県立地球防衛軍/安永航一郎
著者: 安永航一郎
巻数: 4巻
最新刊『県立地球防衛軍 4』
twitterでのコメント (関係ないのに引っかかることもあります...)
『県立地球防衛軍』(けんりつちきゅうぼうえいぐん)は、『週刊少年サンデー増刊号』に1983年より連載された、安永航一郎初の連載漫画作品、及び同作に登場する架空の団体。ギャグ漫画。1986年にOVA化もされた。1980年代当時の「少年サンデー」漫画テイストが色濃く反映された作品の一つ。
概要
物語は、悪の秘密結社・電柱組が世界征服の段取りとして、(始めから東京を攻撃した先例はことごとく失敗している事を鑑み)地方から征服することを決意、手始めに九州の某県に魔の手を伸ばしたことから始まる。電柱組を迎え撃つは、県立今津留高校に強引に設立された「県立地球防衛軍」。構成メンバーは高校の問題教師と問題生徒。のちに、謎のインド人留学生(サイボーグ改造されており、更に女体化されたりする)も加わった。
一方、電柱組を率いるチルソニアンは、本名を「木曽屋チルソニアン文左衛門Jr.」という、地元材木豪商・木曽屋の若旦那であり、幹部のバラダギ大佐は、普段は原瀧龍子として今津留高校の生徒になっている。電柱組と防衛軍は、ローカルネタ丸出しで毎度毎度しょうもない闘いを繰り広げる。
「しいたけヨーグルト」や「ぽん酢(ぽんす、ぽんずに非ず)」、また悪人を成敗して回るのが趣味の変態筋肉男「まっする日本」(名前の元ネタは「ネッスル日本」(現・ネスレ日本)から)や、一年365日を全部正月にすることに情熱を奉げる「正月仮面」など、今も語り草となるネタが続出した。
舞台となった県立今津留高校は、実在の県立高校がモデルになっているが、作者出身の高校である大分県立大分舞鶴高等学校が大分県大分市今津留にあり、そこからとったのではないかとされる。ただし、漫画の中での内容と実際の高校は、ほぼ無関係といってよい。
連載終了後も、同人誌に続編が描かれた。また、番外編としてファミコン通信のマンガ特集で、「どっこい大作戦」という読みきりを発表。本作のキャラクターが登場する。
本作は『県立地球防衛軍』というその題名からして映画『地球防衛軍』のもじりであり、また下記に記された通り、サブタイトルがTVシリーズ『ウルトラセブン』から取られるなど随所に特撮作品のパロディが見られる。登場人物の名前にもそれは現れており、以下のような関連性がある。
- バラダギ(原瀧龍子)→『大怪獣バラン』に登場する怪獣バランから。作中でバランは神格化され「バラダギ様」と呼ばれていた。
- 伊福部あき子→『ゴジラ』シリーズの音楽で有名な作曲家伊福部昭から。
- 炉縁→『スタートレック』シリーズの生みの親ジーン・ロッデンベリーから(※授業中に「lovely」を「ろべりー」と読み間違えた級友から命名、という説もある)。
- チルソニアン→『ウルトラQ』に登場するチルソニア遊星人(セミ人間)から。
主な登場人物
登場人物の年齢・学年は、初登場時のもの。
県立地球防衛軍
- 盛田弘章(もりた ひろあき)
- 本作の一応主人公。今津留高校2年2組の長髪ハチマキ男。野球部員(ピッチャー)で主将らしい。
- 口先で相手を言いくるめることを得意とする。容姿は悪くないが、勉強嫌いでセコくアホでスケベで、周囲からは変態と認知されている(ただし安永の作品の中では健全なレベル)。家族と離れて、アパート暮らしをしている。実家は縄文時代から続く提灯職人で(画面では猿人が提灯を貼っていた)、盛田は継ぐのを嫌がっている。生意気だが算高い妹・準が苦手で、後に彼女の策略にはまってバラダギをデートに誘い、周囲から「ラブコメ男」と揶揄されるように。連載当時のハシラの紹介では「名ばかりの主人公」。
- 武井助久保(たけい すけくぼ)
- 今津留高校2年2組のぬりかべ男。野球部員(キャッチャー)。
- 盛田の親友。盛田とは似たもの同士で、二人でアパートの同室に同棲するなどほぼ常に一緒に行動している。盛田が馬鹿をやるときはツッコミ役となる。ハシラの紹介では「名実ともに脇役」。
- 伊福部あき子(いふくべ あきこ)
- 今津留高校2年7組、野球部との関係は不明(マネージャー?)。
- 美男子の基準が筋肉と言う、根っからのマッチョ好き女子高生。
- カーミ・サンチン
- インドからの国費留学生。今津留高校2年2組に編入。
- 交通事故で重傷を負い、運び込まれた狭間医科大付属病院でサイボーグにされた。その直後、病院から脱走したところを炉縁に拾われ、以降炉縁と同居している。
- 黒い肌の美青年で八千馬力と肩のミサイルが特徴。ミサイルは自身の意思で自在に発射できるが、怖い夢を見ると無意識に発射して周囲の建物を壊してしまう。バラモン僧を目指す真面目な性格だが、ギャグ漫画のためシリアスになると脳の回線がショートする。サイボーグから生身に戻るのに失敗し、一時的に女体化した事があったが、鏡の前でウィンクしたり、セクシーポーズを取ったり、とかなりナルシスト。名前は東洋水産が当時発売していたインスタントラーメン『華味餐庁(かみさんちん)』から。
- 炉縁俊幸(ろべり としゆき)
- 今津留高校の数学教師で野球部顧問。28歳(明石家さんまと同い年)独身。
- 県警特殊部隊
- 県知事の肝いりで結成された特殊チーム。中東で傭兵だった男を隊長に、自衛隊から引き抜かれたエリートで構成されている。初陣から惨敗するなど、防衛軍の前座的扱いが多い。全員地肌にシャツ(胸に「けーさつ」のロゴ入り、隊長だけ「たいちょお」)と毛脛むき出しの半パンに警帽を被った姿で、変質者チック
電柱組/木曽屋
- バラダギ大佐/原瀧龍子(はらたき りゅうこ)
- 本作のヒロイン、電柱組幹部で木曽屋の番頭。今津留高校1年5組。赤い髪でスタイルの良い美少女。
- 真面目な性格で、学校では成績優秀な模範生。運動神経もよく、下っぱからの人徳も篤いらしい。近眼だが電柱組での仕事中はコンタクト使用。
- 両親は既に他界(羽田空港で照明弾喰って死んだ)しており、柏木とうふ店に下宿しつつ自活している。電柱組/木曽屋の仕事は生活のためのバイトで、今津留高校の生徒であると告白して以降、プライベートでは防衛軍のメンバー(特に盛田)とも仲良くやっている。
- チルソニア将軍/木曽屋チルソニアン文左衛門Jr.(ジュニア)
- 電柱組の首領、地元の材木問屋「木曽屋」の若旦那。
- 先祖代々、家屋の破壊により材木の需要を作ってきた、由緒正しい?悪の組織の後継者。美男子で英会話もこなすなどそれなりに有能らしいが、考える悪事は「牛糞を海に撒く」「年末の募金活動の振りをして忘年会の資金を集める」などレベルが低く、他人の不幸を喜ぶなど性格も悪い。
- マーカライト=ファープ
- 電柱組の改良人間。階級は中尉。ピチピチの全身タイツを着た念動力を操るエスパー。赤貧に喘ぐ電柱組の台所事情を守るため、畑から芋を超能力で盗んでいた。そのため芋にしかサイキックパワーが効かなくなってしまい、初出動の防衛軍に敗北する。
- 再度登場した際には、野生化し、念動力も強化されてトマトも操る事が可能になったが、味方であるバラダギにさえ誰だったか忘れ去られていた。
- スコープ鶴崎
- 電柱組の改良人間。見た目は頭頂のみが禿げ上がった長髪の中年男性。
- 視力が悪く、普段は目元をゴーグルで覆い、そこにスコープを取り付けて視力を補っている。オプション装備として赤外線スコープ、透視スコープを持ち、必要に応じて付け替える。
- 改良人間の中では比較的まともな人材で、防衛軍との対決に負けた後もチルソニア将軍に従って木曽屋で働く姿が見られるなど頻繁に登場する。
- タイガードラゴン
- 電柱組の改良人間。通称「食通」。スキンヘッドで額に通(○に通)と書かれている、恰幅の良い男性。
- どんなに不味い物を食べても「うまい」「最高」しか言わないが、「テレビの食通は代金を払わない」と言う理由で代金を踏み倒す「伝説の食通」。戦闘能力はそれなりに高い様子。モデルは元力士の龍虎。
- 正月仮面
- 電柱組の改良人間。額に装備した扇子に描かれた日の丸から「初詣ビーム」を乱射する超危険人物。このビームを浴びた者は門松やしめ飾りが全身に生え、思考が「正月化」し、その場で宴会に入ってしまう。
- 他の電柱組メンバーやチルソニア将軍にさえ見境なくビームを照射するため、眠らされ地下に幽閉されて、必要な時にのみ除夜の鐘を突いて呼び起こされるようになった。
- 後にまっする日本と対決、戦いながら海を越え渡米、現地で「ニューイヤーズ」という変態ギャング団のボスとなる。
- とろろ男
- 電柱組改良人間見習い。自称「ふるさとの味怪奇とろろ男」。とろろ嫌いが講じて呪いを受け、全身とろろ肌の怪人になった、正体は助久保の旧友。額から浴びた者をとろろ肌にする「とろろビーム」を発射する。食わず嫌いを克服し、呪いが解けて元の青年に戻った。
- ボルチモア・ブラザーズ(サミー&トミー)
- 電柱組ボルチモア支部の幹部。改良人間以上の戦闘力を持つ巨漢兄弟。防衛軍(特に盛田)が口先だけで大した格闘能力を持たないと分析したチルソニア将軍が招聘した。彼らには難しい日本語は通じないので、防衛軍お得意の口車は全く通用しない。
- 口車が通じない為、止む無く戦法を変えた盛田と助久保に軽く叩きのめされ、サンチンのミサイルで黒焦げにされ敗退。
- チルソニア将軍の従兄弟に当たり、彼を「ブンザイモーン」と気さくに呼ぶ為、隠していた「文左衛門」という恥ずかしい名前がバレた。
- ベンツ台村
- 電柱組の改良人間。毒ガス怪人。縁日の屋台に紛れ込み、風船に毒ガス(笑気ガス)を詰めてお祭りを台無しにしようと画策する。ガスが空気より重く、風船が浮かない為、計画は頓挫する。名前の元ネタはダイムラー・ベンツから。
- 連載終了後に単発で掲載された番外編に登場したが、この番外編が単行本及び、同人誌に収録されず、幻の改良人間になっている。
- (ヘルメットの額部分にベンツのエンブレムが付いている為、収録されないという未確認情報あり)
- 下っぱ
- 電柱組の下っ端戦闘員、木曽屋の丁稚。
- 最初期は全身黒タイツで顔に白ヌキで「下っぱ」と書いてあったが、間もなく「下っぱ」お面に頬かむりとデザイン変更された。理由は「スミがもったいないのと、白ヌキがめんどうくさい」からとのこと(作中ではまっする日本に襲われたことが原因と説明されている)。
- 岩崎
- 下っぱの1人で今津留高校の生徒(学年は不明だがバラダギより1学年下と思われる)。職業名は「下っぱ六番」。
その他
- まっする日本
- 悪事を察知する超感覚「まっする感覚」(スパイダーマンのパロディ)を持ち、辺り構わず正義を執行するモヒカン刈りがトレードマークの筋肉大男。後に悪が減らない事を憂い、正義の為なら手段を厭わない事に方針を変更し、「戦闘まっする」に改名する。正月仮面との戦闘で渡米、ロサンゼルスで「バトルマッスルズ」という変態ギャング団のボスになった。
- グリコーゲンX
- 桜前線の北上に合わせて現れる謎の怪人。烏帽子に内蔵された「宴会センサー」で宴会反応を感知し、手にしたビームガン「満開バスター」を乱射(ビームの当たった所は所構わず満開の桜の花が咲く)、強制的に宴会を盛り上げ無理矢理酒を飲ませる、はた迷惑な男。かつては下戸なサラリーマンだったが、宴会で強制的に酒を呑まされ酔い潰れて瀕死の状態で倒れていたところを通りすがりの科学者に助けられ、「鋼鉄の肝臓(アイアンレバー)」を移植されて生まれ変わった
。桜の季節が終わると桜前線と共に去ってゆく。「センサーに反応あり!」と言って銃を乱射する姿は、東映の戦隊シリーズ超電子バイオマンのバイオハンターシルバのパロディ。後に強化され(誰がしたのかは不明)胴鎧にカラオケモニターを増設、肩の盃型ショルダーアーマーをパラボラアンテナにして衛星電波を受信する、通信カラオケ機能を得て「グリコーゲンX2000」となった。
- 猪上年夫(いのうえ としお)博士
- 狭間医科大付属病院に所属する医師兼科学者。人体実験が趣味で、普段は真面目で優しいらしいが、実の娘を実験台にすることも厭わない変態親父。サンチンをサイボーグに改造した一人。
- 猪上裕子(いのうえ ゆうこ)
- 猪上博士の娘。高校3年生。猪上博士を脅迫するため電柱組に誘拐され、調子に乗った父によってサイボーグに改造されてしまい、サンチンと戦うことになる。後に細胞を高速でクローニングするカプセルで失った生身部分を取り戻し、普通の女子高生に戻った。
- 真船(まふね)
- 今津留高校の物理教師。猪上博士の友人でサンチンをサイボーグに改造した一人。サンチンにミサイルを取り付けた張本人らしい。細胞を高速でクローン増殖させる装置も発明しており、猪上裕子を人間に戻した後、サンチンも人間に戻したが間違って(わざと?)女体化してしまった。
- 盛田準(もりた じゅん)
- 盛田の3学年下の妹。しっかりしたやり手で、その口車で兄をも手玉に取る。
- パメラ・サンチン
- カーミ・サンチンの姉。弟に家業を継がせるべく、連れ戻しにやってきた。美人実業家で、かなりのやり手。電柱組側に立ち、サンチンを追い詰めた。
サブタイトル
『県立地球防衛軍』のサブタイトルは、すべて『ウルトラセブン』のサブタイトルのパロディになっている。(「アンドロイド0大作戦」については、映画『緯度0大作戦』のパロディにもなっている)
- なさけなき挑戦者 (姿なき挑戦者)
- カレーの国からきた男 (V3から来た男)
- 楽しい隣人 (怪しい隣人)
- 県立地球防衛軍、海へ (ウルトラ警備隊西へ)
- ひとりぼっちのインド人 (ひとりぼっちの地球人)
- プロジェクト・ピンク (プロジェクト・ブルー)
- サイボーグの脚線 (サイボーグ作戦)
- 魔の店へ飛べ (魔の山へ飛べ)
- 驚異の超変人 (恐怖の超猿人)
- 栄養は誰のために (栄光は誰のために)
- 家庭教師を追え (海底基地を追え)
- 散歩する迷惑 (散歩する惑星)
- 元旦がきた (円盤が来た)
- 海中からの挑戦 (水中からの挑戦)
- 摂氏34度の退屈 (零下140度の対決)
- アンドロイド0大作戦 (アンドロイド0指令)
- 盛田対メカ盛田の決闘 (ダン対セブンの決闘)
- 消された記憶 (消された時間)
- みどろの恐怖 (緑の恐怖)
- 貧民牧場 (人間牧場)
- 勇気あるお誘い (勇気ある戦い)
- あんたはだまれ (あなたはだぁれ?)
- 地方最大の侵略 (史上最大の侵略)
- グリコーゲンXを倒せ (地震源Xを倒せ)
- 親睦する縁者たち (侵略する死者たち)
- 豆腐を配れ (明日を捜せ)
- まっする君、応答せよ (マックス号応答せよ)
- 別世界の県立 (月世界の戦慄)
番外編 ゼンブ暗殺計画 (セブン暗殺計画) 注・単行本未収録
※( )内は元ネタの『ウルトラセブン』のサブタイトル
イメージアルバム
アニメ化に先立ち、1985年にイメージアルバム(LP)が制作されている。作曲はゴダイゴのタケカワユキヒデ。ギターで同じくゴダイゴの浅野孝已が参加している。
OVA
スタッフ
- 監督:早川啓二
- 脚本:伊藤和典
- キャラクターデザイン・作画監督:青嶋克巳
- 企画・制作:宇佐美廉
- 音楽:羽田健太郎
キャスト
- バラダギ(原瀧龍子):鶴ひろみ
- 盛田弘章:古谷徹
- 武井助久保:玄田哲章
- カーミ・サンチン:鈴置洋孝
- 伊福部あき子:深見理佳(現・深見梨加)
- 炉縁:田中秀幸
- 大山みゆき:潘恵子
- チルソニアン:池田秀一
- スコープ鶴崎:青野武
- 食通:佐藤正治
- 猪上裕子:藤田淑子
- 猪上博士:宮内幸平
- 真船:戸谷公次
主題歌・挿入歌
- S.F.(忌野清志郎、Johnny、Louis & Char)
- プライベート(忌野清志郎、Johnny、Louis & Char)
- かくれんぼ(忌野清志郎 & Char)
東芝EMIから「S.F.」「かくれんぼ」を収録したシングル盤と主題歌・挿入歌全てと羽田健太郎作曲のBGMを収録したユーメックス制作のサントラ盤が東芝EMI・フューチャーランドレーベルよりCD、LP、カセットで発売。現在すべて廃盤。