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月光条例/藤田和日郎

共有

著者: 藤田和日郎
巻数: 18巻

藤田和日郎の新刊
月光条例の新刊

最新刊『月光条例 18


出版社: 小学館
シリーズ: 少年サンデーコミックス


月光条例の既刊

名前発売年月
月光条例 1 2008-06
月光条例 2 2008-09
月光条例 3 2008-12
月光条例 4 2009-03
月光条例 5 2009-07
月光条例 6 2009-09
月光条例 7 2009-11
月光条例 8 2010-02
月光条例 9 2010-05
月光条例 10 2010-08
月光条例 11 2010-11
月光条例 12 2011-01
月光条例 13 2011-04
月光条例 14 2011-07
月光条例 15 2011-10
月光条例 16 2012-01
月光条例 17 2012-03
月光条例 18 2012-05

月光条例』(ゲッコージョーレイ、Moonlight Act)は、藤田和日郎による日本の少年漫画作品。話数の単位は「第○条」。

概要

『うしおととら』・『からくりサーカス』に続く藤田和日郎の連載作品。『週刊少年サンデー』(小学館)にて2008年17号より連載中。基本的に一話完結から数話完結形式の構成になっている。

御伽噺を題材としており、和洋問わず様々な御伽噺が登場し、物語に彩りを添える。登場する御伽噺は誰もが知っているメジャーなものから、マイナーなもの、作者自身のオリジナルなど様々であり、藤田の御伽噺への造詣の深さがうかがえる。藤田のお伽噺に対する感想や歯痒さが動機で描かれて いる。また、「おとぎばなし」の世界の存在は、物語のような英雄的、あるいは清廉潔癖で高潔な人物ではなく、時に不遇な身を嘆き、描かれる幸福に疑問を抱く1人の人間として描写され、その御伽噺(およびディズニーや世界名作劇場)に対するアンチテーゼ的な側面例えば、「シンデレラ」ならば『流されて手に入れた幸せ』、「フランダースの犬」ならば『自分の人生に誇りを持たずに死んだネロ』等。も持ち合わせている。

同氏のこれ以前の作品と比べ、残虐な描写はあるが直接的に描くことは抑えられており、コメディ&アクションの体制を保っている。また、スター・システムを取り込み、過去の作品のキャラクターのデザインの流用が多い登場のも特徴。

なお、当初は「月狂条例イギリスで19世紀に制定された月狂条例 (Lunacy Act)より」というタイトル案が挙がっていたが、諸事情で変更となったというBACKSTAGE vol.26

あらすじ

何十年かに一度、真っ青な月の光が「おとぎばなし」の世界をおかしくする。

おかしくなってしまった「おとぎばなし」の世界を正すべく、「月光条例」の使者である「鉢かづき姫」は「〈読み手〉」の世界に助けを求めやってくる。

偶然「月光条例」の極印が刻まれ執行者となった岩崎月光は、おかしくなってしまった「おとぎばなし」を正すための戦いを始めることに……。

登場人物

〈読み手〉の世界

主要人物

岩崎 月光(いわさき げっこう)
本作品の主人公で、現高校に通う不良。腕っ節が強く、非常に喧嘩っ早い。超が付くほどのひねくれ者で友達もいない。性根は真っ直ぐで行動力に優れ、弱い者いじめを嫌う正義漢だが、口の悪さと粗暴粗野な面が注目されて、近親者以外は本質に気付いていない。学業はよろしくないが、意見を汲んで集団を理屈でまとめたり、執行時に策を用いる事も多く、頭の回転は良い。相手の本心に食い込む鋭い洞察力と相手の言葉には耳を傾けて事情を理解しようとしっかりと会話しようとするため、他人の心情を理解できる。苦手なモノは、「お月サマ」、「本当のコトを言うコト」、「演劇部(エンゲキブ)」、「オヤジさん」の4つ。
貧乏なラーメン店「ラーメンいわさき」に住んでおり、配達などをしている。実は捨て子(養子もしくは拾われっ子)で、岩崎家とは血縁関係は無いが、不器用ながらも養(祖)父・徳三を実の父親のように慕っている。(こうした家庭事情により、帰る場所がありながらそれを拒絶するシンデレラには強い怒りを見せていた。)それ故暴力でチンピラ達から金を巻き上げてレジに投入しようとしたり強引に客引きしてしまったことがある(作中で彼が不当な暴力をふるったのはこれのみである)。幼馴染の演劇部とは兄妹同然の間柄だが、あまりにも多くの弱みを握られており、脅迫に屈して従わせられることも多い。悪友の天道を除き、人間の友達はいないがおとぎ話の住人たちからは慕われる。演劇部に図書委員、ホウソウブをはじめとして好意を寄せる女性キャラは多いが朴念仁で恋愛には極めて疎い。演劇部に対しては特別な感情を持っているらしいが、自覚はまだないらしい。
鉢かづき姫や演劇部の求めで動くが、徳三譲りの頑固さで自分の信念に従い行動するため、人々の求める助けとは別の答えを出すことが多い。このため月打とは別に、おとぎ話の世界の住人たちが抱える性格的な弱さや歪みを正して根本的な解決に導くことも多い。
なりゆきで鉢かづき姫を助けた際に顔面に月光条例の極印が刻まれ、執行者となってしまった。最初は全くやる気が無く、女性である鉢かづき姫を武器として振り回すことにも抵抗していたが、「一寸法師」の世界で、鉢かづき姫の使者としての覚悟を見せつけられ、徐々に執行者としての自覚と覚悟を備えていく。しかし一方で「薙刀の一撃を顔面で受け止める」、「300キロを超えたシンデレラの車を走って追い抜く」、また「鉢かづき姫が不在で極印が出ないにも関わらず素手で条例執行をする」、「強力な刀の一撃を兜等付けてないにも関わらず弾き返す」など、明らかに普通の人間では有り得ない身体能力が浮き彫りになってきている。基本的には鉢かづき姫を武器として使い執行するが、顔面頭突きや極印の力を拳に宿してのパンチで執行することもできる。桃太郎との戦いにおいて自分が人間ではない事を悟る。はだかの王様は月光の正体を知っている模様。
演劇部(エンゲキブ)
本作品のヒロインの一人で、本編において代表的な語り部。今時な性格をした女子高生。岩崎月光の幼馴染でもあるため、月光の秘密を大量に知っており、それをネタに月光を脅すことが多々ある。また、月光とは強烈なスキンシップ(「お互いの首を絞め合う」「尻をつねり合う」「顔面に膝蹴りを入れる」等)をみせる。正真正銘の八方美人で、活発明朗な性格から男女ともに人気があり、友好関係は幅広い半面、妬みを持つ者や後述の男遊びが多い彼女を快く思わない者も多い。家は裕福であるが、両親が多忙なため、家族愛には恵まれていない模様(しかし母親の紹介でヒーローショーのアルバイト経験があり、そのおかげで、ドレス姿でも本物の衛兵数人を負かす程の強さを身に付けている。)男性アイドルであるイデヤの大ファンでもあり、月光そっちのけになる程ミーハーな一面がある。鉢かづき姫を「ハッちゃん」、一寸法師を「イッスン」と呼ぶ。「ラーメンいわさき」のラーメンはお気に入りで、ほとんど毎回「ラーメンいわさき」で食事をしている。
「演劇部」はあだ名で、本名は今のところ不明だが、同じ演劇部の部員はおろか学校の教師にまでそのあだ名で呼ばれる程に浸透している。その名のとおり演劇部に所属していて、演劇のトレーニング(体作りやダンス、バレエ、発声練習など)は熱心にやっていて、まさに演劇人と言うべき人物でもある。しかし、それに反して「おとぎばなし」などといったものにまったく関心がない故、台本以外は読書もしない(これは物語が進んでも変わることはない)ため、「シンデレラ」、「ブレーメンの音楽隊」等、誰でも知っている有名な「おとぎばなし」でさえ知らない(逆に「鉢かづき姫」は舞台で姫を演じるため知っていた)為、同じく無知な月光を助けることは出来ない。(ただし、いざという時に言う言葉には何かしらの説得力があり、三条大臣の姫やシンデレラに大きな影響を与え、結果的に月打を解くのに役立っている。)
付き合っている彼氏の影響を受けやすい(それが興味の方に出ている)。過去に天道と付き合ったことがあり、身の上話を知っていた。月光に好意を持っているようだが、それを素直に表せず(この好意について十分理解しているのは、同じ演劇部の友達2人とシンデレラだけである)、そのため色々な男をすぐに取り替え、付き合う様子を見せつけることで、彼の気を引こうとしているようだ(そのため男達には手も握らせていない)。

キーキャラクター

岩崎 徳三(いわさき とくぞう) / オヤジさん
「ラーメンいわさき」の店主で、月光の育て親。常に自店のTシャツ(「麺 on the silver mountain」のロゴ付き)を着ている。彼が作るラーメンの味は珍味らしく(雑誌でも褒めているのか貶しているのか微妙な評価されている)、借金があるほどの貧乏生活を送っているにも関わらず、客にツケで食べさせるなど金銭に無頓着。
17年前の12月、妻との間に子供ができなかったため、里親(養孫縁組)の相談をしていたところ、神社の御神木のウロに捨てられていた赤ん坊の月光を見つけた。現在の月光の性格を作成した張本人だが、当の月光は不器用ながらも彼の事を慕っている。月光がケンカをしても警察沙汰になっていない事が自慢らしい(実際は署長の手回しにより無い事になっている)。
余談だが、容姿は『からくりサーカス』に登場した生方法安とそっくり。
高木 天道(たかぎ てんどう)
暴走族の間では「走り屋天道」として恐れられている。演劇部にとっては元彼氏だが、天道は演劇部に未練たっぷり。月光とは死ぬほど仲が悪くしょっちゅう殴り合いをするが、途中からぐだぐだになり決着がつかない。幼い頃は自衛隊の曹長だった父から鍛えられていた。その父親の死後は、再婚を理由に実母に捨てられ、自動車などの修理を行っている叔父の所に引き取られて、やがてメーカーとして発展し社長になった叔父の養子になった。チンピラに脅されている老婆を助けたり、演劇部にプレゼントを渡そうとするなど、意外と繊細な一面も持つ。その人柄のためか、不良仲間や実家の会社を勤める社員達に慕われている。また、シンデレラの本音に戸惑う一寸法師に他人を気にしていては幸せになれないと語るように、幸福になることについてはシビアな考え方をしている。
月打されたシンデレラに巻き込まれた事で、月光達に協力するようになった。月打時の記憶を持ち合わせるため、月光らの戦闘の援助を行っている。
工藤(くどう) / 図書委員(トショイイン)
本作品のヒロインの一人で、月光らが通う現高校の図書委員を勤める少女。祖父母が営む「工藤古書店」の娘。下の名前は現在不明だが、祖父母からは「かっちゃん」と呼ばれている。演劇部とは正反対ともいえる性格で、秀才ながらクールで冷徹な文学系。あらゆる種類の本に愛着があり、おとぎ話への造詣も非常に深い。「暴力的な者」「本を大事にしない者」を毛嫌いしており、そういったイメージが定着した月光や演劇部らとは、当初壁を一つおいた関係となっていた。本人の両親は既に他界しており、祖父母が営む古本屋に住んでいるが、関係は良好で普段の態度とは一転して柔和な姿を見せており(この点でも演劇部とは正反対といえる)、古本屋も大学には行くが継ぐ予定でいる。
ブレーメンの音楽隊について図書室で調べものをしていた(その実荒らしていた)月光、演劇部らと出会い月光に情報を与えた。TV番組への出演がきっかけでイデヤに見込まれ、ツクヨミ側の正統な執行者としてコンビを組むことに。おむすびを巡る戦いで言葉巧みに丸め込み市民を犠牲にしようとしたイデヤに反発し、理屈を超えた強さで見事人質を救出し、事件を解決した月光たちに惹かれるようになる。
その後の赤ずきんの一件を機に、ツクヨミの「数での戦略」に嫌気が差し、ツクヨミの執行者辞退を申し出た(決定したのかは不明)。また、月光のタイミングの良さから、彼女も彼に好意を持ち、同時に演劇部や鉢かづき姫達との関係も温和になった。
現在はおとぎばなしの知識に欠ける月光らをサポートするポジションに立っているのだが、物事を一つの観点でしか見られないという決定的な欠点があり、そのせいでイデヤの当初のやり方や、赤ずきんや浦島太郎らの真意に気付けない事が多い。
ストーリーを進行する上で、月光と演劇部があまりにもおとぎ話や童話に疎いため、解説者として図書委員が生まれたという。
署長 / ショチョーさん
月光たちの住む町の警察署の署長。本名は不明。オヤジさんとは「トクちゃん」と呼ぶほどの友人。オヤジさんのラーメンも気に入っている。月光のケンカに関する警察沙汰は、オヤジさんの耳に入らぬよう、彼が手回しをしている。
本庁の方から、月光条例およびツクヨミに関する知らせは聞いていたが、演劇部の話やイデヤの姿を見るまでは信じていなかった。警察官であるため、彼の所属する署も、ツクヨミの協力をすることになっている。
ちなみに容姿は、『からくりサーカス』に登場した仲町サーカス団長・仲町信夫とそっくりである。
平賀 帯刀(ひらが たてわき)
ツクヨミ側の使者達を統括するツクヨミ本部のチーフ。指揮官として、ツクヨミの使者達に的確な指示を送る。
その後、桃太郎の襲撃の際、見事彼らに条例執行をしたイデヤ・工藤ペアと月光達を賞賛し、イデヤの申し出もあって鉢かづき姫の無免許問題を取り下げ、彼女に謝罪し、ツクヨミとの協力を依頼した。
藤木 裕美(ふじき ゆみ)/ホウソウブ
実家は花屋「花の藤木」。近所に住む工藤の中学時代までの同級生で幼馴染。現在はミッション系の高校に通っている。
ある日、月打された「きき耳ずきん」の主人公の若者に、「お前は長者どんの娘でオラの嫁だ」と言われ、執拗に狙われていた。動物園でとうとう捕まり絶望に瀕していたが、タイミングよく駆けつけた月光(と鉢かづき姫)に助けられる。若者が元に戻った事で一連の出来事はほとんど忘れてしまったが、月光の事だけはおぼろげに覚えていて、彼のタイミングの良さから好意を持ったようである。
一話限りのゲストキャラクターから準レギュラーに昇格した事情は6巻巻末を参照されたし。

その他の人物

谷口書店の老夫妻
ラーメンいわさきのあるニューえびす商店街にある本屋の老夫妻。毎回、月光条例を巡るドタバタに巻き込まれる。尚、夫はからくりサーカスに登場する加藤鳴海の師匠「梁 剣峰」に、妻は最古のしろがね「ルシール・ベルヌイユ」に似ている。
ユミカ
ごく普通に暮らす小学生の女の子。母親が入院した祖母がいる病院に行ったため、一人で留守番していた。代わりに面倒を見てくれるカナエおばさんの来訪を待っていた際、月打したうりこひめに襲われ成り代わられてしまうも、鉢かづき・演劇部・月光に救助された。
たいぞう
小学2年生の男の子。母親に商店街に連れてこられた時に、月打されたおむすびに取り込まれたが、月光達に救助された。
神林 佳代(かんばやし かよ)
50年前にごく普通に暮らしていた女の子で赤ずきんにとっての「おひさま」。「赤ずきん」の本を非常に愛読していて、同時に赤ずきんも彼女の事が大好きだったが、神林ら3人が起こした火事の際に、その本を取りに行くため燃え行く家の中へ戻り、そのまま家の中で倒れ、亡くなってしまった……と思われていたが、実は神林によって助けられていた事が判明する。現在、神林の妻になっている。赤ずきんを見たとき、自分が昔読んでいた赤ずきんである事は分からなかったが、今でも孫娘の果歩には「赤ずきん」の絵本を読んであげているようである。
神林 剛三(かんばやし ごうぞう)
元刑事。演劇部曰く30年間定年退職までバリバリと警察業を勤め上げた人物。50年前、当時学生であった彼と仲間2人が日々のストレス解消のため、ボヤを起こそうと火をつけた(神林本人はあまり乗り気ではなかった)が、それがやがて一軒の家を火事にしてしまった。そしてその場で家の中へ戻っていく佳代を見て、意を決して家の中へ飛び込み、中で倒れていた彼女を発見し、救出することに成功した(赤ずきんは本が燃え尽きてしまっていたためこの場面を見ることができなかった)。しかし、その時の罪悪感は未だ燻り続けているらしく、赤ずきんには命を差し出してでも謝罪しようとした。助けた佳代と結婚、今では孫娘・果歩もいる。
神林 果歩(かんばやし かほ)
神林剛三と佳代の孫娘。容姿は少女時代の佳代とよく似ている。佳代の不注意で起きた火事で、家の中に取り残されていたが、そこへ赤ずきんが現れて、彼女に助けられ、そのまま一緒に空へ飛んだ。その後、赤ずきんから本の世界の住人ゆえの悲しい事情を聞いて、「赤ずきんちゃんを忘れるわけない」と言いながら、彼女の頭を撫でてあげた。そしてその後、赤ずきんのバスケットに乗せられて地上に降ろしてもらい、無事に剛三達の元に戻って行った。

「おとぎばなし」の世界

月光側

鉢かづき姫(はちかづきひめ)
本作品のヒロインの一人で、おとぎばなし「鉢かづき姫」の主人公。亡き母親から与えられた大きな鉢を頭に被った『お伽草子』のお姫様。通称「鉢かづき(ハチカヅキ)」、「はっちゃん」。また、〈呑舟(ドンシュー)〉の異名(「舟も呑み込める」ことからと思われる)を持つおとぎ話の世界では有名な伝説の使者。鉢の中は真っ暗で下から覗き込んでも彼女の鼻から上の顔は見えない。鉢を被っていたことで数十年繰り返し起こった〈月打〉を免れてきた。ただ、当然ながら日常生活において鉢は邪魔で異様。大抵の事に鷹揚ないわさきのオヤジさんにも信じて貰えなかったほど。働き者で生真面目な一方、ドジっ娘でかなりの天然。使者として何度か〈読み手〉界に来ており、生活習慣や事情にはある程度通じているが、実際のところ怪しい。着物の袖に黒電話を所有しており、おとぎ話の住人だけでなく演劇部の携帯とも連絡をとりあう。初回登場時は着物に草履履きだったが、途中から靴履きになった。演劇部から借りたジャージを着用したりもする。あんこ以外の菓子は苦手。尚、心に決めた人(おとぎばなし中の恋人、宰相さま)がいるため、月光に恋愛感情はない。
来るべき「月打」に備えて、鉢に極印があり、執行者の武器となるための修行を欠かさずに行っていた。ついに訪れた月打によりおとぎ話の世界が混乱する中、長老会の一人である「はだかの王様」の指示で〈読み手〉の世界へ向かう。途中、鬼の太郎丸から一寸法師を託されるが、兄嫁の追撃でピンチに陥っていた。演劇部の手にしていた本から突然現れて月光に衝突し、その顔に極印を打ち込んだ。なりゆきで助太刀した月光、演劇部とともに兄嫁の一人を執行する。物語の中では働くことで自分の居場所を作っていたため、ラーメンいわさきを手伝い、岩崎家の家事を担当する。
その使者としての覚悟は非常に強く、自分を気遣って執行に手間取る月光に執行者としての真の覚悟を促した。その後は月光の最も信頼するパートナーとしてあらゆる局面で活躍する。それぞれ驚異的な戦闘力を持ちながら、コンビを組んで戦うという点ではうしおととらの主役コンビに通じる。
武器を呑み込むことにより、呑み込んだ武器と同じ姿になることが出来る能力を持ち、変化した武器は元の10倍の威力を持つようになる。武器としての基本形態は鬼の金棒型。鉢を巨大化させて盾として使えばミサイルの直撃にも耐えられる。鉢を回転させて飛行する事も出来る。武器だけでなく自動車や飛行機をも呑み込んで変化できる。大きなものを呑み込む特性があるため巨大化したおむすびも平然と食べてしまった。また、格闘の心得を持ち蹴り技を得意とする。その際にはトゲつきの足輪をするが、着物のまま開脚する足技を使うため下帯も見える。以前は下帯がなく見苦しいことになったと話すが、下帯をつけてからは200回転ほど足が回るようになり月打された「七匹の子やぎ」を一瞬で倒したらしい。その万能ぶりは話を追うごとに激しくなっている。
一寸法師(いっすんぼうし)
おとぎばなし「一寸法師」の主人公。鉢かづき姫と同じ『お伽草子』出身。鬼の一人・太郎丸の助けにより鉢かづき姫の鉢に隠れて〈読み手〉の世界へとやってきた。鬼の金棒の件が片付いた後、おとぎばなしの世界に帰ったが、「負け犬」と呼んだ月光を見返すために〈読み手〉の世界に戻ることを決意。三条の姫が打ち出の小槌で代理の偽物を用意した為、無期限で〈読み手〉界に出張中。
物語の中においての最終的な地位が「中納言」であるために、基本的に他者を見下す自己中な性格をしている(いわゆるオレ様キャラである)が、実際は自分の小さな躯体を気にして強がっている姿でもある。当然「ちっちゃい」と言われる(思われる)と怒る。スケベでだらしがなく、〈読み手〉界にすっかり馴染んでいる。日本ではまだ甘味が乏しかった時代の物語の出身であるため、〈読み手〉界に満ちあふれる甘い菓子が大好物となり、お菓子の家を食べて進んでしまうほど。今のところはほとんどマスコット。天道と一緒にいることが多い。

ツクヨミ側

現段階までで、イデヤを除くほぼ全員は鉢かづき姫もとい〈呑舟〉の伝説を知っている。

イデヤ・ペロー / 長靴をはいた猫(ながぐつをはいたねこ)
おとぎばなし「長靴をはいた猫」の主人公。ツクヨミの一員。〈読み手〉の世界では人間の青年の姿に変化して、芸能界でも有名なイケメンアイドルグループ「スプラッシュ」に所属している。背中に穴のようなものを作り、契約した執行者に手を入れてもらい、執行者の思った通りに体を動かす能力「マペティカ」を持つ。使用武器は剣。
飄々としているが性格は悪賢くプライドも非常に高い。月打による物理的被害は条例執行で元通りになるため、執行までの過程での一般人達への被害も月打された住人の事情も、「条例執行の為には仕方ない」と無視し、ドライかつ性急なまでに執行に及ぶ(いわゆる「終わり良ければ全て良し」主義)行動ばかり取っていたために、月光達とは敵対関係にあった。そのため当初、月光と鉢かづき姫の事を「違法執行者」と呼び、見下していた。更に、鉢かづき姫もとい〈呑舟〉の伝説を知らない。反面、友人である金太郎と屈託なく笑いあい、彼が倒されたことに涙を流して悲しむなど、友人おもいな一面もある。
工藤を執行者として選んで彼女と組み、ブレーメンの音楽隊を月光達に割り込む形で倒すが、次のおむすびの一件では月光達に先を越され、更には赤ずきんの一件を機に工藤本人がツクヨミに嫌気が差し執行者辞退を申し出てしまう。彼女のツクヨミ脱退を引き止めるため、傍から聞けば性行為を示唆する説得(実際はマペティカの能力のこと)をし、嫌がらせに近い行為に走ってしまってしまい、更には本の世界の住人でありながら、工藤が住む古本屋の本をぞんざいに扱い、完全に彼女の逆鱗に触れてしまった。イデヤ自身は彼女に好意があるようだが、これらの行動により彼女からは距離を置かれる様になってしまう。
その後、「フランダースの犬」の世界でかなり散々な目に遭い、月光達を違法執行者として本気で罰しようとしたが、その直後に親友の金太郎が月打された桃太郎に切り裂かれた事により、小竹から仇討ちには鉢かづき姫が必要と知り、保安局から彼女を連れ出し、桃太郎達と一騎打ちするが圧されてしまい、殺される(=存在自体が消滅する)寸前の所を月光に守られ、工藤と共に戦い、(月光に譲られつつ)見事桃太郎を倒した。その後、月光達の無免許に関する問題を取り下げた。
余談だが、先述の通り悪賢い彼であるが、一方で教養はあるようで、「フランダースの犬」の世界の教会にあったルーベンスの作品を「素晴らしい」と賞賛していた。
金太郎(きんたろう)
おとぎばなし「金太郎」の主人公。ツクヨミの一員。菱形の腹掛けを着た大柄な青年。ポジティブな性格で、イデヤとは酒を交わすほどの友人関係にある。武器は鉞。当初イデヤの事を「町育ちの変人」と称していたらしい。
月打された桃太郎を発見、ラプンツェルと共に挑むが、圧倒的な力の差に敗れ、刀で体を真っ二つに切り開かれてしまった。桃太郎の一件後、元に戻る事ができイデヤとより一層仲が深まった。
ラプンツェル(髪長姫)
おとぎばなし「ラプンツェル」の主人公。ツクヨミの一員で、金太郎のパートナー。三つ編みにした後ろ髪が体に巻かないと地面に着いてしまうほど長い。戦闘時はこの髪をムチなどの武器にして戦う。髪は切られても、すぐに伸ばすことが可能。また、彼女の髪の毛は〈読み手〉界のツクヨミ特殊部隊の弾丸にも使用されている。
月打された桃太郎に金太郎と共に挑むが、後ろ髪は切られ、更に金太郎も斬殺されてしまい、その場に居合わせた小竹と共に、命からがら逃げ去った。金太郎が助かった後は号泣してイデヤ達に感謝の気持ちを伝えた。
小僧(こぞう)
おとぎばなし「三枚のお札」の主人公である子坊主。ツクヨミの一員。どんな願いも叶う3枚の札で様々な物を生み出して攻撃する。
月打された桃太郎達と最初に、パートナーであるカーレンと共に挑むが、家来達の戦闘能力に圧倒され、イヌにより首を刎ねられてしまう。更に札を1枚桃太郎に使われ、ツクヨミへの挑戦状として壁に首を貼付けられ、取れなくなってしまった。その後桃太郎が正気に戻ったため、彼も元に戻った。
カーレン
おとぎばなし「赤いくつ」の主人公。ツクヨミの一員で、小僧のパートナー。赤い靴に炎を纏わせて攻撃する「火神舞踏(ウルカヌス・フォックストロット)」が必殺技。
月打された桃太郎達に最初に挑むが敗れ、小僧は首を刎ねられ、自身も重傷を負った。その後桃太郎を倒したイデヤや、手助けをしてくれた小竹に感謝した。
茶釜ダヌキ(ちゃがまだぬき)
おとぎばなし「ぶんぶく茶釜」の主人公であるタヌキ。ツクヨミの一員。体を入れた茶釜を鎧として使う。その蓋を大量に増やして攻撃する「スキャッターリッド」が必殺技。
月打された桃太郎の家来の一人であるキジと戦うが、スピードの差で攻撃が当たらず、強力な超音波を受けて体もろとも粉々に砕かれてしまった。桃太郎が正気に戻った後復活する事ができた。
アリババと40人の盗賊
おとぎばなし「アリババと40人の盗賊」の主人公と悪役である40人の盗賊達。ツクヨミの一員。両者共に協力して月打したおとぎばなしの登場人物を相手に戦っている。
月打された桃太郎の家来の一人であるサルに挑むが、圧倒的な戦闘能力の前に全員打ちのめされてしまった。桃太郎が正気に戻った後は復活した模様。
ガリバー
おとぎばなし「ガリバー旅行記」の主人公であるツクヨミの一員。桃太郎に他のツクヨミのメンバー達と総出で倒しに行くが返り討ちにあう。桃太郎が正気に戻った後は復活する事が出来た。
おつる
おとぎばなし「鶴の恩返し」の主人公で主に女性の姿をしている。ツクヨミの一員でガリバーのパートナー。月打された桃太郎を「ヘンタイ」と罵り気は強い様子。桃太郎にツクヨミのメンバー達と総出で倒しに行くが返り討ちにあう。桃太郎が正気に戻った後は復活する事が出来た。
こぶとりじいさん
おとぎばなし「こぶとりじいさん」の主人公で片頬にこぶを付け、今風の格好をしている。ツクヨミの一員。桃太郎にツクヨミのメンバー達と総出で倒しに行くが返り討ちにあう。桃太郎が正気に戻った後は復活する事が出来た。桃太郎との戦いでこぶのような物を持っておりおそらく武器ではないかと捉えられる。
エリサ
おとぎばなし「白鳥の王子」の主人公。ツクヨミの一員でこぶとりじいさんのパートナー。桃太郎にツクヨミのメンバー達と総出で倒しに行くが返り討ちにあう。桃太郎が正気に戻った後は復活する事が出来た。
ジャック
おとぎばなし「ジャックと豆の木」の主人公で豆の木と共に登場する。ツクヨミの一員。桃太郎にツクヨミのメンバー達と総出で倒しに行くが返り討ちにあう。桃太郎が正気に戻った後は復活する事が出来た。
天女
おとぎばなし「羽衣の天女」の主人公。ツクヨミの一員でジャックのパートナーである。桃太郎にツクヨミのメンバー達と総出で倒しに行くが返り討ちにあう。桃太郎が正気に戻った後は復活する事が出来た。
海幸彦
おとぎばなし「山幸彦と海幸彦」の主人公で釣竿を持っている。ツクヨミの一員。本部にておつるが工藤に紹介した一人。
うさぎ
おとぎばなし「かちかち山」の主人公でうさぎの耳をつけた今風の青年で小さな泥舟を持っている。ツクヨミの一員。本部にておつるが工藤に紹介した一人。
孝行ムスコ
おとぎばなし「養老の滝」の主人公で瓢箪を持っている。ツクヨミの一員。本部にておつるが工藤に紹介した一人。

長老たち

はだかの王様(はだかのおうさま)
おとぎばなし「はだかの王様」の主人公。月打によって不遇な状況になったにも関わらず、鉢かづき姫を〈読み手〉の世界へ行くための手立てをしてくれた。その後はアラディンに長老達が捕らえられている事を報告し連絡が取れなくなる。のちにアラディンからツクヨミ本部への「打出の小槌」の要求の際に居たがボロボロの状態で気力を喪失している。
仙女(せんにょ)
おとぎばなし「シンデレラ」に登場するシンデレラに助力を与える魔法使い。性格はイケイケ気質で明るい。シンデレラの代役に来た演劇部をサポートする為に、彼女に「ガラスのお面」を授けた。
容姿は『からくりサーカス』のアルメンドラおよび読み切り漫画『美食王の到着』の占い師と瓜二つである。
乙姫(おとひめ)
おとぎばなし「浦島太郎」に登場する竜宮城のお姫様。他の登場人物達とは違い、乙姫は発作的な月打を受けたため、当初は月打時と通常の人格が入り交じっていた。「アイ ヘイト ア ドッグ(I hate a dog)!」と叫ぶほどの犬嫌い。竜宮城を空飛ぶ戦艦に改造した「竜宮丸」を操り、浦島太郎と彼の持つ玉手箱を追って〈読み手〉の世界にやって来た。
月打時は「海!愛!」というスローガンを出すほど海を溺愛しており、〈読み手〉の世界を海水で沈めてしまおうとしている。海水や羽衣を自在に使った攻撃をし、更には口から大量の蟲を出して、人間の足の骨を砕き、魚の尾びれにしてしまおうと企む。しかし当の目的は〈読み手〉界を海水で沈める事ではなく、彼の持つ玉手箱を開けさせ、月打を治す薬を作る事にある。月打時の自分が〈読み手〉の世界に迷惑をかけている事を良しと思っていない為、玉手箱を開けるのに躍起になっているが、逆にそのためなら手段を選ばなくなっている。
タイ達が倒された直後、月打が完成してしまい、月光や工藤に猛攻を加えたが、月光の言葉で変わったネロが月打状態のパトラッシュを呼び出し、誤って攻撃したため、パトラッシュに追い回される羽目になってしまい、ついには絶望のまま噛み殺されそうになったが、浦島太郎が開けた玉手箱に絶望の気を吸い取られ、お互い気が抜けて事なきを得る。その後その絶望の気で作った薬を飲み、正気に戻った。本の世界へ帰る前に月光達に詫びを入れたが、素手で部下達全員に条例執行をした月光には、「お主、人間ではあるまい」と言い残し、竜宮丸ごと本の世界へ戻って行った。
継母
おどきばなし「白雪姫」に登場する人物。アラディンに捕らえられた一人で鎖に繋がれている。
花咲か爺
おとぎばなし「花咲か爺」の主人公。アラディンに捕らえられた一人で鎖に繋がれている。
親ゆび姫
おとぎばなし「親ゆび姫」の主人公。アラディンに捕らえられた一人で鎖に繋がれている。
おしょうさん
おとぎばなし「三枚のお札」の主人公、小僧にお札を与えた人物。アラディンに捕らえられた一人で鎖に繋がれている。
みにくいアヒルの子
おとぎばなし「みにくいアヒルの子」の主人公。アラディンに捕らえられた一人で鎖に繋がれている。
かさじぞうの一人
おとぎばなし「かさじぞう」の登場人物。アラディンに捕らえられた一人で鎖に繋がれている。
絵姿女房
おとぎばなし「絵姿女房」に登場する女房が自分を描いた絵。アラディンに捕らえられた一人で鎖に繋がれている。

青き月光に照らされた「おとぎばなし」の登場人物

兄嫁(あによめ)
おとぎばなし「鉢かづき姫」に登場する脇役で、鉢かづき姫の恋人、宰相の兄嫁達。青き月光に照らされたことにより凶暴化し、薙刀・三節棍・釵を手にして鉢かづき姫に「少し早い嫁くらべ」と称して襲いかかるが、太郎丸によって阻まれた。薙刀を持った一人が〈読み手〉の世界まで追いかけるが、月光によって正気に戻される。その後、残りの2人は月光一行が太郎丸を救出する際に再び道を阻んだが、鉢かづき姫により倒された。
現在は月光の最初の執行で正気を取り戻した一人が鉢かづき姫の代理を務めている。また元のストーリー通りに、「嫁くらべ」で鉢かづき姫に負ける事を心待ちにしている。
宰相(さいしょう)
おとぎばなし「鉢かづき姫」の登場人物で、鉢かづき姫の恋人。冷遇され続けた鉢かづき姫に優しく接し、物語の最後で「鉢かづき姫がいなければ自分も生きていけない」と彼女に告白したのだが、その直後に青き月光に照らされ凶暴化、容貌と口調が変化し、彼女に「まだお前はバケモノのままだ」と言い放った。
上記の兄嫁3人の内、「一寸法師」の世界で倒された2人はまだ月打が解けていないことが分かっているが、宰相がどうしているのかは作中では言及されていない。ただし鉢かづき姫と演劇部の会話からして、少なくとも本の中にはいる模様。
子供
おとぎばなし「はだかの王様」に登場する王様は裸だと言った子供。蒼き月光に照らされたことにより凶暴化、月打された国民たちを率いて王様の城に攻め入った。その後は不明。
国民
おとぎばなし「はだかの王様」に登場する国民。青き月光に照らされたことにより凶暴化し、主人公である王様の城に攻めに入った。その後は不明。
オオカミ
おとぎばなし「三匹のこぶた」に登場するオオカミ。青き月光に照らされたことにより凶暴化し、三匹のこぶたたちを追いかけ〈読み手〉の世界へとやって来た。途轍もない量の息で建物を破壊することができ、その威力は金閣寺や国会議事堂をも破壊するほど。しかし、月光によって倒され正気に戻り、三匹のこぶたと共に物語の世界へ帰っていった(元々頭が悪い設定を持つためか、オオカミ本人は何も覚えていない様子である)。
三条の大臣の姫(さんじょうのだいじんのひめ)
おとぎばなし「一寸法師」に登場する一人で、一寸法師の恋人。通称「姫」。月打を受けた鬼の金棒に取り憑かれ、血の涙を流す「鬼」となり、醜くなった自らの顔を隠すため蝶番の面で覆い、牛車を牽いている。どんな願いも叶う「打出の小槌」を持っている。金棒に操られて、物語で自身を陥れた一寸法師への憎悪の念で満たされてしまっていたが、演劇部の説得で一寸法師を真に慕っていた事を思い出し、金棒の粉砕によりついに元の姿に戻る事が出来た。一寸法師と共に「おとぎばなし」の世界に戻るが、〈読み手〉の世界に戻る彼の為に、打出の小槌で一寸法師の身代わりを作り出した。一寸法師曰く天然。
鬼の金棒(おにのかなぼう)
「一寸法師」に登場する鬼の次郎丸が持っていた武器。青き月光に照らされた結果、1つ目の妖怪の様な外見になり、意思を持つようになった。自分が暴れたいが為に、三条の大臣の姫の心の中にあった、僅かな一寸法師への怨恨につけ込んで取り憑いた。鬼となった姫に「打出の小槌」を使わせ、一撃が隕石の衝突なみの威力を持ち都市を一瞬で消し去るほどに強化させ、日本中を穴だらけにし、地球をあと2発で氷河期突入という所まで追い込むが、鉢かづき姫を武器とする決意をした月光に倒され粉々に砕け散った。それによって元に戻り、恐縮しながら太郎丸たちと共に物語の中に帰っていった。今までのところ〈読み手〉の世界に『存亡に関わる最も深刻かつ甚大な被害』を与えており、事件にツクヨミが介入しなかったのは謎。
シンデレラ
おとぎばなし「シンデレラ」の主人公。月打された結果、黒いドレスを纏い、遅い者を置き去りにすることでしか快感を得られないスピード狂になってしまった。また同時に、「遅い乗り物に乗る者はエラくない、バカにしてもいい、蹴散らしてもいい」という非常に危険な思想が宿ってしまった。彼女がこのようなスピードへの考え方をしたのは、物語でガラスの靴が足に合って、王子の結婚相手として城に行く際に乗った馬車が、今までにないくらい速い馬車であったためである。そしてスピードを求め「遅すぎる」おとぎばなしの世界から、速いものがたくさん居ると聞いた〈読み手〉の世界へとやって来た。スピード狂で負けた相手に容赦なく制裁を与えるというネタは、藤田の友人椎名高志(「絶対可憐チルドレン」の作者)の「GS美神極楽大作戦」に登場する「韋駄天九兵衛」が元ネタとなっている模様。
圧倒的なスピードを得たかぼちゃの馬車に乗って各地の走り屋達のレースに乱入し、負かした車を自身のガラスの靴による強力な蹴り技で破壊して回り、ついには新幹線を破壊しようとしたところで、月光らに阻止され、彼らにレースを挑まれる。その後馬車とガラスの靴を壊され、自身も月光の攻撃を受けて半分ほど正気に戻った彼女は、自分で何も決めず、流されてただ幸せを迎えた自分に不満を抱いていた本心を暴露する。その後に代役を終えて「シンデレラ」の世界から戻った演劇部と競走でレースを再開。走りながら彼女と愚痴を語り合い、また彼女の口から、シンデレラが本当に欲しかった同情の言葉を聞き徐々に正気に戻り、勝利してゴールで待っていた王子に迎えられた。そしてその後本の世界に帰って国と民のために力を尽くして国民から結婚を祝ってもらい、天道の口利きで週2日だけ〈読み手〉の世界に行き、アメリカの小さなガレージで働くことになった。この時からは白いドレスを着る様になった。
その後の桃太郎編で、アメリカでバイクのレースをしていた所を小竹に呼ばれ、月光や演劇部を助けるために再び黒のドレスに身を包み〈読み手〉界へやって来た。そして月光に代わり「舞踏会」と称して猿吉と交戦し、月光を援護した。その後、オヤジさんの知り合いのトラック等の修理を受けてまわっている。何故か赤ずきんとはケンカ腰。
ドライヴァー
おとぎばなし「シンデレラ」に登場する、魔法で人間の姿になったネズミ。馬二頭の馬力でも、新幹線を追い抜くほどのスピードを出すシンデレラのかぼちゃの馬車スピードカーにも変形する。また、馬車は月打された影響なのか、演劇部が乗った馬車に比べ、外観が少々歪んでいる。 を彼女の意のままに操縦する、サングラスを掛けた老御者。元がネズミなので「~でちゅ」という話し方をする。シンデレラに対し絶対の忠誠心を持ち、レースで馬車を壊された際は元のネズミの姿に戻り、シンデレラの逃亡の為に月光達を妨害したものの、天道の車を飲み込んでその姿になった鉢かづき姫に撃破された。
桃太郎編では再登場した。
麦つかい(むぎつかい)
おとぎばなし「天女と麦つかい」の主人公。青き月光に照らされ、〈読み手〉の世界へ逃げ出して5日間帰らなかったため、条例執行直前に本もろとも消滅してしまった。実在しない作中オリジナルのおとぎばなしであり「消滅=〈読み手〉界の記憶から完全に消え去る」という事例を現実的に示した。
若者(わかもの)
おとぎばなし「きき耳ずきん」の主人公。元は誠実な性格だったが、青き月光に照らされ凶暴化し、〈読み手〉の世界である女子高生・裕美を「長者の嫁」だと思い込み追いかけ回した。動物の声が聞ける頭巾を使って彼女を追い詰めたが、月光によって倒され正気に戻される。物語の世界へと帰っていったが、被っていたきき耳ずきんは何故か残されていて、後に月打されたおむすびの件で月光がネズミの言葉を聴くのに役に立った。
ピノキオ
おとぎばなし「ピノキオ」の主人公。青き月光に照らされ凶暴化し、執行者・月光を殺す為〈読み手〉の世界へとやって来た。本来とは逆に「正しい事」を言うと鼻が高速で伸び、それを相手に突き刺して攻撃する(鼻は伸ばす度に自分で折り、また自分で伸ばす)。月光と演劇部が説教を受けていた職員室に置いてあった本から出たため、演劇部が口にした「演劇部は月光の事が大キライ」という言葉で月光に止めを刺そうとしたが、鼻が伸びることはなく、その隙に鉢かづきが変化したボウガンの一撃を受け正気に戻される。
わらしべ長者(わらしべちょうじゃ)
おとぎばなし「わらしべ長者」の主人公。青き月光に照らされ凶暴化し、〈読み手〉の世界へとやって来て、自身が所持している一本の藁と人の物品や使用人等を、無理矢理に取り換えてきた。月光から演劇部を取り替えてバカンスで過ごしていたが、やってきた月光からスリルに満ちた話を聞くが嘘だと思い込む。鉢かづきが変化した飛行機に突進され正気に戻される。
ヘンゼル
グレーテル
おとぎばなし「ヘンゼルとグレーテル」の主人公である兄妹。青き月光に照らされ、お菓子の家の魔女のように尖った鼻に生やし、子供を食う快感に目覚めてしまった。口が出来て動くようになったお菓子の家と共に〈読み手〉の世界へとやって来た。月光達をお菓子の家で捕食し、夜中の保育園で子供達を待っていたが、閉じ込められていた天道の策略で呼び出された不良仲間(実は天道と同じく甘党の暴走族達)によりお菓子の家を食べられてしまい、脱出した月光によって倒され正気に戻される。
うりこひめ
おとぎばなし「うりこひめとあまのじゃく」の主人公。元はおとなしい性格をした田舎の少女だったが、青き月光に照らされ、普段の姿と掛け離れた禍々しい姿になった。話の中で「あまのじゃく」が自分にした事と同じように、他者の姿を真似て成り代わるようになった。〈読み手〉の世界にやって来て、一人の女の子・ユミカと成り代わって、鉢かづき姫を手にかけようとしたが、彼女に自分の正体を言い当てられ、月光によって倒され正気に戻される。ユミカに謝罪をして、物語の世界へと帰っていった。
ニワトリ
ネコ
イヌ
ロバ
おとぎばなし「ブレーメンの音楽隊」の主人公である4匹の動物。青き月光に照らされた結果、気に食わないものを持ち前の鳴き声による本人達曰く「イカしたコーラス」で破壊する快感に目覚めた。〈読み手〉の世界へとやって来て自衛隊にも襲い掛かり、一度は月光達を退けるが、二度目の戦いで「おいぼれは用なし」という心理攻撃を受け戦意喪失。月光と鉢かづきに止めをさされる直前、乱入したイデヤに一掃された。
おむすび
おとぎばなし「おむすびころりん」の主人公のおじいさんが持っていた食べ物。青き月光に照らされ巨大化し、意思を持つようになった。食物である自身が人間に食べられることに不満を感じ、大量の人間で握ったおむすびを食べようと〈読み手〉の世界へとやって来た。空中を回転飛行し、人間を米の体に取り込んでネズミ達から奪った穴に監禁させた。体とその穴とは繋がっており、攻撃が穴の方へ流れるようになっている。つまり外部からのおむすびへの攻撃は中の人間達に及んでしまう。月光組と工藤組を取り込んだが、鉢かづき姫により内側から食べられてしまい、月光が振るった鉢かづき姫に食べられてしまった。最後に残った一欠片は正気に戻ったようで、ネズミ達の一匹に食べられた。ちなみに鉢かづき姫によれば、味は良いらしい。
赤ずきん
おとぎばなし「赤ずきん」の主人公。可愛らしく幼い外見の割に言葉遣いが汚く、よく出す決めゼリフは「だぁむ、ですとろぉい(英語:Damn,destroy)」。自身の顔を巨大化させて、目の中に対象物を飲み込んだり吐き出すことができ、耳はコンクリートをも簡単に切り裂ける程の鋭く巨大な刃物に変えられ、同じ物語の住人である「(剛腕で鋭い爪を持つ)おばあさん」と「猟師さん」を作り出して操り、更には空を自由に飛ぶこともできる等、現段階までで、月打によって1番多数の能力を得ている。余談だが、「ワインボトルが見えるバスケットを持っている事」と、「猟師さんが登場している事」から、彼女は「グリム版の赤ずきん」である。
作中で50年前、彼女の絵本を愛読していた「おひさま」・佳代が神林ら3人が起こした放火で命を落としたと誤解し(この時赤ずきんと佳代は何故か意思疎通が取れていた)、放火した三人組を憎み、復讐すべく自ら月打を望むようになった。遂に悲願の月打を受け、〈読み手〉界へと現れ、3人組の内の田崎と野島の2人をの元を訪れるが、2人は反省や罪悪感どころか行為すら忘れていたために殺害する。最後の標的となった神林剛三を狙い、警察署を襲撃して彼を見つけ出す。途中現れたイデヤ・工藤も軽くあしらって彼に手を下そうとしたが、駆けつけた月光達に阻まれその場を撤退する。しかし、先を読んでいたイデヤによって用意されたツクヨミの特殊部隊から、対本の住人用の特殊銃弾で満身創痍となり、「おばあさん」と「猟師さん」を倒され、町中を逃げ回るも包囲され、イデヤから条例執行寸前まで追い詰められる。
剛三から50年前の真相を聞いた月光らに守られ、そして佳代の生存を知って正気を取り戻し始める。しかしその直後、火事の音と佳代の泣き声を聞いて神林家へ向かい、ついに佳代に再会するも、肝心の彼女は赤ずきんの事がわからなかった。しかしそれでも、中に取り残された孫娘・果歩を思う佳代を気遣い、果歩を助けるために燃え盛る家の中へ飛び込み(この直前に剛三の口から謝罪の言葉を聞いた)、瓦礫を粉砕して果歩を空へと連れ出した。そして彼女に「(仕方ない事だが)どんなに自分の物語を愛してくれても皆が忘れていってしまう」と不満をこぼすも、彼女から「赤ずきんちゃんを忘れるわけない」と慰められながら、頭を撫でてもらった。そして果歩の口から、佳代が彼女に「赤ずきん」の絵本を読み聞かせ、今でも「赤ずきん」の物語を愛している事を聞いて、嬉し涙を流した。その後、果歩をバスケットに乗せて(中に月光とイデヤ宛ての手紙を入れて)地上へ降ろし、本の世界へ戻って行った。果歩に頭を撫でてもらった事と佳代が自分の物語を覚えていた事がよほど嬉しかったのか、彼女が本に戻ってから、「赤ずきん」の絵本での彼女の挿絵が、どのページでもニヤケ顔になっていた。
その後桃太郎編で工藤に呼び出され、月光の為に再び〈読み手〉界へ向かい、シンデレラとコンビを組み、月光に代わって雉太の相手をした。その後、オヤジさんのラーメン屋の手伝いをしている。この時点で月光に好意を持ってる模様。ちなみにこちらも、シンデレラとはケンカ腰。
雀(すずめ)
おとぎばなし「舌切り雀」に登場する雀。一人称は「あたい」。青き月光に照らされて、同作の登場人物のおばあさんの糊を舐めて舌を切られた事に怒り狂い、「女王」として名を挙げ、憂さ晴らしのために数千羽の部下の雀を率いて〈読み手〉界の人間(特に老婆)を高速で襲って自前の鋏で舌を切りまくるようになってしまった。ある地下鉄の駅を根城にしていたが、月光に大きいつづらと小さいつづらを選ばされ、大きいつづらを選んだが、お化けに扮した鉢かづき姫と共に大量の粉末が出てきただけだったため、月光らの作戦に気づかず、月光らの舌を切ろうとした。しかし、失敗したふりをして口に火打石(石英)を銜えた月光に攻撃を加え、その火花で起こった粉塵爆発に巻き込まれ気絶。後に条例執行をされ、本の世界に戻って行った。
パトラッシュ
おとぎばなし「フランダースの犬」の主人公・ネロの愛犬。主人であるネロを大変慕っていて、物語での彼の不幸(村人からのいじめ、おじいさんの死、絵のコンクールの落選、ネロ自身の不憫な死等)を大変哀れんでいたが、月打によりその思いが歪み、「自分がもっと早くネロを殺し、意地悪で不親切なこの世から楽にさせておけば良かった」という考えを持つようになってしまった。これによりネロの人生に対し、「絶望の念」を持っている。
月打されて、老犬ながら筋肉が著しく発達し、〈読み手〉の世界まで逃げたネロとおじいさんを追いつめたが、そこへ現れた月光達に殴られ蹴られ、一時退散した。その後、ネロの呼びかけに答え竜宮丸の上に現れ、偶々乙姫が放った攻撃を受け、彼女を追い回し始めた。しかし、機転を利かした浦島太郎が開けた玉手箱に絶望の気を吸い取られ、それで作った月打を解く薬を月光に無理矢理ながら飲まされ正気に戻り、ネロと共に本の世界へ戻った。
乙姫(おとひめ)
おとぎばなし「浦島太郎」に登場する竜宮城のお姫様で、長老の一人。
上記を参照。
タイ
ヒラメ
フグ
オコゼ
おとぎばなし「浦島太郎」に登場する、乙姫の部下達。ただし魚の姿ではなく、額にそれぞれと同じ名前の魚を付けた美青年の姿をしている。戦闘能力は月光と並ぶほど高い。シンデレラ編で登場したドライヴァー同様、乙姫への絶対の忠誠心を持っており(ただしヒラメなどは不良口調が目立つ)、月打の発作も乙姫が正気になるまで正気を取り戻せなかった。頭につけた魚を武器として扱うことができ、タイは相手に追い討ちをかける「タイブーメラン」、ヒラメはそれを大きくさせ攻撃できる。ちなみに性格は月打時は攻撃的だが、元々はかなり能天気で温厚である。
警察署を竜宮丸で襲撃、集団攻撃で月光に重傷を負わせたが、謎の力を発揮した月光からのより強力な拳を食らい、極印が無いにも関わらず全員条例執行をされて正気に戻り、乙姫より先に本の世界へ戻って行った。このためなのか、月打から正気に戻った後も容易に月打時の性格に戻ってしまう(ただし悪意は消えている)。
「人魚姫」ではタイとヒラメの二人が海の魔女の店に向かう月光に同行。用心棒の撃退に協力した。
人魚姫の5人の姉
おとぎばなし「人魚姫」の主人公・人魚姫の5人姉達。愛する王子に理解されず海の泡となる妹の運命に納得がいかず、元凶である王子の命を狙い、〈読み手〉界へと逃げた王子を追ってとある豪華客船で追い詰めたが、月光不在でも驚異的な戦闘力を発揮した鉢かづき姫に全員倒された。最後は戦いの最中に出会った人間の男性に一目惚れして自分達も人間になることを選ぶ。
桃太郎(ももたろう)
おとぎばなし「桃太郎」の主人公。青き月光に照らされて凶暴化し、自身を「おとぎばなし」界・日本一強いキャラクターと自負し、その最強の名にふさわしい伝説の武器〈呑舟〉を手に入れるべく、三匹の家来と共に〈読み手〉界へとやって来て、ツクヨミの使者を対象に襲っている。目にも見えぬ速さで刀を振るって相手を一刀両断し、金太郎の体や偶々そこに鉢合わせた演劇部らの首を切り裂いた。また、小僧から奪った札の力を使い、切った者の首を壁に付けて取れなくし、ツクヨミ及び〈呑舟〉への挑戦状として見せつけていた。唯一苦手なのはフェイント攻撃である。自分や家来達が食べれば一気に体力が全快するが、他者が食べればあまりの美味しさに失神してしまう「きびだんご」を持っている。
彼が〈呑舟〉に拘るのは、作中で70年前、「桃太郎」が月打された際に、月打された鬼ヶ島の鬼達に襲われた時、現れた鉢かづき姫(と当時の彼女の執行者の男)の圧倒的能力に救われ、見惚れたためにある。ただし、この時の鬼達による惨劇は今も消えずに彼の心の中で根強く残っている。
圧倒的な戦闘能力でイデヤと鉢かづき姫を圧倒し、駆けつけた月光を鉢かづき姫が取り込んだ刀で真っ二つにしようとするが、刎ねられたエンゲキブの首を見て怒り狂い、再び謎の力を発揮した月光には通じず、強力な怪力で体ごと振り回されて重傷を負い、さらにその月光の形相にかつての鬼達の惨劇が蘇り、戦意を落とす。その後マペティカを発動したイデヤと工藤により条例執行をされ、元に戻り、家来共々鉢かづき姫に謝罪し本の世界へ戻っていった。
余談だが、「ラプンツェル」や「金太郎」等、かなり多くのおとぎばなしを知っている模様。鉢かづき姫に惚れ込んでおりアラビアンナイトの月打の件について鉢かづき姫の同行者として自ら名乗り出る。月光に散々な倒され方をしたためトラウマが残ってしまった。
家来
おとぎばなし「桃太郎」に登場する、桃太郎の3匹の家来。青き月光に照らされて、桃太郎と共に〈読み手〉界へとやって来た。ただし動物ではなく、「浦島太郎」のタイ達同様、それぞれを擬人化したような青年の姿をしている。
この3匹の間では、誰が桃太郎に次ぐ強いキャラクターかをしばしば揉めていて仲が悪く、唯一共通点は、桃太郎から貰う「きびだんご」が好物な事。
雉太(きじた)
家来であるキジ。両腕が翼になっていて、スピードが秀でている。原形の頭部を模した帽子をかぶっており、両腕の翼を振って超音波を繰り出す「ドラミングエコー」が必殺技。
他の2人