風雲児たち/みなもと太郎
著者: みなもと太郎
巻数: 30巻
最新刊『風雲児たち 第30巻』
twitterでのコメント (関係ないのに引っかかることもあります...)
風雲児たちの既刊
名前 | 発売年月 |
---|---|
風雲児たち 第2巻 | 1982-03 |
風雲児たち 第1巻 | 1982-07 |
風雲児たち 第3巻 | 1983-04 |
風雲児たち 第4巻 | 1983-09 |
風雲児たち 第5巻 | 1983-12 |
風雲児たち 第6巻 | 1984-04 |
風雲児たち 第7巻 | 1984-08 |
風雲児たち 第8巻 | 1984-12 |
風雲児たち 第9巻 | 1985-05 |
風雲児たち 第10巻 | 1985-10 |
風雲児たち 第11巻 | 1986-05 |
風雲児たち 第12巻 | 1986-11 |
風雲児たち 第13巻 | 1987-06 |
風雲児たち 第14巻 | 1987-12 |
風雲児たち 第15巻 | 1988-06 |
風雲児たち 第16巻 | 1989-03 |
風雲児たち 第17巻 | 1990-01 |
風雲児たち 第18巻 | 1990-08 |
風雲児たち 第19巻 | 1991-06 |
風雲児たち 第20巻 | 1992-04 |
風雲児たち 第21巻 | 1992-11 |
風雲児たち 第22巻 | 1993-06 |
風雲児たち 第23巻 | 1993-12 |
風雲児たち 第24巻 | 1994-10 |
風雲児たち 第25巻 | 1995-06 |
『風雲児たち』(ふううんじたち)は、みなもと太郎による日本の漫画作品。第一部として、1979年(昭和54年)7月から同年11月の7回を潮出版社が刊行した雑誌『月刊少年ワールド』に、翌1980年(昭和55年)から同社刊行の『コミックトム』に連載。全212話ほか外伝。また、『月刊コミックトムプラス』での連載『雲竜奔馬』(1998年(平成10年) - 2000年(平成12年))を挟んで、2001年(平成13年)よりリイド社刊の雑誌『コミック乱』において、続編にあたる『風雲児たち 幕末編』を連載中。
単行本は、潮出版社希望コミックスで全30巻。なお30巻目は番外編として薩摩藩家老平田靱負を軸に「宝暦治水事件」を描く。2000年(平成12年)から2002年(平成14年)にかけて、希望コミックス収録分はリイド社より再編集(巻末エッセイ、ギャグ注など付記)され、「ワイド版」として大判単行本全20巻が刊行。「幕末編」は、現在リイド社SPコミックスとして刊行中。
概要
元々幕末の群像を描くことを目的とした企画だったが、幕末の状況はそもそも江戸幕府成立の頃に根があるということで、関ヶ原の戦いより執筆を開始した。これが当初に企画された出版社側の計画を大幅に狂わせ、江戸時代300年を通して時代の発展に関わった人間たちの運命を描く大河ドラマ漫画となる。
漫画やアニメ、漫才師やコメディアンのネタ(特に吉本新喜劇)、時代劇、映画、TV、時事ネタなどをパロディとしてギャグにしているのも特徴。また、ワイド版では、時間が経って分かりにくくなったギャグの解説のため「脚注」をもじった「ギャグ注」を巻末に収録している。
執筆当時に入手可能な最新の史的資料を調査した上で執筆されているため、それまでの多くの歴史フィクションでよく見られたステレオタイプの視点や、学校などで習う標準的な歴史観を脱しており、時に保科正之のようにそれまで注目されていなかったマイナーな人物にスポットが当てられたり、田沼意次のように悪人と見られがちな人物を史実に基づき肯定的に描くなどしている。逆に、従来は肯定的に描かれることが多かった人物の否定的側面を取り上げていることもある。人物の善悪を分けたとき、権力側ではなく民衆に立って行動した者を善玉としている。
一方で、現在もよくわかっていない歴史上の事実については、普通なら作中の描写を避けるか、あるいは作者の創作によって補う所を、本作においてはギャグ漫画の文法を利用して「それについてはわかっていない」という事実をはっきり書いてしまうこともあった。(例えば保科正之の母方の祖父は、希望コミックス版30巻でフルネームが解るまで一貫して「神尾某」であった)さらには作者の勘違いで史実と違う事を描いたり、新資料の発見で史実が覆った場合においても、その事実を作中でギャグとして紹介する事もあった。
このように史実に対して忠実であろうとする一方、単なる事実の羅列ではなく、幕末へ向けて連鎖する生きた物語として江戸時代の歴史を捉え直し、描き出している。
この『風雲児たち』はある一面では江戸時代の蘭学の発展と対外政策史を綴った歴史書ともいえる。前者は前野良沢を、後者は林子平を源流として、志を同じくする多くの同志・後輩に受け継がれている様が描かれている。レザーノフ事件からゴローニン事件まで出版社の事情からかなり省略されたのが惜しい(ゴローニン事件に関しては、本来なら単行本1巻分をかけてじっくり描きたかったが、事情により1号分で無理矢理まとめた事を作者本人が作中で語っている)。
登場人物の作画は、当初はギャグ漫画らしくディフォルメされ、現在も伝わる肖像画とは似ても似つかぬものが多かったものの、作品が進むにつれて劇画的に描かれた人物が多くなっていったが、両者が作中で違和感なく共存している。ただし、「幕末編」に登場する予定の人物を冒頭で予告編的に登場させ、実際に「幕末編」に入ってからその予告通りに登場させているため、「幕末編」においては結果的にディフォルメされた登場人物が再び多くなっている。
登場人物は概ね生まれ在所の方言・訛りをそのまま話している(龍馬や武市の土佐弁、西郷や大久保らの薩摩弁、松陰や村田蔵六の長州弁など)。ただ江戸暮らしが長い学者や大名・旗本が話すときは標準的な武家言葉や、ですます調で通す場合もある(興奮して在所の言葉が出たり、徳川斉昭が水戸弁を喋るなどのギャグはそこかしこに存在する)。
潮出版社版単行本は、その出版社の故か書店に並ぶことが少なく、人気作にもかかわらず「書店で見かけない」とファンから悲鳴が上がるほどであった(作中、とある人物の著作が有名になり、これを求める人々の中で「『風雲児たち』の単行本はどこに行けば手に入るのか」と悲鳴を上げる人がいるなど、セルフパロディになっている)。
1998年、『コミックトム』から『月刊コミックトムプラス』へのリニューアルにあたり、『風雲児たち』としての連載を完結、編集側の要望を取り入れて、それまでの群像劇から坂本龍馬を主人公に据えた『雲竜奔馬』の連載を開始するも、全5巻で一区切りとなる。
2001年、リイド社の月刊『コミック乱』にて、『風雲児たち 幕末編』を連載を開始。『雲竜奔馬』と重なる時代を描いている間は原稿の流用が行われている。
2004年、第8回手塚治虫文化賞(主催:朝日新聞社)特別賞・受賞作品。ただし『歴史マンガの新境地開拓とマンガ文化への貢献に対して』のみなもと太郎の業績に対しての賞であるため、具体的な作品名は挙げられていない。しかし、その受賞内容と選考理由を見れば『風雲児たち』シリーズに対する賞であることは明らかであり、幕末編5巻の帯には堂々と受賞の文字が躍っている。
また、製作裏話などを記した『外伝』なる番外編を個人同人誌として製作。これはコミックマーケットなどの同人誌即売会におけるサークル出展や、公式ファンクラブサイトの通販(外部リンク参照)を通じて売られている。『外伝』の一部分については、単行本として出されているものも存在する。
登場人物
以下の区分は作品の内容上の区切りを示したもので、各編にまたがって登場しているキャラクターもある。また、各編の区切りの名称は便宜上記したもので、一部は作中にあるものではない。
幕府鳴動編(徳川幕府成立編)
- 徳川家康
- 石田三成
- 大谷吉継
- 小早川秀秋
- このキャラクターの造形(肖像画とアホの坂田)について、作中にも登場する夏目房之介が、「本当に(肖像画と)似てる」と賞賛した(読書学 p121)のに対して、作者は「そういうところに気づいてくれるとうれしい」とコメントしている。
- 毛利輝元
- 毛利秀元
- 吉川広家
- 島津義弘
- 島津忠恒
- 徳川秀忠
- 真田信繁(真田幸村)
- このキャラクターは、杉浦茂作品の模写であると作中(希望コミックス版第27巻)で言及がある。
- 徳川家光
- 宮本武蔵
- 保科正之
- このキャラクターについて、作家の関川夏央が、『知識的大衆諸君、これもマンガだ』において「保科正之をネタにせざるを得ないので、巻数が伸び」たと指摘している。
- 由井正雪
- このキャラクターは「昔なつかし伊賀の影丸正雪編の丸写しじゃないかーっ」と(作中で)担当編集者に怒られながらも、一貫して横山光輝のパロディで描かれる。
- 長宗我部盛親
- 丸橋忠弥
- 山内一豊
- 幡随院長兵衛
- 徳川光圀
- このキャラクターは、メディアで老人として有名であるため、「老けた描写」であると言及される
- 宇喜多秀家
田沼時代編~寛政編(蘭学黎明編)
- 平賀源内
- 田沼意次
- 杉田玄白
- 前野良沢
- 中川淳庵
- 桂川甫周
- 小田野直武(小田野武助)
- 司馬江漢(鈴木春重)
- 大槻玄沢
- 林子平
- 高山彦九郎
- 林子平、高山と 二ページほど登場する蒲生君平を併せて、「寛政の三奇人(三人の奇しき/クスシキひと 偉大な人)」と称する
- 工藤平助
- 青島俊蔵
- 最上徳内
- 松平定信
- 大黒屋光太夫
- キリル・ラクスマン
- アダム・ラクスマン
- ベニョヴスキー(ベニョフスキー)
- ツンベリー
暴走編~化政編(蘭学鳴動編)
- レザーノフ
- ゴローニン
- シーボルト
- 高田屋嘉兵衛
- 伊能忠敬
- 間宮林蔵
- 近藤重蔵
- 遠山景晋
- 遠山金四郎
- 矢部定謙
- 小関三英
- 渡辺崋山
- 高野長英
- 江川英龍(坦庵/江川太郎左衛門)
- 高島秋帆
- 川路聖謨
- 鳥居耀蔵
- 水野忠邦
- 大塩平八郎
- 国定忠治
- 勝小吉
- 早乙女主水之介
幕末黎明編(風雲児幼年編)
- 阿部正弘
- 島津斉興
- 島津斉彬
- 男谷精一郎
- 勝海舟(勝麟太郎)
- 島田虎之助
- 大村益次郎(村田蔵六)
- 前原巧山(嘉蔵)
- 緒方洪庵
- 楠本イネ(シーボルト・イネ)
- 二宮敬作
- 迫田利済
- 西郷隆盛(西郷吉之助)
- 大久保利通(大久保一蔵)
- 佐久間象山
- 吉田松陰
- このキャラクターは沖田総司と同一の、本作品では極めて珍しいスターシステムをとる。
- 斎藤弥九郎
- 中浜万次郎(ジョン万次郎)
- 坂本龍馬
幕末編
「幕末編」のキャラクターは、ほとんどが「幕末黎明編」と重複する。これは、「幕末編」で活躍する者の幼年期・修行時代を「幕末黎明編」で取り上げたためである。
- ペリー
- プチャーチン
- 徳川斉昭
- 藤田東湖
- 井伊直弼
- 桂小五郎(木戸孝允)
- 宮部鼎蔵
- 河井継之助
- 小林虎三郎
- 武市瑞山(武市半平太)
- 岡田以蔵
- このキャラクターについては「日本剣客伝」(『挑戦者』たち所収)でも語られる。
- 吉田東洋
- 千葉さな子
- 中島三郎助
- 福澤諭吉
- 前原巧山(嘉蔵)
- タウンゼント・ハリス
- ヘンリー・ヒュースケン
- 大久保忠寛
- 橋本左内
- 長野主膳
- 松平春嶽
- 島津久光
- 斎藤きち(唐人お吉)
- 長野主膳
その他
- フケタ先輩(作者の別作品である『あどべんちゃあ』から近藤勇役で出演する大口後輩と共にゲスト出演)
- 忍者(史実を重視する本作品において、考証に基づいた者の他フィクションでよく見られる忍者装束で、常に覆面姿のため、目のまわりに日焼けを作った物が多数登場する)
外部リンク
- 「風雲児たち」長屋 - 公式ファンクラブサイト。「外伝」などの同人誌通販もあり。