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魔空八犬伝/石川賢
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著者: 石川賢
巻数: 3巻
最新刊『魔空八犬伝 3』
『魔空八犬伝』(まくうはっけんでん)は、石川賢による日本の漫画。『南総里見八犬伝』を元にした、伝奇SF。
集英社の月刊漫画誌『ベアーズクラブ』に、1988年から1990年にかけて不定期掲載され、描き下ろしコミックスにより完結した。本項では、1992年から1997年かけて発売された全5巻(少年キャプテンコミックス オリジナル版)を元に説明する。
ストーリー
- 第1巻 川中島
- 長禄2年(1458年)8月、里見義実が城主を務める安房里見城は、安西景連に攻められ、落城寸前だった。城内に攻め手が突入した時、巨大な黄金の馬が出現。それに続いて怨霊・亡霊の類が噴出し、攻め手は壊滅した。
- 時は流れ、永禄4年(1561年)。農家の少年・犬塚信乃は、侍大将だった先祖に憧れ、天下取りを夢見ていた。刀を得ようと戦場跡に入った時、黄金で出来た魔空城(里見城)が虚空から出現した。黄金城はすぐに消えたが、亡霊のような魔物が現れ、通りがかった犬山道節を襲う。しかし、道節は慌てずに左目にある仁の珠から光を放ち、魔物を退散させた。
- その夜、信乃の家は、魔物に憑かれた死者に襲われ、両親は死亡。しかし、信乃は先祖から伝わる名刀村雨丸を使い、窮地を脱する。道節も駆けつけ、魔物は退治された。そして、信乃の胸に孝の珠が浮かび上がる。
- 戦乱の中、黄金城を目指して信乃と道節は旅をする。人間に憑依する魔物を取り逃がしかけた時、信の珠を持つ雲水(上杉謙信)に遭遇する。魔物は信の珠で消滅したが、川中島の戦いは迫っていた。謙信と信乃・道節は別の道を歩む。
- 魔物に取り憑かれた山本勘助との戦いを巡り、2人は忠の珠を持つ乱元坊(乱坊)と出会い、謙信と合流する。
- 信玄は黄金城を降ろそうとするが、道節ら四犬士の活躍で野望は潰え、黄金城は魔空へと戻った。
- 第2巻 石山本願寺
- 元亀元年(1570年)、織田信長は石山本願寺の顕如と対決していた。黄金城が血を求めることから、道節、信乃、乱元坊の3人は、信長の動向に着目する。
- 信長配下の根来衆が一向宗徒を襲うところを信乃が救ったため、石山本願寺に入った3人は、雑賀孫市率いる雑賀衆と出会う。その傍ら、本願寺の支配者・顕如が黄金城を手に入れようとしていることを知る。そして、本願寺には、既に雀連という、黄金の僧侶がいた。道節らは本願寺配下の異能集団と戦い、雀連を連れ出すことに成功する。雀連は伊勢長島に黄金城が現れることを予知した。
- 本願寺の外では、悌の珠を持つ王犬丸が一向一揆に身を置き、信長勢と戦っていた。王犬丸の前に、魔物と一体化した明智光秀が現れる。
- 第3巻 伊勢長島の乱
- 子供を人質に取られ、王犬丸は光秀に屈し、魔物を受け入れる。
- 雀連を連れた道節、信乃、乱元坊の3人には、天獣四部衆ら本願寺の追っ手と、信長配下の根来衆が追撃をかける。戦いの中、黄金城が出現、道節らは中に入り、里見義実と出会う。道節らを説得する義実だったが、それは罠だった。鏡写しの城の中に3人は封印され、黄金城の封印は解ける。魔空間からは、次々と魔物が溢れ出し、義実は光秀に、「さらに血を流すよう」に命じる。
- 信長は一向一揆の早期鎮圧を部下に命じ、羽柴秀吉と光秀が名乗りを上げる。
- 智の珠を持つペトロバ犬塚は、エクソシストとして日本各地を放浪している最中、謙信と出会う。協力して魔物を倒した2人の前に、道節ら3人を始め、閉じ込められていた人々が生還する。
- 光秀に先を越されまいと、秀吉は堺に急ぐ。依頼しておいた大型軍艦は、義の珠を持つ自雷天によって完成していた。出航を焦る秀吉に、自雷天は「黄金の僧侶が来るまで出航できない」、と答える。
- 一方、道節らは、王犬丸の魔空軍艦と対決していた。
- 第4巻 集結!八犬士
- 第5巻 突入!黄金城
主要登場人物
登場順。
八犬士
登場順。
- 犬塚信乃(いぬづか しの)
- 胸の中央に孝の珠を持つ。名刀村雨丸を使う少年剣士。
- 純粋な少年で、農家を嫌い、侍に憧れていた。
- 犬山道節(いぬやま どうせつ)
- 左目に仁の珠を持つ。得意技はこっぱみじん斬り
。
- 体力・腕力に優れている他、マントの中に多数の武器を隠し持ち、使用する。頭の回転も速い。
- 女性や子供など、弱者には優しい。黄金城を手に入れ、その財力で日本を統一し、平和な世界にしようとしている。
- 流星号という馬に乗っているが、名を明かされるのは第2巻になってから。当初は凛々しい姿だったが、話が進むに連れ、デフォルメがキツくなっていった(第2巻以降に顕著)。土遁の術を会得している。
- 上杉謙信
- 右肩に信の珠を持つ。実は女性。
- 川中島の戦いの後、影武者と家臣に上杉家を任せ、雲水姿で各地を巡る。八犬士としての道を歩み、以後は無双坊犬美と名乗る。
- 乱元坊(らんげんぼう)
- 男根の先端に忠の珠を持つ。ダウジングに似た技風流術を使い、見えない魔物を感知・捕獲する。
- 自称、乱坊(らんぼう)。「なまぐさ坊主」と自覚し、酒は飲むが、女性には手を出さない。なお、乱元坊の飲む酒は、魔物を漬けた物。
- 黄金城を求める理由は、酒と美女。
- 王犬丸(おうけんまる)
- 右手の甲に悌の珠を持つ大男。大鎌を武器にしている。一向宗徒。
- 子供を人質にされて魔物と一体化。魔空軍艦を操艦する。
- ペトロバ犬塚
- 智の珠を持つキリスト教徒。父は西国の城主、母は南蛮人の宣教師の娘。
- 金髪緑眼のエクソシストで、十字架と聖水を使い、魔物を消滅させる。血は聖血。
- 西洋風の柄・鞘を持つ長い刀を振るうが、普段はロボという黒人従者に背負わせている。
- 自雷天(じらいてん)
- 義の珠を持つ。手先が器用で、先進的な武器・兵器を開発する。
- 羽柴秀吉の命令で、大型軍艦を建造。大砲やミサイルも搭載した。
- 張犬老(ちょうけんろう)
- 口内に礼の珠を持つ仙人。中国から海に浮かんで来た。
- 仙術は不得手だったが、口内に珠が出来て以降、驚異的なスピードで術を会得していった。
- 本人は、舌先三寸で他人を操る方が得意。
里見家
登場順。
- 里見義実
- 里見家当主にして黄金城の城主。伏姫の父親。
- 呪術と黒魔術を混交させて独自の錬金術を生み出し、里美城そのものを黄金化した。しかしその術こそ、「魔空」と呼ばれる邪悪な意思であった。
- 伏姫(ふせひめ)
- 巨大な白犬「八房」とともに、仏法術で黄金城を異空間に閉じ込め続ける、里見の姫。八犬士の精神的母親。
その他、実在の人物など
登場順。
- 武田信玄
- 魔物に魂を売り、身体が半ば黄金化している。
- 黄金の体の輝きを保つためとして領内の処女を狩り集め、生き血を絞り、浴びている。
- 山本勘助
- 武田軍の軍師。魔空間を開き、信玄をそそのかした。魔物に魂を売っている。
- 明智光秀
- 織田信長の元に向かう最中、朝倉家の家臣に襲われる。殺されかけたところを魔空城に救われ、魔物と一体化する。
- 里見義実の配下に収まりつつ、義実の目的を果たすため、織田信長の協力者となる。しかし、信長への従属は表面的なもので、天下取りの野望に燃えている。
- 織田信長
- 天下統一のために、黄金城を追う。現在は石山本願寺、一向一揆と対決中。
- 雑賀孫市
- 雑賀衆の頭領。鉄砲隊を配下に持ち、本人も銃の名手。
- 信長と本願寺の両方を嫌っているが、配下のほとんどが一向宗徒のため、本願寺に加担する。
- 顕如
- 石山本願寺の支配者。黄金城の魅力に憑かれており、入手を試みている。
- 異端派である羅王真宗の夢王坊の他、念力を持つ僧侶の一団や、怪異な姿をした一団など、特殊能力を持つ集団を擁している。
- 雀蓮(じゃくれん)
- 石山本願寺の僧。黄金城に入ったことがあり、全身が黄金化している。
- 羽柴秀吉
- 堺で大型軍艦を建造させ、石山本願寺攻略の切り札として投入しようとしていた。
コミックス
徳間書店から数度にわたって単行本化されており、その都度、巻数が異なっているが、内容は全て同一である。
- 全5巻(少年キャプテンコミックス オリジナル)
- 川中島 ISBN 4-19-832122-1 1992年12月20日
- 石山本願寺 ISBN 4-19-833093-X 1993年9月20日
- 伊勢長島の乱 ISBN 4-19-830098-4 1995年10月30日
- 集結!八犬士 ISBN 4-19-830160-3 1997年1月20日
- 突入!黄金城 ISBN 4-19-830161-1 1997年1月20日
完結版としては最初の物。第2巻以降は描き下ろしで刊行。第4巻・第5巻は、同時発売となっている。