HOME > コミック > エルフェンリート > 12の詳細

エルフェンリート 12

共有

エルフェンリート』(elfen lied)とは岡本倫による青年漫画、およびそれを原作としたアニメ作品である。

概要

  • 週刊ヤングジャンプにて2002年27号より週刊連載を開始、2005年39号終了。単行本は全12巻。
  • アニメ版は主人公の強さとグロテスクさが受け、海外ではかなりの人気がある。2004 AnimeReactor Community AwardsにてBest Opening/Ending コンビネーション、Best Drama、Best Thriller(Mystery/Horror)、Best Fanservice受賞、ルーシーはベスト女性キャラ受賞。又、American Anime Awards 2007 at New York Comic-Con(初回)において"Best Short Series"にノミネート(5作品ノミネート、受賞は逃す)。2009年度フランスで開催されたJapan Expoにおいて、ファンのネット投票による日本の人気アニメ・漫画作品などを決める「JAPAN EXPO AWARDS 2009」のベストオリジナルアニメ賞を受賞した。
  • マンガ単行本のカバーイラストやアニメDVD(国内販売)のパッケージだけを見ると萌え系の美少女がたくさん登場するごく普通のマンガやアニメに見られ(実際、萌えは本作品を構成する要素の1つとしては全く正しいのだが)、それと同時に残酷なバイオレンスやスプラッターシーン、児童虐待、ヌードなどのエロスシーン、サイエンス・フィクション、さらにはナンセンスなギャグまで描かれているのが本作品の表面上の特徴である。特に、アニメでのバイオレンスシーンはグロテスクかつリアルに描画されている。
  • しかし、本作品の根底には差別や孤独に対抗する人間性(humanity)や主人公の純愛が描かれており、アニメを監督した神戸守は作品の解説として次のように述べている。「一人の人間の中でこれらのことは複雑に絡みあっている。平凡であることへの劣等感。他人との違いによる劣等感。同じ境遇の者への親近感。そして、救い。この作品は表面的にはお色気、ラブコメ、バイオレンスだが、本質は差別と救いであろう。社会問題にもなっている苛め、つまり差別はこの作品の中に詰まっている。誰しも救いは求めている。」アニメ版公式サイト:Backstage:Comment(神戸守)
  • 海外での人気の高さからニューヨーク・タイムズ(2005年7月17日)においてアニメが紹介された。角を「かわいい小さなネコ耳」と説明するなど記事の内容が一部不正確かつ不十分であるが、海外でDVDを販売しているADVフィルムは2005年ベストセラー作品の1つであると紹介し、近年の日本アニメ屈指の有名作扱いされているニューヨーク・タイムズ:Mean Girls:Charles Solomon:New York Times Published on July 17, 2005
  • ハリウッド映画化の話もあったが、すぐに中止になった岡本倫 HOMEPAGE:diary:2007年08月08日(水)
  • ちなみに岡本倫のデビュー作も同名の名前が付けられている。ストーリーは全くの別物で、事故でピアノをやめた型破りな男性ピアニストとバイオリンに転向して一流の奏者となった元天才ピアニストの女性の物語。

あらすじ

側頭部の対となる2本の角とベクターと呼ばれる特殊な能力を持つ女性型ミュータント・二觭人(ディクロニウス、觭は{角奇})。彼女らは人類を淘汰する可能性を持つとされ、離島の国立生態科学研究所に国家レベルでの極秘機密として隔離、研究されている。

ある日、偶発的な事故によって研究所に隔離されていたディクロニウスの少女・ルーシーは拘束を破り、警備員と研究所室長・蔵間の秘書・如月を殺害、研究所からの脱走を試みる。海に飛び込む直前に頭部に対戦車用徹甲弾劇中では「対戦車ライフル」とされていたが、狙撃手が「50口径」と発言している事から「対物狙撃銃」の誤り。形はアークティク・ウォーフェア・マグナムをカスタムした様であるがの衝撃を受けるが幸い軽傷で済み、彼女はそのまま海へ投げ出される。

一方、大学に通うため親戚を頼りに鎌倉にやってきた青年・コウタはいとこのユカと共に由比ヶ浜を訪れた際、そこで浜辺に佇む全裸の少女を見つける。その少女は、海に落ちた後由比ヶ浜に流れ着いたルーシーだった。

ルーシーは逃げ出す際頭部に受けた衝撃で記憶を失った上、人格が分裂して全く別の人格に入れ替わってしまっていた。「にゅうにゅう」としかしゃべることの出来ない彼女をにゅうと名付けたコウタとユカは、彼女が人類を滅亡させる存在とは知らずににゅうをコウタが住むことになる楓荘に連れて行き、一緒に暮らす事になるのだが……。

登場人物

ディクロニウス

ルーシー
声 - 小林沙苗
本作のメインヒロインにして主人公。現人類を絶滅に追い込むことのできる新人類「ディクロニウス」のオリジナルかつ唯一生殖機能を持った個体。物語の序盤で研究所を脱走した際に頭部に受けた衝撃が元で人格が分裂、にゅうの人格が生まれる。それ以来、頭部に衝撃を受けるとルーシーの人格とにゅうの人格が入れ替わるようになる。物語の序盤では頭部に衝撃を受けたことで記憶喪失になっていたが、後に角沢教授に拉致された事件がきっかけで記憶を取り戻す。ベクターと呼ばれる見えない腕を使いDNAからの声に従うように人類を殺し続ける殺人鬼。ただし何があってもコウタと動物(特に犬)は傷つけず、蔵間に関しては敢えて殺さない。
ベクターの射程は全ディクロニウス中最低の2m。ただし力については最も強い。アニメでの最大本数は4本。なお「ルーシー」という名前は本名ではなく、研究所で1972年に発見された類人猿の化石に由来して付けられたコードネームのようなものである。髪は長髪(子供時代は短い髪だった)だが、原作終盤でDNAの声に意識を乗っ取られた時とアニメの終盤では一時的に子供時代と同じ短い髪になった。
最初は捨て子だったらしい描写があり、その後養護施設で幼少期を送る。角のせいで他の子供達に虐められ、やがて内緒で飼っていた犬をいじめっ子に目の前で殺されたのをきっかけにベクターが発動し、施設の子供達を惨殺し逃走。その後は人を殺して一夜の宿を得たりしながら彷徨っていた。本編開始の8年前に鎌倉へ家族で遊びにきていたコウタと出会い、初めは彼を拒絶していたが、自分の角に偏見を持たないどころか「かっこいい」と評価し一緒に遊んでくれたコウタに心を開き、彼に好意を抱くまでになった。だが、ぼんぼん祭でユカに抱きつかれているコウタの姿を見た際コウタに裏切られたと勘違いし、ここで初めてDNAの声に従ってその場にいた無関係な人々を殺害。更にその後、帰りの電車に乗っていたコウタの前に現れ、コウタの目の前で彼の妹と父親を惨殺してしまう。しかしコウタへの想いは長年持ち続けており、それが最終的にはDNAの声に逆い自らを滅することに繋がった。その後は研究所に捕らえられ数年間厳重に拘束されていたが、角沢教授の画策により移送中に逃亡する。
コウタを傷つけない理由は前述の8年前の事件で彼の家族を殺したことを後悔しているため。コウタの居場所である楓莊の住民(ナナも含む)もその対象に広げられている。動物、特に犬を傷つけないのは前述の子犬を殺された事件のため。蔵間を殺さない理由は、研究所に投降した際にある少女の命を助けることを条件にしたにも関わらずその少女が死んだことを恨み、その復讐として蔵間を直接殺すのではなく彼に関わった者をすべて殺しつくして絶望を与えてから殺そうと思っているため。
上記のようにベクターの射程距離は作中のディクロニウスの中でも最低だったが、特殊急襲部隊の楓荘襲撃の際に5mに延び、更にその後研究所地下にある命の泉でアンナと戦った際には2km以上にまで射程距離が延びた。しかしその反動で体組織の崩壊が起こり始め、角が伸びるなどの異常が現れ始めることとなる。
物語の後半ではマリコとの戦いで角を折られたためしばらくの間眠っていたが、坂東との二度目の戦いで再び目覚める。その後能宗の特殊急襲部隊が楓荘を襲撃した際、コウタたちを守ろうとしてマリコクローンと戦っている最中に皮肉にもコウタが失っていた記憶を取り戻すきっかけを作ってしまう。そのため父と妹の死の真相を思い出したコウタに憎まれるようになり、直後コウタが傷つけられたのを見て怒りに任せてマリコクローン達に攻撃を加えるも、シンシアに角を折られた事で再び眠りにつき、その場に現れた角沢長官に捕まって鬼ヶ島の研究所へ連れて行かれる。
鬼ヶ島に連れて行かれた後、角沢教授によって長らく存在すら知らないままだった異父弟(父親は角沢長官)と引き合わされ、長官から仲間になるよう説得されるも「自分たちの血を残してはいけない」との思いから弟と角沢長官を殺害した。その後鬼ヶ島の地下でアンナと戦ってこれを倒すが、戦いの余波で鬼ヶ島の研究所は崩壊。ルーシーは海に落ち、再び由比ヶ浜に流れ着いた。その時、病院から抜け出してきたコウタと再会。彼に諭されて二度とベクターの力を使わないと決め、蔵間がその場に現れた際に彼に殺される事を覚悟するも、直後DNAの声に意識を乗っ取られて蔵間を攻撃してしまい、それを目撃したコウタに完全に遠ざけられてしまう。その直後、蔵間の銃撃を受け負傷したコウタを助けるため、ベクターの力(細胞を制御する力)を使ってコウタの負傷した体を治療した。だがコウタを治療した事と自分への一斉攻撃が開始された際にコウタを守るためにベクターの物理的攻撃力を限界を超えて行使したことの反動により、彼女の身体は元の姿をとどめないほど溶けてしまった。その直後に彼女を見限ったDNAの声に体を乗っ取られ、世界中に向けてベクター一斉射出による無差別攻撃を開始する。
最後はにゅうと共に幻影となってコウタの前に現れ、8年前にコウタと交わした約束(もし自分が他の誰かを殺すようになったら自分を殺して欲しい)を果たしてもらい生涯を終えた。
DNAの声に体を乗っ取られた後もコウタ達を傷つけないようにベクターをコウタ達からそらし続け、遂にはベクターを自分の方へ曲げるなどして最期の瞬間までコウタ達を守り続けた。数年後、コウタが仔犬の墓の傍に埋めてあった手紙を発見、その手紙から本名が「楓」であることが判明する。ちなみに原作最終話で登場するルーシーに似た双子の名前も「楓」であり、コウタたちと共に住んでいた場所も「楓荘」であるが、関連は不明である。
アニメ版では、最終回で蔵間とマリコの最期を見届けた後、研究員に殺されそうになっていたナナを助け、一人コウタの下へ向かう。そして8年前の事件の記憶を取り戻したコウタに自分が人類を滅ぼす存在である事と8年前からずっと抱いていた懺悔の想いを告げ、コウタの下から去ろうとしたが、その直後にコウタに赦され、彼と和解する。その後、待ち構えていた警官隊と対峙するが、それ以降生死不明となり、彼女が楓荘に戻ってくる事はなかった警官隊との対峙の場面で角が折れる描写があるが、ルーシー自身がどうなったのかは不明。また、最終回のラストシーンでルーシーらしき影が楓荘の門に写っている描写があるが、この影がルーシーなのかどうかは明かされていない。
にゅう
声 - 小林沙苗
ルーシーが研究所を脱走した際に生まれた彼女の別人格。ルーシー自身が「角がなければこうありたかった」と無意識で願っていた自分自身の姿を投影している。名前は当初「にゅう」としか喋れなかったことからコウタがつけた。
最初は赤子同然の知識の上「にゅう」と喋ることしかできなかったが、徐々に言葉と生活習慣を覚えていき、半年後には普通の少女となんら変わらない会話レベルと節度を身につける。何故か作中で度々女性(主にユカ)の胸を触る場面がある。また、にゅうの人格が出ている状態ではベクターを使うことができない。
物語の後半で角沢長官に捕獲された際に真の自分(ルーシー)を知ったことでベクターを発動し、にゅうの人格のままでもベクターを使えるようになった。
DNAの声
声 - 小林沙苗
ルーシーのもう一つの別人格。正確にはルーシーのディクロニウスとしての本能が人格形成された姿。内なる声として絶えずルーシーに囁き続け、人類を絶滅させようとする。ルーシーの精神内では当初顔に包帯を巻いた姿で現れていたが、やがてルーシーと瓜二つの姿を現す。
8年前にぼんぼん祭での殺人事件とコウタの家族の死を引き起こした張本人。コウタに裏切られたと勘違いしたルーシーの嫉妬心に漬け込み、彼女に殺人を犯させた。その後もことあるごとにルーシーに自分に従うよう囁き続け、彼女に多数の殺人を起こさせていたが、物語終盤でルーシーがコウタの言葉によってディクロニウスの力を捨てて人と共に生きる道を選んだために彼女に見切りをつけ、自らの手で人類を絶滅させるためにルーシーの体を乗っ取った。しかしその直後にルーシーの体が崩壊しかけていて長く持たないことに気づいて焦り、ルーシーが死ぬ前に人類を滅ぼそうと世界中に向けてベクターを放つ。そのベクターはどのディクロニウスのベクターよりも巨大で、射程も力もルーシーのものを大きく越えており、自らへの反動を考えなければ地球規模の大破壊を起こすことが可能。
最後はコウタ達にも巨大なベクターで攻撃を加えようとしたが、ルーシーによってベクターをそらされた上、ベクターを自分の方へ曲げられて重傷を負い、ルーシーがコウタの手により殺されたのと同時に消滅した。
ナナ
声 - 松岡由貴
研究所で実験台にされ、生殖機能がないためジルペリットと呼ばれているディクロニウスの一人。髪はショートカットで、青いネクタイをリボン代わりに結んでいる。研究員内では「7番」と呼ばれ、その大人しさゆえに最も酷い実験を日々受け続ける。過酷な生活からの救済的存在として、蔵間のことを父親同然に慕っている。
ベクターの射程については不明(作中の台詞から初期のルーシー以上でありマリコ以下であることは確定)で、アニメでのベクター本数は4本。
蔵間の指示でルーシーを探すために鎌倉を訪れ、そこでルーシーと邂逅。彼女に目的を告げ、更に発信機で研究所側にこちらの居場所を知らせたと告げるが、その直後にルーシーの攻撃を受ける。その後彼女と戦闘に突入し、当初はルーシーより射程が長いベクターで優位に立ったものの、ルーシーのベクターで四肢を切断され惨敗した(この時偶然相手のベクターを封じる手段を知る)。その後は任務に失敗したため薬物処分される筈だったが、蔵間の手で義肢を付けられて逃がされ、由比ヶ浜に流れ着き、後にコウタたちの住む楓荘に住むことになった。
義手義足となった後はそれらをベクターで操作することにより普通の手足のように動かせるようになった。更に、義手を相手に飛ばす奇襲技(通称「ロケットパンチ」)を編み出す。
幼時から研究所での実験体としての暮らししか知らないため、金銭の価値を知らず、アイスクリームに感動したり綿菓子を本物の綿と思い込むなど、一般常識を欠く。楓荘の生活では、天然で感情の起伏が激しく、時にハイテンション気味で、冷静なマユとはいいコンビ。基本的には人懐っこく、人間を攻撃することもないが、怒りに燃えると目つきが変わり凶暴な一面をのぞかせる(初期の頃はよく「殺して埋めてしまえばいい」などの台詞を口にしていた)。しかし他のディクロニウスのようにその感情を暴走させることはなく、マリコが死んだことで狂気に陥った蔵間が自分より幻影のマリコを追っていた際にも蔵間に一時怒りを表したが、結局攻撃することはなく、彼を守る道を選んだ。
全てが終わった後は蔵間と共に暮らすことになり、その際蔵間の娘ではなく奥さんになろうと決意する。
本作品中のディクロニウスの中で、唯一最後まで生き残った。
その健気さから本作の人気キャラだが、連載前の原案時は影も形も無く、連載中の勢いでたまたま生まれたキャラクターである。本来なら17話で退場する予定だったが,、生き残り、準レギュラーキャラとなった。「ナナ」という名前は本名ではなく、番号から自分でつけたことが原作者の岡本倫によって明らかにされた岡本倫 HOMEPAGE:diary:2006年01月06日(金)
カナダ人ウェブコミック・アーチストのダニエル・キムはナナの魅力を世界に広めるべくNana Global Love Projectを立ち上げ、パロディー漫画Nana's Everyday Lifeを制作して自身が運営するClone Mangaに公開した

Nanas everyday life 。漫画は英語、日本語、ドイツ語等、十二の言語に翻訳されている。漫画は2005年8月27日に完結している。

マリコ
声 - 川上とも子
僅か5歳にして最強のディクロニウス。研究員内では「35番」(アニメでは更に第三世代)と呼ばれている少女。蔵間の実の娘。子供の無邪気な残酷さがそのままディクロニウスの殺人衝動に繋がったような性格であり、ナナを喜んでいたぶったりもした。しかし一方で実父の蔵間を強く渇望し愛してもいる。髪は長いおかっぱで、青いリボンを結んでいる。
最大射程は11mで、アニメでは26本のベクターを持つ。人間を見ると即座に殺す等、あまりに危険度が高いため身体の5箇所に爆弾を仕込まれている。研究所から出るときは携帯電話に仕組まれたコントローラーで爆弾を制御され、30分ごとに認証コードを入力しないと爆発されるようになっていた。
原作ではルーシーとの戦闘では長いベクターで優勢に立つが、コントローラーを拾った隙に両足をルーシーにもがれ、そのコントローラーをルーシーに壊され残りわずかの命になってもルーシーに抵抗したがあえなく爆死した。しかしその際、最後の力でルーシーの角を折り、彼女を数か月間眠らせることに成功した。その後、研究所の科学者・能宗の手により、彼女をオリジナルとしたマリコクローンが作り出される。
アニメ版ではルーシーとの戦いの最中に蔵間と和解し、しばしの間彼と二人きりの時間を過ごしたが、その直後に長官に殺害される事を恐れた研究員が携帯から爆弾を起動。最後は蔵間に抱かれながら爆死した。
この作品でフルネームが確認できる数少ないキャラクター。
3番
声 - 高橋美佳子
かつて研究所にいたディクロニウス。本編では既に亡くなっており、過去の場面で登場する。
蔵間と大森をベクターウイルスに感染させた張本人で、研究所から脱走を図った際にたまたまその場に居合わせた2人にウィルスを植え付ける。その直後、当時研究室長だった角沢教授に射殺された。自分への残酷な実験を見て唯一顔をしかめていた蔵間に対しては敵意を感じていなかったようで、彼を殺そうとしなかった。
ベクターの射程は不明。
28番(原作のみ)
研究所内で実験台にされているディクロニウスの一人。優しく大人しい性格で、ベクターも未発達なため、人を攻撃したことはない。その性格ゆえ研究所によって生きたままディクロニウスを探すための「探知機」に改造され、黒帽子の男に利用された末に死亡するという悲惨な末路をたどった。
アリシア、バーバラ、シンシア、ダイアナ
能宗が研究しているマリコのクローンの成功例の4人。額にアジナーと呼ばれる特殊な装置を埋め込まれており、これによって能宗の命令に絶対服従している。
元ネタは新田真子『RUSH』の同名キャラクター。
ベクターの射程は10m。
ダイアナはアジナーによって能宗の命令に絶対服従になっていることを証明するために能宗の命令で自分の心臓を貫かせられる。傷が治った後は研究所で荒川と共に行動していたが、不意を突かれ出来損ないのクローンが放ったベクターに斃れた。
シンシアは楓荘襲撃の際にルーシーに殺害されるがその際に彼女の角を片方折り、結果的に角沢長官がルーシーを捕まえる手助けをした。
アリシアはバーバラと共に落下してきたヘリから能宗を救うも、ヘリを支えていた最中にルーシーに殺される。
バーバラはアリシアと共に落下してきたヘリから能宗を助け、楓荘を襲撃したマリコクローンの中で唯一生き残ったが、彼女が自分の命令に背いたことを疑問に思った能宗がアジナーを外したことで殺人衝動に目覚め能宗を殺害、ナナを殺そうと飛び出していく。彼女にもルーシーのようにDNAの声が聞こえていたと思われる描写がある。最期はナナと戦っている最中に蔵間に射殺された。
出来損ないの1104体
クローン製造の過程によるミスが元で人としての形を保っていない失敗作。DNAはマリコのものだが、ベクターの射程についてはまばらで長いのもいれば短いのもいる。痛みへの耐性は各個体での有無が激しい。
ルーシーの弟
ルーシーの母親を発見した角沢長官が自分との間に産ませたディクロニウス。頭部にアジナーを埋め込まれている。角沢長官がルーシーを説得しようとした際に長官と共に現れ、初めて姉と対面するが、その直後に「自分たちの血を残してはいけない」と考えていたルーシーによって長官と共に殺されてしまった。作中に登場する唯一の男性のディクロニウスである。

楓荘住人

コウタ(耕太)
声 - 鈴木千尋(少年時代は生天目仁美)
本作の準主役であり、キーパーソンの一人。北海道出身。大学に通う為8年ぶりに鎌倉にやってきた学生。いとこのユカから建物の掃除を毎日することを条件に使われていない料亭「楓荘」にタダで住むことになる。その際、由比ヶ浜に流れ着いていたルーシー(にゅう)を発見し、彼女を楓荘へ連れて行き一緒に暮らす事にする。最初はカナエの形見の貝殻を割ってしまったルーシーに対して激怒するなどしたが、徐々にルーシーと心を通わせていき、後に角沢教授の下から逃げ出した際に記憶を取り戻したルーシーが楓荘から去ろうとした際には「楓荘がルーシーの居場所だ」と彼女を引き止めた。楓荘の住民の中で唯一の男性である。女性にはそこそこもてるが、デリカシーの無い性格。しかしルーシー(にゅう)の角にも偏見を持たず、マユの境遇を見兼ねて手を差し伸べるなど面倒見も良い。8年前の鎌倉で起きたある事件の被害者であり唯一の生存者であるが、その事件に関するすべての記憶をショックから失っている。それに関連して、妹のカナエと父親の死因をそれぞれ病死と交通事故死だと思い込んでいる。
8年前に家族で鎌倉に遊びに来た際にルーシーと出会い、彼女の角を見て「かっこいい」と口にするが、角のせいでいじめられていたルーシーからは拒絶された。その後日に再びルーシーと再会、彼女を川や動物園に連れて行って一緒に遊び、ルーシーの心を開いていった。しかし、ぼんぼん祭でユカに抱きつかれている所をルーシーに見られてしまったことで彼女がDNAの声に従うきっかけを作ってしまう。その後、江ノ電で帰る途中電車の中でルーシーと再会。その際ルーシーがぼんぼん祭りの会場で人を殺すところを見ていたカナエからルーシーから逃げろと言われるもカナエの言う事を全く信じず、彼女が嘘をついていると決め付け「カナエなんか大嫌いだ」と言い放ってしまう。その直後に目の前でカナエと父をルーシーに殺され、豹変したルーシーの言動を目の当たりにしてショックを受け、このショックから事件の記憶を失った。
後に楓荘が能宗らに襲撃された時、コウタを攻撃しようとしたシンシアがルーシーによって腹部を両断されたのを目の当たりにした際にフラッシュバックを起こし、父とカナエがルーシーに殺されたことを鮮明に思い出し、同時にルーシーを憎むようになり彼女を遠ざける。物語終盤で自分を守る為にベクターを行使しすぎて体が溶けたルーシーの姿を目の当たりにしたことで彼女を赦し始めるが、その直後にルーシーはDNAの声に乗っ取られてしまう。その際幻影となって現れたルーシーとにゅうに頼まれ、8年前にルーシーと交わした約束を果たし、ルーシーを手に掛けた。
全てが終わった後、ユカとの間に娘が産まれ、彼女に「にゅう」と名づける。その数年後、娘と共にルーシーとの思い出の場所を訪れた時にルーシーがいじめっ子に殺された仔犬の墓に埋めたコウタに宛てた手紙を発見し、それによってようやくルーシーを赦す事が出来た。その後、コウタがルーシーの面影を持った双子に出会う場面で物語は締め括られている。
アニメ版ではマリコが江ノ島に現れた際、白河がルーシーに殺されたのを目の当たりにした事で父と妹がルーシーに殺されたことを思い出すが、終盤までルーシーを赦さなかった原作とは異なり、マリコと蔵間の死後ルーシーに自分の想いを伝え、彼女を赦した。
ユカ
声 - 能登麻美子
鎌倉出身。コウタのいとこで春から一緒の大学に通うことになっている。コウタがにゅうになにかエッチなことをしないかどうか見張る為という建前を得て、楓荘に一緒に住むことになる。成績は良い方だがコウタと一緒の大学に通いたい一心から偏差値の高い大学を蹴っている。そのくらいコウタのことが好き。嫉妬深い一面もある。恥ずかしさを誤魔化すため等でコウタによく暴力を振るう。極端に感じやすい体質でもある。
本人は気づいていないが、8年前の事件でルーシーがコウタに裏切られたと勘違いする原因を作った張本人である。また、コウタの妹と父親が病気・事故で死んだのではなく何者かに殺されたことも知っていた。
原作の最終話ではコウタと結ばれ、彼との間に娘をもうける。
マユ
声 - 萩原えみこ
由比ヶ浜のボートハウスで犬のわん太と一緒に暮らす中学生の家出少女。家族は母と母の再婚相手である義父がいたが、義父が彼女に性的虐待を続け母も彼女を守らなかったため耐え切れなくなり家出。コウタ達が落とした傘を頼りに楓荘に訪れ、以後住み込むことになる。後に彼女の境遇を知ったコウタが彼女の母に連絡を取って彼女の住民票を移して楓荘に住み込ませ、その後は鎌倉の学校に通うこととなった。義父に受けた仕打ちにより、男性に対して不信感を抱いているが坂東だけは平気。初期はコウタに対しても好感を寄せていたが、コウタとにゅうの入浴シーンを目撃してから不信を抱き、距離を取る様になった。時々コウタに対して毒を吐いている。後に由比ヶ浜に住み着いた坂東と出会い、彼の食事の支援をしたことで坂東の心を開かせることとなる。
物語後半で黒帽子の男が楓荘に乗り込んできた際に彼に襲われるが、間一髪のところで坂東に助けられる。その後坂東がルーシーに敗れて死んだ後は彼に代わって毎朝浜辺のゴミ拾いをするようになる。最終話で由比ヶ浜に戻ってきた坂東と再会を果たした。
わん太
声 - ???
マユと一緒に行動する犬の姿をした不死身生命体。本来の名はジェームスといい、元々別の飼い主に飼われていたが、飼い主の元から逃げてマユの元で暮らすようになる。物語の最後でマユの元を離れ、いずこかへと去っていった。だが普通の犬になってしまった。
ノゾミ(原作のみ)
ユカの後輩。死んだ母親のようにオペラ歌手になるために親に内緒で音大受験を目指している。歌が上手くソプラノ・ドラマティコと呼ばれる日本人では数少ない声帯の持ち主だが、その声帯は日本人では希有な存在な為か故に喉が脆いというリスクを負っている。その上、緊張するとおもらしをするクセがあるので、常におむつを装着している。得意な歌曲はフーゴ・ヴォルフの「エルフェンリート(妖精の歌)」。ノゾミはこの曲をルーシーにも教えており、物語の終盤ではこの「エルフェンリート」が重要な役割を果たすことになる。
後に志望していた音大の入試に合格するが、そのお祝いの最中に能宗の特殊急襲部隊が楓荘を襲撃。その際ルーシーと特殊急襲部隊との戦闘に巻き込まれて喉を負傷し、声が出なくなってしまう。その後治るかどうかわからないと医者に宣告されたが、最終話では一つだけだったもののセリフを喋っていたので(歌に支障がないほど治ったのかはわからないが)声を出せるようになった模様。ちなみにこの時は以前のような小声(小さな文字)ではなく普通サイズのセリフだった。
アニメ版では彼女は登場せず、代わりにコウタが幼い頃ルーシーに聞かせた「Lilium」(アニメ版のオープニングテーマ)のオルゴールがノゾミの役割を果たす。

国立生態科学研究所所員

蔵間(くらま)
声 - 細井治
本作の準主役兼狂言回し。研究所の室長。研究所内では角沢長官の次に地位が高いと思われる。研究員内ではルーシーとの因縁が最も深い。ルーシーとの確執の他にも自分を父親として慕うナナの薄幸、最強のディクロニウスである娘・マリコの立場、それらを一手に担う角沢長官の命令等のせめぎ合いに苦悩し続ける。
学生時代に角沢の誘いを受け研究所のメンバーとなるが、当初は研究所内で日常的に行われるディクロニウス達への凄惨な仕打ちに嫌悪感を抱いていた。やがてその日々にも慣れつつも、嫌悪感や罪悪感を完全には拭えてはいなかった模様。
ディクロニウス・3番が研究所から脱走を図った事件の際に、3番の手でベクターウィルスを植え付けられる。そのため後に妻との間に産まれた娘・マリコはディクロニウスになってしまい、娘がディクロニウスである事を知った蔵間はマリコを自らの手で殺そうとするが、妻に止められた。その後、蔵間はマリコの身の安全のためもあってやむを得ずマリコを研究所に引渡し、そこで育てさせる事にした(そのため、マリコは父親である蔵間とは面識がなく、ようやく父に会ったのは鎌倉でルーシーと戦った時だった)。
原作では後にマリコと和解するが、その直後にマリコを目の前で失い、自殺しようとするが坂東に止められる。しかしその後は精神を病んでしまい、その影響かマリコクローンの一人・シンシアの遺体をマリコと間違えるなどの行動を見せていた。その後バーバラとナナの戦いの際に正気に戻り、鎌倉で遂にルーシーと対峙するが、DNAの声に意識を乗っ取られたルーシーの攻撃を受けて片腕を失った。すべてが終わった後は研究機関に勤めながらもナナとの共同生活を送るようになった。
アニメでは最終話でマリコと和解した後、束の間ではあったがマリコと二人きりの時間を過ごし、その直後にマリコを抱きしめながら共に爆死した。
白河(しらかわ)
声 - 生天目仁美
蔵間直属の秘書の一人。蔵間に惹かれ、情報を得るために長官に抱かれるなど独自の行動を行う。マリコの体内に爆弾を仕込んだ張本人。
蔵間の亡き妻・ヒロミに嫉妬していたらしく、マリコの体内に爆弾を仕込んだ理由について「自分以外の女が産んだ子供なら死んでもいいと思った」と語っている。後にルーシーとマリコの戦いの最中にベクターウイルス初散布を蔵間に告げ、マリコの爆弾のコントローラーを蔵間に投げ渡そうとするがルーシーによって殺害される。
アニメ版ではマリコが江ノ島に降り立った際、偶然ナナとマリコが闘っている所に駆けつけたルーシーを見て彼女の人格が分裂していることに気付き、同じくその場に居合わせたコウタにそれを伝えようとしたが、その瞬間にルーシーに殺害される。その際、彼女が胴体を両断されたことがコウタが記憶を取り戻すきっかけとなる。
如月(きさらぎ)
声 - 山本麻里安
蔵間直属の秘書の一人。東大出らしいがドジっ娘。原作冒頭で登場し、キャラが十分立っていてレギュラーキャラになると思わせたが、物語冒頭でルーシーが脱走した際に人質にされた挙句ルーシーに首をもがれ、体を銃弾の的にされるという凄惨な最期を遂げた(アニメでは人質にされるシーンはなく、偶然ルーシーと警備員が対峙している現場に現れ、その直後に惨殺されてしまう)。
イラストレーター・プロ雀士の宇佐美うみの同人誌「エルフィンリート」(2004年C66・2009年現在プレミア品)に作者が参加した際に享年24歳であることを公表した。(ただしマリコが生まれる前に蔵間の元でお茶くみをしている描写がある)
磯辺(いそべ)
蔵間の部下。マリコの体内に仕込まれた爆弾のコントローラーを託されていたが、マリコのベクターによってコントローラーごと左腕を切断され、マリコによる改心の芝居を真に受けて暗証番号を本人に教えた上で殺害される。
斎藤(さいとう)
声 - 山本麻里安
マリコの母親代わりの研究員。5年間毎日モニター越しにマリコを観察している。マリコを実の娘のように愛しており、マリコを呼び出した際は涙を浮かべながら感動の対面を果たすが、直後彼女に胴体を切断され殺される。死の間際、偶然にもマリコの右腕の爆弾を起動させた。実はマリコの気を自分に引くために彼女の実父である蔵間を悪く言っていたなど黒い一面もあったことが後に明かされる。
黒帽子の男
研究所所員。真性のサディストで、重量2kgでかえしのついた鉄球を発射するボウガンを使い、ディクロニウスを相手に遊びと称した暴行が趣味の残虐な性格で、苦しむ28番を蹴りつけて彼女へ暴行を加えていたことを平然と語ったためナナの怒りを買う。
ディクロニウス探知機を携えて楓荘にディクロニウスが居る事を突き止め、楓荘にいるナナとマユの元に現れて二人に襲い掛かるが、その場に居合わせたわん太やマユの緊急連絡を受けて駆けつけた坂東に返り討ちにされた。その後戻ってきたルーシーと坂東が鉢合わせて二度目の戦いに突入した際、ルーシーを我が物にしようと声をかけるもあえなくルーシーに殺害される。
能宗(のうそう)
研究所所員。ディクロニウスのクローン製造プロジェクトチーフ。食事は全てチョコレート。四人のマリコクローンを造った張本人で、彼女らの額の装置アジナーで自分に服従させている。
後にマリコクローンや特殊急襲部隊を率いて楓荘を襲撃。その際墜落したヘリの下敷きになるもバーバラとアリシアに助けられ、足の骨折だけで助かり入院した。その後、本来絶対服従のはずのクローン達が自分の出した命令に背いてまで自分の命を救おうとしたことを疑問に思い、真相を探るためにバーバラのアジナーを取り外したが、それが仇となり、アジナーを外されたことで殺人衝動に目覚めたバーバラに殺害された。
サングラスの女
研究所側のボディーガード。その正体は佐世保のベクター研究所が送り込んだスパイ。
最終話まで生き残ったが、結局名前は一切明かされなかった。最終話で、全壊した研究所跡を訪れ、そこで偶然元の姿に戻ったアンナを発見する。
角沢長官(かくざわちょうかん)
声 - 有本欽隆
ベクターウイルス研究所のトップに立つ男。
本来総理大臣特権であるSATの出動命令を出すことの出来る権利を持つ(ちなみにルーシー脱走の際は研究所から離れていたため、SAT出動要請は蔵間が長官名義で行った)。
本作の黒幕的存在。頭に角を持つことから自分と一族が「新人類である」と思い込んでおり、ベクターウイルスにより旧人類の頭数を減らした上で、ルーシーを孕ませ新人類の父になることを目論む。頭髪はカツラで、これで頭の角(原作では3本、アニメでは2本)を隠していた。かつてルーシーの母親を捕らえ、彼女を強姦して男児を設けさせていた。後に脱走したルーシーの捕獲に成功、彼女の弟を引き連れて自分たちの仲間に引き入れようとするが、説得の途中でルーシーの弟諸共ルーシーに殺された。
皮肉にも、同様の目的を持っていた息子(角沢教授)と同じような経路を辿って死ぬ事となった。

その他の登場人物

坂東(ばんどう)
声 - 中田譲治
警視庁特殊急襲部隊(通称:SAT)の隊員。
狂暴な性格をしており、「人間兵器」の異名を持つ。右手左手それぞれでマグナム級の銃を扱えるなど白兵戦においては彼にかなう者はいないとされる。研究所から逃亡したルーシーを捕獲するために由比ヶ浜を訪れた際、コウタと一緒にいたルーシー(この時は人格がにゅうに入れ替わっていた)を発見。同僚の隊員と共にルーシーを連れ去り、射殺しようとした。しかしその際、にゅうが逃げようとして頭を打ったことでルーシーの人格が覚醒。同僚は坂東の目の前でルーシーに殺され、坂東はそのままルーシーと戦うことになる。サブマシンガンで岩を真っ二つにする離れ業を見せるもルーシーのベクターには敵わず、両目と右腕を潰され惨敗。これがきっかけでルーシーへの復讐を誓い、去勢手術を条件に可視義眼及び可動義手を装着したが、手術直前に脱走して由比ヶ浜に潜伏。ベクター対策のため、砂浜のゴミ拾いを日課とするようになる。そこでマユと出会い、彼女から日々の食事の支援を受けることになった。
やがてマユと徐々に親しい間柄になっていき、黒帽子の男が楓荘を襲撃した際に彼女の緊急連絡を受けて楓荘に乗り込み、黒帽子の男に襲われていたマユを助けた。その直後に楓荘に戻ってきたルーシーと鉢合わせて二度目の戦いに突入、見えないベクターを果敢にかわすなどの人間離れした力を見せてルーシーを絶体絶命の窮地に追い込むが、事情をわからずに現れたマユがルーシーに殺されそうになったところを庇い下半身を切断されて絶命したかに見えた。
実は死亡しておらず奇跡的に生きており、原作最終回で由比ヶ浜に戻りマユと再会を果たした(なお、切断された下半身は義肢になっていた)。回想シーンで、その凶暴な性格の裏に過去に他人に受け入れられなかった孤独があったことが明らかになっていた。
二度目の戦いでは途中で邪魔が入ってしまったものの、実質的にルーシーに勝利できた人物とも言える。
ちなみにSATに入った理由は「合法的に人が殺せるから」。
角沢教授(かくざわ)
声 - 平田広明
コウタとユカの通う大学に赴任している大学教授。元研究所所員(3番の事件が起きた時は研究室長だった)で角沢長官の息子。
助手の荒川と共にベクターウィルス用のワクチンを開発している。蔵間とは大学時代からの付き合いで、研究所に彼を引き入れた。
世界でも指折りの頭脳を持つが「人間として下の方」と言われるほど倫理観に欠けており(原作の番外編ではそのことを示すエピソードが描かれている)、その為に辺ぴな地方の大学にしか就任できなかったらしい。
実は本編冒頭のルーシー脱走事件の黒幕。父親と同じ目的を持つが、彼を出し抜く為にルーシー脱走のタネを仕掛けた。
後にルーシー(にゅう)を大学で見かけ、コウタを騙す形で彼女を引き取る。その後事を始める為ににゅうを眠らせるが、にゅうの人格が眠ったことで入れ替わりにルーシーの人格が目覚めてしまう。止む無く頭の角を見せるなどしてルーシーに仲間に入るように交渉する(ワクチン開発の動機はこういう状況が起きた時の為)が、その途中で首を刎ねられ殺される。父親同様頭髪はカツラで、頭の角を隠すためのものだった。
荒川(あらかわ)
声 - 石原絵理子
角沢教授の助手。角沢教授の下でベクターウイルス用ワクチンの研究を続けるお姉さん。お風呂に入っていないことがいつも気になっている。こう見えても物語のキーパーソンの一人である(理由は後述)。
コウタがにゅう(ルーシー)を連れ戻すために角沢教授の下を訪ねた時に彼を教授の下まで案内したが、そこでルーシーに殺害された教授の遺体を見つけてしまう。その後研究所に教授の遺体を届けた際に教授の父・角沢長官の命令で研究所でベクターウイルスの改良に手を貸すことになるが、秘密裏に教授が大学で行っていたワクチンの開発を引き継いだ。
研究所で様々なトラブルに見舞われながらもワクチンの開発を進め、遂にワクチンを完成させたが、その直後にワクチンを危険なものと認識した研究所のディクロニウス達に襲われてしまう。しかしダイアナやサングラスの女の助けを借りて無事研究所から脱出、ワクチンを発表することができた。この発表により世界中から「救世主」と崇められ、子供の頃の夢であった「キュリー夫人のような後世に残る科学者になる」が、研究所内でのいざこざを散々目の当たりにし、自分も人類の滅亡に手を貸した負い目から、崇められても素直に喜べなかった。
大森
声 - 堀江一眞
元研究員。3番の一件で蔵間と共にベクターウイルスに感染した。その後娘が生まれたが、大森がベクターウィルスに感染していたため娘はディクロニウスとなってしまい、やむなく薬物処分することになってしまった。その後、研究所を去る。
ベクタークラフト開発者
佐世保ベクター研究所が開発した対ジルペリット用秘密兵器ベクタークラフト開発者。大森と同様の事情から、ルーシーに対して私怨を抱く。
角沢アンナ(かくざわ アンナ)
角沢長官の娘。かけっこが得意。
父親を慕うも、物覚えが悪かったため親族に責められており、期待に応えられないことを悲観していた。そして賢くなる為に父親に改造されるが…。原作最終話では、「7かける8」の九九がわからず、「全部元に戻ってる」と喜んでいることから、元々の知能はその程度であったことがわかる。
本作でフルネームが判明している数少ない人物。
「神の胎児」アンナ
角沢アンナが角沢長官に改造された姿。地下2000mの「命の泉」に住む予知能力を持つ巨大な人間。
「人間は頭蓋骨の大きさに阻まれてこれ以上の脳の進化が出来ないでいる」との考えを元に改造されており、クジラほどもある大きさである(殆どが頭部)。胎児と呼ばれるのはそのアンバランスな体型が胎児を思わせる事、大きすぎる頭のせいで水の中でないと自分の体を支えられない事から来る。頭蓋骨の枷を取り払った結果脳が極限まで肥大化しており、通常の人間ではまるで及ばない程の思考レベルを持つ。
彼女が持つ予知能力は厳密には膨大な知識と思考計算から来る「予測」であるが、それらは全て人間とはかけ離れた彼女の頭脳の中で行われているが故に予知とも呼べるほどの正確さとなる。また、予知能力は「個人」ではなく「集団」の未来予測に限られる。
角沢長官がルーシーに殺された直後にルーシーと戦ったが、ベクターの射程を延ばしたルーシーに敗れる。その後全壊した研究所跡でサングラスの女に発見された時には改造される前の姿に戻っており、予知能力も失っていた。また、角沢長官は元に戻れることを最初から知っていて手術に踏み切ったようである。
ノゾミの父
ノゾミの父親。ノゾミ同様原作にのみ登場するキャラクターで、名前は不明。原作の番外編「NOZOMI」に登場する。
母親に憧れ、母と同じオペラ歌手を目指そうとするノゾミに強く反対し辛く当たり続けるが、実はかつて希少な声質を持っていた妻が喉が弱かったため歌えなくなったことを苦にして自殺したことを悔いており、娘がオペラ歌手になる事に反対していたのは妻と同じ声質と喉の弱さを持った娘を心配していたからだった。最終的にはノゾミの音大受検の当日、娘の決意の固さを知り「最初のコンサートには自分を一番良い席に招くこと」を条件に受検を許可した。
マユの母
マユの実父である前夫の状況については不明だが、作品開始時点では再婚した夫(マユの義父)と暮らす。娘より新しい夫の方に関心が向いており、後にマユが養父からの性的虐待を告白した際には逆ギレして娘を責め立て、彼女に暴力を振るうようになった。
後にコウタから連絡を受け彼と面会し、マユをコウタの元に住まわせ鎌倉の学校に通わせる提案をされた際にはあっさりと了承しており、娘との別居を厄介払いとして歓迎していたふしがある。

「過去」の登場人物

カナエ
声 - 山本麻里安
コウタの妹。北海道出身。本編では既に亡くなっている。
コウタは彼女の死因を病死だと思っていたが、実は八年前の事件でルーシーに殺されていた。
8年前、家族でぼんぼん祭に来た際ルーシーが人を殺すところを目撃していたが、誰にも信じてもらえなかった。その後帰りの電車の中でルーシーに出くわした際に兄にその事を伝えようとするが、嘘つき呼ばわりされた上「カナエなんか大嫌いだ」と言われてしまい、その直後にコウタの目の前でルーシーに殺された。
ルーシーの殺人を目撃した際に何故か普通は見えないはずのベクターを視認しているが、その謎は解かれないままだった。
トモオ
声 - 高木礼子
ルーシーが幼少時代を過ごした施設にいた子供の一人。他の子供達と共にルーシーを「角」「鬼」呼ばわりしていじめていた。後に少女からの密告でルーシーが内緒で仔犬を飼っていたことを知り、その仔犬を他のいじめっ子と共にルーシーの目の前で殺害するが、その行為がルーシーのベクター発動のきっかけとなり、他のいじめっ子共々ルーシーに殺害された。
少女
声 - 下屋則子
ルーシーが幼少時代を過ごした施設にいた子供。彼女とは(形式的な意味で)友達の関係だった。ルーシーが内緒で飼っていた仔犬の事を偶然知ったが、後にそのことをトモオたちに話してしまう。仔犬が殺される場面でルーシーに謝る振りをしつつ笑っているのが確認できることから、「自分より不幸な存在が欲しい」という理由でワザと仔犬のことを密告したと思われる。その後仔犬がトモオ達に殺された際、ルーシーが初めてベクターを発動させたのに巻き込まれてトモオをはじめとするいじめっ子達とともに殺害された。
蔵間ヒロミ(くらま ヒロミ)
声 - 神田朱未
蔵間の妻。本編では既に亡くなっている。
ヒロミは原作7巻で判明した名前で、アニメでは一切名前は出てこない。
不妊治療や流産の末やっと授かったマリコを産んだ直後、蔵間がマリコを殺そうとしているのを知ってマリコを守ろうと暴れたが、その直後に突然倒れ、検査の結果子宮癌があった事が判明。急遽子宮を摘出した事で子供が産めない体になった上、マリコを守ろうとして暴れたために大量出血を起こし、危険な状態に陥った。それでも残された力を振り絞ってマリコの下にいる蔵間のところへ向かい、彼を止めようと説得したが、体を動かしたため再び大量出血を起こし、蔵間の目の前で死亡した。
絵描きの少女=高田愛子(たかだ あいこ)
声 - 山本麻里安
絵を描くのが好きな女子中学生。彼女の死がルーシーと蔵間の確執を生み、ルーシーが蔵間を敢えて殺さない理由となっている。
ルーシーと出会い、つかの間ではあるが彼女と交流を持った少女。出生まもなく母親の幸恵は家を出ており、暴力を振るう父親の元で母親への想いをつのらせていた。母親は海外で画家として大成しており、彼女がルーシーと出会った後、個展を開くため来日。しかしその個展の開催前日にある出来事から父親を誤って殺害、警察へ自首しようとするが、ルーシーに諭され母親と一目逢うために会場へ潜入する。だがルーシーを追ってきた研究員達との戦闘に巻き込まれ、さらにはルーシーを狙った銃弾から彼女を庇って撃たれ、ルーシーの目の前で斃れてしまう。その後ルーシーは彼女を助ける事を条件に自ら研究所に投降したが、数日後に蔵間から愛子が死んだと知らされ、蔵間への復讐を決意。復讐として蔵間を直接殺すのではなく彼に関わった人間を全員殺害して絶望を与えてから殺そうと考え、これが物語冒頭での研究所脱走の際の事件へつながった。物語中で死亡したと思われた複数のキャラクターの生存が明かされた原作最終話では、彼女の生存もある1コマで示されており、これにより、蔵間がルーシーに告げたその死が事実ではなかったことがわかる。
ルーシーの母
ルーシー(楓)の実の母親。作中時点では既に死亡しており容姿も名前も明らかではない。遺伝子異常により産まれる子供が必ず生殖機能を持ったディクロニウスになってしまう女性で、新人類の本当のイブと呼ばれる存在。父親が捨てたルーシーのことを案じ探していたが、研究所に捕獲される。その後角沢長官に強制的に身ごもらされて男の子を授かったが、出産直後に自殺。死後、生殖器のみ維持装置につながれたが長くは持たなかった。

用語解説

ディクロニウス
正式名称は「二觭人(にきじん)」。人類を滅亡に追い込ませることのできる新人類の名称で、女性の姿をしている。
卵ほどの大きさに発達した松果体、骨の一部の対になる角等の特徴を持ち、ベクターと呼ばれる見えない無数の腕を持つ。ベクターにはベクターウイルスと呼ばれるレトロウイルスを持ち、人間の男にベクターを触れさせるだけで感染する。そしてその親から生まれてくる子供は、全て側頭部に対になる角を持ち、かつ生殖機能を持たないディクロニウスの女の子・ジルペリットになる。生殖機能を持つ女王と生殖機能を持たず女王に従うジルペリットの関係は蜂の生態と酷似している。
人類に対する憎しみを本能として植え付けられており、3歳を過ぎるとベクターが発動しささいな感情の昂りなどからも人を殺すようになる。反面、他者への情愛も持ち合わせている。また、ディクロニウスの本能は人格形成されて「DNAの声」と呼ばれる人格になることがあり、DNAの声は常に人を殺すようディクロニウスに囁く様になる。人間に対する攻撃性は個体差もかなり大きく、マリコのようにすぐ殺人を抵抗無く行う個体も多いが、ナナや28番のようにむやみに殺人を行わない者もいる。
アニメ版では、ディクロニウスやジルペリット達は全員赤もしくはピンクの髪に赤い瞳という容貌を持っている。
ジルペリット
ベクターウイルスに感染した男と女から生まれるディクロニウスの名称。ベクターウイルスの蔓延を目的とした個体の為、生殖機能を持たず成長が早く、傷を負っても回復が早いと言う特徴を持ち、ベクターの発現は3歳以降とされる。またジルペリットは全て女性である。研究所では大半が赤子のまま処分されるが、処分されなかった赤子は使い捨ての実験台としての日々を送ることになる。作中の主要人物の中では3番、ナナ、マリコ、28番がジルペリットである。
「こちら側」のディクロニウス
能宗の研究が生み出したディクロニウスのクローン。オリジナルはマリコ。テロメア細胞の劣化により元となったディクロニウスに比べると射程、力ともに多少劣る。前頭葉の一部を切除し取り外し可能な機械(アジナー)を埋め込むことで能宗の命令(それとなく似ている荒川の命令も含める)には絶対服従となる。製造の研究の為に1108体が製造されたが、人としての形を保った成功例はたったの4体で、失敗作は脊髄を搾取するためだけに生かされている。また、激痛をおわされてもベクターを出せるよう調整されている。
ベクター
ディクロニウスが持つ特殊な能力。見た目は手の形をした透明な触手で、通常の状態では人間に見ることはできないが、波動が強いときに限り視認できるようになる。本数や射程距離はディクロニウスごとに異なり、射程距離が短いほど力が強いことが物語後半で判明する。
高周波による微振動を発生することで物を切断することが可能となり、人間の殺傷などに用いることができ、多少熟練すると外傷なく内部の血管のみを引きちぎって殺害することも可能。応用として銃弾、爆風などの物理攻撃をそらせることもできるが、鉄球など質量が大きく運動量の高い攻撃はそらしきることができず、減速してダメージを抑えている。また、ベクター対ベクターの場合は防ぐこともそらすこともできないが互いに掴むことはできる。力が強ければ物理的に人類を滅ぼす事が可能だが、細胞同士を繋ぐ力を使っているためあまりに使いすぎると自身の体組織が崩壊してしまう。
実は攻撃のために使われるものではなく、本来は人間の男にベクターウイルスを送り、植え付けるためのパイプとして使用される。超能力の類だと思われるようだが、これは人間の進化の過程で生み出された新たな生殖器官である。
ディクロニウスが強い痛みを感じている時は出せなくなる。だが、上記の通り『こちら側』のディクロニウスであるアリシア、バーバラ、シンシア、ダイアナ達は調整によって死なない限り出す事ができる。
ベクターウイルス
レトロウイルスの一種。人間の男のにみ感染する。空気に触れると死滅してしまうため通常はベクターをパイプとし、直接植え付ける方法で感染させている。研究所は空気に触れると死滅する欠点を克服した改良型ベクターウイルスを開発した。
ベクターウイルス用ワクチン
その名の通りベクターウイルス用のワクチン。角沢教授が大学でこっそり開発