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編集王/土田世紀

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著者: 土田世紀
巻数: 4巻

土田世紀の新刊
編集王の新刊

最新刊『編集王 4


出版社: 小学館
シリーズ: ビッグコミックスワイド


編集王の既刊

名前発売年月
編集王 1 2000-12
編集王 2 2000-12
編集王 3 2001-01
編集王 4 2001-01

編集王』(へんしゅうおう)は、土田世紀による漫画、及びそれを原作とするフジテレビにて放送されたテレビドラマ。青年漫画誌の編集部を舞台に、編集者や漫画家の姿を描いた。小学館『ビッグコミックスピリッツ』週刊1994年2・3合併号から1997年44号までに連載された。単行本全16巻、ワイド版全4巻、文庫本全10巻。

内容

15年近く打ち込んだボクシングの世界で芽が出ないまま、網膜剥離で引退する事になった桃井環八(カンパチ)が、新たに出発したマンガの編集の世界で『あしたのジョー』の“ジョー”を目指す姿を描く。カンパチのモデルは、小学館の編集者・八巻和弘といわれている。

マンガ好きの人間ならニヤリとするような実在の人物・事件が織り込まれているが、それを抜きにしても、それまであまり取り上げられる事のなかった1つの「業界」を描いた傑作である。「マンガ業界」そのものが主役と言えるため、次第に狂言回しとしての主人公・カンパチの影が薄くなっていった感は否めない。現代の漫画業界そのままをリアルに描いたというわけではなく『編集王』で描かれる漫画業界のリアリティについて、1998年放送の『BSマンガ夜話 編集王』においていしかわじゅんや夏目房之介はモデルとなった編集者などは存在するが、あくまで作品世界は漫画業界の対立構造を誇張するなどカリカチュアライズされたものであると評している。また、岡田斗司夫は物語後半のゲーム編においてゲーム製作に不可欠なサウンドクリエイターの不在など、漫画業界以外の点については取材が不十分であることを指摘している。、物語上大幅に戯画化されている。

登場人物

名前には日本の道路や交差点などの地名が使われることが多い。

ヤングシャウト編集部

桃井環八
ボクサーだったが網膜剥離の診断を受け、引退。子供の頃に読んだ『あしたのジョー』に心酔している。「ヒロ兄ィ」と慕う、幼馴染の青梅のつてで大手出版社・支配社を新しいリングとすることを決意する。性格は直情で涙もろい。疎井編集長が捨てた子犬‘ジョン’、‘フィッツジェラルド’、‘ケネディ’の三匹を育てる。宮いわく「どんな誘惑があろうとも、最も大切なものを最優先できる屈強な男」。通称カンパチ。名前は環状8号線から。名字は杉並区桃井から。全裸にならないと大便をできないという性癖を持つ。
青梅広道
支配社の人気コミック誌『週刊ヤングシャウト』編集部デスク。幼馴染のカンパチを編集部に誘う。マンガが何より好きだが、そのため効率重視の編集長とぶつかる。後の『ヤングシャウト』の看板作家の引き抜き事件以降は、編集長とも関係修復した様子。昔は水泳の日本代表クラスの実力だったが、病気が元で断念。顔は、初期のころは萩原健一がモデルだった。名前は青梅街道から。
疎井一郎
『ヤングシャウト』編集長。若い頃は作家と作品を純粋に愛していた編集者(ちなみに宮も惚れる美青年)で周囲と衝突していたが、仙台角五郎の作品が闇に葬られた件を契機に、効率、売り上げ重視で作家性や漫画家のことなど二の次の編集者(ちなみに若い頃とは外見も似ても似つかぬ中年)となり、『ヤングシャウト』をNo.1漫画誌に躍進させる。その為、対極に位置するカンパチ、青梅を苦々しく思っていた。後に『ヤングナッツ』による『ヤングシャウト』の看板作家の引き抜き事件という危機に対して、編集部一丸となって戦った事から、青梅らとも人間関係がよくなった様子。ドラマでは「疎井明」という名前。外見モデルは小沢一郎。妻は中森明菜似。
宮史郎太
『ヤングシャウト』副編集長。疎井編集長とは若い頃からの付き合い。背が低くオカマっぽい口調で話し、女性的な趣味で、かつては美青年だった頃の疎井に一目惚れした事もあったが、結婚していて三児がいる。趣味でハーブティを淹れてよく編集部に持って行くのだが、台無しにされるのが恒例である。カンパチたちの理解者。モデルは演歌歌手宮史郎。‘八代亜希’という女流漫画家も登場した。
目白通代
『ヤングシャウト』編集者。男まさりの性格で仕事に打ち込み、カンパチには「姐さん」と呼ばれる。女性であるということで作家から受け入れてもらえず、仕事をやめようと思っていたが、カンパチたちに励まされて復帰する。このエピソードでは、目白の好きだったマンガとして『キャンディ・キャンディ』の図版が使われていたが、原著作者に無許諾の転載であり、後のワイド版・文庫本などでは当該ページは白紙収録となっている(ワイド版第1巻480頁を参照)。名前は目白通りから。
本占地雪之丞
アイドルオタク編集者。はじめ文芸編集を志し、マンガを馬鹿にしていたが、カンパチたちとつきあううちに真面目に打ち込むようになる。文芸派を気取るが「憂鬱」ていどの漢字が読めない。実家は大金持ち。
三京稔
ミリタリーマニアの編集者。ノラリクラリと仕事をする疎井派で、青梅と対立している。しかし『ヤングシャウト』の看板作家の引き抜き事件をきっかけに、青梅と共闘する事になる。元バレエダンサーだったが、足の故障で断念。最初はリアルだったが後半は常軌を逸した大きさのアフロヘアーになる。名前は第三京浜道路から。

漫画家

マンボ好塚
戦後のコミック史に名を残す巨匠漫画家。一応現役だが、現在はほとんど自分では描いておらず、酒とゴルフと釣りの毎日。重度のアルコール依存症。ヤングシャウトには『しれとこ番長TAKE2』という作品を連載中。人気も最低だが、コミックスがそこそこ売れるという理由で掲載されている。カンパチたちと出会い、今の自身の現実を突きつけられる。今の自身を見つめる事を拒否していたが、酒がきっかけの傷害事件を起こして全てを失ったことを機に若い頃の気持ちで真剣にマンガに取り組むことを決意し、再起を賭けて新作「あした」に取り組む。しかし、長年の飲酒が身体を深く蝕んでいて、「あした」を描き上げた日に心不全で死亡する。名前は「好事家」から。代表作は『王女アンナ』。モデルに特定の人物はいない。
仙台角五郎
マンボ好塚のマネージャー。元々は漫画家志望で若き日のマンボのアシスタントをしながら漫画を描いており、デビューが決まりかけていたが、出版社の都合でボツにされ、それ以来漫画に対して希望を失っていた。しかし、カンパチに出合い希望を取り戻す。ペンネーム・ベニー八木山は八木山ベニーランドという仙台にある遊園地から、名前は仙台市(青葉区)角五郎から。モデルは長谷邦夫とする意見がある。みゆきという娘がいる。
晴海
『ヤングシャウト』で連載中の人気漫画家。自称「天才」で、実際に評価は高いが気分屋で締め切り破りの常習犯。漫画にたずさわる人間は自分も含めて、作品のためなら生活や家族すらも犠牲にすべきという考えの持ち主で、カンパチとぶつかる。ただしそのエキセントリックな態度とは裏腹に、描いている漫画はギャグ漫画であり、文庫版第10巻表紙では「晴海太」という名前とともに、「対パンダ」なるギャグ漫画を連載していることが確認される。
名前は晴海通りから。原作では苗字しか出てこないが、ドラマでは「晴海圭介」というフルネームが設定された。
骨川サヨリ
『ヤングシャウト』で『空手ラブ・スカッチ』という漫画を連載する漫画家。大人気作家ではないが若手漫画家のリーダー格。実家の借金のため、ライバル誌『ヤングナッツ』に引き抜かれる。沖縄出身。外見上のモデルは西田敏行。
小泊浅虫
『ブルセラムーン』という超人気エッチコミックを連載中の漫画家。読者に迎合した不本意な連載をすることに苦しみ、意を決して連載をやめる。名前は青森県の小泊村と浅虫温泉から。
山手さゆり
本占地が当番の日に漫画を持ち込んできた、美人女子大生。才気に溢れていたが、疎井の意向によって意に染まぬ相撲漫画『初恋・ドスコイ』を描かされ、潰される寸前まで追い込まれる。モデルは小平桂子アネット。名前は山手通りから。
大原愛、村木ともみ、北村永吾
3人とも売れない漫画家だったが、明治によって‘北原とも’としてユニットを組み、企画漫画『ぬかずヌルハチ』で大ヒットを飛ばす。のち『ヤングナッツ』に引き抜かれる。北村英吾は同じ名前の作者のアシスタントがモデル。
尾上龍子
締め切り破りの常習犯。『ヤングシャウト』に移ってきた明治が担当となり、締め切り厳守のために屈辱的な指示をされる。最終シリーズでは『ヤングナッツ』に引き抜かれる。文庫版第8巻表紙により、ヤングシャウト』では『みすたぁ・しすたぁ』という漫画を連載していたことが明らかになる。
プラム佐和子
自分で描かない、作品がつまらない、誰も文句が言えないと、マンボ好塚と双璧を成す札付きのベテラン女流漫画家。
山田英吾
児童誌で活躍する、マンボ好塚と同時代の漫画家。代表作は『ブチネコニャン太』。モデルは藤子・F・不二雄。
土屋
目白が担当している漫画家。仕事が終わると、アシスタント達と釣りやバッティングセンターに行ったり、目白が差し入れた酒を昼間から仰るなど、かなりの道楽家である。目白の事を疎ましく思っているが、原稿の手直しには渋々応じている。
マンガの神様
最終話の回想シーンで、マンボ好塚と疎井の前に現れた巨匠漫画家。顔は描かれていない。代表作は『ブロックジィック』。

支配社社員

「支配社」の社名は、先行するスピリッツ連載作品である「サルでも描けるまんが教室」に登場する架空の出版社名を、そのまま採用している。

社長
支配社の社長。編集者あがりで、現場の編集者たちを自分の後輩のように見守っている。エロやヘアヌードなどに対して社員から反発を受ける事もあるが、そういった俗悪なものに対しても彼なりの見識があり、大きな器量を見せる。
「カッちゃん」という愛称しか出てこず、本名は不明。
五日市
文芸誌『絶叫』の編集長。昔は売れていたが、今は見向きもされない文芸誌を一人で編集している。ヘルプに入ったカンパチに振り回されるうちに編集者の心を取り戻し、退社して自費出版で文芸誌を刊行する。社長や疎井と同期。名前は五日市街道から。
明治一郎
少女漫画誌から転任してきた編集者。青梅とは旧知の仲。仕事にやる気は全くなく、アフター5の風俗通いが生き甲斐。しかしやる気と裏腹に漫画家に締め切りを厳守させる力量は高く編集長からの評価は高いが、そのやり方については目白通代からの反発を招く。
その後は本占地と組んで、新人漫画家を利用して「エロ」を主題とした作品『抜かずヌルハチ』をプロデュースし、社会現象となり、同時に仕事の面白さにも目覚める。しかし有害図書指定され担当を外され、謹慎処分となる。破滅的な彼の行動には、エリート家庭に育ち、いじめられっ子であった生い立ちに秘密があった。ほとぼりが冷めた後にエロを主題とした雑誌の編集長に抜擢されるが、それを拒否してアメリカに左遷させられる事になるが、その人事には社長なりの配慮があった。
名前は明治通りから。
東名
営業部のやり手社員。五日市の件で、売れない本が業界でどういう扱いを受けているかをカンパチに教える。モデルは豊川悦司。名前は東名高速道路から。

その他

四面道渡
東京ドームで開催される日本最大の同人誌即売会“マンケ”の主催者。若い漫画家を探しに来たがエロ漫画に辟易したカンパチと参加者が衝突した際、事態を収拾する。のち、カンパチに協力して支配社に同人漫画家を連れていく。名前は環八と青梅街道が交わる「四面道交差点」から。
猪頭賢伍
ゲーム会社・オレガ社社長。通称イノケン。カンパチの幼馴染で、ゲーム界の風雲児と呼ばれる。『ブルセラムーン』ゲーム化の件でカンパチと再会する。モデルは飯野賢治。番外編的なエピソードでゲーム製作の話が語られるが、本編同様実際のゲーム製作の現場とはややかけはなれた話であった。名前は井の頭通りから。
陳子昂(ちん すこう)
香港の大富豪の息子で、支配社のライバルである講学館を買収し、その新社長に就任。赤字部門をリストラし、利益を生み出す漫画部門と同社の漫画雑誌『ヤングナッツ』に経営資源を集中させるという方針を打ち出し、あの手この手で『ヤングシャウト』の看板作家を引き抜きにかかった。モデルは大槻ケンヂ。名前は沖縄のお菓子「ちんすこう」から。

書誌情報

単行本

  • 小学館ビッグコミックス
  1. 1994年5月30日刊行 ISBN 4-09-183421-3
  2. 1994年8月30日刊行 ISBN 4-09-183422-1
  3. 1994年11月30日刊行 ISBN 4-09-183423-X
  4. 1995年1月30日刊行 ISBN 4-09-183424-8
  5. 1995年4月27日刊行 ISBN 4-09-183425-6
  6. 1995年7月29日刊行 ISBN 4-09-183426-4
  7. 1995年10月30日刊行 ISBN 4-09-183427-2
  8. 1996年1月30日刊行 ISBN 4-09-183428-0
  9. 1996年4月27日刊行 ISBN 4-09-183429-9
  10. 1996年6月29日刊行 ISBN 4-09-183430-2
  11. 1996年8月30日刊行 ISBN 4-09-184371-9
  12. 1996年11月30日刊行 ISBN 4-09-184372-7
  13. 1997年4月2日刊行 ISBN 4-09-184373-5
  14. 1997年6月30日刊行 ISBN 4-09-184374-3
  15. 1997年9月30日刊行 ISBN 4-09-184375-1
  16. 1997年12月19日刊行 ISBN 4-09-184376-X

ワイド版

  • 小学館ビッグコミックスワイド
  1. 2000年10月18日刊行 ISBN 4-09-186811-8
  2. 2000年10月18日刊行 ISBN 4-09-186812-6
  3. 2000年11月27日刊行 ISBN 4-09-186813-4
  4. 2000年11月27日刊行 ISBN 4-09-186814-2

文庫本

  • 小学館文庫
  1. 2006年7月15日刊行 ISBN 4-09-196051-0
  2. 2006年7月15日刊行 ISBN 4-09-196052-9
  3. 2006年8月11日刊行 ISBN 4-09-196053-7
  4. 2006年8月11日刊行 ISBN 4-09-196054-5
  5. 2006年9月15日刊行 ISBN 4-09-196055-3
  6. 2006年9月15日刊行 ISBN 4-09-196056-1
  7. 2006年10月14日刊行 ISBN 4-09-196057-X
  8. 2006年10月14日刊行 ISBN 4-09-196058-8
  9. 2006年11月15日刊行 ISBN 4-09-196059-6
  10. 2006年11月15日刊行 ISBN 4-09-196060-X

テレビドラマ

フジテレビで2000年10月 - 12月にテレビドラマ化。主演はネプチューンの原田泰造。主題歌はTRICERATOPSの「FALL AGAIN」。視聴率は低いが、このドラマで原田の演技力が認められ俳優としての仕事が増える。

2007年1月放送のネプリーグでフジテレビのアナウンサーチームに「タイトルが漢字のみのドラマを5つ答えろ」と出題された際、原田がこのドラマを答えたが誰も知らなかった。

出演

  • 原田泰造 - 桃井環八
  • 中山秀征 - 青梅広道
  • 京野ことみ - 目白通代
  • 真中瞳 - 中原ひかる
  • 高橋克実 - 宮史郎太
  • 八嶋智人 - 本占地雪之丞
  • 川端竜太 - 三京稔
  • 菊川怜 - 香川夏見
  • 大竹しのぶ - 八代亜希

ゲストで、宮史郎太のモデルである宮史郎が出演し、高橋演じる宮史郎太と鉢合わせるシーンがある。原作から敷衍した話が数話あるほかは、設定のみが共通する話である。

スタッフ

  • 脚本 - 秦建日子、十川誠志、川嶋澄乃
  • 演出 - 佐藤祐市、土方政人
  • プロデュース - 森谷雄、保原賢一郎

サブタイトル

  1. いきなり水着で歓迎会 - 12.6%
  2. あなたの才能信じます! - 9.1%
  3. 激走! 涙の親子リレー - 8.9%
  4. 恋愛に勝敗はない - 6.8%
  5. 女がリングに上がるとき - 9.6%
  6. 涙のヴァージンロード - 8.0%
  7. 赤ちゃんと夢を取り戻せ - 7.3%
  8. 今、決断のゴングが鳴る - 8.8%
  9. 天国からのラブレター - 6.8%
  10. 無差別殺人!?犯人は熱烈読者!?兄貴に捧げる特大最終号 - 6.9%
  11. 運命の最終ラウンド!!死ぬな兄貴涙の大演説 - 5.8%

平均視聴率8.2%

脚注、出典