HOME > コミック > がきデカ

がきデカ/山上たつひこ

共有

著者: 山上たつひこ
巻数: 2巻

山上たつひこの新刊
がきデカの新刊

最新刊『がきデカ 2


出版社: 秋田書店
シリーズ: 秋田文庫


がきデカの既刊

名前発売年月
がきデカ 1 1995-08
がきデカ 2 1995-08

がきデカ』は、山上たつひこによる日本の漫画作品。主人公である日本初の少年警察官と自称するこまわり君と、彼が通う「逆向(さかむけ)小学校」の同級生やその周辺のキャラクター達で展開されるギャグ漫画作品。『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)にて、1974年44号から1980年52号まで連載され、単行本の発行部数は3000万部を超える藤島宇策『戦後マンガ民俗史』(河合出版、1990年、ISBN 4879990248)222頁

1989年にTVアニメ化,ほぼ同時にOVAも作られているが、こちらは制作会社が全く異なり、声の出演も違う。時期や体制の異なる再アニメ化は珍しくないが、同時に異なる会社でアニメ化されたケースは当時大変珍しかった。

2004年より続編の『中春(ちゅうしゅん)こまわり君』が『ビッグコミック』(小学館)でシリーズ連載中。

概要

いわゆる「ドタバタもの」作品で、本格的ギャグ漫画の草分け的存在である。ギャグ漫画自体は赤塚不二夫の『天才バカボン』や『おそ松くん』など、『がきデカ』が登場する以前から数多く存在していたが、「ボケとツッコミ」の役割分担を明確にさせ、ボケ役(ここでは主にこまわり君)がボケて、ツッコミ役(ここでは西城君など)がそれにツッコむ、という形式を漫画に取り入れたのは本作が最初である。このスタイルは後に、小林よしのりの『東大一直線』や高橋留美子の『うる星やつら』など他のギャグ漫画作品に大きく影響を与えた。また臼井儀人の『クレヨンしんちゃん』などにも、本作品の影響が強くみられる。

また、『がきデカ』の面白さは、当時のギャグマンガとしては例のなかったただし、米澤嘉博の『COMIC BOX』誌での指摘によれば、川崎のぼるの『いなかっぺ大将』を先駆者とみる文章がある。「劇画調の絵」によるところが大きい。「死刑」などのこまわり君の下品なポーズや、女性キャラ達のHなポーズのエロティシズム、頻繁に登場する動物たちの間抜けさ、などなど。それまでのギャグ漫画が「意味」で笑いを作っていたのに対し、劇画調のリアルなポーズそのものにより、面白さを伝えるのは画期的であった米澤嘉博『別冊太陽 少年マンガの世界II』(平凡社)142頁-143頁

作者が大阪府育ちだったということもあり、ストーリー展開は正に吉本新喜劇そのものである。コケる、平気で人の頭を殴る、「ずるむけあかちんこ」、「人間のクズ」、「社会のゴミ」など暴言を吐くなどは当たり前で、時に西城までも「なんでやねん!」とツッコむなど大阪弁が随所に現われており、吉本新喜劇の影響を色濃く受けている。また、「直接的な肉体性から発する、下品さ」も吉本新喜劇と共通している。

流行語となった「死刑!」「八丈島のきょん!」「あふりか象が好き!」などの意味不明な一発ギャグでも有名である(ギャグ一覧はこまわり君の項目を参照)。また、少年誌での掲載ながら、こまわり君が自慰をしている所、尿をジュンにぶっかける所、ソープランド、お座敷ストリップなど過激な下ネタや描写、単語が頻発しており、連載当時は全国のPTAから槍玉にあがった。特にそれまでなかった、男性器をかぼちゃ、茄子、大根、バット、ヘチマ、ごぼう、きゅうりなどに具象化したことは特筆できる。

こまわり君が他の動物などに変身(メタモルフォーゼ)したのち、従来のギャグ漫画ならすぐ元の姿に戻っていたのだが、『がきデカ』では変身した姿のまま物語が暴走することが多い。この点は、従来のギャグ漫画にない画期的な点であり、文芸評論家の渡部直己が、そのデビュー時の論文でテキスト論的な指摘をした渡部直己『Hello Good-BY 筒井康隆』収録「露出狂の現在 マンガテキスト考」。

ブームが落ち着いた頃に鴨川つばめの『マカロニほうれん荘』が連載を開始、登場人物が変身したまま物語が暴走する特徴も、『がきデカ』と共通しており作者はライバル視していた。そのせいか絵のタッチが鴨川つばめに酷似し始めがきデカ廉価版「鶴がくるくるクリスマスっ!!」のコラム「犬月猫日の記」で本人が告白している。、作中において西城君やモモちゃん、ジュンちゃんまでもが目玉が大きく3頭身のいびつなキャラとなってしまった時期もある。

大人気作ゆえ作者は連載中にかなり精神的に追い詰められていたらしく、編集長を呼びつけて嫌味を言ったり、仕事場へ訪ねてきた小学生を怒鳴り追い返しており、後に「大人気なかった」「申し訳ないことをした」と述懐している。

1974年に『週刊少年チャンピオン』誌上に第一回目が掲載された時の最終コマは、友人(友犬?)の栃の嵐に制帽を奪われ逮捕されているというシーンであり、こまわり君の頭はボサボサの髪があらわになっていた。しかし連載が進むにつれ、この第一回目を読んでいないファンの間で「こまわり君の髪型はどうなっているのか?」という話題が盛り上がった。第一回目を読んだ読者からすれば「普通のボサボサの髪型だよ」となるところだが、このミステリアスなブームを長続きさせようと企図した編集部は、チャンピオン・コミックス採録時にこまわり君が制帽を被ったままの最終コマへ変更した。 よって、こまわり君の髪型を確認するには連載初回時の1974年『週刊少年チャンピオン』44号を手にいれる以外にない。

『週刊少年チャンピオン』連載当時の最終回は、通常の一話読み切り型で最終回と思えない終わり方。これは作者が「連載を打ち切らせてほしい」と編集部へ申し出た際、当時の編集長から「いつでも連載を再開できる形で終わらせてほしい」と頼まれ、そのような形になった、とのエピソードがある。1989年にアニメ化された際に、並行して『週刊少年チャンピオン』誌上において月1連載で全12話の『完結編』("がきデカ"ファイナル)が連載され最後はこまわり君が種田山頭火の句と衣装で放浪の旅に出て完結となった。

2009年には、『週刊少年チャンピオン』創刊40周年記念として、同誌19号に描き下ろし新作を掲載。ここでは、「中春こまわり君」のキャラクターが「がきデカ」のキャラクターを演じる、という形式を取っている作中の西城の台詞より

本作品は、水島新司の『ドカベン』(中学・高校編)や手塚治虫の『ブラック・ジャック』と共に1970年代の「週刊少年チャンピオン」の黄金期を築いた。

登場人物

こまわり君

名前の由来は、『小さなおまわり(巡査)』から『こまわり』となった。連載当時は苗字は不明であったが「中春こまわり君」では「山田こまわり」となっている。日本初の少年警察官。

2頭身(連載当初はもう少し大きかった)で、しもぶくれな顔。第1話で夏休みを利用して少年警察官になったと発言しているが、どこで誰がこまわりを少年警察官にしたかは作中で語られていない。ちなみに本人の幼少の頃の写真でも警察官の制帽を被っている。いつもバカでかい警察の制帽をかぶっており、ランニングシャツと派手な水玉模様のネクタイ、制服風のズボンを着用している。顔を実在の人物であらわすと、伊良部秀輝や作曲家の岩代太郎に似ている岩代に関しては、島田紳助から「がきデカ」とあだ名されている。頬の中に白菜や縄がすっぽり入る。高島平近辺に所在するらしい警視庁ねこ自慢警察署所属。シロアリ防除士の資格を持っている事が後に判明している。

「死刑!」「あふりか象が好き!」「八丈島のきょん!」などの意味不明なギャグを連発する。変質少年かつややこしい(この作品世界での「いやらしい」を指す語)性格で、興奮したりするとタマキンがゴムタイヤを溶かすほど高熱を発する。こまわりの母親も含む女性の登場人物は、ことごとく彼のセクハラの餌食にされている。

こまわり七変化としれ人間や動物はおろか、虫にさえも化けることができるが、しもぶくれの顔と2頭身という外見のシルエットだけは変わらないのでバレバレである。よく化けるのは、周囲の人間やクマ・ゾウなどの哺乳類、加藤茶風のハゲオヤジなど。

動物と会話する事が出来るが学業の成績は非情に悪い。栃の嵐の経営する犬猫専門の学習塾に通うものの、授業内容についていけず、更にレベルの低い塾へ転入している。

1975年に葡萄畑というバンドが原作5巻では歌詞も掲載している「恐怖のこまわり君」(作詞:山上たつひこ、作曲:青木和義)という曲を発売し、ヒットした。

外見・性格ともに、同作者の短編ギャグ漫画『さるとび佐助』の主人公がほぼ転用されている。

アニメの声はテレビ版が三ツ矢雄二、ビデオ版は千葉繁。

ギャグ一覧

基本的にそれぞれのギャグにはポーズがある。文章で説明するのは難しいが、たとえば「死刑!」のポーズは、以下に従ってもらうと再現することができる。

  1. ダンディ坂野の「ゲッツ!」のポーズをする。
  2. 体は動かさずに、首を右または左に回し、腕もその方向を指差すように平行移動させる。
  3. 最後に尻もそちらの方向を向くようにする。

『がきデカ』連載当時、子供達は競ってこのポーズのまねをした。

  • 「死刑!」
  • 「ずるむけあかちんこ」
  • 「んが!」
  • 「んぺと」(腕で力こぶを作る様に大腿二頭筋を盛り上げる)
  • 「あふりか象が好き!」
  • 「八丈島のきょん!」
  • 「安宅の関のシオマネキ~」
  • 「鶴居村にツルが来るぅ~」
  • 「なれるとおいしいくさやのひもの」
  • 「わたしモモちゃん!!」(表情、服装、髪型がモモちゃんになる(二頭身と顔の輪郭は全く変わらない))
  • 「銀座ワシントン靴店社長の顔~」
  • 「練馬名物股座納豆」「練馬名物あやつり納豆」
  • 「イヨマンテの夜」
  • 「安寿と厨子王」
  • 「ぺぽかぼちゃ~」「千両二号~」(倉田まり子や松田聖子を見て)
  • 「うし時きょん分きつね秒」(※動物時計。他に「●時◎分○秒」で派生バリエーションあり)
  • 「禁じられた ゼ ゼットォ~」
  • 「にゃおんのきょうふ」
  • 「くまかかか」
  • 「佐渡のタライ舟」
  • 「おりんさん」(何の脈絡も無く、おりんさんという和服女性と文芸映画風の意味不明の寸劇を展開させる)
  • 「王手飛車とりっ!」
  • 「わからんわからんわからんよお~っ」
  • 「とても珍しいニホンカモシカのおしりっ」(下半身がニホンカモシカっぽくなり、相手に尻を見せつける)
  • 「はいはいパパですよ」
  • 「ヒューマンライフこまわり君 海岸通りの糖尿病」(当時の化粧品CMのもじり。友人2人と展開する)
  • 「恋する女のひとりごと」

その他、小ネタ的な各種こまわり七変化も含まれる。

他の登場人物

特に区別せずに記述しているものは、テレビ版のみのキャストを指す。

西城ヨシオ - 古谷徹/ビデオ版は佐々木望
こまわりの同級生。西城秀樹がモデル。通称「西城くん」。ハンサムで学業もスポーツも万能な優等生の少年。本作の主要ツッコミ役だが、時にはかなりのボケをやることも。「中春こまわり君」では「西城良夫」。
木の内モモ子 - 江森浩子/ビデオ版は水谷優子
こまわりの同級生。山口百恵がモデル。通称「モモちゃん」。西城くんのガールフレンド。黒髪のおかっぱ頭で、基本的には真面目な性格の優等生。ツッコミ役が多い。
木の内ジュン - 鳥飼真己子/ビデオ版は松井菜桜子
こまわりの同級生。風吹ジュンがモデル。通称「ジュンちゃん」。モモちゃんの双子の妹。明るい髪色のロングヘアーで、成績は中位。モモちゃんよりも軽めの性格で、軽いボケ役的存在として、こまわりに同調することがたまにある。
福島 - 塩屋浩三
こまわりの同級生。作者のアシスタントがモデルで、こまわり曰く「がばっとしたゴリラ男」で魚屋「魚福」の息子。寒中水泳の授業中に全身火傷を負う。という変わった経歴がある。
亀吉(かめきち) - 龍田直樹
こまわりの同級生。鼻の穴を中心に奇妙な顔パーツのキャラで、手足にポーズをつけながらしゃべる。風呂屋の息子。
あべ美智子 - 勝生真沙子
逆向小学校の教師で、こまわり達の担任。通称・あべ先生。あべ静江がモデル。毎回のように起きるこまわりのセクハラや奇行に頭を痛めている。
清治(せいじ) - 難波圭一
サラリーマンで登場時は大抵スーツ姿、あべ先生の婚約者。あべ先生との「最後の一線」をなかなか越えられない。
義一(ぎいち) - 田の中勇/ビデオ版は青野武
こまわりの父。サラリーマンで基本的には常識人だが、流し台で体を洗うなどこまわり同様の奇行も。「中春こまわり君」では「山田常雄」。
としえ - 向井真理子
こまわりの母。専業主婦、なかなかの美人。
モモ子・ジュンの母 - 増山江威子
夫に先立たれ、女手一つで「木の内洋裁店」を営む。未亡人という境遇がこまわりにとっては恰好の標的であり、彼の繰り出すセクハラにモモ子が鉄拳で反撃するのが定番の展開となっている。
モモ子・ジュンの兄
連載初期のみ登場した為アニメには未登場。坊主頭でアメフト風の服を着ている体育会系の少年。彼の腕っ節を恐れてこまわりが媚びへつらうのを普通に受け入れてしまう単純な性格をしている。
西城正直(まさなお) - 平野正人
ヨシオの父。小説家。ダンディな男性だが妙にこまわりと息が合い、一緒にボケ役に回ることもしばしば。
西城雪子 - 高木早苗
ヨシオの母。専業主婦、しょっちゅう夕飯を食べに来るこまわりへ手を焼いている。
猫又刑事
雪国である某県警察の、かめはまんねん警察署に所属する刑事。顔のパーツは猫そのもの。雪国から東京に凶悪犯を護送する任務で警視庁から派遣されてきたこまわりと同行する予定であったが、結局こまわりが東京まで凶悪犯に護送されるハメになった。当初は一話のみの登場であったが、後にこまわり達の住む区域の警察署へ転勤となり、準レギュラーとなる。府県を越えて転勤している事からキャリア組か?
栃の嵐 - 龍田直樹
元野良犬。犬猫進学塾を経営して大成功を収め、資産家として街の名士の座に収まる。
栃の介 - 冬馬由美
栃の嵐の息子。犬猫大学の建築科に入学し、将来は建築や都市計画プロジェクトに取り組む夢を持つ。
岬 - 拡森信吾
練馬変態クラブ
ブリーフ一枚の姿で突如ポーズをとりながら現われる三人組。

アニメ

テレビ版は1989年10月16日~1990年3月26日にフジテレビ系で放映。ただし、ローカルセールス枠のため未放送または遅れネットとなった地域が大半だった。アニメ化されるのは初めてであったが、連載終了からかなり間が空いた為リメイク的な印象があった。TV放映するにあたり、漫画で見られたような過激な下ネタは抑えられた。

関東地区での放送時間(日本時間)は月曜17時30分~18時だが、この枠は、前番組『パラダイスGoGo!!』(月~金の17:00~18:00)が17:30までに短縮したのに伴い、開いたこの枠に当番組を含む日替わりのアニメ(火=『かりあげクン』、水=『まじかるハット』、木=『たいむとらぶるトンデケマン!』、金=『らんま1/2熱闘編』)を設置したもので、『ティーンズゴールデンタイム』と呼ばれていた。しかし当番組の終了に伴い、残る4つの番組は金曜16:00~18:00に移動して、『金曜アニメランド』となってしまった。だがわずか3ヶ月後に『まじかるハット』が終了し、『ゲゲゲの鬼太郎(第3期)』の再放送に代わったため、『金曜アニメランド』の枠名も廃止された。

スタッフ

  • 原作:山上たつひこ
  • 企画:清水賢治、立川善久(フジテレビ)、若菜章夫(スタジオぎゃろっぷ)
  • 監督:山田雄三
  • 総作画監督:榎本たけあき
  • 美術監督:小林七郎
  • 撮影監督:清水泰宏
  • 音響監督:馬場健
  • 音楽:増田俊郎 、松井忠重
  • 音楽制作:ギャピー・オフィス
  • アシスタントプロデュサー:山崎立士(NAS)、和崎伸之(スタジオぎゃろっぷ)
  • プロデューサー:堀内孝(NAS)、徳永元嘉(スタジオぎゃろっぷ)
  • 脚本:柳川茂、三井秀樹、荒川稔久、照井啓司
  • 演出:辻初樹、岡田聡、落木正文、桜井弘明、仲村時次郎、佐々木浩之、松居仁之、日巻裕二、湖川友謙、池中筒彦、森本晃司、中村主火
  • コンテ:辻初樹、辻本悠、落木正文、池中筒彦、藤森一真、家本泰、青山弘、日巻裕二、湖川友謙、仲村時次郎、桜井弘明、森本晃司、佐々木浩之
  • 作画監督:榎本たけあき、湖川友謙、松本勝次、中村旭良、半田由利、大宅光子、佐藤好春、沢田正人
  • 動画チェック:武田和久、他
  • 動画:オフィス・ネクスト・ワン、他
  • 美術設定:加藤賢司
  • 背景:小林プロダクション
  • 色指定:横井正人、かつまたひろし、他
  • 仕上:オフィス・ネクスト・ワン、他
  • 撮影:スタジオぎゃろっぷ
  • 音響プロデューサー:原田一男
  • 効果:陰山満(フィズサウンドクリエイション)
  • 調整:市川修
  • 録音:タバック
  • 演技事務:青二企画
  • 制作デスク:大塚義雄
  • 編集:瀬山武司
  • 制作進行:小山洋司、他
  • タイトル:マキ・プロ
  • 現像:東京現像所
  • 広報:重岡由美子(フジテレビ)
  • 製作協力:NAS
  • 製作:フジテレビ、スタジオぎゃろっぷ
  • 主題歌 「こまわり・MAM-BO」 作詞:紅玉 作編曲:りゅうてつし 歌:三ツ矢雄二

中春こまわり君

作者の断筆宣言・小説家転向もあり一切こまわり君が描かれることはなかったが、突然2004年に『ビッグコミック』誌上にて江口寿史、泉晴紀、元アシスタントの田村信をアシスタントに従え、2話読み切りで『中春こまわり君』が掲載された。こまわり君達が38歳となり、こまわり君は妻子持ち、西城ヨシオとモモが結婚し子供がいることになっている。また、「金冠生生電器」という会社でこまわり君とヨシオが働いているという設定であった。

『チャンピオン』連載中の読み切りでは、西城がモモを正妻・ジュンを愛人に大金持ちとして裕福な暮らしを送るのに対して、こまわりは婦女暴行の犯人として投獄されその後一人寂しく貧乏な老後を過ごす、という未来をタイムマシンに乗ったこまわり一行が目撃する…といった、『中春こまわり君』とは別の未来も描かれている。

2006年、同誌で3話続編が描かれた。続編ではかつてこまわり君の同級生であった木の内ジュン(2006年版のみ木ノ内ジュン)が2回の離婚を経て現在は独身であり、2番目の夫、業原に騙されて厳しい生活を送っているという設定だった。

2008年1月に同誌にて再び集中連載され、こまわりの両親が登場。ここまではほぼ2年に1回のペースだったが、同年10月より新作が発表、1年に2度新作が掲載されたのは初めてである。

2009年1月、小学館より単行本発売。5月には新作が発表、同時期に『チャンピオン』にも『がきデカ』の新作が発表されている。これ以降、新作発表のペースを早め、現在は不定期ながらもシリーズ連載作品になっている。

登場人物

山田こまわり(やまだ - )
妻子持ちの中年の会社員。勤務先は「金冠生生電器」営業部。奇行は相変わらずだが、基本的には常識を弁えた社会人。子供の頃は傍若無人でパワフルだったが、現在は寄る年波に勝てず、痛風の症状が出るなど体中にがたが来ており、上司の理不尽な命令に従う悲哀を味わう日々を過ごしている。
西城良夫(さいじょう よしお)
こまわりの会社の同僚で、小学時代からの腹を割って話せる幼馴染み。子供の頃は表情豊かだったが、現在は仕事に追われる草臥れた中年男である。
山田圭子(やまだ けいこ)
こまわりの3歳年下の妻。夫の小学時代を忌み嫌っていたが、現在は若干理解している。姑に嫌われているため、夫の両親との同居には難色を示している。
山田登(やまだ のぼる)
こまわりの息子。母親似で、将来は僧侶になろうと考えている。若干老け顔だが今時の若者で、恋人がいる。
西城モモ子(さいじょう ももこ)
西城の妻で二児の母。夫同様、こまわりの幼馴染みで、家族同士の付き合いがある。子供の頃は早熟で過激な面もあったが、現在は落ち着いた平凡な主婦である。
栃の光(とちのひかり)
こまわりの行きつけの居酒屋「日本料理 狛」の店主。認知症の祖父・栃の嵐(とちのあらし)を介護している。妻・夏代(なつよ)との間に息子・浩(ひろし)がいる。
木ノ内ジュン(きのうち - )
モモ子の妹。二度結婚に失敗し、底辺の生活を送る。最初の夫・伊藤園介三郎(いとうえん かいさぶろう)は既に再婚して別の家庭を築いている。二度目の夫・業原幸雄(ごうはら ゆきお)は浮気症のロクデナシで、こまわり達を巻き込んだ殺人未遂事件を仕出かして、服役中。
福島(ふくしま)
こまわりの幼馴染み。魚屋の店主。二児の父。
あべ美智子( - みちこ)
小学時代のこまわり達の担任。こまわりが痛風の診察の為に訪れた病院で再会する。様々な理由から酒に溺れ、かつての面影が無くなっていた。清治(せいじ)とは大分前に離婚している。
山田常雄(やまだ つねお)
こまわりの父。定年退職し、暇な老後を送っている。
山田としえ(やまだ - )
こまわりの母。嫁・圭子の事を嫌っている。
六高寺直久(ろっこうじ なおひさ)
こまわりの妻の弟。「おろちビール」商品開発研究所勤務。父・吉次郎(きちじろう)は『光る風』の主人公・弦の父親に容貌も行動も酷似。自宅の仏壇に『光る風』の光高(みつたか)弦(げん)の遺影がある。

パチンコ

1998年に「CRがきデカ」、2006年に「新CRがきデカ」が、それぞれサンセイアールアンドディから発売された。

「新CRがきデカ」ではこまわり君へ女性声優を充てており、確変大当り時にはアニメの主題歌が流れる。

その他

  • 現在復刻されている単行本では、「トルコ」(という台詞)が「ソープ」に、あべ先生が下着を着用したままシャワーを浴びるなど、様々な修正が加えられている。
  • 『週刊少年チャンピオン』連載当時、CMキャラクターに起用され、何度かアニメ化されたことがある。スピーカーの大きさを売りにしたモノラルラジカセ(松下電器産業「MAC-18(RQ-548)」)のCMで、こまわり君が「男は18センチ!」(声・大竹宏)と叫ぶもの(放送開始直後に「マックは18センチ!」に変更された)

や、「ピタンキー」という菓子のCMで「ピッタピタされたら気持ちええじゃろがっ!」と叫ぶものがあった。

  • アニメ版が放送される以前、同作品が連載中の1978年に、TBSラジオ「夜はともだち」内「ラジオ劇画」にてラジオドラマ化されている。当時、同コーナーではチャンピオン連載作品が次々とラジオドラマされていた。
  • この頃の『週刊少年チャンピオン』連載作には単行本へ収録されないものが多く(『マカロニほうれん荘』や『ブラック・ジャック』などが有名)、本作にも未収録作が存在したが『月刊少年チャンピオン』の連続読み切り『たつひこスーパーフィクション』が単行本になった際、巻末へ『こまわり君』の題名で追加収録された。

脚注