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海のトリトン 2

共有

海のトリトン』(うみのトリトン)は、手塚治虫の漫画。および同作を原作としたテレビアニメ。

『サンケイ新聞』(現『産経新聞』)に1969年9月1日から1971年12月31日まで新聞漫画『青いトリトン』として連載、1972年のテレビアニメ化に伴いタイトルが『海のトリトン』に改められた。

概要

手塚治虫が、1969年2月末日まで『サンケイ新聞』(現・産経新聞)に『鉄腕アトム』(後に『アトム今昔物語』に改題)を連載し、編集部の要請で半年の間を置いて連載した新聞連載マンガである。当時は、スポ根が劇画が人気を博しており、特訓などそういった要素が、『サンケイ新聞』側の希望で取り入れられた手塚治虫「あとがき」『手塚治虫漫画全集192 海のトリトン4』講談社、1980年、p.230.。当初、海棲人類トリトン族の赤ん坊「トリトン」を拾ってしまった漁村の少年「矢崎和也」を主人公とし、抗争に巻き込まれた第三者の冒険と根性のストーリーになるはずだったが、作者自身が純然たる冒険活劇とした方が作品として面白くなる事に気づき『海のトリトン』秋田書店。手塚治虫の前書き。、物語中途で和也を失踪させ、主人公をトリトンに交代させた。

アニメ版のストーリーに比べて、トリトンが陸の人間として成長し、知識と武術を習得して海に出るまでを丹念に描き、水中でも息が出来るだけのようなトリトンが海の怪物にも等しいポセイドン族と互角に戦える理由を説明している。ポセイドン族との抗争の他、トリトン族と人間との好意的とは言いがたい接触がストーリーのもう一本の柱になっている。

登場人物

アニメ版の声優陣は『宇宙戦艦ヤマト』と同く、青二プロダクションを起用しているが、本作では東京俳優生活協同組合も起用された。


トリトン:声 - 塩屋翼
トリトン族の生き残りで13歳の少年。赤ん坊の時に猪の首岬の洞窟に置き去りにされ、和也(アニメでは漁師の一平)に拾われて育てられる。ルカーの話によって自らの出生を知り、村にポセイドンの被害が及ぶことを恐れ、村を捨て自ら海へと旅立つ。アニメでは髪が緑色。原作ではナイフ投げの名人でアニメよりも最初から精神的に大人である。第32章では不死身のポセイドンを倒すためを宇宙へ追放させ、自分の運命と命を共にした(サンデーコミックス版ではポセイドンの要塞に特攻し)。パイロットフィルムでは超能力でポセイドン族に立ち向かう。
ピピ:声 - 広川あけみ
トリトン族の生き残りで人魚の少女。アニメでは、第4話から登場しており、北の海でアザラシのプロテウスに育てられる。慎重なトリトンとは対照的に、勝気で好奇心旺盛。その性格が災いして敵の罠に落ちることもしばしば。初期はかなり生意気な牲格でトリトンを嫌っていたが、中期からトリトンとの友情が高まり、素直な牲格になった。原作の名では「ピピ子」として登場しているが、大幅に異なっており、幼いときからおませさんで最初からトリトンの恋人でもあり、第22章ではポセイドンの妃に選らばれ、「ピンキー」の名でポセイドン一族を渦潮に誘い込み逃げようとしたが、囚われの身となり結婚される直前に搭から脱出し、第32章でトリトンと結婚し、7人の子供を生むが最終章ではトリトンの死により未亡人となってしまった。パイロットフィルムではポニーテールの髪型。
ルカー:声 - 北浜晴子
黄金の(アニメでは白)イルカ。トリトンの乳母的な存在。甥にイル・カル・フィンがいる。放送版のアニメのみ額に黄色いV字マークがある。
イル:声 - 大竹宏
イルカ三兄弟の長男。アニメでは第2話から登場。メガネをかけている。原作ではしっかり者。
カル:声 - 肝付兼太
イルカ三兄弟の次男。アニメでは第2話から登場。頬の斑点が特徴。原作ではおっちょこちょい。
フィン:声 - 杉山佳寿子
イルカ三兄弟の三男。アニメでは第2話から登場し、ピンクの法螺貝をヒモで結んで頭につけている。原作では「フニャ~」しか言わない怠け者で、法螺貝を持っていない。
ガノモス(原作のみ)
数千年の年月を生きる体長数十メートルの巨大な亀。長命のため、知識はきわめて豊富で、ポセイドン一族とも交友があるなど、人脈も幅広い。当初は中立的な立場に身をおき、トリトンにはポセイドンと和睦する事を勧めていたが、ポセイドンの裏切りの後はトリトンと共にポセイドンの城に侵攻した。かなりの老齢で寿命が近かったため、戦いの後まもなく死亡し、その亡骸はトリトン一族の隠れ家となった。
メドン:声 - 外山高士(TV版)、塩見竜介(劇場版)
巨大な海亀。フィンの持つ法螺貝は元々メドンの甲羅の割れ目に隠してあった。トリトン救出に向かうが、ドリテアの罠にはまり、海底火山の爆発で命を落とした。原作の「ガノモス」に相当。
矢崎和也(原作のみ)
15歳の中学卒業の少年で、赤ん坊のトリトンを岬の下におりていって拾う。同時に襲ってきた津波で父親を失い、海を恨む。血の気の多い性格で、原作ではその性格のせいで彼の給料を横領していた先輩をカッとなって刺殺してしまった。トリトンを弟としてかわいがっている。
一平じいさん:声 - 八奈見乗児
本家のばあさん(アニメ版ではオトヨばあさん):声 - 津田まり子
和也の父の母。トリトンのせいで和也の父が死んだとして、彼をたたりの子として嫌い、成長して村に戻ってもなお嫌う。原作では少女時代には海人との悲恋物語があった。
トリトンの父:声 - 野田圭一
トリトンの母:声 - 沢田敏子
プロテウス:声 - 滝口順平
ピピの養父に当たるアザラシ。ミノータスによって氷付けにされ、死亡。
ラカン:声 - 峰恵研
インド洋に住むシーラカンス。ヘプタポーダの脱出を助けた罪でポセイドンによって死なない体に変えられたが、オリハルコンの短剣の輝きで呪いが解けて絶命した。
ジェム:声 - 山本圭子
ポセイドン:声 - 北川国彦
ポセイドン族の首領で巨大な石像。トリトンの持つオリハルコンの短剣の輝きに引かれる。原作とパイロットフィルムでは獣的なデザインで特殊な言葉でしゃべっていて、トリトン族だけでなく公害などにより海を荒らす地上人を攻撃するための要塞を建造している。ポセイドン王は代々不死身の体を持っており、歴代の149人のポセイドン王が砦に眠っている。
ターリン(原作のみ)
ポセイドン族の殺し屋。トリトンの両親を殺した。エビカニのように脱皮する事ができる。執念深い性格であるが、好意を持った沖洋子の「優しい人」と言う信頼だけで幸福感を溢れさせる等、恋愛面に関しては純情。ポセイドン族の規則により陸ではトリトンと対決せず、海の中やポセイドン要塞で対決する手下。地上では沖家の運転手として働いている。沖家の令嬢洋子に好意を持っており、ポセイドン一族の秘薬を提供するなどして心臓に病気を抱える洋子を守っていた。そのため、トリトンも洋子の生存中は彼女の生命線であるターリンを殺すことが出来なかった。洋子がドロテアに殺された際には、一時的にトリトンと共同戦線を張った。最期は要塞で対決したところ、皮を脱いだ時点で、潰されて死亡。
ドリテア:声 - 沢田敏子
北太平洋の女司令官。武器は鞭。トリトン征伐に失敗し、ポセイドン族の掟に従い、海底火山の噴火口に身を投げ自ら命を断つ。原作の名では「ドロテア」であるがかなりデザインが異なっている。
ドロテア (原作のみ)
ポセイドンの一番のお気に入りの娘で頭足類の特性を有する。卑劣な性格で矢崎家のある村の海を毒で汚染し、その罪をトリトンに擦り付けることで地上の人間にトリトンを殺させようとした。トリトンとの対決では胴体の中に内臓が無いという体質を生かして優位に立つも、沖洋子の殺害を恨んで反旗を翻したターリンの攻撃で弱点である頭部を貫かれ致命傷を負わされた。
ヘプタポーダ:声 - 中西妙子
ポセイドンが人間から作り出したポセイドン族でありながら青い海と太陽に憧れていたために、永久追放され、南太平洋のはずれの海グモの牢獄に閉じ込められていたが、望みを叶えるという条件でトリトン征伐に参加する。ポセイドン族には珍しく美しい女性の姿をしている。何匹ものカマスを「生きた剣」に変えて戦う。トリトンとの戦いで自分の憧れていた太陽の下では輝きが強すぎてポセイドン族は生きられないと悟り、ポセイドンを裏切りトリトンに加担する。レハールの居場所をトリトンに知らせるが、自身はレハールに殺される。原作ではポセイドンの娘で陸で沖財閥と取引にした所をトリトンに襲われるが命拾いし、救われ、戦い合う事に疑問を持ち、最後は兄からトリトンを殺すように言われるも自殺した。「あなたとお友達になりたいのよ。」「あなたのことが好きよ。」とのセリフからもトリトンには少なからず好意を抱いていたと思われる。
ポリペイモス:声 - 加藤精三
鮫人で南太平洋の司令官。幾度もトリトン征伐に失敗し、その責任からポセイドン族の掟に従ってマーカスに処刑される。
ミノータス:声 - 柴田秀勝
ポセイドンが人間から作った、北極海の司令官。武器は口から吹く冷気。トリトン達を海の墓場に誘い込み、襲撃するも、トリトンのオリハルコンの短剣で倒される。パイロットフィルムではミノータスらしき怪獣が登場した。
マイペス:声 - 加藤修→野田圭一
ポセイドンが人間から作った、南極海の司令官。ミノータスとは元の人間が兄弟にあたる。兄ミノータス共にトリトン達を海の墓場に誘い込み、襲撃するも、ピピが付けたアルコールランプの炎を浴びて火達磨となり、海底に没した。
レハール:声 - 富田耕生
マンドリル顔で頭に角を持つ男で幻覚術を使う。ポセイドンの命により2000年の眠りから目覚め、ドリテア、ポリペイモス亡き後の太平洋全域の指揮を任された。裏切り者であるヘプタポーダを倒すも、直後にオリハルコンの輝きを直視したために失明、海底を永久に彷徨うこととなり、ポセイドンにも見捨てられる。原作でも登場するが、かなりデザインが異なっていた。
マーカス:声 - 矢田耕司
ポセイドンが命令伝達に使う、瞬間移動のできるタツノオトシゴ。武器は口から吹く毒針。
ネレウス:声 - 八奈見乗児→今西正男
セイウチの顔をした参謀。数々の刺客を送り込むもトリトンに大西洋入りを許し、失敗の責任を取ってポセイドンの命を受けたゲルペスに処刑される。
ゲルペス:声 - 兼本新吾→増岡弘
赤肌の半魚人。ゴルセノスにそっくり。ポセイドン守護が任務。同族の親衛隊を率いている。
ブルーダ:声 - 中曽根雅夫→山田俊司
虎模様で頭に角を生やしたインド洋の司令官。インド洋でトリトンを迎え撃ち、ブーメランを武器に戦うも敗れる。オリハルコンの剣の輝きがトリトンの力から発するものであることに気づいた。
ゴルセノス:声 - 水鳥鉄夫
頭に鶏冠の生えた、鱗に覆われた緑肌の半魚人。地中海の司令官。巨大なカブトガニに乗り、砂を使った攻撃や砂の分身でトリトンを苦しめた。乱暴者と言われる割りに頭が働くようで、オリハルコンの短剣を研究して対策を練り、鏡のような大きな盾を使って短剣の輝きを反射してみせたが、最期には砂の分身が洞窟の鍾乳石から滴り落ちる水に触れて固まり、自身は盾を手放したために敗れる。
クラゲ:声 - 渡部猛(第1話未放映版)、杉山佳寿子→吉田理保子
トリトン一行の動静を連絡する、連絡係。触手で岩を叩いて連絡を取り合う。
ポセイドン族長老:声 - 渡部猛
物語の黒幕。オリハルコンの短剣はアトランティス人が伝えたポセイドンの像を破壊する物だった。このオリハルコンの短剣はマイナスの力を持つナイフだった。ポセイドン族の真の目的はトリトン族を倒し狭い世界を出て、広い世界で平和に暮らしたかっただけだった。
老人:声 - 永井一郎
海鳥:声 - 神谷明
イルカ:声 - 森功至、吉田理保子、水島鉄夫
丹下全膳(原作のみ)
井苔流泳法の指南。トリトンに海での闘い方を教える。後に沖洋子が弟子入りする。
沖洋子(原作のみ)
トリトンの陸での親友。沖財閥の娘。心臓が弱く医者にスポーツをする事を止められているが、父親への反抗心から、トリトンに泳ぎをならいたい、といって近づく。陸でのトリトン理解者。トリトンとともに村に行った時、ドロテアに毒の海に投げ込まれ、心臓発作を起こし死亡。
沖波三(原作のみ)
沖商事の社長。オトヨばあさんと同様にトリトンを嫌う男。ポセイドン族に操られ、ポセイドンの要塞を建設する材料を要求される。
トリトンの子供たち(原作のみ)
トリトンとピピ子の間に生まれた7つ子の子供たちで、虹の色にちなんでブルー、レッド、イエロー、グリーン、オレンジ、バイオレット、ダークブルーと名付けられた。性別はブルーとレッドのみ男で、ほかの5人は女。トリトンの死後、ブルーはトリトンの名を継ぎ、「ブルートリトン」と名乗った。
ゴーブ(原作のみ)
ポセイドンとピピ子の身代わりとなったウミワタの間に生まれたポセイドンの34人目の子供、味方すら食べる食欲からポセイドンとトリトンの共闘により倒される。アニメでは「バキューラ」として登場した。

原作版サブタイトル

  1. 第1章『トリトンの誕生』
  2. 第2章『和也東京へ行く』
  3. 第3章『丹下全膳』
  4. 第4章『運命の日』
  5. 第5章『金色のイルカ』
  6. 第6章『武骨丸の秘密』
  7. 第7章『ターリン』
  8. 第8章『洋子の家』
  9. 第9章『ドデカポーダ』
  10. 第10章『ピピ子』
  11. 第11章『ヘプタポーダ』
  12. 第12章『ターリンの逆襲』
  13. 第13章『ドリッペ』
  14. 第14章『洋子の病気』
  15. 第15章『変身』
  16. 第16章『三匹の殺し屋』
  17. 第17章『ガノモス』
  18. 第18章『赤潮』
  19. 第19章『ドロテアの最期』
  20. 第20章『甲ら島へ!』
  21. 第21章『ポセイドンの要塞』
  22. 第22章『きさきえらび』
  23. 第23章『ウミワタ』
  24. 第24章『魔獣ゴーブ』
  25. 第25章『ゴーブ退治』
  26. 第26章『愛のかたみ』
  27. 第27章『ヨットにのって』
  28. 第28章『サンゴ礁の侵入者』
  29. 第29章『日本上陸』
  30. 第30章『高潮』
  31. 第31章『ミイラス将軍』
  32. 第32章『ポセイドンの最期』
  33. 最終章『トリトンよ永遠に』

単行本

  • 産経新聞連載版(1969年 - 1971年)
    • サンデーコミックス『海のトリトン』(秋田書店)全4巻
    • 手塚治虫漫画全集『海のトリトン』(講談社)全4巻
    • 手塚治虫傑作選集『海のトリトン』(秋田書店)全3巻
    • 秋田文庫『海のトリトン』(秋田書店)全3巻
  • テレビマガジン・たのしい幼稚園連載版(1972年)
    • サンデーコミックス『ふしぎなメルモ』(秋田書店)全1巻
    • 秋田文庫『ふしぎなメルモ』(秋田書店)全1巻
    • 手塚治虫漫画全集『ワンサくん』(講談社)全1巻

アニメ

1972年4月1日から同年9月30日までABC制作、ABCをキー局にTBS系で毎週土曜日19時 - 19時30分に全27話が放送された。本作より、この枠はTBS制作番組からABC制作番組に変更になっている。

元々は連載終了後に、手塚治虫が手塚プロダクションでアニメ化する予定でパイロット版まで制作されたが、虫プロダクションの経営悪化による混乱の中、アニメ化の権利を後に『宇宙戦艦ヤマト』を制作する手塚のマネージャーだった西崎義展が取得して、テレビ局への放送の売り込みに成功した手塚治虫「あとがき」『手塚治虫漫画全集192 海のトリトン4』講談社、1980年、p.231.。西崎のテレビアニメ初プロデュース作品であり、富野喜幸(現・富野由悠季)の初監督作品となる。虫プロ商事のスタッフを中心に設立されたアニメーション・スタッフルームで製作されることとなった。実際に制作の中心となったスタジオは主に東映動画のテレビアニメシリーズの下請けをこなしていた朝日フィルムで、監督の富野は虫プロ系のスタッフが使えなかったと後に述べている富野由悠季『増補改訂版 だから僕は…』徳間書店・アニメージュ文庫、1983年、pp.283-284.。したがって、東映動画(現・東映アニメーション)出身で同社の『マジンガーZ』などのキャラクターデザインを担当した羽根章悦の起用も、虫プロではなく新しいものに挑むという基本方針の下、あえて非手塚治虫調のキャラクターを選択したものであった富野由悠季『増補改訂版 だから僕は…』徳間書店・アニメージュ文庫、1983年、pp.285-286

こうした製作の経緯があったため、手塚は秋田書店版の単行本のカバー袖のコメントで、テレビまんがのトリトンは自分のつくったものではないとか、講談社の手塚治虫漫画全集のあとがきでは、自分は原作者の立場でしかないなどと読者に断っている。これについて富野は、手塚は原作を失敗作だと考えていたのではないかと推察し、ストーリーの改変についても、かなり自由に任せてくれたとも回想していたNHK総合テレビジョン『トップランナー』2002年2月28日放送。富野由悠季出演回。

アニメ版では原作にあったトリトン族と人間との関わりの部分を切り捨て、物語全体の鍵を握る「オリハルコンの短剣」を登場させて、圧倒的な敵を相手に戦闘が成り立つことを説明している。本作は『鉄腕アトム』や『リボンの騎士』等とは違って,虫プロの色である手塚治虫のスターシステムキャラクターは全く登場しなかった。

アニメ史上の評価

本作は『宇宙戦艦ヤマト』以前に高年齢層に人気を博した作品で、アニメブームの先駆者として重要とされる作品である。日本で初めてテレビアニメのファンクラブが作られたとも言われる作品で、とりわけ女性ファンの人気が高かった氷川竜介『20年目のザンボット3』太田出版、1997年、pp.182-184.『富野由悠季全仕事』キネマ旬報社 1999年、p.64。ササキバラ・ゴウ『<美少女>の現代史 萌えとキャラクター』[講談社現代新書、2004年、p.21.大塚英志『キャラクター小説の作り方』講談社現代新書、2003年、pp.279-282.辻真先「アニメ脚本の歴史」『テレビ作家たちの50年』日本放送作家協会編、NHK出版、2009年、p.355.大森望、三村美衣『ライトノベル☆めった斬り!』太田出版、2004年、p.51.

後に西崎の『宇宙戦艦ヤマト』と富野の『機動戦士ガンダム』が大ヒットしたことで、本作は再評価された。1978年1月25日には、「アニメ愛蔵盤シリーズ」の1作として本作のサウンドトラック『海のトリトン』(CS-7044)が発売され、オリコンLPチャートで最高4位『オリコン・チャートブック LP編 昭和45年-平成1年』オリジナル・コンフィデンス、1990年、331頁。ISBN 4871310256を記録した。

やがてアニメブームが到来し、テレビ版を再編集した劇場版前編(74分)が製作された。西崎義展がプロデュース、劇場アニメ版『宇宙戦艦ヤマト』を監督した舛田利雄が監修した。1979年7月4日に『宇宙戦艦ヤマト』『さらば宇宙戦艦ヤマト』の再上映のアンコールイベント『宇宙戦艦ヤマト・フェスティバル』で公開された。後編(65分)は未公開であったが、前後編を合わせて収録した完全版が2002年3月にパイオニアLDC(現・ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメントジャパン)よりDVDで発売されている舛田利雄『映画監督舛田利雄~アクション映画の巨星 舛田利雄のすべて~』佐藤利明、高護編、ウルトラ・ヴァイヴ、2007年、p.298.

本作は富野喜幸の初監督作品として、守るべきものに追われる主人公、主人公たちが作る共同体、トリトン族が悪でありポセイドン族が善という善悪逆転の衝撃のラストが後の『無敵超人ザンボット3』に繋がるとしてしばしば比較される氷川竜介「ロボットアニメの系譜が示すガンダムの実像」『BSアニメ夜話Vol.02 機動戦士ガンダム』キネマ旬報社、2006年、p.145.ササキバラ・ゴウ『<美少女>の現代史 萌えとキャラクター』[講談社現代新書、2004年、p.130中島紳介「『海のトリトン』~『機動戦士Vガンダム』 ニュータイプの夢は終わらない」『別冊宝島330 アニメの見方が変わる本』宝島社、1997年、pp.47-48.

ケイブンシャが発行した『大百科シリーズ112 世界の怪獣大百科』では、本作に出てきた一部のポセイドン族やメドンが紹介されている。

玩具

スポンサーの中嶋製作所が商品化したポセイドン族は「ウルトラ怪獣」とされ、価格もブルマァクの怪獣ソフビ同様350円。バキューラやゲプラー等の怪獣は商品化されなかった。また当時、バンダイの「わんぱくイルカ」のヒットに便乗しルカーが同様に水中モーターを搭載して商品化されている。

再放送

再放送に関しては、1975年3月31日にABCテレビがテレビ朝日系列にネットチェンジしたことにより、テレビ朝日系列局のある地域では、TBSテレビ→テレビ朝日(ANB→EX)、静岡放送(SBS)→静岡けんみんテレビ=現:静岡朝日テレビ(SKT→SATV)、中国放送(RCC)→広島ホームテレビ(UHT→HOME)、RKB毎日放送(RKB)→九州朝日放送(KBC)等その局に移譲して行われていたところもある。また後年、毎日放送(MBS)のアニメ再放送枠「ヒーローは眠らない」でも放送された。現在サンテレビで月曜から金曜の朝7時から放送されている。

ビデオグラム化

1990年12月17日にバンダイビジュアル販売株式会社から全27話を7枚のレーザーディスクに収録したLD-BOXが発売された。翌1991年には同社から全6巻のビデオ版が単品で販売された。

DVD-BOXは、パイオニアLDCより、2001年9月21日に発売された。 2002年10月25日には、全5巻の単品DVDも発売されていた「DVD発売日一覧」8月26日の更新情報 インプレスAV Watch 2002年8月27日。

しかし劇場版とBOXと単品版は廃盤扱いのため入手困難になり、ネットオークションや中古DVD・ビデオ店や古本屋まんだらけなどでは値段が高騰していた。

2009年9月11日に東北新社より、テレビ版と劇場版を完全収録したDVD-BOXが発売された海のトリトン:手塚原作、富野演出の傑作がDVDボックスに 劇場版前後編と「幻の1話」も 毎日新聞 2009年6月20日。

アニメ版ストーリー

老漁師一平に岬で拾われた緑の髪の赤子は、トリトンと名づけられ育てられるが不吉な髪の色として疎外される。ある日一頭の白いイルカ、ルカーに出会う。ルカーは、トリトンが人ではなく、海棲人類トリトン族の最後の生き残りであること、トリトン族は七つの海を支配し暴虐の限りを尽くす、ポセイドン族と戦う運命にあることを告げる。イルカの言葉が判ること自体に狼狽し、それを信じようとしないトリトンであったが、一平がトリトンと一緒に拾ったトリトン族の衣装と宝物「オリハルコンの短剣」を発見し、ルカーのいうことが真実だと知る。そのとき、トリトンを発見したポセイドン族の尖兵が漁村を襲い、トリトンは村を救うため、海への旅立ちを決意する。トリトン族の他の生き残りを探すため、父母の仇、村の仇であるポセイドン族を倒すために。

苦難の旅の果て、ポセイドン族の本拠地へのりこんだトリトンは衝撃の真実を知る。ポセイドン族はアトランティス人によってポセイドンの神像の人身御供として捧げられた人々の生き残りであり、トリトン族は彼らに滅ぼされたアトランティス人がポセイドン族に復讐するために生み出した新人種であった。ポセイドン族は安心して地上で暮らすためにトリトン族を虐殺してきたのである。

この最終話のプロットは富野が脚本を無視して絵コンテ作成時に独断で盛り込んだものであった。このアイデアは第1クール終了頃に思いついたものの、周りに相談すると確実に却下されると考えて富野は沈黙を貫いた。ただし富野は、たとえ何クールの放送になろうと最後はこうすると決めていたという。富野自身「これはもう職権乱用です」と断言している

スタッフ

主題歌・挿入歌

  • 主題歌
    • 『海のトリトン』(作詞:伊勢正三/作曲:南こうせつ/歌:須藤リカ、かぐや姫/オープニング:第1話 - 第6話、エンディング:第7話 - 最終話/発売元:日本クラウン)
    • 『GO! GO! トリトン』(作詞:林春生/作曲:鈴木宏昌/歌:ヒデ・夕木、杉並児童合唱団/エンディング:第1話 - 第6話、オープニング:第7話 - 最終話、劇場版/発売元:日本コロムビア)
      • 商品化の際には『海のトリトン』と表記されることも多い。そのため、一つの番組で同じタイトルの歌が2つ存在することになり、混乱を招きやすい。なおビクターレコードからは藤井健によるカバー版が発売された。
  • 挿入歌
    • 『海のファンタジー』(作詞:山川庄太郎/作曲:南こうせつ/歌:須藤リカ、かぐや姫/発売元:日本クラウン)
    • 『ピピのうた』(作詞:丘灯至夫/作曲:松山祐士/歌:広川あけみ/発売元:日本コロムビア)
主題歌のアニメーション
オープニングアニメーションの作画が放映開始に間に合わなかった最初の作品でもあり、かぐや姫と須藤リカがエンディング・テーマ『海のトリトン』を歌う映像を約1クールの間、オープニングと入れ替えて用いていた。主題歌である『GO! GO! トリトン』は、早い時期にミュージックエイト社による吹奏楽譜がリリースされたこともあり、多くの学校で吹奏楽の演奏曲目として使用されている。特に高校野球の応援によく演奏される曲目でもある。

放送リスト

各サブタイトルは画面上表記どおり。また映画化においては、各エピソードに対し主な変更が加えられた。

  • ボトルショー(シリーズ全体で構成に影響のない、一話完結エピソード)はカットである。

話数サブタイトル脚本コンテ演出劇場版での反映編集
1海が呼ぶ少年松岡清治斧谷稔富野喜幸物語の初端であるため反映。
2トリトンの秘密永樹凡人物語の基本設定が固まる話のため反映。
3輝くオリハルコン正延宏三ボトルショーのためカット。ただしドリテアとトリトンの戦闘、メドンの死は反映。
4北海の果てに辻真先斧谷稔富野喜幸ピピ初登場の話のため反映。
5さらば北の海宮田雪山吉康夫ミノータスとの対決とプロテウス戦死を反映。
6行け、南の島!松岡清治大貫信夫第10話に統合。トリトンがピピを連れ戻す以外のシーンは全べてカット。
7南十字星のもとに辻真先山吉康夫ボトルショーのため、カット。
8消えた島の伝説松元力大貫信夫
9ゆうれい船の謎富田宏山吉康夫
10めざめろ、ピピ!松岡清治池原成利ほぼ反映だが、一部はカット。
11対決・北太平洋宮田雪山吉康夫
12イルカ島大爆発松岡清治斧谷稔(前編)のラスト。イルカ島崩壊のみ反映だが一部はカット。
13巨獣バキューラの追撃松元力山吉康夫ハイライトシーン以外のシーンはカット。
14大西洋へ旅立つ辻真先斧谷稔ボトルショーのためカット。
15霧に泣く恐竜宮田雪大貫信夫漂流シーンとポリペイモス処刑のみ反映だが、恐竜のシーンはカット。
16怪人レハールの罠辻真先西谷克和レハール登場と海底洞窟のみ反映。
17消えたトリトンの遺跡松元力平田敏夫ボトルショーのためカット。
18灼熱の巨人タロス辻真先大貫信夫ボトルショーだが、ピピとフィンがさらわれるシーンのみ反映。
19甦った白鯨宮田雪佐々木正広ピピとフィンを救出に行く途中の話だが、ボトルショーのためカット。
20海グモの牢獄松岡清治斧谷稔ほぼ反映。
21太平洋の魔海辻真先山吉康夫ボトルショーだが、ヘプタボーダの戦死のみ反映。
22怪奇・アーモンの呪い宮田雪大貫信夫ボトルショーのためカット。
23化石の森の闘い松岡清治斧谷稔ほぼ反映。
24突撃ゴンドワナ辻真先池原成利一応ボトルショーだが、前編のドリテアを倒すシーンのため、ガダルを倒すシーンを流用。
25ゴルセノスの砂地獄宮田雪斧谷稔ボトルショー。ネレウス処刑のみ反映。
26ポセイドンの魔海辻真先大貫信夫ボトルショー。ただし、難破船での戦闘のみ反映。
27大西洋 陽はまた昇る松岡清治前述の通り、このクレジットは名目上であり、最終話の脚本は存在しない。斧谷稔ほぼ反映。

パイロット版

1971年10月に、日本国外への輸出を意図して、頭身の低い洋風のバタくさいキャラクターデザインで虫プロ商事によって、アクション中心の9分のパイロット版が製作された『手塚治虫劇場 手塚アニメーションフィルモグラフィー』手塚プロダクション、1991年第2版、p.42.。イーストマンカラー作品。テレビアニメ版制作の前であり、タイトルは新聞連載時の『青いトリトン』となっている。

スタッフ
  • 原作:手塚治虫
  • 原画:上口照人
  • 動画:小林準治

アニメと原作のラストの違い

原作
  • 不死身のポセイドンを宇宙へ追放させるため、トリトンはポセイドンと共に宇宙へ去ってしまう。その後、ピピ子との間に生まれた7つ子から息子のブルーがトリトンの後を継ぎ、甲ら島となったガノモスに帰るシーンでラストとなる。
アニメ

トリトンはアトランティス大陸の遺跡の中に入り、ポセイドン族の長老の亡骸と対峙。そこでオリハルコンの短剣の秘密が明らかになる。実は、ポセイドン像はプラスエネルギーのオリハルコン、短剣はマイナスエネルギーのオリハルコンで作られていた。そして、ポセイドン族によって滅ぼされたアトランティス人から、マイナスエネルギーのオリハルコンの短剣をトリトン族が託された。そのため、自らの安泰のためにもポセイドン族はオリハルコンの短剣を始末しなければならなくなった。というのも、トリトンのオリハルコンの短剣には、ポセイドン族の生命の源であるポセイドン像(プラスエネルギーのオリハルコン)を引き寄せてしまう磁力のような力が存在していたからだ。最終的にトリトンはポセイドン像を破壊、その爆発のためポセイドンの基地も破壊される。その後トリトンとピピは、イルカたちと共にいずこかへ立ち去ってラストとなる。

出典

外部リンク