W3/手塚治虫
著者: 手塚治虫
巻数: 2巻
最新刊『W3 2』
『W3』(ワンダースリー)は、手塚治虫のSF漫画、及びそれを基にして、全く異なるストーリーで1965年6月6日 - 1966年6月27日にフジテレビ系で全52話で放送された虫プロダクション製作のSFアニメ。モノクロ。提供はロッテ。
漫画版
概要
『週刊少年マガジン』に6回(1965年13号 - 18号)のみ掲載の後、設定を見直した上で『週刊少年サンデー』に移籍して連載(1965年5月30日号 - 1966年5月8日号)。
掲載誌変更の経緯についてはW3事件の項目を参照。
あらすじ
銀河パトロール要員の宇宙人3人が銀河連盟から派遣されて地球にやってきた。彼らの任務は1年の調査の後、そのまま地球を残すか、反陽子爆弾で消滅させるかを決定することであった。ボッコ、プッコ、ノッコ(マガジン版では隊長、ガーコ、ノンコ)の3人は地球の動物の姿を借り調査をすることにし、それぞれウサギ、カモ、ウマとなる。星真一少年はひょんなことから、彼らと知り合い行動を共にすることになる。一方、真一の兄、光一は世界平和を目指す秘密機関フェニックスの一員として破壊活動に従事していた。(マガジン版はここら辺まで)
争いの止まない地球の実情から、反陽子爆弾による破壊を連盟から命じられた3人だったが、真一を通じて地球人の可能性に対する信頼を育てていた3人は命令を拒否する。罰として記憶を消去されて、何処かの星の人間として島流しとされることになった3人は、皆、地球を希望する。地球に送り出された彼らは時間を遡り、真一の身近にいた3人となる。 主人公、星真一の名前はSF作家「星新一」に、その担任馬場先生の名前は馬場のぼるにちなむ。
コミックス
- サンデーコミックス『W3(ワンダー・スリー)全2巻』秋田書店
- 秋田漫画文庫『W3(ワンダー・スリー)全3巻』秋田書店
- 手塚治虫漫画全集『W3(ワンダー・スリー)全3巻』講談社
- 手塚治虫傑作選集『W3(ワンダー・スリー)全2巻』秋田書店
- 秋田文庫『W3(ワンダー・スリー)全2巻』秋田書店
アニメ版
スタッフ
- 原作・総監督:手塚治虫
- プロデューサー:池内辰夫
- プロデューサー補佐:黒川慶二郎
- チーフディレクター:杉山卓
- 脚本:丘津宏、月岡貞夫、高木厚、佐脇徹、三木瀬たかし、山崎邦保、杉山卓、若林一郎、手塚治虫、大沢健一、唐十郎、波多正美、柏倉敏之、北斗輝、鈴木良武
- 演出:岡崎稔、岸本吉切、月岡貞夫、高橋良輔、高木厚、斎出光布、柴山達雄、手塚治虫、杉山卓、富岡厚司、大貫信夫、波多正美、鈴木良武
- 作画監督:中村和子
- 作画:杉山卓、中村和子、大貫信夫、三輪孝輝
- 音楽:宇野誠一郎
- 美術監督:伊藤主計
- 音響監督:鈴木芳男
- 技術監督:山浦栄一
- 仕上監督:進藤八枝子
- 編集:松浦典良
- 資料:三上康雄
- 音響効果・録音:アオイスタジオ
- 広告代理店:東急エージェンシー
- 制作協力:フジテレビ
- 制作:虫プロダクション
キャスト
- ボッコ:白石冬美:銀河パトロール隊員。少佐・ウサギに変身している。
- プッコ:近石真介:銀河パトロール隊員。中尉・カモに変身している。
- ノッコ:小島康男:銀河パトロール隊員。兵長・ウマに変身している。
- 星真一:沢田和子:地球人の少年。W3と行動を共にする。
- 星光一:金内吉男: 真一の兄。世界の平和を守る秘密諜報機関「フェニックス」のメンバー。
- 星兄弟の母:桜井良子
- 星兄弟の父:池田一臣
放送リスト
- 宇宙からの三匹
- 24時間の脱出
- シャングリラの謎
- くすの木物語
- 浮ぶ要塞島
- 摩天楼動物園
- シバの女王
- サーカスの怪人
- 沈むな太陽
- ミイラ工場
- 北の谷の決斗
- モグラモチ計画
- 食鉄魚
- 野犬の砦
- 犠牲は許されない
- 我が名はX
- 黒いエキス
- サイロ爆破せよ
- フェニックス物語
- 狂った標的
- 火山の冒険
- 危険なステージ
- 嵐の対決
- 謎の発明家
- 死の自動車レース
- 海底にかける橋
- ダイヤモンドへの招待
- 稲妻の谷
- 消された一日
- ペンギン作戦
- キキ・カイカイ
- ちびっこ合戦
- 四人の魔女
- 雪女
- 片目の灰色狼
- ジャングルのちかい
- アマゾンのなぞ
- 恐怖のスキー大会
- サバクの英雄
- グランドピアノの秘密
- とび出せプッコ
- ワンダースリー西部を行く
- 宇宙からの恋人
- 動く大仏像
- 人工衛星ドロボウ計画
- 大ワニ騒動
- くたばれテキーラ
- 危険なフーセン旅行
- スモッグミサイル
- てんてこマシーンでやっつけろ
- 地底のクジラ
- サヨウナラ・ワンダースリー
主題歌
「ワンダースリー」(作詞:北川幸比古、作曲:宇野誠一郎、歌:ボーカル・ショップ、白石冬美、近石真介、小島康男)
- OPは、スタッフおよび提供スポンサー(ロッテ)のテロップの有る物と、無い物の2種類が有る。懐かしのアニメ特集等では、専らテロップ無しの物が使われたが、DVD化の時は双方が収録された。
- 日本映画専門チャンネルでは、「24時間まるごと手塚治虫」の時はテロップ無しの物が使われたが、「手塚治虫アニメシアター」ではテロップ有りの物が使われた。
- テロップ有りヴァージョンのラストは、「♪ワンダースリ〜、ワンダースリ〜...」の歌に合わせて、「提供 ロッテ」の「ロッテ」の部分が揺れ動くという、異色のパターンだった。
余談
- アニメ版のメインスタッフである杉山卓によると、この作品のアニメ化企画は、相次ぐ新規採用で人員がややだぶつき気味であった虫プロで、メインスタッフにありつけなかったメンバーに活躍の場を与えようという意図も含まれていたという。
- アメリカでは、Erika Film Production の手によって、"THE AMAZING 3"のタイトルで放送された。エンドロールでの手塚の表記が"OSAMO TEDUKA"になっている。
W3とウルトラQ
放映開始からしばらくは常時20%台を維持する好視聴率をマークしていたが、その後TBSが裏番組に円谷特技プロダクションの特撮番組をぶつけてくることが判明し、円谷の特撮技術をよく知っていた手塚治虫は番組の前途を危惧した手塚治虫『観たり撮ったり映したり』キネマ旬報社、1987年、P194。その番組『ウルトラQ』が始まるや、『W3』の視聴率は急落、月曜19時30分枠への時間帯変更(正確には『快傑黒頭巾』との枠交換)のやむなきに至った。手塚は『ウルトラQ』第1話の放映を見たとき、息子である手塚眞の興奮ぶりが「すごいものであった」と記し、クライマックスが終わってから『W3』にチャンネルを変えたとき「ああ、これで負けた!」と感じたという。
一方手塚眞は著書『天才の息子』(ソニーマガジンズ、2003年)の中で、以下のように記している。珍しく手塚が家族と夕食を共にした席で『W3』が放送される時間に、妹とそれぞれ別の番組(名前は明記されていない)が見たくてチャンネル争いをしていた。それを見かねた母親(手塚夫人)は「お父さんの番組を見なさい」と叱ったが、そのとき手塚が「子供の観たいものを観せなさい!」と怒鳴り、眞と妹はびっくりして声も出ず、母親は驚いて泣き、気まずいムードになったという『天才の息子』P33。手塚眞は、彼ら子どもたちが手塚のアニメを見なかったのは「嫌いだとかつまらないというより、身近すぎていつでも見られるという印象を持っていたからです」「ぼくらにとっては漫画もアニメも家業に過ぎません。他の家の子供のように待ちわびるということがあまりなかった。ああ、今日テレビでやっているのか、そんな感じでした」とも記している。このエピソードは漫画『新・ゴーマニズム宣言』(小林よしのり著)でも描かれている。。
円谷特技プロダクション創設者である円谷英二の息子であり、当時フジテレビ映画部に所属して『W3』を担当していた円谷皐は、ウルトラQが始まり、W3の視聴率が一気に一桁台に急落して複雑な気持ちだったと述懐している。
脚注
関連事項
- W3事件
- 宇宙少年ソラン
- 豊田有恒
- ウサギを主題とする作品一覧
外部リンク