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最新刊『マウス 14』
『マウス―アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語』(マウス―アウシュヴィッツをいきのびたちちおやのものがたり、原題 Maus: A Survivor's Tale)は、アート・スピーゲルマンによる漫画作品(オルタナティヴ・コミック)。ホロコーストの時代を漫画特有の表現を駆使して新しい視点から描き、ピューリッツァー賞を受賞した。日本語版は第1巻が1991年に、第2巻は1994年に出版された。
あらすじ
- 第1巻 副題My Father Bleeds History ISBN 4794923007
- ニューヨークでアメコミ作家として生計を立てていたユダヤ人である作者の父は、アウシュヴィッツから生還した数少ない人間の1人であった。彼の語る戦時下のヨーロッパと現代のニューヨークを行き来しながら、父と子の微妙な関係、戦時下のユダヤ人の緊張と捕らえられるまでが描かれる。
- 第2巻 副題And Here My Troubles Began ISBN 4794961774
- ついに捕らえられた作者の父は、奇跡的にアウシュヴィッツを生き延びて生還する。その一方で、作者の母は精神を病んでしまう。戦争が歪ませた家族のその後と、それを父の口から聞き取り描く作者の苦悩が描かれる。
主な登場人物
- アート・スピーゲルマン
- 作者。ポーランド系ユダヤ人の漫画家。父の体験を作品として残すためにインタビューを行い、その過程で両親との葛藤、迷いが明らかになっていく。第2巻では1巻の成功によりさらなる葛藤を抱え込む過程も描かれる。作中ではベストを着用しており、彼のトレードマークとなっている。
- ヴラデク・スピーゲルマン
- アートの父。戦後にアメリカへ移住したポーランド系ユダヤ人。若い頃はルドルフ・バレンチノのようなハンサムと言われていた。貧しい家庭の出身だったが、頭が良く商才に長けていたので、工場の経営者として成功する。だがドイツのポーランド侵攻により、全てを失い、妻と共に国外逃亡を図るが、騙されてアウシュヴィッツに送られる。才覚と運で生き残ったが、現代では度を超した吝嗇と頑固さで後妻や息子夫婦を悩ませる様子も描かれている。心臓を患っており、幾度となく発作を起こしている。
- アンジャ
- ヴラデクの妻でアートの母。ポーランド系ユダヤ人。裕福な家庭の出身で、学校でも指折りの優等生だったが、長男リチュー出産後には鬱病を患うなど神経質な性分でもあった。夫と共にアウシュヴィッツから生還を果たしたが、1968年に遺言も残さず自殺した。作中に挿入されたコミック『地獄惑星の囚人』の中でこの事について触れられている。
- マーラ
- ヴラデクの再婚相手。ポーランド系ユダヤ人。戦前からの夫妻の共通の友人で、同様に収容所からの生還者。ヴラデクのあまりの倹約家ぶりに悩まされている。
- フランソワーズ
- アートの妻。フランス人だが、結婚に伴い、ユダヤ教に改宗している。夫同様、舅に振り回されている。ボーダー柄のVネックTシャツにスカーフがトレードマーク。
- リチュー
- ヴラデクとアンジャの長男、アートの兄。1937年生まれ。後に戦争を恐れた両親によって叔母の元に預けられるが、収容所行きを恐れた叔母の無理心中により死亡。第2巻冒頭には献辞と共に彼の写真が掲載されている。
表現上の特徴
作品中では、現代ニューヨークも回想中のヨーロッパも、人種毎に異なった動物で描かれている。この表現には無論、ねずみ取りをナチスの人種隔離政策に重ね合わせる隠喩の意味がある。
各人種表現は以下の通り。
- ユダヤ人・・・鼠。
- ドイツ人・・・猫。
第2巻後半でドイツ人女性とユダヤ人男性の夫婦が描かれるが、妻は縞猫、二人の間の子供は縞模様の鼠となっている。
- ポーランド人・・・豚。
- アメリカ人・・・犬。
肌の色によって異なる犬種となる。白人系は白犬でアフリカ系は黒犬となっている。
- フランス人・・・蛙。
フランス人は英語でfrogsとも呼ばれる。
- スウェーデン人・・・トナカイ。
第2巻に登場。実際のトナカイと異なり、女性にも角が生えている。
- ロマ・・・蝶。
- イギリス人・・・魚。
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