔父二人を探して旅に出ていた所をミリュウの母エカテリーナに出会い、コーセルテルへと連れられて来た。
作中で「コーセルテル一」とよく評されるが、それは「一番術が使える」、「一番子守りが上手い」という2つの意味合いがある。優しく穏やかで、とにかく子竜たちのことが大好き。時にそれが行き過ぎて甘やかしてしまうこともある。自分のことではほとんど怒らないが、子竜たちが危険な目に遭ったりした時には本気で怒るし動揺もする。家事全般、特に炊事が得意で彼の作る料理はおいしいとコーセルテルでも評判であるが、本人曰く裁縫だけは苦手。
好物は蜂蜜。趣味はとにかく子竜にかかわること全て。七属性全てを持っていることから「竜王の竜術士」たる資格を持つが、本人はそうは名乗らずあくまで一人の「竜術士」として暮らしている。7竜全員を補佐竜にするためにこっそりその準備を進めていたが、一部には知られていた。いつか、行方不明の叔父達を探すためにコーセルテルを出るつもりであったが、そのうちの一人が木竜術士カディオであったため、現在どうするつもりかは不明。
周囲の助けや理解もあり子竜達全員を揃って少年竜にすることが出来た。
『イルベックの精霊術士』では子竜達の力を借り、コーセルテルの暴走を押さえつけ、エトワスとコーセルテルが会話をする時間を作った。
ナータ
声:下野紘
暗竜の男の子でマシェルの一番竜。無口無表情、会話の時の言葉も必要最低限しか使わない。宇宙に旅立った暗竜族が残した卵の最後の一つから生まれ、卵の中に千年近く居たため精神的な年齢は他の子竜と比べてかなり高く、無茶をしがちなマシェルの良きフォロー役で下の子竜たちの面倒見も良い。物事全てをマシェル中心で考えているので、時々そのために他のことを二の次にしてしまうこともある。
術もその頃から使えており、幼い頃のマシェルと卵越しに会話もできた。その時に彼と「竜術士の約束」をしており、その数年後に約束どおり彼の一番竜となった。プレアが孵るまでコーセルテルに残る暗竜の男性としては最後の一人だった。
サータ
声:竹内順子
風竜の男の子でマシェルの二番竜。やんちゃでいたずら好き。冒険心と好奇心が旺盛で色々な場所や物に興味を持つ。逆境に強く非常事態では常に真っ先に立ち直るが、その非常事態を起こすのが一番多いのも彼本人。ただ最近では兄としての自覚も出てきており、ナータを気遣うなど成長したところを見せている。ミリュウの一番竜ジェンとは、コーセルテルでは珍しい血の繋がった姉弟で、額のバンドもお揃いのものを付けている。
アータ
声:高橋美佳子
地竜の男の子でマシェルの三番竜。真面目で読書好き。幼いながら、挿絵の全くない大人向けの本も読破してしまう。その一方、知識先行型で非常事態に弱い。二番竜のサータがいたずら大将なので必然的にマシェルとナータの留守中には彼の歯止め役になろうとするのだが、持ち前の知的好奇心を押さえられず結局一緒に冒険に行ってしまうことも多い。
マータ
声:真堂圭
水竜の女の子でマシェルの四番竜。種族の傾向なのか惚れっぽく、少々ませた所がある。好きな遊びもままごとやお姫様ごっこなど女の子らしいものが多い。ただマシェル家では男の子が多いので、ままごとなどがあまりできないのが少し不満らしく、お泊り会で女性が多い水竜家に行った時には嬉そうにはしゃいでいた。冬の精霊カシには出会った時から憧れていて、彼に会うのも楽しみの一つ。
タータ
声:福圓美里
木竜の女の子でマシェルの五番竜。おしとやかで面倒見が良い。何か問題があった時にはアータと共に抑え役にまわる。幼い木竜らしい罪のないいたずらを時折やっているが、要領が良いのでマシェルやナータ、アータ以外には気付かれていない。最近ではマシェルへのあまりの過保護をネタにナータをからかう場面が多い。木の精霊ルンタッタとは仲良し。
ハータ
声:仙台エリ
火竜の男の子でマシェルの六番竜。激しい気性の多い火竜族には珍しく性格は穏やかで人懐こく、のんびりしていて怒ったりすることもほとんどない。ただ火竜のある意味最大の特徴である方向音痴はしっかり受け継いでいる。最初の出会い以来アグリナが大好きで、術練習にも付き合ったことも。熱調節が得意で手先も器用。陶器作りやガラス細工を習いに、火竜家に度々遊びに行っている。
カータ
声:仲西環
光竜の男の子でマシェルの七番竜。はっきりした金髪に落ち着いた青の瞳。甘えん坊で少々泣き虫なところがあるが頑張り屋。マシェル家の七人だけでなく、コーセルテル光竜族の中でも最年少だったが、モーリンの所にきたセユウルが孵り「お兄ちゃん」になってからは目覚ましく成長し積極的に色々なことに挑戦している。太陽に反応するのか、とても早起き。

地竜家

森の中にある地盤のしっかりした家(劇中確認される限り、代々地竜術士が住み込まなければいけなさそうな立地になっている)にすむ地竜術士の家。代々地竜は知識を集める習性があるためだったのか、家の地下には代々の地竜術士と地竜達が集めた書庫が安置され、代替わりをするごとに地術で部屋ごと地下に沈め拡張する地下書庫(持ち出し禁止)がある。なおマシェル家に次いで多く登場している。

ランバルス
地竜術士を務める男性。秋の初めの生まれの35歳。外の世界で遺跡発掘(「盗掘」とも取れる)に携わっていたらしい発言が若干見られ、詳細は語られていないがこの時三歳年上の妻・ウィンシーダと出会い娘・ヴィアンカと共に暮らしていた。ヴィアンカはマシェルと同い年。ヴィアンカを置いてきた後ヴィンシーダを病気で亡くし、傷心でやって来たコーセルテルで当時の地竜術士ジリスの誘いを受け、竜術士となる。
肩幅が広くがっちりした体格。コーセルテルへ来た当初は前述の事情により非常に暗い性格だったが、地竜の子竜たちとの触れ合いの中で陽気で朗らかな性格を取り戻していった。地竜の子竜たちにとっては良き父親のような存在。その反面大雑把なところがあり、持ち出し禁止のはずの地下書庫の本も問題がない限り気楽に人に貸している。術は竜術士の中で一番下手だが、剣の腕前は我流ながらコーセルテル一。もっとも本人の性格もあって剣を振るっている場面はあまりない。
コーセルテルに害をなす者が入れないよう見回る役目を担っており、そのせいで家を空けていることが多い。それが原因で子竜たちが寂しがっているのも知っているが、心配をかけないようにと敢えて知らせないようにしている(ユイシィには打ち明けており、またロービィも薄々ながら気付き始めている)。趣味は読書と遺跡探検。子竜たちからは「師匠」と書いて「せんせい」と呼ばれている。
ユイシィ
ランバルスの一番竜にして補佐竜。黒い髪を腰まで伸ばした女の子。産まれてほぼ七年。落ち着いていて理知的だが少々真面目すぎる性格。一つ一つの動作が非常にきびきびしており、誰かに説教する時などは「キビッ」という擬音がつく。家を空けることの多いランバルスに代わりテキパキと家の中の仕事をこなしていくしっかり者。共に暮らしてきたランバルスに恋心を抱いているが、彼の亡き妻と生き別れた娘への想いも知っており、彼女自身の真面目さもあって今のところは家族以上にはなっていない。趣味は読書と写本。将来の夢はランバルスの書庫を充実させること。苦手は「黒いぞっとする虫」
ロービィ
ランバルスの二番竜。真面目で読書好きな少年。産まれてほぼ五年。初登場時はまだ幼い感が多分にあったが、ランバルスのような頼られる大人になりたいという憧れのためか次第にしっかりしてきている。暗竜の少女エリーゼとは遺跡での出来事(コーセルテルの竜術士物語第11話「ロービィの冒険記」参照)がきっかけでお互いに好意を持つようになり、以後交換日記(?)やデートを重ねている。
リド
ランバルスの三番竜。少年竜の男の子。産まれてほぼ四年。
クレット
ランバルスの四番竜。お下げ髪の幼竜の女の子。産まれてほぼ三年。

風竜家

風通しのいい数階建ての家に住む風竜術士の家。マシェルのコーセルテルでの生家でもあり(先代風竜術士エカテリーナに拾われたため)、マシェルと共に子竜がよく遊びに来る。「風竜王」に強い関心を持つという種族の性質からなのか、子竜の名前は歴代風竜王から。ただし性別は無視している。(初代風竜王の名前がシオリアで、四代目がミリュウ、六代目がロッタルクなので、エカテリーナからの慣習でミリュウが引き継いだからと思われる)

ミリュウ
声:緑川光
風竜術士にしてマシェルの義兄である青年。夏の初めの生まれの25歳。名前の由来は四代目風竜王ミリュウから。母方の祖父が風竜なので竜がいなくても術を使うことが出来る。ただし身体への負担が大きいため(同化竜術並に疲労する)あまり多用はできない。明るく気さくな好青年だが、人をからかうのが好きな面も。またマシェルと同じく少々天然ボケ気味である。自分の子竜たちも含め常に相手を「〜君」「〜さん」と呼ぶが、カディオやシオリアに対しては呼び捨て。生まれも育ちもコーセルテルなので、外の世界を知らず、その分それらへの憧れも強い。マシェルがコーセルテルに来てから竜術士として独立するまでの期間には一緒に暮らしており、今でも彼を弟のように可愛がっている。趣味は歌を歌うことと、術で遊ぶこと。
酒を一定量以上飲むと、その後数日間起きてこないという困った癖がある。
子竜達からの呼び名は「師匠」と書いて「ししょー」(「ししょう」ではない)。
『イルベックの精霊術士』にも登場。竜の血を引く人間として、精霊ではあるが人間でもあるエトワスに力の使い方を教えることになる。ヴィーカを一目見て、彼女がランバルスの娘・ヴィアンカだと気がついたりもした。大事なことで説明を余りしないのは母譲り。手紙が感覚的なのも母譲りである。
ジェン
声:〆野潤子
ミリュウの一番竜で補佐竜。常に元気いっぱいの女の子。産まれてほぼ十一年。髪は肩の辺りで切り揃えている。空を飛ぶのはもちろん、勉強から家事までとにかく楽しんでしまう名人。「面白い物はみんな素敵」と思っているので、メオの作る奇妙な陶器も彼女にとっては素敵な作品である。しかし、じっとしていることと水に濡れることは苦手。ミリュウとは以心伝心の仲であり、緊急事態にも慌てず的確に彼をフォローする。マシェルがコーセルテルに来たのとほぼ同時期に卵から孵っており、幼少の頃は一緒に暮らしていた。
マシェルの二番竜サータとは、コーセルテルには珍しい血の繋がった姉弟。夢はミリュウと世界一周すること。卵から出るのが遅かったが、これはミリュウの心の奥底の願い(コーセルテルから出たい)を感じ取っていたためである。いたずらもせず、いつも明るく振る舞っていたのも、ミリュウに心配をかけない、コーセルテルで楽しく暮らして欲しいためといった理由があったが、ミリュウの妹のことが発覚した時の事件が元で吹っ切れた(コーセルテルの竜術士物語38・39話「風向きが変わるとき」参照)。
名前の元は五代目風竜王の「ジェンファナー」
ロッタルク
ミリュウの二番竜。長い髪を三つ編みにした女の子。名の由来は大冒険で有名な六代目風竜王ロッタルクだが、男名であるのが恥ずかしいのか周りには愛称の「ロッティ」で通している。真面目できちんとした性格で、やんちゃ盛りのグレイスやゼインにはいつも振り回される。幼い頃はよくいたずらをしてはマシェルに助けてもらっていた。マシェルが独立して家を出る際、「マシェル君に頼らない、いたずらはしない」ことを誓い、今は日々それを実践するために奮闘中。その頃からの関係で今も彼を兄のように慕っている。
グレイス
ミリュウの三番竜。やんちゃを絵に描いたような少年でとにかく身体を動かすのが大好き。エレとカシの武術訓練も楽しみにしている。男の子なのだが、名の由来はなぜか絶世の美女と言われた七代目風竜王。
ゼイン
ミリュウの四番竜。グレイスと共に常にはしゃぎまわる幼竜の男の子。名の由来は八代目風竜王。
フアナ
新しい風竜術士見習い予定。ミリュウの妹でエカテリーナの娘(実子)。3歳→4歳。名前の由来は初代風竜術士フアナから。生まれついて風の力が強く、習ったりしなくても風を操ったりしていた。初めてミリュウとあったときもすぐに「あんちゃん」と分かったほど。エカテリーナから風の力を抑える術を習ってはいるものの、人外の力を持った者が人里で暮らすのは難しいため、諸々の問題が片付いたらコーセルテルにてミリュウに預けられる。『子竜物語』から風竜家の一員となった。一人称は「ふーな」。これは父親が自分のことを「ふーな」と言うと喜ぶから。

火竜家

土の中をくり抜いて陶器釜と鍛冶施設が一体化している火竜術士の家。家の中は年中暖かく特に工房は蒸し暑い。

イフロフ
火竜術士を務めるかたわら、鍛冶屋も兼業する男性。秋の終わり生まれの46歳。コーセルテルに来る前は妻であるフィナと共に鍛冶屋を営んでいたが、ある事件をきっかけに大ゲンカして飛び出し、火の資質を持つ者の例に漏れず極端な方向音痴によってコーセルテルに迷い込みそのまま竜術士として住み着く。
寡黙で口下手なところがあり、普通の受け答えは大抵「…うむ」で済ませてしまう。後に妻とは和解し、掟により一緒には暮らせなかったものの秘密は許可を得て全て話していた。彼女の死後、遺された娘アグリナを引き取るも、生来の口下手のせいで最初は会話もまともにできなかった。しかしマシェルらの協力もありそれも克服。現在は親子として仲良く暮らしている。火竜たちやアグリナからの呼び名は「オヤジ」。代替わり後、妻の墓がある村で鍛冶屋を営んでいる。
メオ
イフロフの一番竜で補佐竜。豪快で喧嘩っ早い、火竜族の典型のような少年。常にサラシの上に上着一枚と言う気合の入った服装をしており、火竜の弱点である水や寒さも根性で克服してしまった。趣味は陶芸だが、作る作品はどれもいびつなはにわのようなデザインで、面白いもの好きな風竜以外にはあまり受けが良くない。またこの陶器は非常に頑丈で落としても壊れず、彼はよくデザインをバカにされた時にこれでリリックを殴って泣かせている(加減はしているとのこと)。当初言い争いばかりだったアグリナとも今は随分打ち解けており、漫才まがいのケンカを繰り広げている。甘い物が好きという意外な一面もあり。夢は最強の陶芸品を作ること。火竜家の中では比較的方向感覚がまとも。
リタ
声:福原香織
イフロフの二番竜。おてんばな女の子で、アグリナとは「ケンカするほど仲がいい」を地で行く関係。彼女を「アグリナ姉ちゃん」と呼ぶ。怒ったり慌てたりすると両手を握り締めてぶんぶんと振り回す癖がある。
マノ
イフロフの三番竜。いつも元気な少年竜の男の子。代替わりの際にイフロフに着いていき、共に鍛冶屋をしている。
スウ
イフロフの四番竜。リタやマノと共に元気に駆け回る女の子。
アグリナ
声:野中藍
新しい火竜術士。初登場時は16歳で見習い。イフロフとその妻フィナの一人娘であり、外で母と二人暮らしをしていたが、母の死後、火の資質が強かったため火竜術士の見習いとしてイフロフに連れられてコーセルテルへやって来た。明るく面倒見の良いお姉さん肌の女の子で、ケンカっ早いのが玉にキズ。火竜たちとはケンカが絶えないが、それもコミュニケーションの一つである。普段は三つ編みお下げ髪に活動的な服装(以前見た女冒険者に憧れて真似たとのこと)だが、『海に行く夢』(竜術士物語第8話)では行商時代に身に着けていたおしとやかな装いで周囲を驚かせた。勉強が苦手で、コーセルテルに来た当初は術もイマイチだったが少しずつ上達している様子。最初の出会い以来マシェルに恋心を抱いているが、彼が色恋にとてつもなく鈍いため全く気付かれていない(一応、彼女がヒロイン……)。強い火の資質持ちの例にもれず方向音痴で度合いは親よりもすさまじく、目的地とは正反対の方向へ進んでしまうが、何度もマシェル家を行き来しているため、マシェル家には迷わず行くことができるようになった。
そんな彼女も『子竜物語3巻』にて正式に火竜術士になる。この物語は彼女の成長物語ともとらえることができる。
ヤチ
アグリナの一番竜の男の子。まだ赤子で、同時期に孵った暗竜のプレアとはケンカ友達。火竜には珍しいぱっちり二重。

水竜家

滝の流れる岩の脇に作られた、出入り口が複雑な水竜術士の家。子竜の名前は「つながりのあるものを」と考えて命名されており、上から順にしりとりになっている。

エレ
声:斎賀みつき
水竜術士を務める女性。冬の終わりの生まれの25歳。本名、アルセ・エレッダ・カレナス。(アルセは身分や地位を表すための言葉)元はイル・カレナスという小国の女王の妹であり、祖国が大国カルヘーツに併合され、姉がカルヘーツの後宮入りした後旅に出るが、その途中誤って河に転落、流されて来たところをコーセルテル地下住まいの獣人に助けられ竜術士となった。
気が強く凛とした雰囲気を持つが、それを隠そうと多少猫をかぶることがある。術のみならず剣の腕前も一流で、武術訓練では指南役を担う。すっきりとした佇まいで同性にも好かれる一方、いい加減な妥協や甘えを許さない厳しさも持っている。ミリュウに好意を寄せているが、マシェルと同様に鈍感であるため、今のところ進展は無い。カディオとは祖国にまつわる確執のためにギクシャクした関係が続いていたが、最近ではそれも改善されつつある。なお酒が入ると手に負えなくなるらしく、滝壺に飛び込んでしまうことも有るらしい。家事が凄まじく苦手で「料理が美味しくできるかどうかは運」とのことだが、お茶を淹れるのだけは得意。
リリック
声:代永翼
エレの一番竜で補佐竜。青い長髪を後ろで纏めた、整った顔立ちの少年。家事が凄まじく苦手なエレに代わり水竜家の家事全般を一手に引き受けている。基本的に人当たりは良いのだが、余計な一言をついポロッとこぼして事態をややこしくしてしまいがち。水竜らしくとにかく女の子が大好きで、同世代かそれよりやや年上が好みらしい。その中でもユイシィは本命で会うたびにアプローチをかけているが、悲しいまでに通じていない(お人よしが高じて、ユイシィの恋路を応援して身を引いてしまうことも多々)。一方で光竜のマリエルに想いを寄せられているが、こちらはリリックの方が気付いていない。将来の夢は格好いい大人になること。
クララ
エレの二番竜。水竜らしく惚れっぽく、少々ませている所もあり。リリックに対してはさらりとキツイことを言ったりもするが、内心では彼をきちんと認めてもいる。マシェルに憧れたりロービィに期待したりと、恋多き少女である。異性の理想像は「知的で物静かでかっこよくてやさしくて、あたしのためなら何でもしてくれるステキな人」というかなり贅沢なものだったが、何故か自分の好みとは正反対であるはずのニアキス族の少年オルタが気になるようになってしまう。
ラティ
エレの三番竜。ツインテールの幼竜の女の子。
ティルク
エレの四番竜。あまりわがままを言わない、大人しい幼竜の男の子。

木竜家

長い年月で大樹に半場侵食された遺跡に住む木竜術士の家。コーセルテル住まいの精霊達の駆け込み寺のような状態になっているらしい。

カディオ
声:三木眞一郎
木竜術士を務める長髪の青年。夏の初めの生まれの25歳。
家事全般から畑仕事(種をまき収穫した綿で機織→生地生成→衣服)まで何でも万能にこなす器用な人物。そのために他人の仕事まで引き受けてしまう苦労人な所もある(作者曰く器用貧乏)。
コーセルテルに来る前は精霊術士をしていたが、精霊を解放していたことがばれて術士仲間から追放され、その後エカテリーナに導かれてコーセルテルにやって来た。その背景から水竜術士エレに対して負い目があったが、ある事件によりエレの心を知り、最近では次第に関係が改善されてきている。当時コーセルテルには木竜術士がおらず空席状態だったため、事実上のぶっつけ本番で竜術士となった。特異な状況下で世代交代が行われたため、通常一人の竜術士につき一人の補佐竜を二人付けられた。初めての命名には混乱を極めたらしい。
木竜たちとは、ロイとノイのいたずらに手を焼いているのを除けば仲良く暮らしている。風竜術士ミリュウとは年が同じな事もあり、お互いを理解し合える親友同士(余談だが誕生日も同じである)。マシェルとは同郷のイルベス地方出身で、過去に旅の月の精霊と出会っていたらしく、全ての術資質を持つ(つまり、カディオも『竜王の竜術士』となれる資質があることになるが、現在は木の資質以外は自ら封印中。ただし、他の資質が竜術士となれるほどの強さがあるかどうかは、まだ明らかにされていない)。それ以外にも性格や容姿で、マシェルと似通った面が多いが、その理由は眠る月をめぐる騒動の後、判明した。
『イルベックの精霊術士』にも登場。クレリアが自分の妹弟子であることを知り、尽力してくれる。
ノイ
声:松本彩乃
カディオの一番竜でロイと共に補佐竜を務める女の子。ロイとは卵時代に一族が決めた婚約者同士で、いつも一緒に行動している。しかし本人曰く「そんなにいつも一緒じゃないわ。それにこれからもずっと一緒とは限らないわ」。以前は木竜術で妙な果物や薬を作って食べさせるなどのいたずらを他人に仕掛けカディオを困らせていたが、彼の過去やそれにまつわる苦悩を知ってからはきちんと竜術士の手伝いができる補佐竜になりつつある。もっとも術研究は止めたわけではないので木竜家の隠し棚には怪しげな研究の「成果」が大量に隠されており、そのことにカディオはとっくに気づいているが、いたずらに使わないならと黙認している。夢は壮大な夢を持つ人の力になること(今の所はロイ。ただし、もっと壮大な夢を持つ人が現われれば…)。
ロイ
声:鈴木千尋
カディオの二番竜でノイと共に補佐竜を務める。ノイとは一族が決めた婚約者同士で、常に見事なシンクロ振りを見せる。「手段の為に目的を吟味し実行する」性格で、術の研究が大好き。昔はそれでいたずらをしかけ周りに迷惑をかけていた。術の複雑な研究にかけてはカディオも認めるほどに優秀だが、基本の術に関しては年少のタータに教えてもらえとからかわれるなど、アンバランス。カディオの記憶喪失事件以降は責任感が芽生え、きちんと彼を補佐できるように頑張っている。夢は南海の小島に木竜術の実験パラダイスを作ること。二人