一球さん/水島新司
著者: 水島新司
巻数: 6巻
最新刊『一球さん 6』
『一球さん』(いっきゅうさん)は、水島新司の野球漫画。週刊少年サンデーで連載されていた(1975年 - 1977年)。
概要
巨人学園高校野球部に突然入部してきた男、真田一球(さなだ いっきゅう)。彼は実は忍者の子孫であり、抜群の運動神経を持つが、なんと野球のことをまったく知らないのだった。破天荒な彼のプレーが、巨人学園に大波乱を巻き起こす。
本作は『男どアホウ甲子園』の直接の続編。前作終了から一ヶ月で連載がスタートした。時系列的には藤村甲子園の南波高校時代から七年後で、豆タンこと岩風五郎が巨人学園の監督として登場しているほか、藤村甲子園や丹波左文字、甲子園の弟である球二と球三も南波高校の一員として登場している。
『大甲子園』では巨人学園が再登場し、明訓高校と対戦している。2005年、『ドカベン スーパースターズ編』において、真田一球と呉九郎が東北楽天ゴールデンイーグルスに入団、再々登場した。
話の流れは『男どアホウ甲子園』→『一球さん』→『大甲子園』→『ドカベン スーパースターズ編』となる。
登場人物
巨人学園高校
- 真田一球
- 声 - 水島裕
- 主人公。右翼手、三塁手、投手ほか。右投右打。
- 呉九郎
- 声 - たてかべ和也
- 捕手、外野手。一球の幼馴染。
- 一球を追って上京し、巨人学園野球部に入部する。一球と同じく野球は全くの素人で、一球以上に野球のルールを知らない。語尾に「だーよ」と付けるのが口癖。頑丈な体を持ち、バットがうまく使えないので代わりに拳骨で守備練習のノックをする。
- 『大甲子園』では山田太郎の影武者を演じるが技量的にはかなり及ばなかった。
- 『ドカベン スーパースターズ編』では一球と共に東北楽天ゴールデンイーグルスに入団した。
- 大友俊
- 声 - 曽我部和行
- 投手。巨人学園のエース。
- 一球入学当初は、プロも注目するエースで女生徒からも絶大な人気を誇っていた。能力は高かったが傲慢であり、しばしば自らピンチを招くことも多かった。また、精神的にも脆い部分が多々あった。
- 野球素人の一球がもてはやされるのに嫌気が差し、「大友さんは僕の憧れです」と純粋に語る一球を疎ましく思っていた。「松竹梅地獄のクリーンナップ」との野試合でメッタ打ちを喫した後、すさんだ生活を送り、咎めに来た一球をドスで刺そうともする。神宮大学附属高校との対戦後に野球部を集団で退部したが、一球以外の主力不在のまま出場した、夏の甲子園大会の対南波高校戦で、あと一歩で勝利を逃した試合を観戦して愕然とする。
- 堀田三吉
- 声 - 古川登志夫
- 中堅手、二塁手(『大甲子園』では三塁手※岩鬼正美の影武者)。このポジションではきわめて珍しい左投げ。「三球士」の一人。
- 関西弁を操り、ヘルメットに刺した鳥の羽がトレードマーク。典型的な商売人で「ヒット1本で幾らくれる?」などとの給う時もある。また、驚異的な俊足を誇っている。大友らとの確執で、一時野球部を辞めたが『大甲子園』で復部した。甲子園での一球の活躍を観て「また、一緒にやりたくなった」と語っており、復部への伏線は描かれていた。
- 『大甲子園』では、酒に溺れていたところを五味に見付けられ、何とか試合に駆けつける。岩鬼への影武者作戦に対しては「堀田と岩鬼は元から同じ様な性格」として詳細は伝えておらず、また本人も意識してなかった。
- 司幸司
- 声 - 古谷徹
- 捕手(『大甲子園』では左翼手※微笑三太郎の影武者)。「三球士」の一人。
- 自分は女性にモテると自信があるようで、当初は女性との注目を一心に浴びていた大友にライバル心を燃やしていた。一軍と二軍の紅白戦および鬼桜男子高校戦で投手を務めた事もある。大友らとの確執で、一時野球部を辞めたが『大甲子園』で復部した。
- 一角志郎
- 声 - 滝雅也
- 一塁手、外野手(『大甲子園』では一塁手)。「三球士」の一人。
- 巨体通りのパワーヒッター。右投げ右打ちだが、『大甲子園』では、右目の視力の良さと右手の握力を買われ、一球によって左打ちに変更されていた(主な理由は明訓高校の上下への影武者作戦のため)。
- 普段は大人しいが、たまに切れる。また、精神的に脆い。作品のオープニングを飾る神宮大学との試合では、五味のビーンボールに切れ、豪快なホームランを放った。妹の病気が理由で、対恋ヶ窪商業高校戦後に退部したが、『大甲子園』では予選から復活していた。
- 佐藤万次郎
- 一塁手。4番打者。左打ち。
- 相当な強打者で、作中何度もその豪打を見ることができるが、他のレギュラーメンバーと同様に最後は一球に反発して野球部を集団退部する。意外と情に脆いところがあり、友西高校の貧窮ぶりや、一角が離脱した際の理由を聞いたときにその辺が見られる。
- 島本圭二
- 外野手。一軍と二軍の紅白戦において、原島監督からの指示で、三塁守備の一球を得意のスライディングスパイクで負傷させようとしたが、かわされて逆に自らが骨折する。
- 蔵石民夫
- 声 - 竜田直樹
- 三塁手。
- 岩崎清
- 遊撃手。
- 小倉康
- 声 - 三橋洋一
- 捕手。元はレギュラー組だったが、司の加入後に二軍落ちした。弁強高校戦では唯一の甲子園経験者として意地のサヨナラホームランを放つ。
- 文六
- 声 - 松岡洋子
- 右翼手兼マネージャー。運動センスが皆無のため「フヌケの六」と嘲笑されていた。一球たちには好意的。対南波高校戦では右翼を守り、勝敗を分ける鍵となる。
- 岩風五郎
- 声 - 野島昭生
- 野球部監督。かつては捕手として藤村甲子園の球を受けていた。原島との勝負に勝ち、二軍監督から一軍監督となる。体育教師と野球部監督を兼任。甲子園出場を決めた後、監督を真田一球に託す。
- 原島
- 声 - 矢田耕司
- 野球部一軍監督。後にヘッドコーチとなる。
- 一球の才能をいち早く見抜き、一軍と二軍の紅白戦では、一軍メンバーに一球を狙い打ちするよう指示を出す。当初は岩風とは険悪であったが、その後協力的になった。
- 住吉
- 声 - 永井一郎
- 巨人学園理事長。普段は橋の下の掘建て小屋で生活している。一球および三球士を巨人学園野球部にスカウトした。
ライバル達
神宮大学付属高校
作中の大学野球の強豪・神宮大学の付属校だけあって、強固な練習体制が整っている名門校。
- 五味連次郎
- 声 - 木原正二郎
- 投手。「剛球戦闘機」の異名を持つ左腕エース。最初は制球難の弱点があったが兄・連太郎の猛特訓で克服。いつも威勢良い振る舞いをしているが、精神的に脆い一面があり、幼い頃は「泣き虫連次郎」と呼ばれていた。
- 『大甲子園』では、行方をくらましていた堀田を見つけ出して甲子園に送り、スタンドで観戦していた。
- 別当
- 声 - 永井一郎
- 一塁手。神宮高校の主砲。文六曰く「田淵」。
- 信国
- 投手。降板した五味をリリーフした軟投派。
鬼桜男子高校
硬派な雰囲気がある男子校。かつては大友に無安打無得点で敗退したことがあるが、攻撃力を格段に上げて復活。但し、守備力に難あり。
- 丑松
- 声 - 加藤修
- 一塁手。「松竹梅地獄のクリーンナップ」の1番打者。大男。大友に「こって牛」と呼ばれる。
- 竹之丈
- 二塁手。「松竹梅地獄のクリーンナップ」の2番打者。パーマ風のくせっ毛。「人情として~」が口癖。
- 梅吉
- 遊撃手。「松竹梅地獄のクリーンナップ」の3番打者。
- 桐野
- 声 - 田中崇
- 三塁手。「地獄のエース」と呼ばれているがなぜか三塁手。4番打者。ドカベンの影丸隼人に酷似。
- 花園
- 投手。「豆ころエース」。チーム一小柄だが被本塁打0を誇る。
恋ヶ窪商業高校
一球をして「軍隊みたい」と言われる規律に厳しく、統率の取れたチーム。
- 明智
- 女子マネージャーだが知略に優れ、実質的にチームの采配を振るう。対戦する巨人学園の弱点を探るために潜入、男子生徒に変装していたことで図らずも一球の弱点を探り当てた。一球をして「くのいち」といわせた。地方大会組合せで初登場したとき、なぜか名字が違っていた。
- 江本
- 主将。恋ヶ窪の4番打者。その実力は大友でさえ認めている。
- 順光
- 投手。抜群のコントロールを誇るが、ノミの心臓の持ち主。
弁強高校
進学校。
- 中沢
- 声 - 三ッ矢雄二
- 投手。変則フォームによる遅球で巨人学園に思わぬ苦戦を強いる。
友西高校
非常に貧しい学校であり、野球部もヘルメットはひとつだけ、バットは手作りなど貧窮を極める。選手に実在するプロ野球選手の名前を名乗らせている。
- 三ツ縞
- 声 - 辻村真人
- 監督。貧乏ながらもそれを苦にしないしたたかな采配をみせ、巨人学園を苦戦させた。
- モデルは作者本人。
南波高校
『男どアホウ甲子園』の主人公、藤村甲子園と岩風監督の母校。夏の甲子園大会の初日第一試合で巨人学園と対戦する。『大甲子園』では坂田三吉率いる通天閣高校を抑えて夏の甲子園大会に出場。
- 藤村球二
- 投手。藤村甲子園の弟で、双子の兄。3年間通算360イニング無失点の左腕。
- 藤村球三
- 捕手。藤村甲子園の弟で、双子の弟。3年間通算40本塁打のスラッガー。
その他
- 五味連太郎
- 声 - 飯塚昭三
- 五味連次郎の兄。連次郎を遙かに上回る剛球の持ち主で、神宮大学の左腕エース。元祖「剛球戦闘機」。弟・連次郎に対して厳しく接するが、その心情を最も理解している。
- 芦田麗子
- 声 - 川島千代子
- 巨人学園の生徒。芦田財閥の令嬢。一球に好意を寄せる。
- ヤスタケ
- 声 - 野沢雅子
- 一球と親交のある少年。一球のほうが年上だが、野球に関してはヤスタケのほうが知っており、一球にとっては小さな師匠のような位置づけ。
- 対友西高校戦で一球が外野フライを捕ったとき、タッチアップのルールを知らない一球に対し、バックホームするように外野席から大声で指示した。
- ミチ
- 声 - 高木早苗
- ヤスタケの妹。
- 丹波左文字
- 一球の養父。岩風や甲子園のかつてのチームメイトでもある、隻眼隻腕の男。
- 富士山麓の山小屋に五味兄弟の訪問を受け、彼らに一球の生い立ちを語る。
- 藤村甲子園
- 『男どアホウ甲子園』の主人公。7年前、「剛球一直線」のエースとして南波高校を甲子園優勝へと導いた伝説の投手。現在は引退しており祖父・球乃進と共に甲子園球場のグランド整備員として生計を立てている。『大甲子園』にも登場したが整備員の仕事は続けていた様である。
テレビアニメ
1978年4月10日 - 10月23日まで毎週月曜日19:00 - 19:30の時間帯においてフジテレビ系で放映された。全26話。
『ドカベン』『野球狂の詩』に続く、水島&日本アニメーション(以降「日アニ社」)アニメの第3弾だが、裏番組に『ルパン三世(新)』(日本テレビ系)が放送されているため振るわず、打ち切りとなった。そのため、原作のあるエピソードの途中までで物語は終わっている。作詞家として名を馳せている荒木とよひさが作曲に回っているのも特徴。
当番組の終了により、『ブロッカー軍団IVマシーンブラスター』(1976年)以来続いた日アニ社路線は一旦中断となった
スタッフ
- 製作:本橋浩一
- 脚本:松岡清治、中西隆三、大島武富、みついでこういち
- 演出:福冨博
- 演出助手:滝沢敏文、森脇真琴
- コンテ:升ますか 他
- 作画監督(キャラクターデザイン):本多敏行、富永貞義
- 美術監督:工藤剛一
- 美術設定:川本征平
- 撮影監督:小山信夫、清水達正
- 音楽:丸山雅仁、荒木とよひさ
- 録音監督:松浦典良
- 編集:越野寛子
- プロデューサー:大場伊紘、別紙壮一
- 制作担当:シンエイ動画
- 企画:日本アニメーション
- 制作:日本アニメーション、フジテレビジョン
主題歌・挿入歌
- 主題歌
- OP「青春の歌が聞こえる」(作曲・歌:荒木とよひさ)
- ED「一球さん」(作曲:荒木とよひさ 歌:堀江美都子)
- 2曲共に、作詞:保富康午、編曲:丸山雅仁。
- 挿入歌
- 「一球入魂」
- 「とんでけ!カッキーン」
- 2曲共に、作詞:保富康午 作曲:荒木とよひさ 歌:こおろぎ'73。
放映リスト
- 一球登場
- 一球初打席
- 一球と三球士
- 一球対剛速球
- 一球猛進
- 一球豪打
- 一球頑張れ
- 唸れ一球
- 一球大特訓
- 一球走塁
- 一球強襲
- 一球大跳躍
- 一球絶叫
- 一球有情
- 一球一路
- 一球伝授
- 一球不敵
- 一球無二
- 一球讃歌
- 進め一球
- 一球に魂こめて
- 投げる一球打つ一球
- 一球に夢かけて
- この一球に悔いなし
- めざせ!栄光の一球
- 一球の詩が聞こえる