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いとしのエリー 10

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いとしのエリー』は、1984年から1987年まで週刊ヤングジャンプに連載されていた高見まこによる日本の漫画作品、及びそれを基にした日本の映画作品。

作品・概要

新任教師と都立高校に通うごく普通の高校生との恋模様を描いた恋愛漫画。連載が購買年齢層が成年付近である週刊ヤングジャンプ(以下YJ)であったことから、一般的にタブーとされている未成年者の喫煙・飲酒シーンがあり、また生徒と教師の恋愛と過激な性描写もあった。この禁断の恋愛や年下男性と年上女性の恋愛といった作風は以降の高見作品のベースになった。ヤングジャンプ・コミックス全20巻の他、復刻版も多数発売される。

連載は上野が高校1年生の夏休みから始まり、ほぼ実際の季節に準じて学校行事やスキー、五山送り火などのイベントが進行、当初はHをしたがる上野と、それをかわす串田をコミカルに描いていたが、真名古や平石、そして今泉の登場以降はさまざまな人間関係が入り乱れる恋愛ドラマとなっていくと同時に、上野の精神的な成長を描く物語となる。最終回は高校生活最後の行事である卒業式で幕を閉じた。

またタイトル、内容ともに当時の流行・有名人などが反映されている(当時TBS系列のテレビドラマ『ふぞろいの林檎たち』の主題歌であったサザンオールスターズの同名タイトル曲「いとしのエリー」にはじまり、楠田枝里子、小泉今日子、清水健太郎など)。

登場人物

都立三田町高校

清水や本土寺が髭を生やしても許容されており、校規はややゆるい傾向にあるがアルバイトは原則禁止されている。生徒が放課後に渋谷に行くことが出来、上野が高田馬場(のち高円寺・西荻)、ヤン坊(後に枝理子も)が実家の五反田から通学している。さらに通常は私服通学で標準服がブレザーであること、校名から東京都立三田高等学校がモデルと思われるが、校舎や校規に共通点はない、架空の学校である。

串田枝理子 (くしだ えりこ)
上野は「エリー」と呼ぶ(たまに真名古も)。上野の7歳年上。三田町高に新任で入ってきた美人英語教師で2年生まで上野を受け持つ。夏休みに鎌倉の海岸で偶然出会った上野と親密になり、生徒と教師の一線を越えてしまう。が、それは“ひと夏の関係(=遊び)”と最初から割り切っており、上野にもそれを受け入れさせた。その後の上野のアプローチも立場もあって意に介さなかったが、それでもめげない上野の一途な思いに次第に惹かれ、享受してゆく。だがそれは上野が学生としての本分を忘れ、串田の立場を顧みない行動を次第に助長させる要因となり、その全てを受け入れた自身が疲弊する元ともなった。
大学生(慶應大学)時代は遊び人だったことを自認し、六本木のディスコに通いつめたり、パチプロ並みにパチンコに興じていた。また中村と不倫、心酔しきっていて、真名古の思いは全く知らなかった。
恋愛に関しては相手にニコニコ応じているうちに、気づいたらにっちもさっちもいかなくなる方だと言われ、納得している。しかし一度自分が信じたことは父親譲りの頑固な性格もあり頑なに崩そうとはしない。
8歳離れた弟(康幸)がいる。串田曰く「上野よりしっかりした子」
上野晋平(うえの しんぺい)
1月13日生。1年生の夏休みに海岸でのアイス売りのバイトの最中に串田と出会う。串田が初体験の相手だったがそれは前述の“ひと夏の関係”でしかなく、串田の態度にかなり憤慨した。しかし思いを諦めきれずアプローチし続け、次第に串田の想いを引き寄せてゆく。だが串田の社会的立場を考えない甘えた言動が仇となり、串田は上野の問題があるごとに頭を下げ、周囲に関係がバレないように警戒し、疲弊してゆく。
成績は最初こそ中の上だったがその後は“赤組(赤点組)”で、夏休みの出会い以降は串田に執着し過ぎ進級・進学が危ぶまれ、3年生になる前までテストがあるごとに補習を受けていた。さらに家出や問題行動が累積した事で卒業が危ぶまれる事態に発展する。
本人曰く「母性本能を刺激するタイプ」。現に上野と交際した女性は皆、上野の為にあれこれと尽くしている。しかし優柔不断な性格が災いし、特に今泉と串田の件に関しては大きなトラブルを生んだ。
真名古敬一(まなこ けいいち)
上野の3年生時の担任。串田の大学時代の同回生だが、高校時代に1年留学、大学受験で一浪しており串田より2歳年上。長身で美男の九州男児で女子生徒に絶大な人気を誇る。愛車はミニクーパー。串田に数ヶ月遅れて英語の産休補助教員として赴任してきた。大学時代モテながらも内心は串田に好意を寄せていたが、串田は当時中村に心酔していたことからアプローチは出来なかった。その後正規採用を機に積極的に串田に交際を迫り、周囲にも交際しているように吹聴し外堀も埋めようとする。高校就任直後は上野を子供扱いし意にも介さなかったが、二人が箱根に3泊旅行していた事を突き止めその関係を知ると、上野を引き離し串田を自分のものにしようと画策する。
名前は実在する俳優、真名古敬二から取られているYJコミックス1巻カバーにコメントを執筆している。現在は真那胡敬二として『水戸黄門 (里見浩太朗)』などで活動、オンシアター自由劇場→コスモプロジェクト。
清水文太郎(しみず ぶんたろう)
上野、本土寺の三人で「3バカトリオ」と言われる中のひとり。ヒゲを生やし、大人びたプレイボーイ。故に女心もよく理解する。最初は上野と串田の関係を知らず好意を寄せていることを茶化していたが、のちに真剣に恋愛をしていることを誰よりも早く見抜くと二人の仲を黙認、上野に助力するようになる。上野の悪友であり良き相談相手である。隣野を説得し上野と離れさせてからは5股をすべて清算し隣野と純愛に発展する。4月生まれの為高校3年生(18歳)になってからすぐに自動車免許を取得した。実家は美容室。初対面の上野や本土寺に胸やパンティーを見せる豪快な姉・文緒がいる。
恋愛については高校生でありながら達観の域に達しており、女性心理を上手く利用し手玉に取ることもある。が、隣野には内緒で5股かけていたことで頭が上がらない。
隣野美代子(となりの みよこ)
明るい性格と可愛らしさ、器量の良さで学校でも人気者。そんな彼女が誰かと付き合いたくてバレンタインデーに上野に本命チョコをあげた事から交際がスタートする。しかし上野は串田のことばかり考えていつもうわの空で、さらに入院した上野を見舞い親しくする串田を見て心の中にわだかまりが生じていた。そこに同席していた清水に(上野の優柔不断で隣野が悲しまないように離れるよう)説得され、それを機に清水と付き合うようになる。それ以降も上野の個人講師をするなど仲は良い。兄の成年雑誌などを借りて読んだりすることから男子の嗜好などに明るく、女友達との新しいお店の開拓に目がないミーハーな面を持つ。
恋愛に関しては中学生時代に彼氏がいたこともあり多少“男慣れ”している。セックスに多少関心はあるものの、真面目な関係の先にあるものと考えている(なので本来は清水のような遊び人タイプは苦手)。上野の気持ちを訊く為に後ろから抱きついたり、清水に上目遣いでお願いをするなど「女の武器」の使い方が上手い。
串田の事故を機に、清水から自分が上野と付き合う以前より串田と付き合っていた事実を知る。が、串田が上野との別離後にかなり深い悲しみを負っていた事がよりショックであった。以降は清水と一緒に上野の後押しをするようになる。
本土寺マコト(ほんどじ まこと)
3バカトリオのひとり。とは言っても上野らと行動を共にしていただけで学力は高い。常に敬語で「〜デス」「〜デスよ」が口癖。清水と対照的なベビーフェイス。ヒゲを生やしているが、薄くて剃り残しの様になっている。2年生の夏に予備校で出会った後藤順子という彼女が出来るが、真面目すぎる付き合いと手の遅さを清水と上野に馬鹿にされている。軽井沢旅行までは皆と行動を共にしていたが、それ以降は後藤と受験勉強に入り周りの情報に疎くなる。本土寺は実在するモデルがいる高見展(まこと)という人物で、YJコミックスのカバーにコメントを残している。
串田康幸(くしだ やすゆき)
串田の弟。通称「ヤン坊」。奇しくも上野と誕生日が1年違いで体格もほぼ一緒だったことから、誕生日プレゼントの手編みセーターをめぐって上野が勘違いを起こす元となる。上野の事は姉から良いことも悪いことも聞いており、気さくな性格もあって上野と親しくなる。初登場時は中学3年生。のちに三田町高に入学し後輩となり、清水や本土寺とも親しくなる。
平石哲哉(ひらいし てつや)
慶應大学の英文科に進学する三田町高の卒業生で元テニス部のキャプテン、元生徒会長。有名自動車会社の子息であることはひた隠しにしている。将来留学をする為の口実で春休みから串田に英語の教えを乞い、より接触を謀る。在学中から串田に好意を寄せていた事を上野に知られるが「卒業生の余裕」「社会的立場の安定」で対立する。自分の車(MR2・AW11)で上野と串田の思い出の地と知らず串田と鎌倉を訪れ、ホテルでキスをした後に串田の口から思わず『上野君』と名前がこぼれた事から串田の心の深層に上野が存在する事を知り、挫折を味わった事の無い彼が精神的に追い詰められる。

その他

中村敦(なかむら あつし)
慶應大学に勤めていた教授。串田にいた彼氏との間に強引に割り込んで不倫していた。串田を手中に収めるために手段を選ばない自分勝手な性格ではあるものの、その包容力から串田は不倫ではあるものの“大人の恋愛”に心酔していた。その後、継父の紹介で北海道へ転勤することになり串田を誘うが、串田は両親の大反対から冷静に思い直し去ってしまう。しかし串田のことを忘れられずよりを戻そうと1年後に連絡を取ったことから、串田は決着をつけようと上野を騙し北海道に行ってしまう(この北海道編のストーリーが映画版のプロットとなっている)。
今泉今日子(いまいずみ きょうこ)
三田町高校の近くの都立渋山高校の生徒で上野と同学年。ショートヘアで隣野以上に快活で積極的。兄とその友人達とスキー場に居たときに上野が衝突、夜に捻挫した上野の様子を見に行ったことから三田町高のメンバーと知り合いになり、その後三田町高へ押しかけ上野を追いかけるようになる。隣野とは電話で恋愛話するほど仲が良い。学力はワセダに推薦入学するレベル実際には都立校は早稲田大学への推薦枠は持っていない。で物語中の高校生の中では最も優秀。そのことから上野の学力アップの為に個人指導を申し出て交際をスタートさせる。しかしその後の上野の煮え切らない態度に憤慨し、上野が下宿をした時の引っ越し祝いで酔った勢いでファーストキスの相手が上野だった事を暴露、串田が上野から離れ平石へ傾く要因を作った。
恋愛については言葉の端端から、何もかも上野が“初めての男性”だったようである。故に独占欲が強く、曖昧な事が嫌いな性格上好きになったら一直線で周りの事は顧みないが、行き過ぎた行動は事後に反省・謝罪する為、その性格の良さから関係を断ち切れなかった上野の優柔不断の被害者でもあった。

物語前半〜中盤ストーリー

※ 以下の時系列は上野の学年を基準にしてある。

物語前半

物語中盤

物語後半から結末まで

昭和後期の時世を反映した内容

作品のYJ掲載期間(昭和59年〜62年)は昭和後期で、作品・概要にあるとおり物語にその当時の時世が色濃く反映されている。その多くは平成年代になってから姿を消した、あるいは見ることが少なくなったもので、当時の生活様式を垣間見られる側面がある。以下は物語に登場した、時世を反映している物を挙げる。

  • 0系新幹線 - 愛称「ひかり」。上野や母親が京都に行く際に使用した。[[199