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14歳/楳図かずお

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著者: 楳図かずお
巻数: 18巻

楳図かずおの新刊
14歳の新刊

最新刊『14歳 18


出版社: 小学館
シリーズ: ビッグコミックス


14歳の既刊

名前発売年月
14歳 1 1990-09
14歳 2 1991-01
14歳 5 1991-12
14歳 11 1993-11
14歳 13 1994-05
14歳 16 1995-02
14歳 17 1995-04
14歳 18 1995-06

14歳』(フォーティーン)は、1990年から1995年にかけてビッグコミックスピリッツにおいて連載された、楳図かずおの長編SF漫画作品。2010年現在、本作品を最後として、楳図かずおの長編新作は、発表されていない。

概要

楳図かずおの代表作『漂流教室』の続編ともいえる作品で、環境破壊による人類滅亡、危機的状況を乗り切ろうとする子供達の奮闘、親子の絆と別れといったテーマを圧倒的な迫力で描ききっている。また、過去の楳図作品の集大成としての意味も持っている。

あらすじ

22世紀、人類は見せかけの繁栄の陰で、迫り来る破滅の危機に直面していた。そんな中突如として鶏肉製造工場から鳥の頭をもつ異形の人物であるチキン・ジョージが生まれる。チキン・ジョージはあらゆる学問を学び、その年生まれた子供が14歳になった段階で人類と地球が滅ぶという事を知る。そこで人類による地球の滅亡を逃れる為、動物達を連れて地球脱出ロケット「チラノサウルス号」を建設する。だが、チキン・ジョージは、大富豪ローズ氏とアメリカ副大統領マーサ・ゴーマンの手先である美女バーバラの魅力に負け、地球に残る事を決断し、自ら大脳の左右を分離して退化の道を選ぶ。

やがて、人類と同じ滅亡の危機を迎えた宇宙人達が飛来し、遺伝子交換による生き残りの望みを求めて人類を集団レイプするが、宇宙人達は地球人の遺伝子には未来が無い事を悟り、地球の霊的エネルギーを奪って去っていく。地球のバランスが狂った事により、大地震、大津波、大流砂等が発生して人口は激減。各国政府が極秘裏に進めていた、選ばれた子供達による地球脱出計画は、暴徒化した市民により崩壊する。

子供達は、代替ロケットとして「チラノサウルス号」に乗り込み、地球を脱出するが、迫りくる14歳のタイムリミットと、宇宙船を乗っ取られたチキン・ジョージの怨念に悩まされ続ける。しかも、破滅は地球に止まらず、当初の目的地であったアンドロメダ星雲にも波及している。14歳になり、恐竜に先祖がえりしだした同胞と荒廃した宇宙を目の当たりにした子どもたちは、チラノサウルス号の氷河期を再現した空間に入り14歳に近い者から順に冬眠することを選ぶ。 そんななか子供たちの代表であり誕生日が一番遅かったアメリカ少年は、チラノサイウルス号から光に包まれた宇宙の果てを見る。極小から極大に向かう空間ではすべての物が崩壊しようとする中、アメリカ少年は宇宙に飛び出す。飛び出してみると今までの宇宙は1匹の芋虫のなかに存在しており、芋虫が瀕死になったことにより宇宙の荒廃が進んだことを知る。そしてその世界ではチキンジョージと同じ容姿の者たちが人間のように生活しており、彼らの遺伝子を手に入れ少年たちはまた元の世界に戻ることを決意する。

登場人物

チキン・ジョージ
動物界からの人間への使者。ニワトリの頭を持つ異形の天才科学者。キャラクターの由来は吉祥寺(キチジョージ)で見かけた鳥の頭のモチーフと、「鳥はなぜ食べられるだけなのか?」という疑問から発想された。
チキン・ルーシー
チキン・ジョージによって知性を授かったニワトリ。
繁野
チキン・ジョージを生み出した鶏肉製造工場の技師。
アーサー・ヤング
アメリカ大統領で正義漢。
アメリカ・ヤング
アメリカ大統領の息子。緑色の髪に全ての植物の遺伝情報を持って生まれたほか、全生物の遺伝情報を持っている。名実共に、選ばれた子供達の代表であると共に、地球上の全ての生命の最後の希望を担っている。
ローズ氏
不老不死研究に没頭する大富豪。
バーバラ
チキン・ジョージの愛人となったスパイ。
戸川洋子
愛称はヨッコ。14歳でアイドル歌手の遊びの相手とされ、子供を身ごもった中学生。
戸川きよら
ヨッコの息子。遺伝子の配列がアメリカ・ヤングと殆ど同じ。後に遺伝操作によってアメリカとして転生する。
マーサ・ゴーマン
アメリカ副大統領。悪役。
エリザベス
マーサ・ゴーマンの孫。選ばれた子供。
岬一郎
日本国総理大臣。
岬タロウ
岬総理大臣の息子。選ばれた子供。
のばら
ローズ氏のコピーである少女。選ばれた子供達を悩ます存在。
ミチ
ヨッコの親友で、友達思いの少女。捨て身できよらとヨッコを追っ手から逃した。それ以後の消息は不明。

『漂流教室』との相違点

  • 『漂流教室』が人類滅亡後の世界へ子供達がいきなり飛ばされるというストーリー展開であるのに対し、『14歳』は人類滅亡のプロセスを詳細に描き出す。
  • 『漂流教室』が母と息子の関係を描いていたのに対し、『14歳』は父と息子(アメリカ大統領親子、日本国総理大臣親子)がメインテーマである。また、『漂流教室』における母・息子関係が強固な絆であるのに対し、『14歳』における母・息子関係は、ヨッコの一方的な溺愛と、それに応える素振りを見せないきよらとに描かれている。
  • 『漂流教室』は、マンガ版の『蝿の王』と呼ばれるほど子供同士の殺し合いや内ゲバを激しく描いており、極限状況においてはエリートよりも悪ガキくらいのほうが強いというメッセージを強く打ち出している。それに対し、『14歳』の子供たちは「選ばれた子供たち」であり、団結力・問題解決能力に抜きん出たエリートである。
  • 『漂流教室』の物語は地球で完結しているが、『14歳』のストーリーは宇宙なくして成立しない。破滅が他の銀河にも波及し、宇宙の果てでは宇宙が明るくなっているなど『わたしは真悟』以降の楳図の形而上学的作品世界が展開される。
  • 『14歳』の絵柄は意識的に歪曲されており、特に、物語前半においては、遠近法・輪郭線とも歪曲が激しい。その絵柄は、ほとんどマニエリスム的である。

他の楳図作品との関連

『14歳』は楳図かずおの集大成ともいえる大作で、過去の作品でも見られたテーマが、より深く、より大きな説得力を持って描かれている。

  • チキン・ジョージにおける知性の進化と退化のプロセスは、『わたしは真悟』、『ROJIN』等。
  • ローズ氏の老衰への恐怖、脳移植、のばらの異常心理は、『洗礼』、『おろち』。
  • 複眼的な論理軸を持ったストーリー展開は、『神の左手悪魔の右手』。
  • 空が落ちてくるシーンは、『闇のアルバム』。
  • ケースに入ったサボテンは、『わたしは真悟』。
  • 進化とは緩やかに進むものではなく、ある臨界点を超えると一気に進むものであるという考え方は、『漂流教室』に共通している。

外部リンク