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さくらん/安野モヨコ
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著者: 安野モヨコ
巻数: 1巻
最新刊『さくらん』
『さくらん』は、安野モヨコの漫画作品。映画化され、2007年2月24日に公開された。
概要
江戸・吉原で育ったきよ葉が、花魁になるまでの葛藤や苦涯、事件などの人生模様が描かれている。
講談社の雑誌『イブニング』に2001年9月号から2003年第7号まで不定期連載された。現在、単行本は講談社より第1巻まで発売されている。ストーリー展開としてはひとまず完結している状況である。2005年1月から『イブニング』で第二部の連載がスタートしたが、連載は現在停止状態である。
あらすじ
吉原の玉菊屋に連れてこられた8歳の少女はきよ葉と名付けられ、高級花魁で気の強い粧ひに面倒を見られることに。何度も脱走を試みるきよ葉だが粧ひや玉菊屋の清次などに導かれ花魁になることを決意する。17歳になったきよ葉は持って生まれた美貌と気性の強さで一躍売れっ子となる。やがてきよ葉は、お客として来た青年・惣次郎と恋に落ちるが……。
設定
遊女屋
- 玉菊屋(たまぎくや)
- 吉原の遊女屋で主人公のきよ葉らが在籍する店。粧ひを初めとする人気花魁を次々輩出している。
- 松葉屋(まつばや)
- お染が在籍していた店。
登場人物
玉菊屋
女郎
- きよ葉(日暮)
- 物語の主人公。禿のときの名前は「とめき」、引込のときは「おりん」、新造のときは「きよ葉」、第二部(花魁)での名は「日暮(ひぐらし)」。
- 幼少の頃に玉菊屋に売られる。北の方の出身だが、吉原に来る前のことは記憶にないと言っている。禿時代は、このまま吉原にいれば恐ろしい花魁になってしまうと思い何度も脱走を図るが全て失敗しており、その度に折檻を受けている。粧ひが身請けされ吉原を出る際に、金蒔絵の長ぐしをもらった為、吉原から逃げ出したくても逃げ出せなくなった。
- きよ葉の年に似合わぬ微笑み見たさに、新造出しから三ヵ月後にはお大尽が列をなした。新造出しには三百両かかった(これは三雲の借金となる)。「十年に一人の天神」と評される名器の持ち主。話や歌などは上手いが琴は苦手。
- 惣次郎に惚れ込み、男装をして脱走し、三松屋まで会いに行くが、その帰り道で玉菊屋の男衆に見つかり連れ戻され、三日三晩、水責め・火責めの折檻を受けるが、映画版では折檻のシーンは無かった。本来の名は不明。遺児あるいは孤児だった可能性がある。
- 三雲
- 粧ひが吉原を去った後の玉菊屋で1番の人気で、きよ葉の面倒を見ていたが後に力をつけたきよ葉と玉菊屋で一、二を争うようになる。非常に嫉妬深く、ご隠居がきよ葉の突き出しの相手となることを知ると、隠れて禿を殴り怒りをぶつけた。
- 粧ひに対して「いいのは見た目だけ」と発言し、いがみ合っていた。
- 映画版では登場せず後述の高尾にその設定が受け継がれている。
- 高尾
- 美しいが嫉妬深く、情熱的な面がある。光信という間夫がおり、剃刀で相対死にを試みたが自分だけ殺される。
- 映画版では隠居の馴染となっており、漫画版の三雲の設定が受け継がれている。
- 若菊
- 惚れ込んだ間夫に会いたいがために身揚りで7日も休み、髪も結えないほどに借金がかさんでしまう。きよ葉を妬み、惣次郎ときよ葉を離させようとする。
- 梅葉
- きよ葉に自分の間夫を取られ、その間夫に誓いを立てるために、左手薬指をカミソリで切断し、その間夫に送った。周囲の女郎に切断して欲しいと頼むが断られた為、きよ葉に頼んで切ってもらった。
- 粧ひ
- 禿だった頃のきよ葉の面倒を見、女郎として一人前になるための手練手管を教え花魁になることを決心させた。気が強く根性は悪いが美人で機転が利いてその上、床上手であった為、番付では常に上位3番に入った。過去に医者、和尚に求婚されたが断り、後に大店の材木問屋の若旦那に身請けされ、吉原を出た。吉原を出る際に、初めての給金で買った金蒔絵の長ぐしをきよ葉に譲り渡す。花魁にのぼり詰めるための覚悟を託す意も込められた、最後の贈り物であった。
その他
- 清次
- 玉菊屋の男衆。きよ葉が幼い頃からいた。
- 映画版では玉菊屋の一人娘との縁談が決まっていたがきよ葉の身請けの日にきよ葉と駆け落ちをする。
- 楼主
- 玉菊屋の主人。大晦日の無礼講で庭の池に放り込まれた。
- 女将
- 玉菊屋の女将。きよ葉の言動に気を揉んでいる。
- 遣り手婆
- 遊女たちの世話人。恰幅のいい女性。きよ葉達遊女の折檻も行う。
- にほひ
- 粧ひについていた禿で、きよ葉の朋輩。
- 恵まれた容姿ではないため遊女にはなれないときよ葉にぼやく。
- しげじ
- 元々は高尾の禿で、高尾が死んだ後はきよ葉が面倒を見る。
松葉屋
- お染(おそめ)
- 年齢はきよ葉のひとつ上で、きよ葉とは稽古所が同じだった。きよ葉とは「2人きりのときだけ泣いてもよい」という約束をしており、辛いことがあると2人で川に行き、思いっきり泣いていた。引込新造時代からあしらいを知っていた為、松葉屋の人気花魁・瀬川を越える売れっ子になると周囲から期待される。突き出しは五百両をかけて盛大に行われるが、ほどなくして死亡する。松葉屋は、死因をはやり病としたが、自殺したか折檻のしすぎで死亡したと噂される。
- 瀬川
- 松葉屋の人気女郎。顔は一度も登場しておらず、名前もお染の説明のとき以外は登場していない。
客
- 倉之助
- 武士。花魁道中をする日暮を見初め、客になる。潔い態度の日暮をますます好み、後に馴染みとなる。きよ葉を請け出そうとした。
- 惣次郎
- 商家・三松屋の総領息子。元々は三雲の客だが、後にその名代として惣次郎を相手にしたきよ葉の間夫となる。実は遊び人で、遊女屋でのしきたりを知らないふりをしていた。
- 光信
- 浮世絵師。高尾の間夫で高尾を殺害し、逃走。高尾からは「光さん」と呼ばれていた。
- 坂口
- 地方の大名。犬好きで、犬の真似をして座敷に入ってきたきよ葉を気に入る。
- 文左衛門(ご隠居)
- 高野屋の旦那で、若い頃から吉原で遊びぬいた人物。おとなしい女郎を好み、若いというだけで芸のない新造を嫌う。三雲の間夫で、きよ葉が三雲に一杯食わせられる原因を作った人物である為、きよ葉とは因縁の仲。また、きよ葉には「クソじじい」と呼ばれている。しかし、後々にきよ葉を気に入り、きよ葉の突き出しの相手となる。
- 漫画では三雲の馴染みで、映画では高尾の馴染み。
- 若狭屋の旦那
- 三雲の間夫だが、きよ葉を妙に気に入っている。きよ葉を新造の時からかわいがっているので突き出しを狙っていたが、ご隠居の根回しによりできなくなった為、怒りを露にしていた。
その他
- 虎次
- 女衒の男で、きよ葉を玉菊屋に連れてきた。
- 花屋
- 玉菊屋に花を売りに来た際に、きよ葉に一目惚れする。
書誌情報
イブニングKCより
- 第1巻(2003年11月6日発行)ISBN 4-06-334829-6
映画
上記漫画を原作とした映画作品が蜷川実花監督のもと、2007年2月24日よりシネクイントをメイン館に首都圏関東公開、同年3月3日より全国150館拡大公開された。主演は「下妻物語」で注目を集めた土屋アンナ、助演は「亡国のイージス」で出演した安藤政信、脚本はタナダユキ、音楽監督は椎名林檎。PG-12指定である。
第31回日本アカデミー賞で、優秀音楽賞を椎名林檎、優秀美術賞を岩城南海子が受賞した。
また、エキストラには原作者の安野モヨコとその夫の庵野秀明も出演している。
スタッフ
- 監督:蜷川実花
- 原作:安野モヨコ
- 脚本:タナダユキ
- 音楽:椎名林檎
- エグセクティブ・プロデューサー:椎名保
- チーフ・プロデューサー:豊島雅郎
- プロデューサー:宇田充、藤田義則
- アソシエイト・プロデューサー:谷島正之
- ライン・プロデューサー:中林千賀子
- 撮影:石坂拓郎
- 照明:熊谷秀夫
- 美術:岩城南海子
- 装飾:相田敏晴
- スタイリスト:伊賀大介、杉山優子
- 生花デザイン:東信
- グラフィック・デザイン:タイクーングラフィックス
- 視覚効果]]:橋本満明
- 録音:松本昇和
- 編集:森下博昭
- スクリプター:小泉篤美
- 制作担当:本藤雅浩
- 助監督:山本透
- ライン・プロデューサー:中林千賀子
- 日本江戸文化スーパーバイザー:藤原千恵子、峰崎博次
- 三味線演奏:常磐津文字東久
- 振付・所作指導:花柳錦翠美
- 特別番組制作:タイムワープ
- 製作:蜷川組「さくらん」フィルム・コミッティ(Asmik Ace Entartaiment inc.、PARCO、講談社、テレビ朝日、ABC、TOWER RECORDS、WOWOW、メ~テレ、シネマ・インヴェストメント、dentsu)
キャスト
- きよ葉・日暮:土屋アンナ
- 倉之助:椎名桔平
- 惣次郎:成宮寛貴
- 高尾:木村佳乃
- 粧ひ:菅野美穂
- 光信:永瀬正敏
- 若菊:美波
- 大工:山本浩司
- 坂口:遠藤憲一
- 幼いきよ葉:小池彩夢
- しげじ:山口愛
- お蘭:小泉今日子
- 楼主:石橋蓮司
- 女将:夏木マリ
- ご隠居:市川左團次(特別出演)
- 清次:安藤政信
- 桃花:蜷川みほ
- 揚羽:兵頭有紀
- 琴音:もたい陽子
- 空蝉:松下恵
- 昼顔:月船さらら
- 夕凪:藤森麻由
- 舞鶴:中村ゆり
- つつじ:海老沢神菜
- 雪路:近野成美
- 白玉:杉林沙織
- にほひ:吉田里琴
- みやこ:矢口蒼依
- 遣手:星野晶子
- 吉造:野村貴志
- 小春:飯沢もも
- 明石:真中莉子
- 浮船:彩輝ゆう
- 若狭屋:影山英俊
- 粧ひの客:津田寛治
- きよ葉の客:長塚圭史
- 床紅葉の客:SABU
- 日暮の客:丸山智己
- 花屋:小栗旬
- 俺達:会田誠、安藤武徳、庵野秀明、忌野清志郎、大森南朋、小川洋之、小山登美夫、ゴリ(ガレッジセール)、古厩智之、村松利史
- 客:天田暦、飯塚俊太郎、井川哲也、大迫茂生、椎名泰三、芝崎昇、渋川清彦、清水伸、杉本凌士、清家栄一、田島俊弥、山田強
主題歌
- 主題歌「カリソメ乙女(DEATH JAZZ ver.)」 椎名林檎×SOIL&"PIMP"SESSIONS
- エンディング「この世の限り」 椎名林檎×斎藤ネコ+椎名純平
アルバム
- 『平成風俗』 椎名林檎×斎藤ネコ
- 本作のサウンドトラックアルバムのリリースはされていないが、本作をイメージした音楽作品として、本作の上映日より3日早い2月21日にリリースされた。ヴァイオリニスト斎藤ネコとの共同作品であり、「椎名林檎」の名義では4年ぶりにリリースするアルバムでもある。
ロケ地
- 権現堂堤(埼玉県幸手市、桜バックの菜の花のワンシーン)
- 登別伊達時代村(北海道登別市)
- 堀口養魚場
- 多摩動物プロダクション
- 日産フィナンシャルサービス
- 常総フィルムコミッション
- 茨城県ワープステーション江戸村
- 水海道第一ホテル
- ホテルニュータカハシ
- 埼玉県ロケーションサービス
- 幸手市観光協会
関連項目
- 吉原 (東京都)
- 花魁
- 平成風俗
- 女郎
- 遊女
- 吉原炎上(映画)
外部リンク