花冠の竜の国/中山星香
著者: 中山星香
巻数: 7巻
最新刊『花冠の竜の国 7』
twitterでのコメント (関係ないのに引っかかることもあります...)
『花冠の竜の姫君』(はなかんむりのりゅうのひめぎみ)は、中山星香による日本の少女漫画作品。
概要
花冠の竜の姫君は、『プリンセスGOLD』(秋田書店)にて2008年2月号より連載中のファンタジー作品である。本作品の前に、1980年代から90年代にかけてシリーズ連載された「花冠の竜の国」(秋田文庫既刊7巻まで)があり、これはその次世代編である。
世界観
考察
はじまりは、前作「花冠の竜の国」のヒロインであるリゾレットの曽祖父ブライアン・アステアが、孫のジェニファー(リゾレットの母)のために書いたおとぎ話「ウィングチップでアメリカン」である。リゾレットは偶然、このおとぎ話の世界に迷い込みエスターと出会い結婚、そして出産する。
よって、この作品の中ではパラレルワールドではなく、ギルデリエックやクリサンリィンは実在し、どこかで交わる可能性があるとされている。現におとぎの国の住人であるハリーは英国の病院に通い、滞在中、彼の騎竜のバリアントは納屋で生活する。かれらが祖国へ帰るときに、竜が消えるのを人間によって目撃されている。
花冠竜の世界の国
※統治者は花冠の竜の姫君の時代による。
- 星の都(クリサンリィン)
- 国王(名前未出)と月の都出身のデジー妃により統治される。良質の日鉱石を生む星の谷を有する土地。谷の奥に住む「伝説の魔物」にして守護神と呼ばれる巨大な眠眠蛙ビアンダン(国王が「彼女」と呼ぶ事から雌らしい)により守護されている。
- 花の都(ギルディリエック)
- エスター国王により統治。王妃は英国出身のリゾレット・モーガン。空を覆う黄金の花・ライトルーアにより照らされる輝ける土地。しかし、下層にはギリアドン蛇という凶暴な獣が巣くっている。リゾレットが迷い込んだ当初、ギルアドン教が横行していたが、エスターにより追放され政教分離が行われた。
- 月の都(シェリダン)
- デジー妃の従弟アキロン王により統治。月の湖を有する地形を利用した竜族の飼育が盛んな国。毎年、大花冠竜祭りが行われ騎竜の競売などが催される。
- 氷の都(ベンジュラ)
- ガーデルー王により統治。経済は日鉱石の輸出のみにたよっており、鉱山の枯渇により大打撃を受けている。
- 高地の都(コースター)
- フローリオ王により統治。女性にとってとても住みやすい土地とされている。特産物は絹織物など。
- 石の都(ナイティア)
- 先王の忠臣であったノアル王と先王の娘であるファリフィン王妃により統治される。特産品は名のとおり石。建築用の石材から宝飾用の貴金属まであらゆる石を輸出している。
- 中洲の都(ギャルテン)
- 名のとおり河川の中洲に存在し、国というには小規模。指導者はツムラムルム。経済は優れた彫金と鍛冶の技術により成り立っている。
- 森の都(ル・フェイルン)
- 現在は廃墟。嘗ては国民から搾取した重い血税により一見して豊かに見え、凡庸な国王と野心に燃える王子アヴィヴァンが君臨していた。しかし、アヴィヴァンによるリゾレット誘拐とエスター暗殺未遂事件の折、国王は花の都を裏切った月の館の主と共に捕えられ、アヴィヴァン自身もまた度重なる陰謀の果てに命運尽きて終身刑に処された。事実上、国は滅亡したのである。
- 金冠樹の森(ディングル・ディナリーナ)
- 夢の王ユーリックが統治するリージョン。辿り着くにはリボン運河を越えなくてはならない。
生き物
おとぎの国らしく多数の不思議な生き物が存在する。
- 花冠竜(フラワードラゴン)
- 名の通り、頭上に花などの冠を生やす竜族。種類として、チューリップのような花を咲かせている「紅花竜」、星を咲かせている「三ツ星竜」、個体数が絶対的に少ない「金色花冠竜」などがいる。竜たちは薔薇色花月と呼ばれる繁殖期に、月の湖の底で花粉に隠れて伴侶を選る儀式を行っている。森の都の残党の竜狩人と共に暗躍した竜商人の暴挙により、近年は更に「金色花冠竜」の数が減り、薔薇色花月にも姿を見せなくなっている。エスター王らの保護により、竜達の復活が期待されている。
- 翼猫(ウィングキャット)
- 翼をもった巨大な猫。高地の都では騎竜の代わりに翼猫を移動手段とする。高地の都の猫は人に慣れているが、もとは獰猛な肉食獣。
- ギリアドン蛇
- むかでのように長い体躯と蠍のような毒の牙を持ち、「わんわんわん」と犬のように啼く凶悪な獣。弱点は口の中と9つ目の関節にある神経中枢。かつてギリアドン蛇をご神体とあがめるギリアドン教なるものが存在した。
- 角魚(つのうお)
- 皺の寄った甲殻を持つ凶暴な魚類。ギリアドン蛇の数少ない天敵。
- 眠眠蛙(みんみんがえる)
- 花柄の皮膚を持つ蛙。その詩は魔を退けるという。星の都の守護者ビアンダンは巨大な眠眠蛙である。ビアンダンが本気で鳴けば、黄金花ライトルーアを全滅させてしまうほどの超音波となり、人間にも害が及ぶ。ギリアドン蛇の数少ない天敵。
- ワニザール人
- 踊子水地帯(ワニザール)に住む、ワニにそっくりだが二足歩行の原住民族。常に踊っている。巨大マリモ玉船(グリンボー)に乗り河川を移動する。なおグリンボーには野生種と人工種があり、野生種は乗りこなしが困難と言われる。
登場人物
星の都の国
- リリフロラ・リア・クリサンリィン
- 本作の主人公。愛称「リリィ」。星の都(クリサンリィン)の王女。黒髪とアメジストの瞳。騎竜は紅花竜のカカリア。
- 王族のため行動に制限がある。そのため、非公式に行動する時はハリーのアイディアにより、彼とサンディの3人で「3匹のこぶたの香茶屋」となり周囲の目を欺くようになる。
- 王女らしくおしとやかなドレスを着るよりも、軽装で騎竜を駆るのが好き。父から短剣を使った護身術を習い、いざというときは戦う勇気もある。
- デジー妃とは血のつながりはなく、絶世の美人の義母に対しコンプレックスを持っている。しかし、義理の母と娘の仲は良好である。
- サンデュ・ハロベル
- デジー妃の侍女頭の息子。通称・サンディ。リリフロラの護衛として付き添うが、精神年齢が近いため護衛というよりは友達。
- ハリーとリリィーの3人で「3匹のこぶたの香茶屋」の変装をする。
- 国王
- リリフロラの実父。彼女が幼いうちに妻を亡くし、のちにデジーと結婚する。名前は無いが、娘と妻の名前に共通するクリサンリィンがラストネームと思われる。
- リリフロラからしても、優しいが男性としての魅力に乏しく、なぜデジーのハートを射止められたのは謎のままである。娘と妻、国と国民を心から愛している。氷の都の王弟が妃を傷つけ脅すまでは、捕虜になり拷問にあってもなお口を閉ざし国を護ろうとした。
- デジー・アデミール・セゼールリーマ・リア・クリサンリィン
- リリフロラの義母。絶世の美女。彼女の美貌は「闇に輝く美しさを、愛でて夜の宝石・月の都シェリダン。宝石よりもあでやかな姫君」と形容される。いまもなお衰えず、義娘リリフロラのコンプレックスになっている。継子いじめは全く無く、リリフロラに対し優しく厳しい女の人生の先輩として様々なアドバイスをしている。過去にエスターに恋をしたが破れる。その後もずっと横槍の恋を貫いていたが、エスターとリゾレットを苦しめるアヴィヴァンの所業に自らの影を見た為、生きる目標を失い打ちのめされてしまう。そんな矢先、女の子の母親になってみないかという星の都の国王の誘いを受諾し、月の都の王位継承権を従弟アキロンに譲り星の都に嫁いだ。そして、夫王と義理の娘を心から慈しみ新たな幸せに包まれる人生を得たのだった。
- シスル・ハロベル
- デジー妃付きの侍女頭。サンデュの母親。
- ライディ・レリック
- 国王直属の護衛隊長。
花の都の国
- ヘディアード・イルギス・ギディングス
- 17歳。愛称「ハリー」。花の都(ギルディリエック)の王位継承者。エスター王とリゾレット王妃の息子。双子の妹エディアールがいる。本来の名は「イルギス・ギディングス」だったが、養父である英国の富豪ムーンウッド伯爵により愛馬ヘディアードの名を与えられ、叔父ピーターに発見されるまで「ヘディアード・ムーンウッド」として育った為、現在は双方の名を合わせたモノを名乗っている。父譲りの銀糸の髪と真青(まさお)の瞳。騎竜は金色花冠竜のバリアント。
- 霧深く陽射しの柔らかい英国で育った為、光の強い花の都の環境が合わずに目を患ってしまう。リリフロラと出逢った時、英国のモーガン邸に滞在し療養中だった。
- 実父のエスター王は7歳違いであり、双子の妹とは14歳は離れている。生後間もない時、エスターの宿敵アヴィヴァンの命によりギルデモン族の「闇の呪術師」アキレディアに呪殺される筈だったが、リゾレットの子を救おうとしたアステアが運命の書「リリフロラ」にハリーの名を書き加えた為、リリフロラに合わせて14年前の英国に飛ばされた。その所為で両親や双子の妹との年齢にズレが生じてしまった。高祖父アステアにより、その事象の真相を告げられて知る。
- 性格は基本的にはドライ。リリィに愛の告白をされるが「きみは今一番好きな女の子だけど、恋とはちょっと違う気がする」と答えその場から騎竜で立ち去ってしまう。その一方で、リリィからキスされたときには「僕がとまらなくなったらどうするの?」と応じもした。しかし、リリィが無茶をしすぎたときは本気で怒りたしなめ、無事を確認した彼女を抱きしめたり、リゾレットに泣かれると困ると白状するエピソードもあることから、ドライな性格はポーズだと思われる。
- エスター・ギーディング・ギディングス
- 24歳。花の都(ギルディリエック)国王。ハリーとエディの父。銀糸の髪と真青(まさお)の瞳を持つ。騎竜は金色花冠竜のシンバット。
- 性格はクール。他人に対して上手に自分を表現出来ないことがあり、しばしばそれがリゾレットから誤解を招くことになっていた。結婚してからリズに影響され、優しさをうまく出せるようになる。しかし愛情表現は独身時代からストレート。周囲の目を気にすることなくリズにキスや愛の言葉を囁いている。
- 現在では妻の影響を受け、エクタの留守中に「ウィングチップ(翼端)」の臨時店長を務めたりもし、国民を驚かせている。
- リゾレット・ギディングス
- 前作「花冠の竜の国」の主人公で愛称は「リズ」。エスターの最愛の妻。ハリーとエディの双子の母。金色の髪の毛とアメジストの瞳を持つ。騎竜はシェル(シフェラザード)。なおエスターの騎竜シンバットとシフェラザードは番(つがい)である。
- 性格は喜怒哀楽に富む典型的な乙女。しかしその彼女の素直な性格は周りの人間を変えてゆき、しばしば物語のキーとなる。
- 若い頃は、皇后から跡継ぎを早く作るように言われるが、自分が異世界の人間だから子供が出来ないのではないかと思い悩む。ついには自分よりもデジー姫のほうが王妃としてふさわしいと思い込み家出し、そのときに記憶を失ってしまう。しかし、花冠竜の世界の住民はみな出生率が低い為である事を知る。その後、ハリーとエディの双子を兄妹を授かる。
- ハリーにとって夢の中の妖精であり、最愛の女性。ふだんドライな彼が唯一彼女の前では緊張しうろたえてしまう。恥ずかしさから避けてしまうようになっていたが、実際は絶対に泣かせたり悲しませたくないと思っている相手。
- エディアール・ギディングス
- 3歳。愛称「エディ」。エスター王とリゾレット王妃の娘。ハリーの双子の妹。黄金の巻き毛とアメジストの瞳を持ち外見上は母親そっくりである。
- 兄とは14歳離れており、長い間別れて育った兄を大変慕っている。自分以外にハリーに近づく女は全て敵だとみなす。決まり文句は「さようなら他所の国の人!」。しかし全ては子供らしく素直で単純なところからきており、ワガママを言って周りを困らせることもあるが、皆から愛されている。
- 竜商人の事件の折、金色花冠竜の子竜と赤ちゃん竜、三ツ星竜の子竜、そして竜商人が連れていた鶏に似たバンチョウという鳥とまで仲好くなり、父エスターに責任を持って面倒を見ると誓い花の都に連れて帰った。
ウィングチップ
ウィングチップは国名ではなく、シリーズ全般に登場する喫茶店の名称である。
- エクタクローム
- 猫。
- 通称・エクタ店長。花冠竜の世界の喫茶店「ウィングチップ」店長。彼の煎れるコーヒーはえもしれぬ味だという。
閲覧宮(ソープワート)
人々の運命を綴る詩を記した運命の書を司る。
- ブライアン・アステア
- ハリーの母方の高祖父(曾祖父母の父)である。人としての生を終えた後、何故か「閲覧宮」の7番目の「創造者(クリエーター)」とされ、玄孫(やしゃご、「曾孫の子」の意)であるハリーが死の呪いにより殺される運命だと知り、運命を書き換え逃亡者となった。
掲載誌情報
プリンセスGOLD(秋田書店)
- 第1期 2008年2月号~6月号
- 第2期 2008年9月号~11+12月号、2009年2月号
- 第3期 2009年3+4月号~7+8月号
- 第4期 2009年9月号~連載中
書誌情報
中山星香 『花冠の竜の姫君』 秋田書店〈プリンセスコミックス〉、既刊5巻(2010年8月現在)
- 2008年7月16日発売AKITA Web Station | 秋田書店より。(2009年8月15日閲覧)、ISBN 978-4-253-19651-2
- 2009年3月16日発売AKITA Web Station | 秋田書店より。(2009年8月15日閲覧)、ISBN 978-4-253-19652-9
- 2009年8月12日発売AKITA Web Station | 秋田書店より。(2009年8月15日閲覧)、ISBN 978-4-253-19653-6
中山星香 『花冠の竜の国』 秋田書店〈秋田文庫〉、既刊7巻(2009年8月現在) 文庫7巻の作者のコメントによると、かつて出版システムの都合か、連載中にもかかわらず全2巻と銘打たれていた過去があり、作者希望により文庫版は全7巻という記述はせずに既刊7巻という記述がされている
脚注