潔く柔く/いくえみ綾

『潔く柔く』（きよくやわく）は、いくえみ綾による日本の漫画作品。2004年から2010年に、『Cookie』（集英社）で連載された。2009年、第33回講談社漫画賞少女部門受賞。

概要

『Cookie』（集英社）2004年3月号から2010年3月号に連載。同誌2010年6月号・7月号に、番外編『潔く柔く -切切と-』が掲載された。単行本は、マーガレットコミックスから全13巻が発行された。

女子高生を中心とした登場人物それぞれの成長と、日々の恋愛模様を数話完結のオムニバス形式で描いた作品。

あらすじ

ACT1・由麻編

由麻は通学電車で痴漢に悩まされている女子高校生。同級生で由麻に好意を抱く諏訪は痴漢から由麻を守るべく、一緒に電車通学をする。そして流れで二人は交際を始める。しかし、由麻には以前から気になる男、同じ電車に乗車する生物教師・梶間がいる。

ACT2・カンナ編

カンナとハルタは同じ団地に住む幼なじみで、「猫のキス」をする仲。マヤ（真山）とアサミは中学の同級生。そんな4人が高校で出会い、行動を共にする。アサミはハルタに、マヤはカンナに密かな恋心を抱く。高校1年生の夏、カンナがマヤと花火を見ている頃、ハルタは交通事故で死亡する。カンナ、マヤ、アサミそれぞれの複雑な想いが互いに交錯しあう。

ACT3・瑞希編

東京に進学が決まった高校3年生の瑞希。片思いをしていた教師の結婚を知り、複雑な心境で高校生活最後の学期を過ごしていた。そんな時、ふとしたきっかけから1年生の梶間という男の子に出会う。もうすぐ東京に旅立ってしまう瑞希とまだ2年間高校生活を残した梶間との距離は次第に縮まっていくのだが……。

ACT4・亜衣編

大学進学により上京してきた亜衣は、アパートの隣人の部屋を行き来する真山に惹かれていく。しかし、真山には忘れられない悲しい過去があった。余計に真山を愛しく想う亜衣と、真山の過去からの解放を描いた作品。

ACT5・一恵編

少女漫画が好きな一恵は高校3年生で、同じく少女漫画好きのキヨと出会う。そして、偶然にもキヨは、一恵が中学校の頃好きだったハルタのいとこ。ハルタへの消化しきれぬ想いを、キヨの助言と共に消化していく一恵は次第にキヨに惹かれていく。キヨと一恵は、ひょんな事からハルタの幼馴染だったカンナと会う。そこでカンナのどこにも持っていけないハルタへの想いと、進まない現実を直視する。そして、一恵は、後悔をしない自分へ第一歩を踏み出す。

ACT6・禄編

小学4年生の時、遠足先で事故に遭い、助かった禄と死んでしまった希実。事故後、東京へ引っ越していた禄が戻ってきた。そこへ、希実の姉・愛実から「会いたい」と連絡が来る。止まっていた時間が動き出す……。

ACT7・百加編

百加は、元彼の嫌がらせをやめさせてくれたクラスメイトの中西のことを好きになってしまう。しかし、彼は他校の女の子を「マドンナ」と呼び慕っていた。中西と一緒の大学へ進学した百加は、隣の席に座ったカンナと仲良くなる。百加と一緒にいるカンナを見た中西は驚いた表情を見せる。中西の「マドンナ」がカンナだったからだ。

ACT8・音々編

音々は、お腹の肉に悩む普通の専門学校生。ある日、友達に誘われカレー屋に行ったところ、自分好みの食べ方をする男の子（禄）を見つける。後日、偶然にも禄が音々のアルバイト先を訪れる。音々は「このチャンスを逃してたまるか」とばかりに禄に話しかけ、彼のアルバイト先のバーを教えてもらう。その後、勇気を振り絞ってその店を訪れる音々だったが……。

ACT9・朝美編

朝美は就職活動を目前にした大学3年生。社会人の彼氏との関係も重すぎず順調だ。そんな中家庭教師をしている小学生・瑠璃の兄・伊吹に告白される。彼を見ていると考えまいとしていたハルタへの初恋を思い出す。

ACT10・最終章 カンナ編

未来は誰の上にもあるのだと、疑いようもなかった中学生のカンナ。一緒にいるのが当たり前だった。それが運命だと思っていた。ハルタを失い社会人になったカンナが出逢ったのは……。

登場人物

森 由麻（もり ゆま）

ACT1：高1。電車の痴漢に悩まされる。諏訪と付き合うことになるが、梶間のことを好きになる。

諏訪 仁志（すわ ひとし）

由麻のクラスメイト。

ACT1：高1。由麻のことが好き。

梶間 洋希（かじま ひろき）

ACT3：高1。クラスメイトから「冷血人間」と恐れられている。3年生の瑞希と出会う。

ACT6：高1。瑞希と付き合っている。瑞希の卒業で、離れ離れに。

ACT3：22歳。教育実習生として、母校へ。瑞希と再会。

ACT8：大学4年生。禄のバイト先の常連。

ACT1：25歳。由麻の通う高校の生物教師。園芸部の顧問。

ACT10:高校の教師。修学旅行の下見で東京に来ていて、禄に会いに行ったときに同じタイミングで訪ねてきたカンナに会う。

瀬戸 カンナ（せと カンナ）

ACT2：高1。校内・校外に関わらずモテる。

ACT5：高3。キヨ・一恵と再会。

ACT7：大学1年。最初の授業で隣の席になった百加と親しくなる。

ACT4：大学1年。マヤと再会。

ACT10：映画宣伝会社「メロンワークス」社員。行きつけのバーで赤沢禄に絡まれ、翌日再会する。（回想：中1・中3。）

春田 一恵（はるた かずえ）

通称・ハルタ。カンナとは幼なじみ。カンナのことが好きだが素直になれない。

ACT5：中3。一恵（いちえ）と同じクラス。

ACT2：高1。7月31日、交通事故で死亡。

ACT10：中・高生。カンナの回想に登場。

真山 稔邦（まやま としくに）

通称・マヤ。朝美とは中学が一緒。

ACT2：高1。カンナのことを好きになる。

ACT4：大学1年。亜衣と出会う。バイト先でカンナと再会。

ACT7：大学1年。百加に「7月31日」のことを聞かれキレる。

川口 朝美（かわぐち あさみ）

通称・アサミ。真山とは中学が一緒。

ACT2：高1。ハルタのことを好きになる。

ACT9：大学3年。家庭教師のバイトをしており、社会人の彼氏がいる。

ACT10:「STARS☆株式会社」社員。

沢内 瑞希（さわうち みずき）

ACT3：高3。東京の短大に進学が決定している。卒業間近に梶間と出会う。

ACT6：梶間と付き合っている。東京の短大へ進学、梶間と離れ離れに。

ACT3：24歳。父親の病状悪化に伴い、短大卒業後4年間勤めた会社を退職し、帰郷。梶間と再会。

永友 亜衣（ながとも あい）

大学進学のため、北海道・札幌から上京。

ACT4：大学1年。アパートの隣の部屋に出入りする真山を好きになる。

笹塚 一恵（ささづか いちえ）

彼氏いない歴17年。中3の時、同じクラスだったハルタのことが好きだった。

ACT5：高3。キヨのことを好きになる。

ACT10:キヨと一緒にカンナのお見舞いにくる。

小峰 清正（こみね きよまさ）

通称・キヨ。ハルタのいとこ。少女漫画が好き。

ACT5：高3。巨乳でかわいい彼女がいる。

ACT10:禄の後輩。バーでカンナと再会する。（カンナの回想にも登場。ハルタがカンナに紹介する。）

赤沢 禄（あかざわ ろく）

小学4年生の時、事故に遭い1年留年している。事故の後遺症で小指が動かない。

ACT6：高1だが、1年留年しているため周りより1歳年上。

ACT8：大学4年生。バーでアルバイトをしている。

ACT10：出版社「プレジャー」社員。バーでカンナ・百加と知り合う。

柿之内 希実（かきのうち のぞみ）

小学4年生の時、事故に遭い死亡。

ACT6：禄を見守っている。

柿之内 愛実（かきのうち まなみ）

希実の姉。

ACT6：21歳。希実の死以来、沈んだままの家庭を取り戻そうとする。

ACT8：結婚し、「桜場」姓に。睦実（むつみ）という名前の子供がいる。

ACT10:修学旅行の下見で東京に来ている梶間と電話でしゃべる。睦実の言語発達が遅いのではないかと心配している。

高瀬 三千花（たかせ みちか）

禄のクラスメイト。

ACT6：高1。クラスメイトの梶間のことが好き。

千家 百加（せんけ ももか）

高校の同級生・中西のことが好き。

ACT7：大学1年。最初の授業で隣の席に座ったカンナと親しくなるが、中西がカンナを好きなため、カンナをあまり良く思っていない。

ACT10：バーで禄と知り合い、マブダチに。

中西 史也（なかにし ふみや）

高校の頃から、カンナを「マドンナ」と呼び慕っている。

ACT7：大学1年。カンナとの接点を作ってくれた百加に感謝している。

古屋 寿（ふるや ことぶき）

中西の友達。アフロ。

ACT7：大学1年。勘が良く、百加と中西それぞれに対し、指摘とも思われる発言をする。中西とは仲の良い友人。

ACT10：社会人。百加とは付かず離れず距離を保っている。

安養寺 音々（あんようじ ねね）

短大卒業後、就職できずに専門学校へ。お腹の肉が気になっている。

ACT8：禄に一目惚れ。後日偶然再会し、禄のバイト先のバーに通いつめる。

夏目 伊吹（なつめ いぶき）

朝美が家庭教師をしている瑠璃の兄。

ACT9：高1。朝美に一目ぼれをし猛アタック中。妹の瑠璃とは腹違い。

河本 雅矢（かわもと まさや）

朝美の6歳年上の彼氏。社会人。

ACT9：朝美に対し「上司の娘と結婚したい、朝美との関係も続けたい」と発言。

柳原（やなぎはら）

ACT10：「メロンワークス」社員。カンナの上司。

満里奈（まりな）

カンナと同じ部活の友人。森先輩のことが好き。

ACT10：中1（回想編）手紙で森先輩に告白をしたが、森先輩はカンナの告白と勘違いをした。

野原チカコ（のはら　ちかこ）

漫画家。「ミラクルミルキー！」の作者。

ACT10:禄と一緒にバーに来ていて、その場に現れたカンナに朝美と間違えられる。

書誌情報

いくえみ綾 『潔く柔く』 集英社〈マーガレットコミックス〉 全13巻

1. 2004年11月25日発売、ISBN 4-08-847804-5
2. 2005年11月25日発売、ISBN 4-08-846011-1
3. 2006年6月23日発売、ISBN 4-08-846073-1
4. 2006年11月24日発売、ISBN 4-08-846117-7
5. 2007年6月25日発売、ISBN 978-4-08-846186-1
6. 2007年11月22日発売、ISBN 978-4-08-846241-7
7. 2008年3月25日発売、ISBN 978-4-08-846282-0
8. 2008年9月25日発売、ISBN 978-4-08-846339-1
9. 2008年12月25日発売、ISBN 978-4-08-846371-1
10. 2009年7月24日発売、ISBN 978-4-08-846431-2
11. 2009年10月25日発売、ISBN 978-4-08-846460-2
12. 2010年4月23日発売、ISBN 978-4-08-846520-3
13. 2010年9月24日発売、ISBN 978-4-08-846574-6、「潔く柔く -切々と-」「誰かが私にキスをした」（『Cookie』2010年4月号掲載）収録