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風の谷のナウシカ/宮崎駿

共有

著者: 宮崎駿
巻数: 7巻

宮崎駿の新刊
風の谷のナウシカの新刊

最新刊『風の谷のナウシカ 7



twitterでのコメント (関係ないのに引っかかることもあります...)

Pz27 『風の谷のナウシカ』は漫画版を全部読んだ人と、劇場版しかみて居ない人の間で、かなり認識に乖離が生じる作品なのだよなぁ…… 漫画版は二重の失楽園が有り、ある意味で『善悪の彼岸』等の虚無主義への「人間主義的回答」でもある。 (私は、全面賛同はできないが、漫画版が好き)
coiifeur2002 RT @Qrais_Usagi: 今、ヒグチユウコさんと王蟲を記憶スケッチ合戦してます。BGMはもちろん「風の谷のナウシカ」。 https://t.co/nEnJZAuaGO
gwe32NoWVZuz7a3 アニメ絵本音読の機会を得て、『風の谷のナウシカ』というひとつの作品でありながら、映画・漫画・活字・音読と網羅して。 それぞれに、「伝わり方の違いとその良さ」があって、どれも良いんだなあと改めて思いました。 (*^^*)
awaw54 「風の谷のナウシカ」は漫画家メビウス[40]の『アルザック』に強い影響を受けている。 宮崎駿監督自身、メビウスと対談したときに語っていたそうです。
thoujipo 風の谷のナウシカ【Blu-ray】 [楽天] http://t.co/giMVJTBR0K #rbooks http://t.co/MZlcm6CA8M

風の谷のナウシカの既刊

名前発売年月
風の谷のナウシカ 5 0000-00
風の谷のナウシカ 6 1993-12
風の谷のナウシカ 7 1995-01

風の谷のナウシカ』(かぜのたにのナウシカ)は、徳間書店のアニメ情報誌『アニメージュ』に連載された宮崎駿の漫画作品、および1984年に劇場公開された宮崎駿監督のアニメ映画作品、及び同映画のシンボル・テーマソング(イメージソング)の曲名である。

概要

漫画作品は、アニメージュ誌上で1982年に連載が開始され、1994年に終了した。その間、映画制作などのため何度か休載している。多忙を極めた宮崎駿が連載を維持するために、鉛筆原稿のまま雑誌掲載された回もある。単行本の発行部数は累計1200万部本屋さんもジブリでいっぱい! 「崖の上のポニョ」公開記念フェア開催中、徳間書店、2008年7月17日。

映画作品は、単行本全7巻の漫画全体から見ると序盤に当たる2巻目の途中まで連載された時点での作品であり、映画公開後に連載を再開した漫画とは内容が異なる。

漫画版は第23回日本漫画家協会賞の大賞を受賞、8ヶ国語で翻訳・発売されている。映画版も各賞を受賞した監督であり原作者である宮崎は、漫画作品の途中までしか描かれていない映画作品を不完全な作品とし、あまり自身で評価していない(叶 (2006)、pp.72-73)。1997年に公開された宮崎駿監督作品『もののけ姫』は、テーマが本作の延長線上にあり比較される事もある。

あらすじ

極限まで発達した人類文明が「火の七日間」と呼ばれる最終戦争を引き起こし、瘴気(有毒ガス)が充満する「腐海」と呼ばれる菌類の森や獰猛な蟲(むし)が発生した。それから千年余り、拡大を続ける腐海に脅かされながら、わずかに残った人類は、古の文明の遺物を発掘して利用しつつ、細々と生きていた。

腐海のほとりにある辺境の小国「風の谷」は、大国トルメキアの戦乱に巻き込まれる。風の谷の族長ジルの娘であるナウシカは、運命に翻弄されながらさまざまな人々と出会い、自分自身と世界の運命、太古より繰り返されて来た人の営みに向き合い、大国と小国、そして腐海と人類との共生の道を探っていく。

作品の背景

いくつかの宮崎駿作品に見られる、自然と科学文明の対立、文明の破壊と再生がテーマとされ、公害や自然破壊などの環境問題や族内紛争、戦争への批判という側面がある。

漫画版では物語序盤に提示されていた自然と科学技術の対立という構図が、後半ではより複雑な構図に変化していった。宮崎は、この作品を結ぶにあたり影響を受けた事件としてユーゴスラビア内戦を挙げ、「あれだけひどいことをやってきた場所だから、もう飽きているだろうと思ったら、飽きてないんですね」「戦争というのは、正義みたいなものがあっても、ひとたび始めると、どんな戦争でも腐ってゆく」「インタビュー 物語は終わらない 宮崎駿」、『よむ』1994年6月号。と述べており、これを物語終盤に反映させた。

宮崎は、主人公ナウシカのモデルとして日本の古典文学である堤中納言物語に登場する「虫愛づる姫君」を挙げている。名前はギリシア神話に登場する王女ナウシカアに由来する(オデュッセウスの項目を参照)漫画第1巻作者あとがきより。

1983年講談社発行「宮崎駿イメージボード集」には、「風の谷のヤラ」と題するスケッチが収録されている。

物語のモデルとなった場所は明確にされないが、漫画版では旧世界の産業文明が発生した場所をユーラシア大陸の西、つまりイギリス周辺としている。また、宮崎は風の谷のイメージを「中央アジアの乾燥地帯なんです」と発言し『COMIC BOX』1984年5・6月号の対談、腐海のモデルはウクライナ、クリミア半島のシュワージュ:en:Syvashシュワージュ、シバスとも読まれる。としている『風の谷のナウシカ 宮崎駿水彩画集』、徳間書店、1996、p.149。。オーストラリアがモデルとされたこともあるが、スタジオジブリは否定している。辺境の国々の原形として古エフタル王国という名前が出てくるが、歴史上の中央アジアの遊牧民にも、言語などが謎に包まれたエフタルと呼ばれる民族が存在した。また、トルメキア第三皇女のクシャナであるが、インド北部に生まれたクシャナ朝の名前を受けていると考えられる。

単行本

宮崎駿 『風の谷のナウシカ』 徳間書店〈ANIMEGE COMICS ワイド判〉、全7巻

  1. 1983年7月1日発行 ISBN 978-4197735815
  2. 1983年8月25日発行 ISBN 978-4197735822
  3. 1984年12月1日発行 ISBN 978-4197755141
  4. 1987年3月1日発行 ISBN 978-4197775514
  5. 1991年6月30日発行 ISBN 978-4197710614
  6. ISBN 978-4197731206
  7. 1995年1月15日発行 ISBN 978-4197700257
  • 7巻全部一緒に購入したら、特製箱入りが付き、箱入りは二種類あり、2002/8/25からはピンク地の箱入り ISBN 978-4192100021、2003/10/31からは青地.宮崎駿の水彩画「トルメキア戦役」で彩った箱入り ISBN 978-4192100106。いまはトルメキア戦役の箱入りだけ買える。
  • 第1巻のみ、表紙が、三種類あり
  1. 初刷の版、表紙が〈アニメージュ増刊〉と表記、デザインもワイド判と若干違う。
  2. 初期の版(2刷以降)、表紙が〈ANIMEGE COMICS ワイド判〉と表記、デザインも今と同じ、しかし「新装版」という文字が入り。
  3. 今の版。

風の谷のナウシカ 豪華装幀本、全2巻

  1. 上巻 1996年11月30日発行 ISBN 978-4198605612
  2. 下巻 1996年11月30日発行 ISBN 978-4198605629
  • 7巻ワイド判の総集編.愛蔵版、上巻が第1.2.3.4巻を収録、それぞれ第1章「風の谷」、第2章「酸の湖」、第3章「土鬼戦没」、第4章「破局へ」と命名し、下巻が第5.6.7巻を収録、それぞれ第5章「大海嘯」、第6章「青き地」、第7章「墓所」と命名。

漫画連載から映画化までの経緯

アニメージュ編集部では、宮崎の監督作『未来少年コナン』、『ルパン三世 カリオストロの城』を通じて、まだ無名だった宮崎の才能に着目しており、1981年8月号には「宮崎駿特集」を掲載していた。

当時の宮崎は、アニメ制作会社テレコム・アニメーションフィルムに在籍しており、『ルパン三世 カリオストロの城』の監督を務めた後、『リトル・ニモ』の準備とイメージボードの作成、イタリアとの合作である『名探偵ホームズ』の演出などを担当していた。この時点では両作品共に一般公開される目処が立っていなかったことに加え、自ら『もののけ姫』などのアニメ化企画を提出したが会社には採用されなかったため、自分が関わった作品が世に出ない事に不満を抱えている状態だった。

「宮崎駿特集」担当編集者の鈴木敏夫は宮崎に漫画連載を依頼し、渋る宮崎を口説き落とした。漫画の依頼に対し宮崎は、『戦国魔城』というアニメ化前提の企画を提出したが、徳間書店側は傘下の映画会社大映に原作が存在しないことを理由の一つとして、この企画を却下している。『ナウシカ』の連載は、1982年1月発売の1982年2月号から開始された。結果的にアニメ化を前提としないマンガ作品を描くことになったため、宮崎は当初、「漫画として描くならアニメーションで絶対できないような作品を」と意図していた叶 (2006)、p.40。

その後、宮崎は『ニモ』を降板、1982年11月にはテレコムを退社してフリーとなり、一時『ナウシカ』の漫画連載が唯一の仕事となる。この状況を知った尾形英夫アニメージュ編集長は、同誌の主催するイベント「アニメグランプリ」で上映する短編としてのアニメ化を提案し、宮崎も了承したが結局実現しなかった。次にOVAの企画があがったが、これも採算が合わないとして消滅した。宮崎は「どうせ作るなら劇場用長編に」と提案し、尾形が徳間書店社長の徳間康快の承諾を得たことで『ナウシカ』の劇場用長編アニメ映画化構想が始動した。広告代理店大手の博報堂に宮崎の弟が勤めていたのも原動力となり、映画化構想が実現することになる。

アニメーション映画

概要

徳間書店と博報堂による製作委員会方式で梶山寿子『ジブリマジック――鈴木敏夫の「創網力」――』講談社、2004年、p.33アニメ映画化され、全国の東映洋画系で1984年3月11日より劇場公開された。アニメーション制作はトップクラフトが担当した。

環境問題をテーマの一つに盛り込んでいたこともあって、朝日新聞のコラム「天声人語」で取り上げられる『朝日新聞』、1985年1月8日。 など、従来のアニメ映画の枠を越える評価を受けた。91万人の観客を動員し、配給収入は約7億円。複数の映画賞を受賞し、アニメーション作家としての宮崎駿の知名度を引き上げた作品となった。

サウンドトラック『風の谷のナウシカ』(ANL-1020)はオリコンLPチャートで最高8位『オリコン・チャートブック LP編 昭和45年-平成1年』オリジナル・コンフィデンス、1990年、332頁。ISBN 4871310256を記録した。

映画版では、演出上の理由からナウシカが王蟲の群を止めるため王蟲の暴走に巻き込まれるエピソードなどが加えられている。これについて宮崎は、映画を宗教的な画面にしてしまったことへの想いから、宿題が残った映画であると発言した押井守は『映画 風の谷のナウシカ GUIDE BOOK』で、演出で強引にラストへと持っていったことに関して「あそこは納得できません」としている。

映画版には、大国トルメキアと対立する土鬼諸侯連合(ドルク)が登場しない。映画版ではナウシカが伝説の救世主的キャラクターとして描かれるが、その後に連載された漫画版ではそのような記述は抑えられている。

同時上映は、『名探偵ホームズ』の「青い紅玉(ルビー)の巻」と「海底の財宝の巻」の2作品宮崎が1982年にテレコム・アニメーションフィルム在籍時に演出として参加していながらお蔵入りになっていたもので、宮崎の手がけた短編6作品のうちの2作品。後のテレビシリーズとは声優など細部で異なる点がある。

映画完成後、トップクラフトを改組する形でスタジオジブリが設立され、以降の宮崎と高畑勲の長編アニメーション映画を制作する拠点となった。

2010年7月に『映画 風の谷のナウシカ GUIDEBOOK 復刻版』が徳間書店から発売されるとともに、『風の谷のナウシカ』のブルーレイディスクがウォルト・ディズニー・ジャパンから発売された。

日本テレビ系列の「金曜ロードショー」では1~2年に1度の割合で放送され、放送回数は13回を数えるこれまでの放送履歴は1986年4月25日、1988年7月22日、1990年9月28日、1992年7月17日、1994年3月18日、1996年3月8日、1997年7月4日、2000年2月11日、2002年1月11日、2004年1月16日、2006年2月3日、2008年6月6日、2010年2月19日。これは「金曜ロードショー」最多である。

制作体制

映画製作にあたっては、宮崎の漫画を連載していた『アニメージュ』を発行する徳間書店が中心的な役割を果たした。当時、徳間グループは大映を傘下に抱えていたが、アニメへの理解とノウハウがなかったため、大映は製作に関与せず、グループ総帥である徳間康快指揮の下、徳間ジャパンなども含めたグループ総動員で宣伝活動がなされている。

映画は1983年になって始動し、同年5月、プロデューサーに高畑勲が選ばれる。長年宮崎と仕事を組んで来た仲間であり、宮崎の指名によるものだった。当初、自分はプロデューサー向きではないと渋ったものの、徳間書店の鈴木敏夫の説得により受諾し鈴木 (2005)、p.72。鈴木 (2008)、p.42。 最初に高畑にプロデューサー就任を断られたとき、宮崎は酒席で「高畑に全青春を捧げたのに」と涙を流したという(鈴木(2008)、p.41)。、8月から作画に取りかかる。制作拠点となったのは、宮崎や高畑の東映動画時代の同僚である原徹たちが運営し、主に海外合作を手がけていたトップクラフト。ここに宮崎らはフリーで参加するという形を取る。当初、宮崎らは、東京ムービー傘下のテレコム・アニメーションフィルムか日本アニメーションを制作母体とすることを考えていた叶 (2006)、p.42。テレコム社は長編アニメーション制作を目的に設立された会社で「ルパン三世 カリオストロの城」もここで制作された。宮崎や高畑は籍を離れたとはいえ、大塚康生などかつての仲間たちも在籍している。宮崎の考える制作環境としてはうってつけだったが、同社は『NEMO/ニモ』の準備に忙しく、一部スタッフが手伝い程度に参加するに留まった。

本作には、それまで宮崎と付き合いのなかった新しい顔ぶれのスタッフも多数参加している。宮崎や高畑が要求する高いレベルのスタッフがトップクラフト内だけでは不十分だったこともあり、2人が過去に関係した人材のみならず、尾形英夫ら「アニメージュ」関係者も、取材を通じて知った人材などをスカウトしてスタッフが集められた。本作で原画で参加したトップクラフトのアニメーターは4、5人程度で、原画マンも動画として参加させるほどスタッフを淘汰していたという『この人に話を聞きたい』(小黒祐一郎著、p415の渡部高志の発言)

タツノコプロ系のなかむらたかしや中村光毅、テレビ時代の東映動画の中心アニメーターであるOH!プロダクションの小松原一男、金田パースという独特の作画で人気だった金田伊功、後に『新世紀エヴァンゲリオン』で名を馳せる庵野秀明などが集結している。金田は、その後ジブリと宮崎アニメを支える有力スタッフとなり、1997年の『もののけ姫』まで連続して参加したが、本作では人物にパースを付けすぎて、宮崎に大幅に手直しされた。庵野は作品ラストの巨神兵のシーンの原画を担当したが、人物作画が出来ず丸や記号だけで済ませて宮崎に任せてしまったり、宮崎の指示に不満があってタイムシートを勝手に書き換えたと述懐している。宮崎が絵コンテを仕上げるスピードが遅かったために、それに応じて作品の規模は縮小している。

映画化にあたってイメージガールが募集され、後に女優となる安田成美がグランプリを獲得して、松本隆作詞、細野晴臣作曲の『風の谷のナウシカ』2007年に発売された『細野晴臣トリビュート・アルバム』で坂本龍一と嶺川貴子のコンビでカヴァーされている。を歌った。同曲は、当初、主題歌となる旨が発表されていたが、宮崎と高畑が本作の内容と楽曲の乖離等の理由に反対し、劇中本編で使用されることはなかった。しかし、映画プロモーション用のイメージソングとしてEDタイトルには刻まれている叶 (2006)、p.61およびp.63

音楽では、後の宮崎作品にも関わっていく久石譲が初めて参加している。当初、久石は映画に先行して発売されたイメージアルバムの担当で、映画の劇伴音楽は前述の安田成美の主題歌を担当した細野が担当する予定であったが、宮崎と高畑が久石のイメージアルバムを気に入ったため、本編の音楽にも起用され、主題歌のみが存在することになった。久石のイメージアルバムへの起用はレコード会社の推薦で、それまで宮崎も高畑も久石の予備知識は何もなかったとされる。本作品以降も、宮崎アニメと久石譲による音楽の組み合わせは続いた。映画で使われている「遠い日々」は、当時4歳だった久石の娘、麻衣が歌っている。

海外版

『風の谷のナウシカ』には、『Warriors of the Wind(風の戦士たち)』という題になっている改変バージョンが存在しており、1985年に米国のニューヨークのみで短期間劇場公開されている。これは低予算映画で知られるロジャー・コーマンが創立したニューワールド・ピクチャーズ社の配給であり、単純明快な勧善懲悪、ヒロイック・ファンタジーを好むと思われた米国市場に合わせるべく、腐海の浄化作用などの設定やナウシカの過去に関する描写は省かれ、日本で116分だった上映時間は95分に短縮された。またナウシカが「ザンドラ姫」となっているなど、登場人物の名前もほとんどが改変されている。このバージョンを知らなかった宮崎は、朝日新聞1985年9月17日夕刊「いまアニメの時代」の連載3回目を読んで初めて知り叶 (2006)、p.67。、無断で改変されたことに激怒、結果的にこの改変を許してしまった徳間書店側は宮崎に謝罪したとされる。

『Warriors of the Wind』は同年にVHSビデオで発売されている。その後南アメリカやヨーロッパに二次輸出され、アルゼンチン、イギリス、スペイン、フランス、ドイツなどで改変された内容のままVHSがリリースされた。フランスではVIP Internationalから『Le Vaisseau Fantôme』(幽霊船)の題で、Blue Kid's Videoから『星のプリンセス(La Princesse des Etoiles)』の題で発売された叶 (2006)、p.68。海外版ナウシカの紹介ページ

その後ディズニー配下のブエナビスタ・インターナショナルがビデオ配給の権利を得て、改変が施されていないオリジナルバージョンが各国に配給されるようになった。2005年にDVDで発売されたナウシカの完全英語版Nausicaa of the Valley of Wind (www.allmovie.com)は、同年アメリカで最も売れた日本アニメDVD作品となっている。またこのバージョンはカンヌ国際映画祭のカンヌ・クラシック部門でも上映され、フランスでは劇場公開が行われた。

キャッチコピー

少女の愛が奇跡を呼んだ」とのキャッチコピーが使われている。これは映画宣伝会社メイジャーの宣伝プロデューサー徳山雅也によるもの叶 (2006)、p.63。

声の出演

キャラクター !日本語版 !英語版
ナウシカ |島本須美 |アリソン・ローマン
アスベル |松田洋治 |シャイア・ラブーフ
カム・クラーク(Warriors of the Wind版)
クシャナ |榊原良子 |ユマ・サーマン
ユパ |納谷悟朗 |パトリック・スチュアート
大ババ |京田尚子 |トレス・マクニール
クロトワ |家弓家正 |クリス・サランドン
ジル |辻村真人 |マーク・シルヴァーマン
ミト |永井一郎 |エドワード・ジェームズ・オルモス
ゴル |宮内幸平 |フランク・ウェルカー
ギックリ |八奈見乗児 |ジェフ・ベネット
ムズ |辻村真人 |ジェームズ・アーノルド・テイラー
ニガ |矢田稔 |マーク・シルヴァーマン
ラステル |冨永みーな |エミリー・バウアー
ペジテ市長 |寺田誠 |マーク・ハミル
ラステルの母 |坪井章子 |ジョディ・ベンソン
トエト |吉田理保子 |
少年 |坂本千夏・TARAKO・鮎原久子 |
少女 |菅谷政子・貴家堂子・吉田理保子 |グレイス・ロレク
コマンド |水鳥鉄夫 |
トルメキア兵 |野村信次・大塚芳忠 |
ペジテ市民 |中村武己・島田敏 |
ペジテの少女 |太田貴子 |アシュレイ・ ローズ・オル
ナレーター | |トニー・ジェイ

スタッフ

  • 原作・脚本・監督:宮崎駿
  • プロデューサー:高畑勲
  • 製作総指揮:徳間康快、近藤道生
  • 企画:「風の谷のナウシカ」製作委員会
    • 山下辰巳、奥本篤志、尾形英夫、森江宏
    • 徳間書店:和田豊、小原健治、鈴木敏夫、亀山修、大塚勤
    • 博報堂:佐藤孝、中谷健太郎、宮崎至朗
  • 作画監督:小松原一男
  • 美術監督:中村光毅
  • 音楽:久石譲
  • 音響監督:斯波重治
  • 録音演出:斯波重治
  • 原画:金田伊功、吉田忠勝、福田忠、丹内司、鍋島修、賀川愛、なかむらたかし、小林一幸、高坂希太郎、羽根章悦、小原秀一、庵野秀明、小田部羊一、才田俊次、高野登、池田淳子、渡部高志、富山正治、林貴則
  • 原画補:吉田正宏、大久保富彦
  • 背景:木下和宏、吉崎正樹、海老沢一男、野崎俊郎、西村くに子/スタジオビック
  • ハーモニー処理:高屋法子
  • 動画チェック:尾沢直志、平塚英雄
  • 動画:飯田馬之介、篠原征子、二木真希子 他
  • 特殊効果:水田信子
  • 色指定:保田道世、鈴木福男
  • 仕上検査:荻原穂美
  • 撮影:白神孝始/首藤行朝、清水泰宏、杉浦守
  • 撮影協力:宮内征雄、平井昭夫、小林武男(高橋プロダクション)
  • 編集:木田伴子/金子尚樹、酒井正次
  • 整音:桑原邦男
  • 効果:大平紀義、佐藤一俊
  • 演出助手:棚沢隆、片山一良
  • 制作担当:酒井登
  • 制作デスク:鈴木重裕
  • 制作進行:押切直之、神戸守、島崎奈々子
  • シンボルテーマソング(本編では未使用):「風の谷のナウシカ」
    • 作詞:松本隆、作曲:細野晴臣、唄:安田成美(徳間ジャパン)
  • 音響制作:オムニバスプロモーション
  • 録音スタジオ:新坂スタジオ
  • 現像:東京化学工業
  • DVDオーディオコメンタリー:庵野秀明、片山一良
  • 制作:原徹、トップクラフト
  • 製作:徳間書店、博報堂

受賞・推薦

国内

  • WWF世界野生生物保護基金(現・世界自然保護基金)推薦
  • 文化庁優秀映画製作奨励賞
  • 第39回(1984年)毎日映画コンクール 大藤信郎賞
  • キネマ旬報1984年度ベスト・テン日本映画第7位/読者選出日本映画第1位/読者選出日本映画監督賞
  • 1984年(第13回)ぴあテン 映画部門第2位
  • 第2回アニメフェスティバル 日本アニメ大賞 最優秀作品賞
  • 全国映連賞日本映画作品部門第1位 日本映画作品賞部門1位
  • 日本SF大会星雲賞 メディア部門 第1位(1985年)
  • 第1回映像ソフト大賞 ビデオ部門アニメ賞
  • 第7回(1984年)月刊アニメージュ アニメグランプリ 作品賞
  • 第8回~15回(1984年~1992年)月刊アニメージュ アニメグランプリ 歴代ベスト1作品

ここまでの出典叶精二『宮崎駿全書』フィルムアート社、2006年。ISBN 4-84590687-2

  • 日本のメディア芸術100選アニメ部門選出(2006年)

海外

  • 第14回パリ国際SF&ファンタジー・フェスティバル 特別審査委員賞(準グランプリ)
  • ザグレブSF&ファンタジーフィルムフェスティバル 第1位
  • ローマ・ファンタジー&SFフィルムフェスティバル 第1位

ここまでの出典

関連商品

  • 『風の谷のナウシカ―絵コンテ(1)(アニメージュ文庫)』(1984年3月)
  • 『風の谷のナウシカ―絵コンテ(2)(アニメージュ文庫)』(1984年3月)
  • 『風の谷のナウシカ BEST(CD)』(1986年11月)
  • 『風の谷のナウシカ(上)(徳間アニメ絵本)』(1988年3月)
  • 『風の谷のナウシカ(下)(徳間アニメ絵本)』(1988年3月)
  • 『「風の谷のナウシカ」サウンドトラック はるかな地へ・・・』(1993年7月)
  • 『風の谷のナウシカ―宮崎駿水彩画集(ジブリTHE ARTシリーズ)』(1996年9月)
  • 『風の谷のナウシカ(VHS)』(1997年9月)
  • 『フィルムコミック風の谷のナウシカ4巻セット「トルメキア戦役バージョン」』(2003年10月)
  • 『風の谷のナウシカ DVD』(2003年11月)
  • 『風の谷のナウシカ DVD ナウシカ・フィギュア セット』(2003年11月)
  • 『風の谷のナウシカ ハイテックシリーズ(サウンドトラック)』(2004年8月)
  • 『風の谷のナウシカ イメージアルバム 鳥の人・・・(CD)』(2004年8月)
  • 『風の谷のナウシカ(CD)』(2004年10月)
  • 『ピアノ曲集 風の谷のナウシカ イメージアルバム&サウンドトラック』(2008年6月)
  • 『風の谷のナウシカ Blu-ray Disc』(2010年7月)
  • 「FORMANIA ガンシップ」バンダイ、(2010年10月) バンダイ、「風の谷のナウシカ」に登場の「ガンシップ」完成品モデル - 日経デザイン - 日経BP社

売上記録

(日本国内)
内容 記録 補足
興行収入 | 約14.8億円叶精二『宮崎駿全書』65頁 | 推測
配給収入 | 約7.42億円 |
全国動員 | 91万4767人 |
『イメージアルバム〜鳥の人〜』 | 6万枚出荷(1983年発売のLP)叶精二『宮崎駿全書』62頁
5万本出荷(1983年発売のCA)
4万枚出荷(1985年発売のCD)
3万枚出荷(1993年発売の再発CD)
0.5万枚出荷(2004年発売の再々発CD) |
『サウンドトラック〜はるかな地へ〜』 | 9万枚出荷(1984年発売のLP)
10万本出荷(1984年発売のCA)
9万枚出荷(1984年発売のCD)
11万枚出荷(1993年発売の再発CD)
1万枚出荷(2004年発売の再々発CD) |
『風の谷のナウシカ』 | (1984年発売のレーザーディスク)
徳間コミュニケーションズ
CLV 116分 MONO (音声)98LX-1 |
『ドラマ編〜風の神さま〜』 | 4万枚出荷(1984年発売のLP)
4万本出荷(1984年発売のCA)
1.2万枚出荷(1989年発売のCD)
1万枚出荷(1993年発売のCD) |
『シンフォニー編〜風の伝説〜』 | 6万枚出荷(1984年発売のLP)
5万本出荷(1984年発売のCA)
4万枚出荷(1984年発売のCD)
3万枚出荷(1993年発売の再発CD)
0.5万枚出荷(2004年発売の再々発CD) |
『ハイテックシリーズ』 | 2万本出荷(1989年発売のCA)
6万枚出荷(1989年発売のCD)
2万枚出荷(1993年発売の再発CD)
0.5万枚出荷(2004年発売の再々発CD) |
『BEST COLLECTION』 | 5万枚出荷(1986年発売のCD) |
シンボルテーマソング
『風の谷のナウシカ/風の妖精』 | 4万枚出荷(1986年発売のシングルCD)
9万枚出荷(1988年発売の再発シングルCD)
0.5万枚出荷(2004年発売の再々発シングルCD) |
VHS・ベータ(徳間版) | 12万本出荷叶精二『宮崎駿全書』66頁 | 1989年7月時点
VHS(ブエナビスタ版) | 90万本出荷 | 2003年6月時点
DVD | 75万枚出荷 | 2005年3月時点
Blu-ray Disc | 2.0万枚売上(発売初週) | 2010年7月時点
オリコンランキングで、1997年9月19日発売のVHS版がビデオランキング第1位、2003年11月19日発売のDVD版がDVDランキング第1位、、そして2010年7月14日発売のBlu-ray版がBlu-rayランキング第1位(2010年7月26日付で2.0万枚売上)を獲得しており、史上初の同一作品による3部門制覇という快挙を成し遂げているオリコンBDランキング、「風の谷のナウシカ」が史上初の金字塔サーチナ 2010年7月21日

実現しなかった外伝と続編

原画として参加した庵野秀明は、後に作中の登場人物クシャナを主人公にした外伝映画『クシャナ戦記』の監督をしたいと申し出るが、宮崎は「最低のものになる、できるものなら自分でやっている」と却下しているコミックボックス 1995年1月号

漫画作品の連載がクライマックスを迎えた頃には映画会社内で続編の企画が存在したが、宮崎駿の意向により制作は行われず企画は立ち消えとなった

ラジオドラマ

アニメ映画公開前日の1984年3月10日深夜(日付は3月11日)にニッポン放送「オールナイトニッポン」で映画を宣伝する「風の谷のナウシカスペシャル」が生放送された。ゲストは監督の宮崎駿やナウシカガールの安田成美。この特別番組内では、約30分のラジオドラマが流された。当時の同種のアニメ映画のオールナイトニッポンスペシャルでは生のラジオドラマも多かったが、本作では事前に収録が行なわれていた。宣伝という性格上、ストーリーと声優のキャスティングはアニメ版に準拠し、途中までをドラマ化し、続きを映画館で見せるとの趣向だった。脚色は藤井青銅、演出はドン上野こと上野修。

ゲーム

劇場アニメ版とのタイアップとして、1984年に徳間書店からテクノポリスソフトのブランド名で、当時の8ビットパソコン用にナウシカを素材としたコンピュータゲームが発売された。

  • 『風の谷のナウシカ』PC-8801用。徳間書店、アドベンチャーゲーム、6,800円 。
  • 『ナウシカ危機一髪』PC-6001mkII用。シューティングゲーム。土鬼の飛行ガメを撃ち落としていく。
  • 『忘れじのナウシカ・ゲーム』MSX用。シューティングゲーム。ストーリー的には漫画版をベースにしている。風の谷へ侵攻する土鬼を最終的には交渉して引き返させるのが目的。ガンシップ、メーヴェ、パージの連結・切り離し、土鬼の浮砲台、飛行ガメ、王蟲、ストロボ光弾など原作の要素が含まれている。飛行している蟲は撃ち落とすことはできず、接触すると減点となる。

「ナウシカのゲームが、ナウシカが腐海の蟲たちを撃ち殺してスコアを稼いでゆくというもので、このゲームに宮崎や高畑が激怒したため、以降の作品がゲーム化されなくなった」という説があるが宮崎駿がコンピューターゲーム嫌いになったのはこのゲームが原因という記述が井坂十蔵の『宮崎駿のススメ。』にもある。、実際にはこのような内容のゲームは存在しない。

その他、徳間書店アニメージュ文庫から『巨神兵を倒せ! 風の谷のナウシカ』というゲームブックが発売された。

設定

(原)は原作に登場、(映)は映画版に登場

年代

産業文明の勃興から千年を経て極限まで科学技術の発展した人類社会が、「火の7日間」と呼ばれる最終戦争によって滅びてから千年余りが経過した未来の地球が舞台。西暦でいうと、「火の7日間」が28世紀頃で、ナウシカの時代が38世紀頃になる。最終戦争以前の高度産業文明は旧世界と呼ばれ、エンジンなどの遺物が発掘、利用されているが、人々の生活様式は中世から近世にかけての水準まで退行している。

「火の7日間」の後に拡がった菌類の森「腐海」が陸地の大部分を覆っており、人間は沿岸の腐海が及ばない地域を中心に暮らしている。風の谷は潮風が胞子の侵入を拒み、豊かな森や水源、田畑が残っているが、それ以外の土地は不毛な荒地が多い。また、海は「この星の汚染物質が最後にたどり着くところ」とされ、生物が生息できる環境ではなくなっている。

技術

文明の滅亡によって多くの科学技術が失われており、電気や電子機器、水道などは使われていない。乗り物は旧世界の技術の名残りである高性能な「船」と呼ばれる飛行機が盛んに利用されているが、陸上では映画版におけるトルメキア軍の突撃砲以外、トリウマなどの動物を利用する程度の移動手段しか残っていない。電話や無線等の通信技術も失われており、船上では信号旗や探照灯によるモールス信号のようなもの、伝声管を使ってコミュニケーションをとっている。旧世界の名残から、硬化セラミックが金属に代わる一般的な素材として刃物や航空機に使われている。

瘴気マスク
腐海の瘴気を防ぐ防毒マスクで、ある種の水草から作られる活性炭で防ぐ構造となっている。形状は様々だが、いずれも鼻から口を覆う形で装着する。トルメキア王国においては、緊急時に使用する簡易マスクと、マスクを装着したまま飲料水が飲めて、長期間の使用に耐える重マスクの2種類が確認されている。終盤でマスクだけで腐海の全ての瘴気を完全に防ぐ事は不可能である事が判明した。

風の谷

主人公ナウシカの故郷である辺境の小国。人口は500人程度。

海から吹き付ける風を風車で動力としながら、中世レベルの農業と採取活動により成り立っている。「海から吹く風様」と形容される潮風で腐海の胞子による侵蝕から守られているが、わずかに届く腐海の毒は人々を確実に蝕んでおり、死産や四肢硬化を引き起こしている。

族長の住む城の大風車で地下500メルテ(作中における長さの単位)から水を汲み上げ、それを貯水池に引いて寝かせてから沸かし、飲料水や農業に用いている。

付近の砂漠(映画版では山の向こうにある酸の海湖畔)には旧世界の廃船があり、風の谷の人々が篭城するために使われた。この廃船は旧世界の宇宙船とされており、「火の七日間の前、星へ行っていたらしい」と言われている。漫画版では、船の周りにセラミックを切り出すための鉱山町が造られていた。

漫画版では、自治権の保証と引き替えに、族長が召集に応じてガンシップで参戦するという盟約をトルメキアと結んでいる。

ナウシカ(原,映)
風の谷の姫。大気の流れを読み腐海の毒から人々を守り導く「風使い」の少女。16歳。漫画では、王蟲を始め世界の様々なものと触れ合うことになる。
ジル(原,映)
風の谷の族長でナウシカの父。かつては風使いとして名を馳せたが、腐海の毒に侵されており、ナウシカに谷の行く末を託す。原作では病によって死去するが、映画ではトルメキア兵に殺害されている。原作ではナウシカ以外に夭折した10人の子供がいた事が判明する。
ユパ・ミラルダ(原,映)
ジルの旧友でナウシカの師。腐海辺境一と賞される剣豪ながら、争いを好まない人格者で人望も厚い。腐海の謎を解くためトリウマのカイ、クイとともに旅を続けており、各国の文化や歴史にも造詣が深い。風の谷に久々に帰還する途中、羽蟲にさらわれたキツネリスを人間の子供と勘違いして救助の為に発砲、それに怒った王蟲に追われていた所を、風使いとして成長したナウシカに助け出された。ナウシカがクシャナと共に南方へ向かうと彼女を追って旅立ち、アスベル等と行動を共にする。大海嘯の後、トルメキアへの復讐に燃える土鬼の女性が放った手投げ弾で左腕を失い、直後に土鬼の戦士の刃からクシャナを庇って死亡した。
ミト(原,映)
眼帯をしたいかつい風貌の男。腐海の毒による四肢硬化で農作業を離れ城の守りに就いた「城オジ」の一人で、ナウシカの忠臣。原作では、ジルの遺言でユパとナウシカを探して土鬼領地へ入り、聖地シュワに向かうナウシカを追った。映画版では状況に応じてナウシカやユパと行動を共にし、主にガンシップの砲手や操縦を担当した。寿命が近いことが示唆されているが、映画版では寿命が近いキャラクターが彼からゴルへ変更されている。土鬼語を話せるが上手くは無く、ムズからは「毛長牛が唸っているのかと思った」と言われている。
大ババ(原,映)
100歳を超える腐海辺境一の年寄り。「大海嘯」や「青き衣の者」の伝承を語る。
ゴル(映)、ギックリ(映)、ムズ(原)、ニガ(原,映)
城オジ達。ナウシカの初陣に4人が同行し、ジルの遺言でユパの捜索をしていた時はムズが、土鬼の地へ入った時にはニガが同行した。
映画版ではクシャナから人質としてゴル、ギックリ、ニガの3人がペジテに同行した。ニガのみ原作と映画の両方に登場している。

辺境諸国

風の谷を始め、砂の谷やペジテ市など、腐海のほとりにある小国群。人口は少なく風の谷で500人程度、産業文明の遺産である「ガンシップ」と呼ばれる高性能小型戦闘機を所有して成立している風の谷のような国もあれば、地下の遺跡となった旧文明の遺物を発掘して成り立っているペジテ市のような国もある。漫画版ではトルメキアを盟主として同盟を結んでいる。 この地には、「火の七日間」を経てもなお、産業文明の技術を伝えるエフタルという巨大王国が栄えていたが、王位継承戦争やそれが引き金になって起こった3度目の大海嘯(蟲の暴走と大規模な腐海の拡大)により、ナウシカの時代から300年前に滅亡。以後小国に分裂し、トルメキアの宗主権下に入ったとされる。その名残で辺境の人々は、国に関係なく自らをエフタルの民と称しており、風の谷の場合「エフタル風の谷の民」となる。

腐海のほとりということもあり、毎年多くの都市が腐海に飲み込まれ、人が住める土地が減っている。

エフタル時代の遺物である高性能な戦闘機、ガンシップを所有している国が多いため、盟主であるトルメキアにとって貴重な兵力調達先となっていた。トルメキアの南下作戦に際してクシャナらによって徴兵されたが、土鬼軍の罠によりトルメキア軍はクシャナの乗るコルベット単艦を残し全滅。自ら志願したナウシカを除く全ガンシップは、土鬼が辺境の地を狙っている事を知り、再びトルメキアに徴兵されることを嫌ってトルメキアとの同盟を破棄し、土鬼の襲来に備え再びエフタルの旗の下に集い連合を組んだ。

映画版では風の谷とペジテ市のみ登場。トルメキアは辺境の国々を統合し巨大国家を建設しようとしていた。

実際に5世紀中頃から6世紀中頃にかけて、中央アジアにエフタルという国家が存在している。突厥とサーサーン朝ペルシアによって地上から抹殺された遊牧民国家で、民族ごと破壊されたために文明的痕跡は無く、謎に包まれている。

トルメキア

漫画版では風の谷の東方に存在する王国で、都はトラス。トラスは、かつての巨大都市の廃墟に寄生しており、数多くの超高層ビルが立ち並ぶが、いずれも廃墟である。高速道路跡らしきものも見える。辺境の族単位の小国群を従えている。国王はヴ王と称し、子は3人の皇子と末娘の皇女クシャナ。人々は現在のヨーロッパ系を思わせる風貌と文化をもっている。

王族による過酷な王位継承争いが古くから続いている。クシャナの母である王妃は「正統なトルメキア王家の血を引くのはクシャナのみ」としているが、ヴ王はオーマと対峙した際、自身の血筋を「我が血は最も古く、しかして常に新しい」と誇っている。3人の皇子の支持者が幼いクシャナに「心を狂わす恐ろしい毒」を飲ませようとしたが、王妃が身代わりにこれを飲み精神に異常をきたしてしまう。これが元で、クシャナは父と兄達への復讐を誓うことになる。

3皇子はクシャナの兄だが、「正統な王家の血を引いていない」とされ、ヴ王の連れ子ということになる。特に第3皇子とクシャナの対立は激しく、彼女の軍事力を削ごうとして、彼女の軍団をわざと不利な戦線へ派遣したり、無謀な作戦を実行させたりしている。敵に情報を漏洩するなど兄弟同士の争いも描かれており、クシャナは3人の兄達と父を「毒蛇・肉塊の化け物」、ヴ王も「王宮は陰謀と術策の蛇の巣だ。ゴミの如き王族、血族がひしめいておる」と述べた。トルメキア王家の紋章である「互いに争う双頭の蛇」は、これらの王家代々の骨肉の争いを象徴していると皮肉られている。

漫画版最後で3皇子が行方不明になっていたため、王位は崩御寸前のヴ王からクシャナに譲られたが、クシャナは「すでに新しい王を持っている」として生涯「代王」を名乗り、以後トルメキアは「王を持たぬ王国」になったとされる漫画第7巻終末部より

映画版では、トルメキアは風の谷のはるか西方に存在する強大な軍事国家で、風の谷などとの同盟、主従関係は存在せず、巨神兵を奪取しに来た侵略者として描かれる。突撃砲を持っていたりバカガラスよりもさらに大きな「大型船」を持っていたりと、漫画には無かった技術が描かれている。また王国ではなく帝国であり、皇族は、辺境諸国統合の司令官となったクシャナのみ登場した。

クシャナ(原,映)
トルメキアの第4皇女。25歳。容姿端麗かつ優れた軍人であり、ヴ王親衛隊である第3軍の最高指揮官として、兵から絶大な信頼と忠誠を得ている。その卓越した戦術的能力と部隊全体を鼓舞するカリスマ性から、敵軍勢からは「トルメキアの白い魔女」と呼ばれ恐れられている。非常に思慮深く聡明な女性だが、王家の人間としての帝王学からか冷徹な態度を貫き、喜怒哀楽など個人的な感情を表に出す事は少ない。しかし母親への侮辱だけは許さず、逆上し怒りをあらわにする事がある。戦乱の中、ナウシカやユパとの出会いを経て真の王道に目覚めていく。今際のヴ王から王位を譲られるも即位せずに「代王」となり、後世においてトルメキア中興の祖と呼ばれるようになる。
戦陣を指揮する際は鎧に身を包んでいるが、アクセサリーを身に着けるなどの一面もある。漫画版では兜の中に、映画版では踵に隠し武器を仕込んでいる描写がある。
映画版では過去に蟲に襲われ身体の一部を失っており、左腕は肩から先が義手になっている。巨神兵をトルメキア本国(「本国の馬鹿ども」と呼んでいた)に引き渡す事を良しとせず、その力で腐海を焼き払い、トルメキアからも離反して風の谷を中心に旧時代のような人間が自然を支配する世界の再建を目論む。原作にあった、戦死した兵達への手向けとして自ら髪を切るシーンは無く、終始ロングヘアを編んだ髪型となっている。
クロトワ(原,映)
軍参謀。軍大学院の学生で27歳。平民出身で家庭は貧しかった為、心の底に野心を秘めている。表向きは、辺境作戦終了までクシャナの補佐役としてヴ王により派遣されたことになっているが、実際はヴ王から、クシャナが持っていると思われた秘石の入手とクシャナの監視・抹殺を命じられていた。クシャナがヴ王の企みを見破っていた為、中央派遣の参謀はこれまで事故死を装って全員殺害されており、クロトワもペジテ視察中や第2軍との合流を勧めた際にクシャナに殺されかかっている。
当初はクシャナへの忠誠心や部下へ思いやりは見せておらず、満員のコルベットに乗り込もうとする兵士達を射殺するような行動も取っていた。艦隊の壊滅後、しきりに友軍との合流を進めるクロトワの演技に業を煮やしたクシャナから、企みが露見している事を告げられ、打つ手が無くなった為、クシャナの側に着く。もともとコルベット艦の乗員だったため操船術に長けており、アスベルのガンシップと激しい空中戦を繰り広げた末にガンシップを撃墜している。兵卒からの叩き上げで出世した上官として兵からの人望も厚い。
映画版ではクシャナ直属の軍参謀として登場。原作にある謀略の手先という設定は削除されている。平民上がりではあるが、トルメキア帝国辺境派遣軍のナンバー2として知略を振るう。クシャナが行方不明になった際には部隊の全権を掌握し、ペジテのトルメキア軍吸収を目論んだ野心家。クシャナもその飄々とした言動の裏に隠された狡猾な一面を察しており、忠誠の言葉を口にするクロトワに対して「狸め」と返している。
おじさん(原)
第3軍士官。固有名称は無くナウシカから「おじさん」と呼ばれていた。初老の男性で、主に炊事や身の回りの世話をする非戦闘員。子供の頃に母親をなくし妹を自らの手で育て上げた。その経験を生かしナウシカの保護した土鬼の子供の世話を快く引き受けていた。しかし、船が消失し、2000人の大所帯となった事で子供2人の世話が困難になり、小麦1袋で乳飲み子を失ったというサジュ族の女性に2人の子を託した(ナウシカに無断で行ったため、感情的に反対したナウシカだが、後に彼女もそのサジュ族の女性に2人を託している)。
第3軍から離れ、一人旅立つ事を決めたナウシカを見送った唯一の人物である。
セネイ(原)
第3軍士官。クシャナの忠臣。トルメキア軍の最南端拠点サパタに派遣されていた。指揮官としても優秀で、司令部が状況を把握していないことを指摘し、全滅回避と第3軍再建の基礎を残す為に、将軍に撤退を進言した。クシャナの生存を知った時は感極まって涙を流していた。
攻城砲破壊後カボへ向かったクシャナを、本隊撤退後も待っていたが、ヒドラの襲撃を受け無念の死を遂げた。
将軍(原)
固有の名称は無し。3皇子率いる第2軍からサパタ駐留第3軍第1連隊の指揮官として送り込まれた人物。兵を捨て駒として扱い、兵を戦地に見捨てて自らは戦利品を持って逃げるような人物で、兵士からは「土鬼の出陣前の祈祷が終わる前に逃げ出す」「腰抜け」と陰口を叩かれ、クシャナの逮捕を命じた時は、誰も従おうとはしなかった。
クシャナと共にトリウマに乗って攻城砲破壊に出陣するが、攻城砲の零距離射撃を受け死亡した。
3皇子(原)
クシャナの異母兄である3人の皇子の総称。ヴ王の命で第2軍を率いて土鬼に侵攻する。3人とも父王に容貌がそっくりで、体型も皆同じ肥満体。
第3皇子
3人の皇子の末子。賢い女と生意気な女を嫌う。カボに船の奪取に来たクシャナと遭遇。これを妨害し、彼女を抹殺しようと試みるもクロトワの機転により失敗。そのまま逃げようとするが、蟲に襲われ死亡した。
第1、第2皇子
ヴ王の長男と次男。戦況が不利になったため、兵を見捨てて先に本国へ逃げ帰ってきた。しかし、理由をヴ王に問われた際、虚偽の報告を行った事がヴ王の逆鱗に触れ、更に「恐ろしい数の蟲が来た。土鬼軍も全滅し、人智を超えた災害」と言い訳し、更にヴ王の怒りに油を注ぐ結果となった。結果、大衆の前でヴ王にその軽率さを叱責され、頭を踏みつけられる屈辱を味わい、国境を固めるよう言い渡され、帰還を禁じられる羽目と成った。その後、自らもシュワの秘密を手に入れる為に秘密裏にシュワへ侵攻。その際、同じくシュワへ向かっていたナウシカとオーマに接触した。クシャナからは暗愚な小心者と言われているが、本人は「愚者を演じていなければ、殺されていた」と述べている。絶えず2人で行動しており、外見では区別がつかない。ナウシカと共に庭の主に捕らわれ、彼の精神操作によって庭に留まる事となる。音楽と詩に深い造詣があり、シュワの庭に保管されていた旧世界の楽器を演奏する。
ヴ王(原)
トルメキア国王。首が胴体にめり込んだ、樽のような肥満体の持ち主。一人称は「朕」。常に道化師を周囲に従えている。先王の血を引くクシャナの謀殺を図っていた。聖地シュワの科学力を手に入れる為に土鬼辺境へ侵攻。当初、戦は息子・娘達に任せていたが、第1、第2皇子が蟲が来たことを口実に逃げ帰り、更にその後の国土を失った土鬼のトルメキア本国への侵攻、結果予想される報復を予測できず、ひたすら言い訳をする皇子達を叱責し、壊滅したトルメキア軍を再編し、自ら軍を率いてシュワへ急襲を仕掛ける。オーマの介入に遭い全兵力を失うも、墓所の主の元へ案内された。しかし、不死やヒドラには一切興味を示さず、ナウシカと共に墓所の秘密を知ったため、墓所の主の勧誘も拒否した。共に墓所の主と対峙したナウシカの事を気に入り「破壊と慈悲の混沌」と評していた。
大衆の前で罵声を浴びせられ屈辱を味わった事のある第1・第2皇子からは「暴君」、クシャナからも「玉座にしがみ付く老い耄れ」と評されているが、嘘の報告をし、土鬼の本土侵攻という最悪の事態を予測できずに言い訳をする息子に対するヴ王の怒りももっともである。戦利品は全兵士に公平に分配し、巨神兵に対しても恐れることなく堂々と接し、戦闘においては自ら先陣を切るなど王に相応しい度量を持つ人物でもある。
墓の断末魔の光からナウシカを庇って虫の息となり、最後は蝶殺さえ試みていたクシャナにトルメキアの王位を譲って息絶えた。その際クシャナに、王位継承権を巡って「誰も殺すな。さもないとワシのようになる」と忠告している。
息子の3皇子と同様、映画版には登場していない。
道化(原)
ヴ王の傍らに常に寄り添う、ピエロのような格好をした小柄な人物。ヴ王の言動に対してシニカルどころか不敬ともとれる言葉を投げかけるが、ヴ王自身は気にせず、突っ込み返す事もしばしば。墓所の主までヴ王に随伴し、墓所の主の寄代にされるが生還する。今際の際のヴ王より、クシャナへの王位譲渡の証人に指名される。

土鬼諸侯連合

「土鬼」は「ドルク」と読む。映画版には登場しない。

トルメキアと拮抗する国家連合。皇帝領、7つの大侯国、20余の小侯国と23の小部族国家での計51ヶ国から成り立つ。神聖皇帝と、その下の官僚機構である僧会が国政を担っている。人々は現在のアジア系を思わせる風貌と文化をもっている。宗教色が強く、各侯国の族長が僧侶であったり、国政を儀式化している部分もある。代々超常能力を持つ神聖皇帝の家系が治める。現神聖皇帝は皇兄ナムリスであるが、超常の力がなかったために皇弟ミラルパに実権を奪われていた。ミラルパは土民を支配しやすいように宗教を利用していたが、無神論者のナムリスは、弟を謀殺して実権を奪回すると、苛烈な宗教弾圧を行った。国内でも種族・部族間の揉め事が絶えず、内紛の火種を抱えた状態にある。その為、国の統治は僧会と神聖皇帝家に対する畏怖と崇拝、力への恐怖と尊崇による恐怖政治を行っていた。

以前は「土王」と呼ばれるクルバルカ家が治めていたが、時代が下るごとに圧政と狂気に満ちた政治になり、先代の神聖皇帝により追放された。土鬼諸国の庶民の間には、未だにクルバルカ家に対する崇敬や、神聖皇帝と僧会によって禁止されたはずの土着宗教の信仰が密かに残っており、僧会の布教と土着信仰が混同されているところもある。

材料こそ木製や土製が主流だが、「火の七日間」で焼き尽くされる以前の技術が、聖都シュワにある墓所に封印されており、神聖皇帝や土王などは墓所の主から君主としての権威を承認され、墓所の技術を利用している。この為、科学的には優位に立っており、トルメキアとの戦争でも、墓所の持つ古代の技術を利用し、腐海の植物を人為的に強毒化させたり、巨神兵を蘇生させるなどして戦争を有利に導くはずだったが、逆に自らの放った大海嘯に国土を飲み込まれ、沿岸部を残し消滅した。

マニ族僧正(原)
マニ族の長で、神聖皇帝より北上作戦の先遣隊として派遣されていた。宗教上の理由から光を捨てた盲官である。王蟲を使ってクシャナの艦隊を壊滅させたものの、王蟲を止めたナウシカが古き伝承にある「青き衣の者」であると感じて作戦を中断し帰還、土鬼軍の作戦に自滅の危険性があることを説いた。ユパ達を逃がす為に壮絶な最期を遂げるが、死後もナウシカを守った。その超常の力は神聖皇弟に並ぶほどだった。
ケチャ(原)
マニ族の娘でエフタル語を解する。気性は激しい。僧正の死後、アスベルやユパと行動を共にする。当初は僧正を死に追いやったユパ達と対立していたものの、徐々に打ち解けていった。トルメキア人の抹殺を訴える過激な者が多いマニ族の中で、ナウシカや僧正、ユパ達と接してきた為、トルメキア人を嫌っているものの、無益な争いは避けるべきとの考えを持っている。
ミラルパ(原)
「生きている闇」と評された土鬼の神聖皇弟。超常の力を持ち、兄ナムリスを差し置いて帝国の実権を握っている。初めの20年は名君として臣民のことを案じていたが、いつまで経っても愚かな民衆に絶望し、恐怖政治へと移行した。宗教を支配に利用していたが、いつしか自分ものめり込んでいった。マニの僧正から、伝承の青き衣の者と重なるナウシカの存在を聞かされ、危機感を抱き抹殺しようと試みた。トルメキアの侵攻に対しては短期決戦を狙って蟲や瘴気を兵器として用いるが、その為に大海嘯を引き起こしてしまう。老いと死を何より恐れており、シュワの墓所の技術で延命処置を行っているが、幼少時のトラウマから移植(と言う