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狼と香辛料 16

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|- | colspan="2" style="padding: 0;"| {| class="infobox bordered collapsible innercollapse autocollapse" style="width: 100%; margin: 0" ! colspan="2" style="text-align: center; background-color: #ccf;"| 漫画 |} |- | colspan="2" style="padding: 0;"| {| class="infobox bordered collapsible innercollapse autocollapse" style="width: 100%; margin: 0" ! colspan="2" style="text-align: center; background-color: #ccf;"| インターネットラジオ |} |- | colspan="2" style="padding: 0;"| {| class="infobox bordered collapsible innercollapse autocollapse" style="width: 100%; margin: 0" ! colspan="2" style="text-align: center; background-color: #ccf;"| アニメ |} |- | colspan="2" style="padding: 0;"| {| class="infobox bordered collapsible innercollapse autocollapse" style="width: 100%; margin: 0" ! colspan="2" style="text-align: center; background-color: #ccf;"| その他のメディアミックス作品 |} 『狼と香辛料』(おおかみとこうしんりょう)は、支倉凍砂によるライトノベル、および同ライトノベルを原作とする漫画・テレビアニメ・テレビゲーム・ラジオドラマなどの関連作品。ライトノベル版は文倉十がイラストを描き、電撃文庫から刊行されている。

概要

本作は、2005年(平成17年)に行われた第12回電撃小説大賞の銀賞受賞作品であり、著者のデビュー作にあたる。狼の化身である少女と青年行商人の道中で起こる様々な事件を、軽妙洒脱な掛け合いをちりばめつつ描くファンタジー物語であり、中世ヨーロッパ的な世界での経済活動に争いの舞台を置く異色作である三村美衣 。題名は『金と香辛料―中世における実業家の誕生』(の中世経済史書)に由来する

2007年(平成19年)9月には本作を原作として漫画化され、2008年(平成20年)1月にはテレビアニメ化、同年6月にコンピューターゲーム化された。また、2007年(平成19年)12月から2008年(平成20年)4月、および2009年(平成21年)6月からは、隔週で本作をテーマとしたインターネットラジオの配信が行われた。詳細は#漫画、#テレビアニメ、#ゲーム、#インターネットラジオの各節を参照。

2011年7月発売の第17巻をもって完結したが、2016年9月の新シリーズ『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙』の刊行開始と同時に再開されている。

2017年6月現在、シリーズ累計発行部数は426万部を超える

ストーリー

旅の青年行商人クラフト・ロレンスは、商取引のために訪れたパスロエ村を後にした夜、荷馬車の覆いの下に眠る1人の密行者を見付ける。それは「ヨイツの賢狼」ホロと名乗る、狼の耳と尻尾を持つ少女であった。

ホロは遙か北の故郷「ヨイツ」を離れての放浪の中、パスロエ村の麦に宿った狼であった。ホロは神と呼ばれ、長年村の麦の豊作に尽くしていたが、農業技術の進歩によって、自分がないがしろにされるのを感じ、望郷の念を募らせていた。そしてついに収穫祭の日、通りかかった荷馬車の麦束に乗り移って村を脱出したのであった。

少女が狼の化身であることを知ったロレンスは、彼女を旅の供に迎えた。2人は行商の途中、様々な騒動に巻き込まれながら、ホロの故郷を目指して旅をすることになる。

なお、題名の由来は#概要のとおりだが、本作において「狼と香辛料」は主人公の2人を指しており、狼はホロ、香辛料はロレンスのことである。ロレンスを香辛料とするのは、ミローネ商会のマールハイト(第1巻に登場)が商売の節度を説くため、正教会が創作した戯曲の登場人物「肥え太った魂にたっぷりと香辛料のうまみを効かせた大金持ちの商人」を引き合いに出し、彼を大成する商人として褒めた言葉にちなんでいる。

世界観

本作で描かれるのは中世ヨーロッパを思わせる架空世界であり、ここでは超常的現象はいっさい生じないとされるが、唯一の例外が知性を持つ獣の存在で、彼らはその正体において同族をはるかに凌ぐ体躯を持つ物語後半では普通の動物サイズの大きさの者も登場している。うえに長寿あるいは不死であり、人間へ化身することができる。また、人間との間に子をなすこともできる。作中では狼であるホロ以外に鳥・羊・鹿らが登場するが、彼らは人目に触れることを嫌い、迫害されることを恐れ、人間に姿を変えて人の世にまぎれるか人里から離れて暮らすため、人間の間ではその存在は伝説となりつつある。

登場人物

クラフト・ロレンス
声 - 福山潤
馬車で各地を巡りながら、様々な物品を売買する旅の行商人。20代後半の青年。パスロエ村でホロと出会い、ともに旅をする。
ホロ
声 - 小清水亜美
先の白い尻尾と立った獣耳を持つ美少女。正体は、何百年も歳を重ね、本来の姿は人間を丸呑みにできるほど巨大な狼。麦に宿り、その収量を左右する神秘的な力を持つ。長年住み慣れた土地を離れ、北の地にある故郷への帰還を望み、ロレンスとともに旅をする。

設定・用語

貨幣

商売に用いられる貨幣には、金貨、銀貨、銅貨があり、それぞれにさらなる多くの種類がある。為替レートは、各貨幣の価値により変動する。同じ貨幣であっても摩耗具合や発行時期によって相場が変動する。新しい国ができては貨幣を発行し、地方権力者や教会もどんどん独自の貨幣を発行しているため、巷には何百種類もの貨幣が流通しており、地域によって信用のある価値の高い貨幣がいくつかある。

流通している種類こそ多いものの、旅人や商人が街から移動する過程で貨幣を持ち出してしまうため、どこも深刻な貨幣不足に悩まされており、多くの街では貨幣の輸入を行っているが、それでも現金不足が問題になることがある。

金貨

ヌマイ金貨
2大金貨の1つ。1巻でミローネ商会が合言葉に使用していた。
ピレオン金貨
2大金貨の1つ。1巻でミローネ商会が合言葉に使用していた。
リマー金貨
プロアニア王国西方の沿岸地域やエンベルク、クメルスン周辺で流通している金貨。トレニー銀貨で20枚程度の価値。
リュミオーネ金貨
ロレンスが行商をしている地域で流通している金貨。金の純度と信頼度が高いために様々な貨幣の計算基準となっており、どこの地方でも価値がそれほど変動しないため、「最強の金貨」とも呼ばれる。トレニー銀貨で30から35枚程度の価値があり、帆船が刻印されている。

銀貨

トレニー銀貨
トレニー王国が発行している、第11代トレニー国王の横顔が刻まれた銀貨。ロレンスが行商する地域で流通しており、作中の登場回数も多い。銀の含有量と信頼性が共に高いために市場で人気があり、これ1枚でつつましく生活すればゆうに7日(北の貧困地域ならば、節約すれば1か月)は生きられるほか、2000枚あれば町に自分の店を持てる。
1巻で切り下げが決定されたが、その後の言及は無い。
イレード銀貨
クメルスンを所有する貴族の第7代当主の肖像が刻まれた銀貨。イレード銀貨10枚で、トレニー銀貨4分の1枚程度の価値。
フィリング銀貨
パッツィオから南下して川を3つ渡った先にある国が発行している銀貨。銀の含有量はなかなかのものとなっており、市場ではトレニー銀貨と並んで人気がある。
リュート銀貨
かつては「偽トレニー銀貨」と呼ばれていたが、数の多さから後に独立した貨幣になった。銀の含有量が低く、細かい支払いに使用される。リュート銀貨32枚で薄めたリンゴの果汁1人分とパン2人分を買えるほか、5枚でちょっとした夕飯を食べられる。また、40枚で古着を1着購入できる。
パスロエ村では麦の生産量が大幅にアップしたため、リュート銀貨に代わってトレニー銀貨での支払いがされるようになった。
ラデオン司教領銀貨、後期ラデオン司教領銀貨、偽マリーヌ銀貨、ファラム銀貨、ランドバルト禿頭(とくとう)王銀貨、ダンデレン大公即位銀貨
いずれもロレンスが行商する地域で流通している銀貨。
ミッツフィング聖誕祭銀貨、ミッツフィング大聖堂銀貨、聖ミッツフィング銀貨
ミッツフィング司教区で発行された銀貨。ミッツフィング司教区からは多くの銀貨が発行されている。
偽ミッツフィング大聖堂銀貨
ミッツフィング大聖堂銀貨の偽造貨幣。

銅貨

エニー銅貨
主に釣銭などの細かい支払いに使用される小額の銅貨。多くがウィンフィール王国に輸出されている。コミックスではトビウオの紋章が刻まれていた。
トリエ銅貨
主に釣銭などに使用される小額の貨幣で、「3枚の若葉」がデザインされている。リュート銀貨の3分の1の価値外伝「林檎の赤、空の青」にて、ワイズが「(両替手数料は)リュート銀貨なら10枚、トリエ銅貨なら30枚」と発言している。。レノスでは1トリエでジョッキ2杯のビールが買える(アニメでの描写)。なお、ノーラがロレンスから買ったサンダルは5トリエ。
シュミー銅貨
主に釣銭などに使用される、小さくて肉厚の銅貨。狼の紋様が刻まれており、狩人や樵に狼除けのお守りとして利用される。
プラーズ銅貨
ロレンスがレスコで支払いに使用した銅貨。

その他

リゴット硬貨
ウィンフィールでのみ用いられる硬貨。材質は不明だが、駆け出し商人のフルールがそれなりの量の商売を行った際の取引額が20リゴットであることから、銀貨の可能性が高い。
太陽の貨幣
デバウ商会がプロアニア以北の経済支配を狙って発行を決定した貨幣。金・銀・銅の3種類があり、いずれも「北の地に温もりと喜びをもたらす太陽」の図柄となっている。正式な名称は不明。
銀貨・銅貨ともに既存の貨幣の貴金属含有率を遥かに超えており、鉱山を文字通り山のように保有するデバウ商会の信用から、発効前から異常な投機熱に見舞われた。そのため、需要と供給の均衡が大きく崩れ、安定供給の方法を巡って商会内で内紛が勃発してしまう。
当初は金貨発行の予定はなかったが、スヴェルネル攻防戦後にデバウ商会とスヴェルエルの絆を内外に示すため、記念硬貨的な扱いで定期的に少数だけ作られることとなった。なお、金貨はリュミオーネ金貨を鋳つぶして打ち直すものであり、金の含有量はリュミオーネ金貨と同じである。

地理

モデルは14世紀頃の北ドイツ付近が中心となっている『狼と香辛料ノ全テ』より

トレニー王国
トレニー銀貨を発行している商業の発達した国。他国と同様、中央集権が進んでおらず、国王の権力はそれほど強くない。作中の時期では王家が財政難に瀕しており、トレニー銀貨の切り下げ(純度を下げて枚数を水増しする行為)が行われた。領内の主な町はパッツィオ、主要河川はスラウド川。
ラオンディール公国
ミローネ商会の本店がある南方の商業国。現君主は33代目のラオンディール大公。
プロアニア王国
北方の王国。王族にも異教徒がいるため、錬金術師や自然学者のような教会が異端視するものに対しても比較的寛容である。また、国内は異教徒と正教徒が混住しているため、正教徒の町と異教徒の町の関係が険悪な場合もある。首都はプロアニア以北最大の都市エンディマ。主要な町はクメルスン、レノス、ケルーベ。主要河川はローム川。
ウィンフィール王国
ローム川を下り、さらに海を渡った先にある島国。大陸から辛うじて肉眼で確認できる距離にある。現国王は3代目に当たる在位5年目のスフォン王。冬には大量の雪が降る北国だが、それ以外の季節には雨が多く降り、肥沃な牧草地が広がっている。畜産、特に牧羊と羊毛産業が盛ん。この国は貨幣が少なく、政変があると国内の貨幣が一斉に海外流出するため、この国の貨幣は沈没を先読みして船から逃げ出すネズミに例えて「ネズミ貨幣」と呼ばれている。現在は小麦と葡萄酒以外の輸入が禁止され、この国を訪れる旅行者が減り、貨幣も混ぜ物が多いものに改鋳されたため、国内経済は不況に陥っている。国内には黄金の羊伝説が伝わるブロンデル大修道院がある。
南の大帝国
国名は未登場ながら、ロレンスら商人の話題になる強大な商業国。1度の取引で金貨数千枚を稼ぐようになり、この国の皇帝御用達となることが「大商人への黄金の道」とされている。
エーブはロレンスと別れた後この国へ渡り、商会を興して成功した模様。
トートヒルト共和国
北の大遠征に参加した高名な騎士団が異教徒の軍勢との戦いで劣勢に陥ったとき、空一面に巨大な白い教会の紋章が現れ(実際は渡り鳥の群れ)、それを見た騎士団が奮闘し勝利を収めた、という伝承の残っている国。この伝説に倣って国旗は赤地に白い教会の紋章が描かれている。
リードン王国
トレニー王国からは船で2か月かかる距離にある南方の国。産業に香辛料があり、サフランや胡椒を産出する他、金や銀、鉄などの金属も輸出する。ミローネ商会はこの国のラマパタから胡椒を輸入しており、ロレンスがミローネ商会との取引で得た報酬で買い付けた。
気候は年中真夏でとても暑く、国民は皆生まれた時から真っ黒に日焼けしているという。
リンズ公国
プロアニア以北またはその周辺にある国。カテリーナ・ルッチの列聖に賛同する貴族がいる。

都市・町・村

アロヒトストック
北にあり、極北と呼ばれる地域。ロレンスが行商経験でホロと出会う前に訪れた年中吹雪の恐ろしい場所。近辺に「凪の大地」と呼ばれる場所が存在する。
ヨーレンツ
パスロエの北東にある山奥の村で、ロレンスがテンの毛皮を仕入れるために塩を売った場所。
パスロエ
大昔ホロが村の青年に頼まれて以来、麦の生育を司っていた農村。毎年収穫の頃には、ホロを祭った収穫祭が開かれている。近年、エーレンドット伯爵がこの村を治めるようになってから、南方の進んだ農法を取り入れ、周辺地域屈指の麦の収穫高を誇るようになった。村の近くに修道院がある。
ヨイツ
北にあるホロの故郷。大昔に、「月を狩る熊」という白く巨大で凶暴な熊の神に滅ぼされた、という話が残る。書物によれば、ヨイツに住んでいた神々は熊が来る前に逃げ出したとされる。また、他の書物に記された昔話によれば、レノスから北東の方角、ロエフ川上流にあったとされる。現在はトールキンと呼ばれている地方にあり、猟師や樵が滞在するために建てられた小屋が集まった小さな村がある。
ピローモテン
ホロの記憶の中にある、ヨイツの森の近くにある町。現状の詳細は不明。
ニョッヒラ
北にある温泉町。各国から王侯貴族もやって来る有名な温泉地で、ホロもヨイツにいるころは、よく湯に浸かりに行った。街(地方)は街道が通り、公共浴場もある賑やかな中心街と細い道で繋がる集落によって構成されている。
辺鄙な場所にある温泉ほど効能が高いとみなされており、「どうしてそんな所に行ったんだ?」と皆が訝しむような辺境に温泉宿があることも珍しくない。
パッツィオ
スラウド川中流に位置する大きな港町。上流に麦の大産地と林業の盛んな山林があり、橋のないスラウド川を船で渡るために、多くの人がこの町を通る。商業が発達して市民が力を持っており、トレニー国王から自治権を奪い取った。市内の市場には川から運河が通い、露店には様々な果物が並び、活気に満ちている。また、地下にはかつて使われていた用水路が今も残っており、現地の教会や商会によって随所に手が加えられている。
ポロソン
かつてはとある異教の聖地だったが、今では教会都市リュビンハイゲンの支配下にあり、町の人たちは熱心な正教徒となっている。交易と商取引の盛んな町であるものの、住民が商売の儲けを教会に寄付し、あるいは教会が税金として徴収するため、立派なのは町を囲む市壁だけで、市内は簡素な家しかなく、露店も少ない。元々が異教徒の地だったため、住民には変わった苗字を持つ者が少なくない。特産品は付近の高原から採れる石材。
リュビンハイゲン
教会が大きな力を持つ教会都市。教会の戦略的な物資補給拠点になっている。高い市壁に囲まれ、旧市街をとりまくように、一般市街区が広がっている。5つの広場が五角形に配置されており、中心に旧市街の広場がある。旧市街の広場には大聖堂と教会にとって功績のあった騎士や聖人等の銅像が立っており、南側の広場はメインゲートと噴水があり、周囲を商会や商業組合の建物が軒を連ね、常設の市で賑っている。都市や周辺地域は聖堂参事会が治めている。産業保護の名目で、特定の商人以外は金や宝石に高い関税をかけられ、密輸には厳罰(利き腕の切断から絞首刑まで)が処される。
都市の名は、異教徒討伐のためこの地に砦を築き、異教の神々と戦って左腕を失った赤毛の聖人リュビンハイゲンに由来する。かつてホロはリュビンハイゲンらしき人物に会ったことがあり、耳と尻尾を見るなり悪魔の手先と決めつけ追いかけてきた彼に腹を立て、狼の姿で騎士達を蹴散らし、尻に噛みついたとロレンスに語っている。
ラムトラ
リュビンハイゲンの近くにある町。異教徒も多く住むが、リュビンハイゲンとこの町の間には騎士団ですら恐れる不気味な森が広がっており、未だ討伐を受けたことがない。
クメルスン
プロアニア王国の貴族によって、宗教に縛られない純粋な経済発展を願って作られた商業の盛んな町。このため宗教の束縛がゆるく、教会も存在せず布教は一切禁止されている。冬季にはラッドラ祭と呼ばれる盛大な祭と、営業時間を延長した大市が開催される。また、町の北側には、教会から異端視されている錬金術師や自然学者が多く住む。海は無いが近くに漁業の盛んな湖や川があるため地域では最大の魚介類の水揚げ量を誇り、コイ等の淡水魚の料理と燃える葡萄酒と呼ばれる度数の高い酒が名物。この町にもロレンスが所属するローエン商業組合の商館が存在する。ロレンスたちが町を訪れたときには、口のうまいとある占い師が、お守りや占い用に多くの黄鉄鉱を売りつけたため、黄鉄鉱の価格が高騰していた。
エンベルク
プロアニア王国のやや東寄りにある町。かつては近くにあるテレオよりも小さな村だったが、南の宣教師が宣教を行った結果、教会が建ち、道路が整備され、今では周辺地域の交易の中心地となっている。
テレオ
ライ麦栽培の盛んな比較的大きな農村。村にある教会の司祭の働きにより、エンベルクとの間に破格の契約が結ばれている。村民は「トルエオ様」と呼ばれる蛇神を信仰する。異教信仰及び不平等契約を苦々しく思っていたエンベルクによって罠を仕掛けられるが、ロレンスとホロの機転によって難を逃れる。その余波として、クッキーという名産品を得た。
レノス
ローム川に面して作られた港町。100年程前にできた立派な市壁に囲まれている。上流に森と鉱山が存在するロエフ川とローム川の合流地点にあるため、交通と商業の要所となっており、毛皮と材木の取引が盛ん。遥か昔、ホロはこの町を訪れたことがあり、町の言い伝えでは「麦束尻尾のホロウ」と呼ばれていた。名物は川に堤防を作る奇妙で賢い鼠の料理である「尻尾料理」とローム川で採れる二枚貝の料理。
エリソン
北方にある町。学校があり、学生が多い。
アケント
南にある学園都市。かつてコルが教会法学を学んでいた町で、中心には知恵の泉と言われる池がある。町には活気があり市場には様々な品物が並んでいるが、学生が多く住んでいるため治安も悪い。
レスコ
ローヌ川の支流に当たる、ロエフ川上流にある町でレノスからは荷馬車で6日かかる。鉱山地帯を独占しているデバウ商会の本店があり、町は実質的にデバウ商会が取り仕切っている。鉱山から少し離れた場所にある比較的大きな町で、町の周りを覆う市壁が存在せず街路は石の他丸太を切った木片によって舗装されている。主な住民は、植民のためにデバウ商会の手引きで南方から来た移民である。
鉱山町故一攫千金を狙った人々が多く集まり、活気はあるが治安が悪く、採掘のために周囲の森は消えて川も汚れて住環境も悪いと事前にロレンス達は思っていたが、実際には「北の地」と呼ばれる地域の各所から商売のために集まった人々の顔には活気が満ち満ちており、住環境も悪くはない噂で聞いたのは鉱山そのものがある場所の事だったのだろうとロレンスは推測している。。レスコには税金を徴収する制度がなく、商人が商店を構えたり、職人が工房を開いたりすることに対しての規制がほとんどなく、むしろ自由にそれらを行うことが奨励されている。それゆえに技量と才覚、資本さえあれば誰でも職に就けるため、腕のいい職人が数多く集まり、高品質の工芸品が作られている。更に使用される高額貨幣がリュミオーネ金貨やトレニー銀貨にほぼ統一されておりもっとも、それを知らなかったロレンスは14種類の貨幣を持ち込む羽目になった。、高品質の品物を他の町よりも安く買うことができる。
ピヌ
ロエフ川上流にある村。コルの出身地。村の守り神として、かつて村を大洪水から救った巨大なカエルの神ピヌを信仰する異教徒の村。
ルピ
ピヌから山2つ向こうにある村。狐とフクロウを捕まえる名人が多く住んでいたが、南の宣教師が来てからは教会が建てられ逆らった村人は見せしめに処刑された。かつて村には傷を負った巨大な狼が訪れ、片足と子種を残したという言い伝えがあり、村では今でもその狼を崇拝している。
ヨルドス
パッツィオの遥か南にある港町。主要産業は琥珀細工。そのために琥珀を輸入することもある。海は温かく、色が黒っぽいのが特徴。ロレンスは船舶貿易で3度訪れたことがある。
ケルーベ
ローム川河口にある大きな港町。ローム川の南北両岸にそれぞれ町があり、その間に横たわる三角州にも町がある。これら全ての町をまとめて、ケルーベと呼ばれている。南岸には南方出身者が多く居住し、立派な建物が多く高い鐘つき塔を備えた教会があり、真ん中の三角州には商人向けの市場が存在し、貿易船の主な入港場所となっている。北岸には北方出身者が多く住み、市場は活気に満ちているが全体的にくたびれた建物が多く、教会もない。
この南北の格差の原因は、市場ができた経緯にある。かつて南の商人達がやってきて北方との貿易拠点を作るため、三角州を買い上げて市場を作ることを提案したが、地主は土地を手放すと大損をすると思い込んで自らで市場を建設し、それを商人に貸すという形式を主張した。
しかし、市場建設に莫大な資金が必要であったため、建設費用を商人たちから借りることになった。その結果、土地を失わずに済んだものの莫大な借金が残る事になり、商人からの借地料と同じ程度の利子を払うハメになってしまい、北と南で対立する原因となった。
イーク
ウィンフィール王国の港町。ケルーベから船で半日の距離にある。羊毛取引が盛んで、商品として扱う商会が軒を連ねている。馬で3日ほどの距離に聖ブロンデル修道院がある。
ジサーズ
ロレンス達がレノスに行く途中に寄った村。近くに森と魚が採れる泉がある。修道院を建てるために開かれた新しい村で、土地の利権が入り組んでいるため近くの町と交流がなく、土地を巡って村人同士のいさかいも絶えなかった。
タウシッグ
山麓にある村。ケルーベから1日半程の距離にある。近くに森と滝が流れ出ている湖がある。天へと飛び立った天使の伝説と、森に住みついた魔女の噂が伝わっている。
クスコフ
疫病が流行し、多くの死人が出た正教徒の町。リュビンハイゲンの東にある。ノーラが仕事を求めて赴いた時には疫病は沈静化し、経済的な危機はあったものの復興の兆しを見せていた。近くに住民が鏃の首飾りを身に付ける異教徒の町レズールがある。
17巻の時点では復興もかなり進み、人口も増えていた。
キッシェン
プロアニア王国の首都エンディマ近郊の町。レノスからは馬車で約20日ほどの距離にある。
スヴェルネル
レスコの北東にある町。交通の要所でかつては砂鉄を使った製鉄が行われていたが、今は琥珀と毛皮の流通路となっている。
製鉄のための溶鉱炉があったが、レスコを本拠地とするデバウ商会と摩擦を起こさないために製鉄をあきらめていた。市壁をめぐる戦いの後にデバウ商会との交渉で商会の第2造幣局となることを承諾、壊れていた溶鉱炉を修復した。

その他

商人
この物語のキーワードの1つであり、農民や職人などの「その土地のみに生きる人たち」と対極をなす自由な存在。市街地に店舗を構えて顧客が来るのを待つ町商人と、各地を巡り顧客のもとへ出向いて商売をする行商人に分かれる。他にもその場その場で売れそうな品物を仕入れて商うロレンスのような行商人だけでなく、魚介類の仲買人であるアマーティのように決まった商品を商う商人もいる。
町商人になるためには、その町の組合に所属し、かつその町の出身者でなければならないという制約がある。しかし、マルクのようにその町の住人と結婚することでも店を開くことができる。
商会
町商人が行う商業体制の1つ。その定義は言及されていないが、町の中にあって人を雇って活動できる程の一定以上の規模の店舗を持つものと推測できる(露店のワイズと露店に天幕を張っただけのマルクは商会を名乗っていなかった)。取扱い商品が厳格に決められている一般の商店と違い、扱える商品はかなり幅がある(ミローネは麦と毛皮と胡椒、ラトペアロンは胡椒と武具、レメリオは武具と金など)。また、商会の規模も世界各国に支店を持って複数の幹部による合議制から一人で切り盛りするものまでさまざま。
複数の国を跨いで活動する国際商会ともなると、安定した資本と強力な情報網を持ち大きな権力を有する。
商業組合
同郷の行商人による互助組織。それぞれの都市に支部ともいえる会館があり、寄付金を収めることによってその庇護を受けることができる。場所によって庇護の内容は変わるが、食事や宿泊場所の提供、情報提供(一部有料)、都市内の有力者(商会含む)への仲介(紹介状という形をとることが多い)、不可抗力による非常事態(山賊に積み荷を奪われる、病気で予定の場所へ行けない、等)への支援、商売に必要な証書の発行などが行われる。ただし、欲をかいて失敗した者には厳しい。
組合が取引や身分を保障するため、組合に所属していると大きな信用を後ろ盾にでき、巨額の取引でも組合が発行する証書を持っていく事で相手に舐められず、商売がやりやすくなる。
ロレンスはローエン商業組合に所属している。
公証人
商人そのものではないが、一定規模の商取引を行う(契約する)には不可欠な存在。「誰と誰が、こんな契約を交わした」ということを公式に認める人。大きな町には町の支配者が認める公証人が必ずいるとされる。
あくまで契約内容を認証するだけであり、契約不履行があっても借金を取り立てたり契約内容に関する交渉をしてくれるわけではない。しかし不履行された側は公証人の名において「契約相手はこのような不履行を行った」と言いふらすことができ、それによって不履行を行った側は信用を失い商業的な不利益を被ることになる(ただし商業的な不利益のみであり、商業から手を引く前提でわざと不履行を行う(実質的な不利益は皆無)者もいるとされる)。
ロレンスはゼーレンと公証人の前で契約を交わしたが、トレニー銀貨10枚という報酬は公証人と関わるには小さすぎる内容であり、それがロレンスに疑念を抱かせる結果となっている。
職人
人々の生活を支える様々な道具や衣食住に関わる製品を作る、専門的な技能を持った人たち。独立独歩の場合もある商人とは違い、組合に属するのが常とされる。
パン職人、服の仕立て職人、鍛冶屋、毛皮の加工職人など多くの職人が登場しており、生活必需品や特産品を生産している。町で工房を構えて仕事をしている者もいれば、遍歴職人と呼ばれる旅をしながら仕事をする職人もいる。アロルドは革紐を仕立てていた元職人で、引退後は工房を宿屋にしていた。
正教会
唯一神教(正教)を説き、超国家的な権力を有する排他的宗教集団。その信徒を正教徒と称する。中心部が湾曲した細長い棒を聖印としている。ワインを神の血と呼び、商業を疎んじ、教皇が存在し、聖典に「蛇は人を堕落させるもの」と書かれているなど、教えや慣習はキリスト教と酷似しており、カトリックがモデルとなっている。絶対王政を確立しつつある各国家権力の伸張により圧迫を受け、教会税の徴収が悪化するなど権威に陰りが見えており、異教徒討伐や悪魔憑きの取締りを強化するなど、威信回復につとめている。国際商会に勝るとも劣らない情報網を維持するなど、未だ侮れない勢力を持つ。
巡礼路
聖人路とも呼ばれる。かつての聖人が巡礼のために通った道のこと。聖人の足跡をたどるために修行中の聖職者や市井の巡礼者が通ることが多いため、巡礼者たちが落とす金を目当てに領主が道を整備することがあり、治安も良い。商人も験担ぎなどで巡礼路を回ることが多い。物語初期にロレンスが回っていたのは聖人メトロギウスの巡礼路。他にラインの聖人路がある。
司教座
教区と呼ばれる区画内を取り仕切る司教が在籍する教会のこと。司教座に選ばれると司教区内で絶大な権力を振るえる上に、在籍する司教は大司教への出世の道も開かれる。
物語では、レノスの司教が司教座をレノスの教会に移すことを狙って、エーブとの塩の密輸で得た金を賄賂としてばら撒いていた。
聖遺物
正教会では聖人の遺体、またはその一部、あるいは聖人の受難に関わるもの、その他聖人に縁のある品物。
極めて高価なうえに偽物も多い。もともと古代聖人の遺体などは真贋判別が不可能なため、どれが本物かの議論は最初からあきらめている様子。慧眼をもって未来を見通したとされる大賢者の右目は、ロレンスが知っているだけでも4つの教会が保有しているうえ、各地の教会に残る聖女エメラの首吊り縄をつなぎ合わせれば世界で一番高い木よりも長くなると言われている。
異教では神の骨や牙などを聖遺物としていた。正教会では異教の神を辱め、信仰心を失わせるために聖遺物を買い求めていた。もちろん偽物も多く、ブロンデル修道院にあった狼の骨も実際は鹿の骨だった。
列聖
信仰心篤く信望を得ている修道士や修道女を聖人として認定すること。列聖されることによって縁のある品物が(列聖者が故人である場合はその遺体も含めて)非常に高価で取引されるようになり、その場所には巡礼者が押し掛け、その土地と周辺は金銭的に潤うようになる。それ故に土地の領主や貴族が領地にいる聖職者を列聖させようと奮闘することとなる。しかし列聖手続きには多大な資産が必要とされており、夢破れて破産した貴族も無数にいる。
信仰心が高まるほど『聖人』という「俗世の肩書き」には興味を失うらしく、カテリーナ・ルッチは自身の列聖手続きが終了に近いことを知って隠遁生活に入った。
羊飼い
自前の、あるいは委託された羊を育成することを生業とする人たち。リュビンハイゲンの教会やウィンフィールのブロンデル修道院など、羊飼いに羊の養育を任せている教会勢力も多い。これは、「神は信徒の羊飼いである」という教義による。訓練された牧羊犬とコンビを組んでいることが多い。
しかし羊飼いは人が住まない山野を活動の場としたり野草に詳しかったり、独自のコミュニティにより排他的性質をもつなど、町の人たちからは嫌悪の対象となっている。加えて、羊の護衛のために昼に寝て徹夜しなければならないなど、大の男が音を上げかねないほどの重労働となっている。
当然ながらほとんどが男性で、女性の羊飼いは「妖精」と呼ばれ、(異教徒ではないかという嫌疑とともに)好奇の対象となる。
北の大遠征
毎年真冬の時期に、リュビンハイゲンから北の異教徒の地へ行われる遠征。聖人リュビンハイゲンの誕生日に合わせて行われる記念行事的なものだが、大司教や南の大帝国の皇族、傭兵や各国の王宮騎士団も参加する大遠征であるため、周辺地域の経済に大きく関わっており遠征前になるとリュビンハイゲンでは軍需品等の関連商品が飛ぶように売れる。しかし、作中の時点では、遠征路上にあるプロアニア王国(上述)で政治的混乱が起き、リュビンハイゲンと王国の関係が悪化。このため、今までなら行事として看過していた国内に住む異教徒に奇襲をかけられる恐れが高まり、参加する要人たちの安全を確保できないため、やむなく中止された。その結果、武具等の値段は大暴落することとなり、遠征に参加する兵士達の消費を狙った、沿路にある地域にも様々な影響を与えた。モデルはドイツ騎士団が行った異教徒討伐
傭兵
領主または教会等の組織と契約し、戦闘行為を行うことによって金銭等の報酬を得る者の総称。複数の傭兵が集まって1つの組織として行動しているものを傭兵団と呼ぶ。その規模・練度・士気・モラルは千差万別で、ハインツベルグ傭兵団(名前のみの登場)のように「金になりそうなものはカブの葉すら奪い取る」と噂され強盗騎士よりも盗賊に近い集団もあれば、ミューリ傭兵団のように真っ当に稼ぐ1団もある。ただし、行商人含む一般市民の認識は前者であり、傭兵という言葉が恐怖の代名詞となっている。
その恐ろしさは、傭兵がどの場所を移動しているという情報は疫病よりも早く伝わると言われる程。
パン
貴族から奴隷まで等しく口にする、最もポピュラーな食べ物。麦の粉を練って「パンの妖精の祝福」を受けたものを焼いたもの。原料となる麦は小麦、ライ麦、燕麦と分かれ、小麦のみのパンが美味で高級とされる。
ロレンスが旅の間に食べるパンはライ麦に栗や豆の粉をまぜて嵩増ししたもので、栄養はあるものの苦くて不味い。しかも日保ちがするように焼いているのでものすごく硬い。食べる時は少量を口に入れてひたすら噛むか、スープか水でふやかす。味も独特でクセがあるが、ロレンスはライ麦パンの苦みを気に入っている。
地域によっては妖精の祝福を受けていないものもパンと呼ぶこともあり、ロレンスは作中で「鍋の底で焼く平たいパン(コミックスではナンのような作り方をしている)」や「塩を含んだ土壌で造られる、塩辛いパン」などを食べたことがあると語っている。
学生
学園都市などで学問を学んでいる者たちのこと。ただし「学生」という身分があるわけではなく、学生となっている者の出身も貴族の子弟から必要に迫られて学問を学ぶ者、親の地位を継ぎたくない放蕩者まで多岐にわたる。
作中では学生は評判が悪く、詐欺を行う者、徒党を組んで窃盗行為を行う者なども多いとされる。ただし、学問を修めるには莫大な授業料が必要とされるため、やむを得ず前記のような違法行為でお金を集める者もいるとされる。また、学生のコミュニティ及び情報収集能力も教会に劣らぬものがあるとされていて、他学生や教授などに借金をしたまま逃亡した学生は必ず見つかると言われている。
アルコールが含有している飲料水の総称。アルコールが入っているために普通の水より腐りにくいため、水の補給が難しい旅程では飲料水の代用として準備されることもある。物語ではワインとビールがメインに登場するほか、レノスの一部の人たちは、クワスを愛飲している。その他、リンゴや蜂蜜から作る酒、馬乳酒なども名前だけ登場する。
ワイン
ブドウの搾り汁を発酵させたもの。赤ワインと白ワインがあるが、作中では書き分けられていない。濾過されている「透明な酒」は基本的に高級品で、ロレンスが普段飲んでいるのは搾りカスでドロドロになっていたり生姜や蜂蜜を入れないと不味くて飲めないレベルのもの。この他に、ワインを蒸留して作る燃える葡萄酒(一部「炎の酒」と呼称)も登場している。
ビール
麦または麦芽を乾燥・粉末にして水に入れ発酵させたもの。ワインに比べて短時間かつ安価に作れるので、農民などには栄養ドリンクと同等の扱いを受けていた。さらに短時間で作れるものにエールがあり、物語序盤のロレンスはこちらを好んでいた。
ビールを蒸留することでウィスキーも作られており、こちらは「命の水」と呼ばれている。
桃の蜂蜜漬け
ホロが求めてやまない究極の美味の1つ。桃を薄く切り、イチヂクとアーモンドを間に挟みながら樽に詰めていき、樽に蜂蜜を流し込み生姜を少し入れて蓋をし、2カ月ほど熟成させて完成。
貴族や金持ちのために少量作られるのみで、市場に出回ることはまずない。贅沢を罪とする教会は作成禁止を本気で協議した。市場に出回る時の価格はトレニー銀貨10枚から20枚とロレンスは推測していたが、実際に目にしたそれは桃1玉につきリュミオーネ金貨1枚(トレニー銀貨35枚程度)の値がついていた(ただし、その地域が空前の好景気だったことと、春の気配が見えない、漬物類の価格が高騰する時期であったことも考慮する必要がある)。
原作、アニメ、コミックス、ゲームのいずれでも、ホロは口にしたことがない(コミックスで供されたことはあったが、口にする前に過労で倒れた)。
余談だが、『狼と香辛料ノ全テ』にレシピが掲載されている。
月を狩る熊
ホロの故郷を滅ぼした巨大な白い熊。正式な名前はイラワ・ウィル・ムヘッドヘンドと発音するらしい。ある書物には、凶暴な性格で逆らう者には容赦せず、各地を回って神と呼ばれているものと戦い殺していった、と記されていた。「テゥペロヴァンの大海蛇」との戦いを最後(結末は記されていない)に伝承から姿を消す。戦神として旗印に用いている傭兵団が多数存在する。
イッカク
生肉を食べれば長寿が得られ、角を粉にして飲めば万病が癒える(特に「大食の罪」への罰とされる痛風に効能があるとされる)と言われる伝説の海獣。とてつもない価値があるとされ、作中ではジーン商会がリュミオーネ金貨1500枚で買い取ろうとした。作中ではケルーベ北岸の漁師が捕まえて南岸の漁港に水揚げしたために、どちらが利益を得るかで両岸の商人達による商戦が展開された。
ルウィック同盟
大陸北部を勢力下に置く、世界最強と謳われる経済同盟。18の地域と23の職業組合が手を結び、30の貴族を後ろ盾にした10の大商会が統べており、大型の軍船を何隻も所有している。緑地に月と盾の紋章旗を掲げている。
伝聞によると、1万4000人の兵を擁する国と戦争状態に突入後、わずか10日で軍門に下している。

既刊一覧

原作

colspan="5"| 狼と香辛料
1 | 狼と香辛料 | 2006年2月10日 | |
2 | 狼と香辛料II | 2006年6月10日 | ISBN 4-8402-3451-5 |
3 | 狼と香辛料III | | ISBN 4-8402-3588-0 | 初版と第2版以降に差異がある初版には作者自らブログでも言及しているように矛盾する記述が存在しているが、第2版以降では修正済み。
4 | 狼と香辛料IV | 2007年2月10日 | ISBN 978-4-8402-3723-9 |
5 | 狼と香辛料V | 2007年8月10日 | ISBN 978-4-8402-3933-2 |
6 | 狼と香辛料VI | | ISBN 978-4-8402-4114-4 |
7 | 狼と香辛料VII
Side Colors | 2008年2月10日 | ISBN 978-4-8402-4169-4 |

  • 「少年と少女と白い花」(初出:電撃hp.vol47 - vol.49)
  • 「林檎の赤、空の青」(初出:電撃hp.vol44)
  • 「狼と琥珀色の憂鬱」(書き下ろし)

8 | style="white-space:nowrap;" | 狼と香辛料VIII
対立の町〈上〉 | 2008年5月10日 | ISBN 978-4-04-867068-5 |
9 | style="white-space:nowrap;" | 狼と香辛料IX
対立の町〈下〉 | 2008年9月10日 | ISBN 978-4-04-867210-8 |
10 | 狼と香辛料X | 2009年2月10日 | ISBN 978-4-04-867522-2 |
11 | 狼と香辛料XI
Side Colors II | 2009年5月10日 | ISBN 978-4-04-867809-4 |

  • 「狼と黄金色の約束」(初出:「電撃文庫MAGAZINE」Vol.4 - vol.5)
  • 「狼と若草色の寄り道」(初出:「電撃文庫MAGAZINE」プロローグ2)
  • 「黒狼の揺り籠」(書き下ろし)

12 | 狼と香辛料XII | 2009年8月10日 | ISBN 978-4-04-867933-6 |
13 | style="white-space:nowrap;" | 狼と香辛料XIII
Side Colors III | | ISBN 978-4-04-868140-7 |

  • 「狼と夕暮れ色の贈り物」(初出:「電撃文庫MAGAZINE」Vol.6)
  • 「狼と桃のはちみつ漬け」(初出:「電撃文庫MAGAZINE」Vol.7 - Vol.8)
  • 「狼と銀色のため息」(初出:「電撃マ王2009年9月号付録  電撃狼と香辛料」)
  • 「羊飼いと黒い騎士」(書き下ろし)

14 | 狼と香辛料XIV | 2010年2月10日 | ISBN 978-4-04-868326-5 |
15 | style="white-space:nowrap;" | 狼と香辛料XV
太陽の金貨〈上〉 | 2010年9月10日 | |
16 | style="white-space:nowrap;" | 狼と香辛料XVI
太陽の金貨〈下〉 | 2011年2月10日 | |
17 | 狼と香辛料XVII
Epilogue | 2011年7月10日 | ISBN 978-4-04-870685-8 |

  • 「Epilogue」(書き下ろし)
  • 「行商人と鈍色の騎士」(初出:「電撃文庫MAGAZINE」Vol.9)
  • 「狼と灰色の笑顔」(初出:「電撃文庫MAGAZINE」Vol.13)
  • 「狼と白い道」(初出:「電撃文庫MAGAZINE」Vol.17)

18 | 狼と香辛料XVIII
Spring Log | 2016年9月10日 | ISBN 978-4-04-892355-2 |
19 | 狼と香辛料XIX
Spring LogII | 2017年5月10日 | ISBN 978-4-04-892891-5 |

関連書籍

colspan="2"| ! 初版発行日付
(発売日) ! ISBN

ガイドブック | 狼と香辛料ノ全テ | 2008年12月10日 | ISBN 978-4-04-867483-6
ビジュアルノベル | 狼と香辛料 狼と金の麦穂 | 2009年4月30日 | ISBN 978-4-04-867793-6
画集 | 文倉十画集 狼と香辛料 | 2011年7月30日 | ISBN 978-4-04-870648-3

文庫未収録作品

発表順に記載。

  • 「学園ホロたん♥」(初出:電撃hp公式海賊本「電撃h&p」 )
  • 「狼と星色の遠吠え」(初出:「狼と香辛料ノ全テ」)
  • タイトルなし(初出:「電撃学園RPG文庫」)
  • 「狼と金の麦穂」(初出:「狼と香辛料 狼と金の麦穂」)
  • 「狼と虹色の音楽」(初出:「文倉十画集 狼と香辛料」)

評価

宝島社発行誌『このライトノベルがすごい!』(年1回12月発行)の「作品(シリーズ)部門ランキング」では、『このライトノベルがすごい! 2007』(2006年12月発行)で1位、『このライトノベルがすごい! 2008』(2007年12月発行)および『このライトノベルがすごい! 2009』(2008年12月発行)で5位にランクインした。同じく「キャラクター女性部門」でも、『このライトノベルがすごい! 2007』でヒロインのホロが1位を獲得している。

また、本作は、ライトノベル作品としては珍しく、経済史や商取引の世界に踏み込んだ作品としても評価されている2008年(平成20年)4月27日付『読売新聞』朝刊「本よみうり堂:ビジネス5分道場」。筆者は公認会計士の山田真哉。

漫画

小梅けいとの作画により、『電撃「マ)王』にて2007年11月号から2018年2月号まで連載。単行本は電撃コミックスより刊行。括弧内は発売日。
タイトル !初版発行日付
(発売日) !ISBN !備考
狼と香辛料 I | 2008年 3月27日 | ISBN 978-4-8402-4254-7 |原作第1巻序盤に相当
狼と香辛料 II | 2009年 1月27日 | ISBN 978-4-04-867559-8 |原作第1巻中盤に相当
狼と香辛料 III | 2009年 7月27日 | ISBN 978-4-04-867963-3 |原作第1巻終盤から2巻序盤に相当
狼と香辛料 IV | 2010年 3月27日 | ISBN 978-4-04-868516-0 |原作第2巻序盤から中盤に相当
狼と香辛料 V | 2010年10月27日 | ISBN 978-4-04-868921-2 |原作第2巻中盤から終盤に相当
狼と香辛料 VI | 2011年 3月26日 | ISBN 978-4-04-870500-4 |原作第2巻終盤に相当、及び外伝である「狼と琥珀色の憂鬱」を掲載
狼と香辛料 VII | 2012年 2月27日 | ISBN 978-4-04-886294-3 | 原作第3巻の一部、及び原作第4巻冒頭から中盤に相当
狼と香辛料 VIII | 2012年 10月27日 | ISBN 978-4-04-891051-4 | 原作第4巻終盤から8巻序盤に相当(ただし5 - 6巻は簡略化され、一部設定は8巻の物語に組み込まれている)
狼と香辛料 Ⅸ | 2013年 8月27日 | ISBN 978-4-04-891839-8 | 原作第8巻序盤から終盤に相当
狼と香辛料 X | 2014年4月26日 | ISBN 978-4-04-866488-2 |原作第8巻終盤から第9巻中盤に相当。ただし多分にオリジナル要素を含む。
狼と香辛料 XI | 2014年12月20日 | ISBN 978-4-04-869054-6 |原作第9巻中盤から第14巻序盤に相当。ただし10巻は完全に除外、12巻は「そのような展開があった」とロレンスが述懐するのみ。
狼と香辛料 XII | 2015年8月27日 | ISBN 978-4-04-865172-1 |原作第14巻序盤から終盤に相当
狼と香辛料 XIII | 2016年2月27日 | ISBN 978-4-04-865725-9 |原作第15巻序盤から終盤に相当
狼と香辛料 XIV | 2016年9月27日 | ISBN 978-4-04-892341-5 |原作第15巻終盤から16巻序盤に相当
狼と香辛料 XV | 2017年5月27日 | ISBN 978-4-04-892911-0 |原作第15巻序盤から中盤に相当

テレビアニメ

2008年1月より、独立UHF局・テレビ愛知・AT-Xにて放送。全13話(テレビ放送分は全12話。第7話に当たる第七幕はDVDにのみ収録)。原作の1巻から2巻をほぼ忠実に映像化していた。

2009年7月より、第2期『狼と香辛料II』が放送された。一部を除く放送局ではハイビジョン制作。全12話(番外編を除く)。なおキャストと監督、脚本はそのままで、制作会社はIMAGINからブレインズ・ベースへ、キャラクターデザイン・総作画監督は黒田和也から小林利充へと変更されている。原作の4巻を飛ばし、3・5巻を映像化。

2015年3月27日には、フィギュアメーカーのコトブキヤとJリーグの東京ヴェルディによる企画で、同チームの井林章へホロのフィギュアが贈呈された東京V井林章選手が『狼と香辛料』ホロのフィギュアゲット、次は『甘ブリ』狙い | マイナビニュース

狼と香辛料

スタッフ(第1期)

  • 原作 - 支倉凍砂
  • 監督 - 高橋丈夫
  • 脚本 - 荒川稔久
  • キャラクターデザイン・総作画監督 - 黒田和也
  • 美術監督 - 小濱俊裕
  • 色彩設計 - 佐野ひとみ
  • 撮影監督 - 松井伸哉
  • 編集 - 渡辺直樹
  • 音響監督 - 高桑一
  • 音楽 - 吉野裕司
  • プロデューサー - 石黒達也、徳田直已、鈴木智子、松永裕一、あらかわまさのぶ
  • アニメーション制作 - IMAGIN
  • 製作 - 「狼と香辛料」製作委員会(ポニーキャニオン、メディアワークス、角川映画、ムービック、IMAGIN、JVCエンタテインメント)

主題歌(第1期)

オープニングテーマ「旅の途中」
作詞 - 小峰公子 / 作曲・編曲 - 吉良知彦 / 歌 - 清浦夏実
第13話ではエンディングテーマとして使用された。
エンディングテーマ「リンゴ日和 〜The Wolf Whistling Song」
作詞 - Chris Mosdell / 作曲 - 山下太郎&noe / 編曲 - 保刈久明 / 歌 - ROCKY CHACK
第13話では使用されなかった。

各話リスト(第1期)

border="1"

話数サブタイトル絵コンテ演出作画監督原作
第一幕 |狼と一張羅||rowspan="2"|高橋丈夫||臼井文明||小堺能夫
大塚美登里
LEE SI MIN
KYOUNG BACK MIN||rowspan="6"|1巻
第二幕 |狼と遠い過去||古谷田順久||大塚美登里
第三幕 |狼と商才||矢吹勉||岩本美香
宍戸淳||桂木杏
第四幕 |狼と無力な相棒||中山正恵||迫井政行||広田知子
KYOUNG BACK MIN
第五幕 |狼と痴話喧嘩||高本宣弘||川久保圭史||LEE SI MIN
玉井公子
第六幕 |狼と無言の別れ||高橋丈夫||臼井文明
篠原誠||大塚美登里
清水空翔
高澤美佳
第七幕 |狼と幸福の尻尾VII巻の「林檎の赤、空の青」のアニメ化。CS放送、とちぎテレビ(最終話放送後)にて放送。DVDにも収録。||rowspan="2"|島津裕行||岩本美香||広田知子
PARK GI DEOK||7巻
第八幕 |狼と正しき天秤||高木秀文||PARK GI DEOK
JOO OK YOON||rowspan="6"|2巻
第九幕 |狼と羊飼いの子羊||中山正恵||岩本美香||広田知子
KYOUNG BACK MIN
第十幕 |狼と渦巻く陰謀||高橋丈夫||川久保圭史||清水空翔
第十一幕 |狼と最大の秘策||島津裕行||小野田雄亮||PARK GI DEOK
JOO OK YOON
第十二幕 |狼と若僧の群れ||中山正恵||高木秀文||小堺能夫
第十三幕 |狼と新たな旅立ち||高橋丈夫||川久保圭史
高木秀文
高橋丈夫||清水空翔
小堺能夫
LEE SI MIN

放送局(第1期)

{| class="wikitable" style="font-size: small;" border="1" |- !放送地域!!放送局!!放送期間!!放送日時!!放送系列!!備考 |- |埼玉県||テレ玉||rowspan="3"|2008年1月8日 - 3月25日||rowspan="2"|火曜 25:30 - 26:00||rowspan="2"|独立UHF局|| |- |千葉県||チバテレビ|| |- |愛知県||[[テ