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エンバーミング 10

共有

エンバーミング』は、和月伸宏による青年向け少年漫画。

概要

19世紀の欧州で、1.21ジゴワットこれは映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のオマージュで、同作で時間旅行に必要とされる電力。「ジゴワット」表記も同作からとられたもので、本来は「ギガワット」が正しい。詳しくは該当項目を参照。の雷と、異能の天才・ヴィクトル=フランケンシュタインが書き記した二冊の実験資料「禁書」を元に、人間の死体を基盤にして製作される、恐怖の人造人間(通称・フランケンシュタイン)の活躍を描く。なお、エンバーミングとは日本語に訳すと「遺体衛生保全」の意味である。

作中で繰り返される「人造人間に進んで関わるのは悪人か狂人のどちらかだけ」という言葉からも分かる通り、基本的に死者蘇生の生命観を否定する物語であり、各エピソードの結末は決して明るいものとはいえない。「少年漫画の基本は笑顔とハッピーエンド」を公言している和月伸宏の作品としては、掲載誌が変わったこともあって珍しい手法が取られている。

読み切りとして描かれた2編の短編『エンバーミング -DEAD BODY and BRIDE-』『エンバーミングII -DEAD BODY and LOVER-』(後述)を元に『ジャンプスクエア』誌上において『エンバーミング -THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN-』のタイトルで創刊号である2007年12月号から2015年5月号まで連載された。和月にとっては4作目となる連載作品であり、初めての『週刊少年ジャンプ』以外での連載となる。話数単位は「#○(○には数字が入る)」。

アニメ版『武装錬金』の世界では本作は劇中劇として、ジョン=ドゥがテレビの画面に登場する形でゲスト出演した。

2007年12月のジャンプフェスタのスクエアステージでは、ステージで声優陣が、スクリーンに写し出される原作に合わせて声を当て演じた。

読み切り版

『SQ』での連載以前に、2005年と2006年に発売された『ジャンプ the REVOLUTION!』にそれぞれ一話ずつ読み切り版が掲載されている。

エンバーミング -DEAD BODY and BRIDE-(エンバーミング -デッド ボディ アンド ブライド-)
2005年の『ジャンプ the REVOLUTION!』(『WJ』2005年11月1日増刊)に掲載され、「エンバーミング」のタイトルで最初に発表された読み切り作品。『武装錬金』10巻に併録されている。連載のパイロット版を意識して描かれた作品であり、『武装錬金』の設定を考えている中で原案が出来たスピンアウト的な作品『武装錬金』10巻 P.179 - 180 和月伸宏「ライナーノート」。登場人物の一人であるジョン・ドゥ、死体卿は連載版にも登場するが、世界設定は共有していない『エンバーミング -THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN- 4巻』P.144 EMBALMING「ライナーノート」
エンバーミングII -DEAD BODY and LOVER-(エンバーミングII -デッド ボディ アンド ラバー-)
2006年の『ジャンプ the REVOLUTION!』(『WJ』2006年11月1日増刊)に掲載された読み切り作品。単行本未収録。本作の登場人物であるエルムとアシュヒトが連載版に登場しており、世界設定を共有している。

ストーリー

家族を人造人間に殺されたヒューリーは復讐を誓い、元凶のワイス卿を斃す。自らも人造人間にされたヒューリーは全ての人造人間を殺すことを誓い、創造主のピーベリーとともに倫敦に旅立つ。

その頃、人造人間を研究する者達が集う「ポーラールート」の大創造主・ゲバルト=リヒターの息子・アシュヒトは、人造人間の調整を専門とし、人造人間になった恋人・エルムを再人間化する方法を模索していた。アシュヒトとエルムも依頼を受けロンドンへと向かう。

ロンドンでは切り裂きジャックの類似事件が発生しており、スコットランドヤードは事件解決のために被害者を人造人間として蘇えらせ、証言を得ようとしていた。しかし、その被害者だった人造人間が逃亡したということで、専門家であるアシュヒトらに捜索と事件の捜査がマイク=ロフトより依頼される。

ピーベリーとアシュヒトは、ポーラールートを離反した人造人間の組織『稲妻の兄弟(ブリッツ=ブルーダー)』のアジトに向かう。この稲妻の兄弟は、事件の真犯人である人造人間の切り裂きジャックを隠匿していた。ジャックはアジトを脱し、ロンドンのイーストエンドで凶行を繰り返そうとしたところを居合わせたヒューリーによって倒される。

同じ頃、マイク=ロフトは『稲妻の兄弟』の統率・死体卿の面会を受け、協力関係の構築(イギリスから新鮮な死体の提供を受け、『稲妻の兄弟』は人造人間をイギリスに提供する)を申し出るが、謝絶される。ロンドンに屍体の山を築くべく、配下の人造人間によるロンドン襲撃を実行するが、別途マイク=ロフトから依頼を受けていたジョン=ドゥ、ヒューリーらの活躍に拠り、『稲妻の兄弟』の人造人間は九割がた壊滅。自身も大きな損壊を受けた死体卿は、ヨーロッパ諸国への人造人間の提供とそれによる大規模な戦争(および、それによる死体の量産)をほのめかしながら、ポーラールートへと去った。

損壊の修理と強化のためにヒューリーとピーベリーはロンドンに残り、アシュヒト、エルム、ジョン=ドゥらは親書を携えてポーラールートへ向かった。しかし、先に到着していた死体卿はポーラールートを支配下に収めており、最後の戦いが繰り広げられる。

登場人物

特に断りがない場合、連載版である『-THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN-』の登場人物。「声 - ○○」はジャンプフェスタ版の声優。

「コンセプト」「名前の元ネタ」は、コミックス収録の著者解説より。

主要人物

ヒューリー=フラットライナー
声 - うえだゆうじ
『THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN』の主人公の1人。人間→人造人間。イギリス・ハイランド出身。身長190cm。体重85kg。5月1日生まれ。年齢は19歳(没年齢)。A型。
ボサボサの長髪で大柄な男。よく顔が恐いと言われるが、「生まれつきだ」と答えている。行動は粗暴で言動も荒々しいが、他人を気遣い思いやる優しさを持ち合わせており、「面倒見の良い田舎のあんちゃん」(ピーベリー談)である。
13歳の頃に両親が人造人間に殺されたのをきっかけに復讐を決意、ワイス卿の下で(ゲームキーパー)をしながら腕を磨き、5年を経て仇である人造人間を相討ちで斃すも、自身も首に致命傷を負い死亡。その場に居合わせたピーベリーに回収され、人造人間として生まれ変わる。それからほどなくしてワイス卿の本性を知り、さらにレイスの豹変によりエーデルを失い、さらには自分が憎むべき対象である人造人間になったことを知ってしまう。人造人間に翻弄され命を奪われたエーデルを弔った後、「自身を含めた全ての人造人間を破壊」するためにピーベリーと共に旅立った。
ロンドンでは切り裂きジャックことリッパー=ホッパーとエグゾスケルトンを装備したレイスと激突し、辛くも勝利するが、その時に受けた傷により大破してしまう。だが、この一連の出来事で「仇討としての憤怒と憎しみ」としてではなく、「命を弄び生死を歪めるがため、人造人間はあってはならない」として人造人間を世界から消すことを決意した。
この後の戦いのために、更なる強化改造が必要と判断され、ピーベリーによって大改造を受ける。
「運動神経機能特化型」であり、相手が視認不可能な速さでの移動と攻撃が可能な他、電流をガルバーニ電流に変換して電磁誘導によりそれを物理的な力場とし、身体が物理的に切り落とされてもその部分を動かす事が出来る。大改造後は頭部のみを残し、それ以外の身体のすべてがガルバーニ電流で構成されるという文字通りの異形となった。
死体卿との最終決戦に勝利するも、ヒューリー自身も機能を停止。ジョン=ドゥには自分の目標だった「全ての人造人間の破壊」を、ピーベリーにはジョンの事を、アシュヒトにはエルムを、アバーラインにはヴァイオレットへの遺言をそれぞれに託した。残された頭部はピーベリーの手によってエーデルとレイスの墓に埋葬された模様。
コンセプトは『復讐の聖者』。作者が、『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の雪代縁とは違った復讐キャラは描けないかと思ったのが誕生のきっかけである。名前の「ヒューリー(Fury)」は「激昂」、「フラットライナー(FLATLINER)」は心電図で死亡を表す「FLATLINE」を意味する。
エルム=L=レネゲイド(人造人間)/7(ズィーベン)
『THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN』の主人公の1人、および読み切り版『DEAD BODY and LOVER』の主人公。人造人間。ドイツ・インゴルシュタット出身。身長145cm。体重38kg。8月5日生まれ。年齢は自称23歳(没年齢13歳で、人造人間になって10年とされていた)。B型。
究極の8体の内の7体目「皮膚機能特化型」である。体力と戦闘力は子供並だが、皮膚を自在に調整(瞬間再生や真空密着)出来る能力を持っている。表皮がダメージを受けてもその下の真皮がダメージを受けない限りは瞬時に回復でき、さらに爪や髪の武器として攻撃することも可能。普段着ているドレスも本人の体組織から培養された素材で仕立てられた特注品で「エルムの身体の一部」と認識されており、同時に再生する。
アシュヒトも知らなかったが、実は人造人間のエルムは、アシュヒトの幼馴染のエルムとは別人であり、エルムを亡くしたショックからアシュヒトの精神を守る為に数千に及ぶストックパーツをつなぎあわせてアシュヒトの父・ゲバルトが造った「エルムの代用品」であることが終盤に明かされた。そのため、「とんでもなくアホ」(ゲバルト談)であるが、エルムの人格は「劣化した誰か」ではなく、正真正銘「エルム自身から発生した人格」である。その事を理解し、過去は取り戻せないことを悟ったアシュヒトにより代用品としてではない一人の存在として受け入れられた。
寄せ集めで不安定な身体に緻密な機能特化型を組み込んだことによる機能不全・経年劣化を起こし、最終決戦の後日談ではアシュヒトに見守られながら、文字通りに眠るように機能を停止した。
コンセプトは『聖なる身代わり』。モデルは『武装錬金』で没になったまひろの影武者の武装錬金の案の一つ。名前の「エルム」は花言葉の「信頼」、「レネゲイド」は「背教者」を意味する。
Dr.ピーベリー(ヒルデガルド=ピーベリー)
声 - 柚木涼香
人間。ドイツ・インゴルシュタット出身。身長173cm。体重59kg。1月30日生まれ。年齢27歳前後。AB型。
かつてはポーラールートにてゲバルドの助手として数々の人造人間開発を行っており、特に脳神経系統の施術を得意とし彼女が手掛けた人造人間は人格が破壊されていても生前の記憶はほぼ完全に保持されている。死亡したヒューリーを人造人間に改造した張本人。
恋仲であったジョン=ドゥを失うきっかけとなったDr.リヒターを激しく憎み、それゆえDr.リヒターの成果の結晶(とピーベリーは解釈していた)機能特化型人造人間8体の抹殺を目的としている。
最後はヒューリーからの遺言もあって、ジョン=ドゥを調整できる唯一の人物として彼の旅へ同行することとなる。ジョンのことは結局は憎からず思うようになった。
『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-第零幕』に登場したエルダー=ピーベリーとは互いに面識のない遠縁。
コンセプトは『はぐれ女医やさぐれ派』。
アシュヒト=リヒター
人間。ドイツ・インゴルシュタット出身。身長185cm。体重76kg(義足の重量除く)。11月22日生まれ。年齢は23歳。AB型。
名門リヒター家の子息。人造人間の整備と解体を請負ながらエルムと旅をしている。
性格は常に冷静沈着で、何事にも無表情に事柄を処理するが、エルムのことになると動ずる時もある。
少年時代に起動暴走したジョンによって、エルムと同時に自らの右足を失っており武器にもる義足を装備している。
その真の目的は恋人のエルムを再人間化(=死者の蘇生)し、人間となったエルムをグレトナ・グリーンへ連れて行き結婚すること。目的の為には手段は選ばず、障害となるものには容赦しない点はピーベリーと共通しており、前半ではエルムが再人間化した際には現在の人造人間としてのエルムの人格が消滅しても構わないとまで言っていた。
ポーラールートへ帰還した際にゲバルトによって死者蘇生が不可能なこと、およびエルム(人造人間)がエルム(人間)を人造人間にしたものではないこと、エルム(人造人間)の自分を犠牲にしてもアシュヒトとエルム(人間)が結ばれて欲しいという純粋な想いを知り、『過去はなかったことにも取り戻すこともできない』と自覚し母とエルム(人間)の死体保存装置を破壊することで父親とも決別した。そののちリヒター家の一切を捨てると決意。
その後、ピーベリーによるエルム(人造人間)への診断で、彼女が近い将来に機能を停止することを告げられるが、それを受け入れて最後までエルム(人造人間)を見守ることを決意する。
コンセプトは『科学のオルフェウス』。『るろうに剣心』の完全版にて再筆(描き下ろしリデザイン)された四乃森蒼紫がほぼ同じデザインであるが、これについて作者は、再筆版蒼紫を描いていた時期に『エンバーミング』の構想を練っており、そのデザインを流用した為であるとコメントしている。
ジョン=ドゥ
『DEAD BODY and BRIDE』の主人公であり、人造人間。本名(生前の名前)は本人も知らないそのために便宜的に「身元不明の死体」「名無しの権兵衛」という意味の英語の「ジョン=ドゥ」を名前としている。自らが何者で何の目的で造られたかなども全く覚えておらず、劇中でも大きな秘密とされている。右目に瞳がない。
読み切り版では相棒のリトル・ロゼと共に、人造人間専門の壊し屋として旅を続けている。その目的は、報酬として得た若く美しい女性のパーツで、自分の花嫁を造る事。
膨大な量の血液を生み出す造血器官と、心臓を始めとする血液循環系の全機能が強化された「血液機能特化型」の人造人間であり、あらかじめ設けてある全身の傷口からウォータージェットのように超高圧の血液『茨の十字』を瞬間噴射させ、対象物を破壊する。血液を使いすぎると一時的に機能が低下するが、自分以外の血液を取り込む能力も持つ。さらに体の一部に赤血球を凝集させて瞬間的・爆発的に運動能力を高めることができるほか、血小板を噴出・硬化させて盾や相手への拘束具にする、白血球を無尽蔵に傷口から生成して触れた対象の細胞を破壊するなどができる。この能力はDr.リヒターにより、究極体として得られたものでもある。
性格は乱暴かつ唯我独尊。自分の考えを何よりも優先して道徳的な正義には興味を示さないが、仲間と見なした相手を気遣ったり、無力な相手に力をふるう相手には憤りを見せるなど、義侠心的な考えも持つ。
読み切り版『DEAD BODY and LOVER』では宿敵、連載版『THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN』では主人公の1人として描かれており、究極の8体の内の6体目である。本名不明は相変わらずだが、人造人間専門の壊し屋として旅をしているなど、読み切り版『DEAD BODY and BRIDE』の設定も継承している。
本編開始10年前、トート(死体卿)の手により冷凍状態でポーラールートに運び込まれ、そこで記憶を失った状態で眼を覚ます。この時は荒っぽいところはあるものの気が優しくて人懐っこく、誰からも好かれていた。
そこで便宜上の名前として、Dr.リヒターから「ジョン=ドゥ」の名を与えられ生活することになる。人造人間の創造のためなら生きている人の命をも犠牲にするポーラールートの風習に馴染むことができずにいながらも、ピーベリーとの距離を縮めていく。ある夜のトートの襲撃により負傷し、その治療の際に心臓に刻まれたヴィクターからのメッセージが明らかになったことで最初の人造人間「ザ・ワン」であることが発覚、グロースからの破壊指示と100年前と変わる事無い扱いにその人格と記憶が蘇り暴走する。
ピーベリーの説得により、怒りを鎮めジョンの人格が蘇ろうとするが、その時のDr.リヒターの行動により右目が破壊され、それまでの人格と記憶が消去された。
その後は事実の隠ぺいとともに、Dr.リヒターが100年間機能を止めなかった心臓に価値を見出したことから、血液機能特化型人造人間として再創造されるが、起動暴走時にエルムを殺害し、アシュヒトに右脚切断の重傷を負わせ、姿を消した。以降の詳しい経緯は不明だが、人造人間の壊し屋を請け負いながら「おまけの人生」として記録の無い人造人間としての生活をそれなりに楽しみながら日々を送っていた模様。
戦いを終えた後、死亡寸前のヒューリーから「人造人間を全て殺す」という目的を継いでほしいと頼まれ(報酬としてピーベリーを恋人としてではないが相棒として託された)、それを引き受けて、メンテナンス担当のピーベリーと共に人造人間を滅ぼすための旅へ向かうこととなった。最後まで人格は元に戻らず、記憶も不完全にしか戻らなかったが、ピーベリーへは相棒としてなりに思いを寄せることとなった。
同作者の漫画『るろうに剣心』の志々雄真実を一部リボーンしている。
アニメ版『武装錬金』では一瞬だけ(劇中のテレビ画面で)登場した。
コンセプトは『花嫁募集中』。
ザ・ワン
ヴィクター=フランケンシュタインが本編開始100年以上前に創造した人造人間にして、最初の人造人間。ジョン=ドゥの正体である。容姿は長髪に瞳のない目、涙を流しているかのようなラインの入った顔。
自分を創造しながらも愛さなかったヴィクターを憎悪し、悲劇的な末路を迎えたとされている。しかし実際は、氷漬けになりながらも機能停止していない状態でとある村に祀られており、トート(死体卿)が見つけ出してポーラールートに運び込まれた際に再起動、記憶を失った人間「ジョン=ドゥ」として復活することとなった。
人造人間としての機能は圧倒的であり、1世紀なんのメンテナンスも施さなくてもほぼ問題のない身体、筋力機能特化型人間のウンゲホイヤーと真っ向からぶつかって逆に腕を砕くほどの力など、「究極の8体」すら凌駕する。
ピーベリーの説得に、かなわなかった自分の夢『花嫁を持って孤独から逃れること』を感じ、ジョン=ドゥの人格を復活させようとするが、直後にポーラールートの全電力をDr.リヒターにぶつけられ、再びジョン=ドゥの人格の中でなりをひそめるようになった。
フレデリック=アバーライン
人間。元スコットランド警察(ヤード)の警部。史実としての切り裂きジャックの事件においても調査にあたったスコットランドヤードの警部フレデリック・アバーラインがモデルであり、風貌も当時描かれた似顔絵(英語版の記事参照)に順じたものとなっている。
やや直情径行ながら、正義感と愛国心に富む熱血オヤジであり、(ギャグコメディ的な描写込みではあるが)人間離れした頑健さと怪力と精神力で事件解決に奔走。ポーラールート行きの際には、一行のなかで唯一の常識「人」として隊長役を務める。
コンセプトは『スコットランドヤード代表』。

主要な敵

レイス=アレン
声 - 宮野真守
『THE ANOTHER TALE OF FRANKENSTEIN』の宿敵の1人。人間→人造人間。ヒューリーの相棒。イギリス・スコットランド出身。身長180cm。体重73kg。9月11日生まれ。年齢は19歳(没年齢)。B型。
ヒューリーの同僚であり友人。謎めいた笑顔で真意を悟らせないところがあるが、信頼する相手なら自分を犠牲にしても助けようとする一面がある。ヒューリーと同じく、五年前のティターンによる惨殺事件の生き残り。
ヒューリーとともに仇の人造人間と対峙しあと一歩まで追い詰めるが、変貌した人造人間を見た一瞬の油断で腹部を噛み千切られ死亡。その後ティターンの残骸共々ワイス卿に回収され、人造人間として蘇る。両断された腹部に2つの電極がある。
生前の記憶は全て残っている様子だが、唯一自分の期待に応えてくれるヒューリーを独占しようとする感情が強く出た結果、障害となる存在を平気で殺す残忍な性格に変貌した。禁書を手に入れた直後にワイス卿とエーデルを殺害、その後は激昂したヒューリーに「先に倫敦で待ってる」と言い放ち姿を消す。倫敦へ向かう。倫敦でブリッツ=ブルーダーに合流すると、ブリッツ=ブルーダーの統率である死体卿に気に入られ、骨格機能特化型人造人間エクゾスケルトンを与えられた。その力を用いて、再会したヒューリーと互角以上の戦いを繰り広げるが、死体卿がヒューリーの廃棄を命じた時は、彼を守るため死体卿を裏切る。だがその直後に精神再構築の素材としてエクゾスケルトンに取り込まれてしまった。
エグゾスケルトンごと破壊されて決着がつく最後の瞬間に、僅かにしか動かない身体でヒューリーに「自分を倒して次に」と意思を伝え、「エーデルが邪魔だったのではなく、エーデルがいたからこそ、自分たちの関係が成り立っていた」ことに気づき機能停止した。その後はヒューリーの願いでエーデルの墓の近くに葬られるよう手配された。
コンセプトは『愛憎の果て』。典型的なヤンデレでもあり、ヒューリーについての依存心や独占欲が異常に高く、ヒューリー以外のもの(ヒューリーに関わるもの)をすべて憎む傾向にある。モデルは『るろうに剣心』の登場キャラクター、瀬田宗次郎と、作者が子供の頃に読んだ某少女漫画に登場するキャラクターである。名前であるレイスは『死霊』を意味する。
死体卿(したいきょう)/トート=シャッテン
フランケンシュタインの怪物の魂と遺志を受け継ぐ夜会「稲妻の兄弟(ブリッツ=ブルーダー)」の統率にして、世界一の死体愛好家を自称する人造人間。漢字の「死」をシンボルにしており、彼の帽子にも刻まれている。「トート=シャッテン」という名は、浮浪児として座った墓に刻まれた名前からポーラールートの者が呼び始めたもので、正確な年齢と本名は不明である。
少年の頃はポーラールートで暮らす孤児であり、その頃から既に禁書と卓越した創造技術を持ち人造人間の再調整を容易に行っていた。それを見出されて保護されるが、人間を愛せないことから保護した一家を殺害する事件を起こし、助手としてDr.リヒター預かりとなる。
前述のように、ジョン=ドゥ(ザ・ワン)を発見してポーラールートに持ち込んだ張本人で、彼を手放したくないがためにジョンに傷を負わせて暴走の原因、そしてエルムの死の遠因を作ったなど、ピーベリーとアシュヒトにとっては全ての元凶と言える存在である。
また、特化型ゼクス(ジョン=ドゥ)の正体を見抜き、これを秘匿する見返りに自身を特化型人造人間にするようDr.リヒターと取り引きを行い、究極の8体の最後の1体「再生機能特化型」となる。また、施術の際には自身の脳のみを移植し、外観は顔立ちの整った男性の死体を使用する様に要求するなど自分自身に対するコンプレックスは尋常ならざるものがある技術者として認められて以降も、他者の行いの裏を深読みして「他人をまったく信じられない」有様だった。
全身が人間のすべての体細胞を形成する元である『万能細胞』で出来ておりDr.リヒターが10年前、永遠の命の法を研究する際の副産物として発見された。、全身を肉塊にされてもすぐ再生することが可能で、脳や電極ボルトも頭部に固定する必要がなくなっている。さらにポーラールートでDr.リヒターに再改造された後は体内に仕込まれた人造細菌(バクテリア・フランケン)により、接触した生物に対し感染・致死・防腐の3段作業を一瞬で行うことができる。他の生物の細胞を取り込んで他の特化型人造人間を含めたあらゆる体組織を形成することが可能で、他の機能特化型の能力も一人でこなすことができ、自身を「究極を超えた究極」と称している。
最終的には、ポーラールートでのヒューリーとの決戦の末、ヒューリーの膨大な電流によって身体のほとんどを焼き尽くされるが、本体たる脳と眼球はボロボロな状態で辛うじて生き延びてピーベリーを殺害し取り込もうとする。しかしジョンがピーベリーを守るべく咄嗟に生き残った本体を掴み、ジョンの手の傷口から白血球を無尽蔵に送り込まれたことで残された細胞も破壊し尽され、死への恐怖から命乞いをしながら消滅した。
死体へ傾倒し、死体への愛を公言していたが、それは本当に死を愛する感情から来たものでなく、生前の自分自身への強いコンプレックスに由来する他人への恐怖心の裏返しでしかなかった。
コンセプトは『へたれ死体愛好者』。名前の「トート=シャッテン(Tod Schatten)」はドイツ語で「死の影」を意味する。

究極の8体

8体とは別の存在に当たる、ピーベリー製のヒューリーも本項に記載する。後にDr.リヒターは、究極の8体はあくまで自分の実力を示すための実演(デモンストレーション)でしかないと息子アシュヒトに明かす。

エクゾスケルトン
究極の8体の内の1体目(アイン)。骨格機能特化型人造人間。ブリッツ=ブルーダーのメンバー。人造人間化した時に骨格だけの姿となって創造される。肉体においては成功をおさめたが、精神の方は失敗し、心は失われる。そのため、自ら喋ることも考えることもできない。形状を変化させて他者と繋がることでのみ動くことができる人造人間。27歳没。
身体を構築する骨は鋼鉄以上の強度がある。本能のままに自己を防衛する行動を取り、一瞬の思考も介さないので反応速度が驚異的に速い。行動する際は装着者の小脳だけを借りて外部の刺激に対して無意識に反応し、装着者の意志とは関係なしに超高速の自動的に回避・防御・攻撃行動を取ることができる。
ブリッツ=ブルーダー新入りのレイスの鎧として登場し、その機能を存分に発揮してヒューリーを追い詰めた。後にレイスの裏切りとそれに対する死体卿の報復により、レイスを取り込んで乳幼児程度の精神とともに、周囲の石灰を吸収して巨大化して入れて暴れまわったが、ヒューリーとアシュヒトの連携の前に敗北。頭部のみ残ってヒューリーに取りつこうとしたが、ジョンにより即座に潰されて完全に消滅した。
残存していた骨が、ロンドンの黒博物館に保存された。
コンセプトは『レイスのパワーアップ』。名前の由来はエクゾスケルトン(外骨格)から。巨大化状態はガシャドクロがモチーフ。
リッパー=ホッパー
究極の8体の内の2体目(ツヴァイ)、呼吸機能特化型人造人間。ブリッツ=ブルーダーのメンバーで切り裂きジャックの正体。精神面が壊れている上、死の際に感じた「誰の記憶にも残らず消える」ことを強く恐れるがゆえに自分の存在した軌跡を残そうとし、嫌いな存在である娼婦を対象に殺人を繰り返していた。
伸縮自在で特殊な肺を持ち、吸い込んだ空気を圧縮させて体の各部に設けられた排気口から噴出することで、対象物を切り裂くことやジェット噴射さながらに跳ぶことができる。
生前は倫敦のイーストエンド地区を中心に数々の悪事を働いた犯罪者。しかし、行為が度を過ぎたため私刑に遭い死亡。19歳没。元々の身体能力が高かったことに加え、下水道での生活により肺機能が強くなっていたため、呼吸機能特化型人造人間の素体として見出される。
連続殺人を起こしたことからブリッツ=ブルーダーに囚われていたが、ピーベリーの思惑により解放され、ヒューリーと交戦する。当初はヒューリーを圧倒していたが、ヒューリーが運動神経特化型人造人間として覚醒したため敗北。「切り裂きジャック」として永遠の存在になれたことに満足しつつ自爆した。
肺とマスクが残存し、ロンドンの黒博物館に保存された。
コンセプトは『切り裂きジャック』。最初はバネ足ジャックと同一人物として考えられていたが没に。名前の『リッパー(切る男)=ホッパー(跳びはねる男)』はその設定の名残。
スカベンジャー=ベービ
究極の8体の内の3体目(ドライ)、消化機能特化型人造人間。ブリッツ=ブルーダーのメンバー。ことあるごとに空腹を訴えている。
寄生虫型人造人間の擬似卵を胃の内部に大量に蓄えており、それらを必要に応じて孵化させ、体外に排出することでありとあらゆるものを食らい尽くそうとする。
外見は貴族風の衣装をまとった優男だが、それはあくまで彼をコントロールするための「複体」であり、その正体は意外にも臆病な幼児。自らの消化器の内部に隠れ潜んでいるところを、その消化器に迷い込んだエルムにお菓子で手なずけられ懐柔され、アバーラインからは「スカ坊」と呼ばれ親しまれるようになる。その後の究極の8体1~4号の簡易量産型軍団との戦いで一行に加勢して敵軍団を食らって殲滅する活躍を見せるが、死体卿との戦いでは死体卿を喰い尽くそうとして、逆に内側から侵食・撃破される。本体の上半身は残存し、ロンドンの黒博物館に保存された。
スカベンジャーは英語で腐肉を漁る動物を意味する。
ムスケル=ウンゲホイヤー
究極の8体の内の4体目(フィーア)、筋力機能特化型人造人間。ブリッツ=ブルーダーのメンバーで筋肉質の強面の男性。死体卿から、ジョン=ドゥ捕獲の任務を言い渡された。10年前、覚醒したザ・ワンと交戦したことがあり、ポーラールート外部の森でジョンを待ち構え、ジョンの中のザ・ワンの覚醒を望んで彼と激突する。
生前はポーラールート最強の戦士で、侵入者や反乱者・暴走した人造人間ら敵からポーラールートを守って戦っていた。しかし時が経つにつれ守ることよりも戦うことそのものを好むようになり、死んでもなお戦闘を望むようになった。35歳没。
記憶と人格のどちらが壊れたのかは不明だが、戦闘への渇望は常軌を逸しており、その意味での人間性が壊れている。
全身の筋繊維を自在に動かし、体形を変幻自在に変化させて交戦する。その能力を利用して最初は有利に経つが、ワーグナーを殺されて激昂したジョンに反撃され大破。頭部と電極だけが残り、再戦を望んでこのまま残すよう頼むが、ジョンには通じず踏み潰され、完全破壊された。
腕が残存し、ロンドンの黒博物館に保存された。
コンセプトは『筋肉戦闘狂』。名前はドイツ語で、ムスケル(Muskel)は筋肉、ウンゲホイヤー(Ungeheuer)は怪物を意味する。
タイガーリリィ=コフィン
究極の8体の内の5体目(フュンフ)、感覚機能特化型人造人間。18歳没。ブリッツ=ブルーダーのメンバーである女性人造人間。ブリッツ=ブルーダーの総帥に心酔している。生前はポーラールートの一住民だったが、新たな人造人間の素体に選ばれ自らその身を捧げた。
身体から大量の眼球を生成でき、最大24個の目玉を遠隔操作して遠くの風景を見たり、その風景を記録・投影したり、光を用いた催眠をかける事が出来る。
死体卿からポーラールートの大教会の護衛を任され、追加装備された光速視線(レイ・アイ)でエルムの真皮層まで破壊して戦闘不能に追い込み、ジョンと直接対決することになる。
実は人一倍寂しがり屋で自分に自信が持てない性格。人造人間の素体に選ばれた時も皆の期待を裏切ることを恐れていたが、創造主のピーベリーの説得で受け入れた。
ピーベリーはその後ポーラールートを追放され関連する研究も凍結となったため、目覚めさせられないままとなっていた。その後、人造人間として覚醒したときに『自分はブリッツ=ブルーダーのNo.2で死体卿のNo.1と認められた』という偽の記憶を光彩点滅催眠によって植え付けられ、その記憶を最大の幸せと感じて死体卿に仕えていた。
しかしジョンとの戦いに乱入してきたDr.リヒターによって真実を告げられ、信じてきたものが破壊されて慟哭するものの、偽の記憶が幸せと感じたものと悟ってジョンに相対するものの敗北。額の目と電極ボルトの片方を破壊され、どこかへと去っていった。
その後記憶が戻り、廃墟となっていた自宅に戻ったあと、創造主であるピーベリーと再会。ブリッツ=ブルーダーのNo.2であったことに誇りを表明するも、生前に頼んでいた『自分が人間達から離反したらピーベリー自身の手で自分を処分して欲しい』という約束を頼みつつ、ピーベリーによってもう片方の電極ボルトを破壊され、完全に機能停止した。
その後彼女の生前の写真がロンドンの黒博物館に保存された。
コンセプトは『敵側紅一点』。名前であるタイガーリリ-は、花言葉で「賢者」を意味する。コフィンは「棺」を意味する。
光速視線(レイ・アイ)
額にある眼球の水晶体によって光を収束・放射することで相手を射抜く「レーザー兵器」。リリィの視線によって狙いをつけるため、驚異的な命中率を誇る。威力もエルムの皮膚再生速度を上回るほか、ジョンの茨の十字を無効に出来るほど。欠点は一射で眼球が焼き切れてしまうため、次射のためには生成した眼球を再装填しなければいけないことと、使用している間は他の目玉を使えないということ。更には半裸の中年親父などリリィ自身が見たくないものでも凝視しなければならないことである(当然であるが、目をそらせば当たらない)。
ジョン=ドゥ
究極の8体の内の6体目(ゼクス)、循環機能特化型人造人間。10年前、起動時の暴走で研究者7名とエルムを殺害し、アシュヒトには右足切断の重傷を負わせている。
元々ザ・ワンの制御と隠蔽を目的とした人造人間で、その資料の情報は大半がフェイク。
主要登場人物の項を参照。
エルム=L=レネゲイド
究極の8体の内の7体目(ズィーベン)、皮膚機能特化型人造人間。
主要登場人物の項を参照。
トート=シャッテン/死体卿
究極の8体の内の8体目(アハト)、再生機能特化型人造人間。
主要な敵の項を参照。
ヒューリー=フラットライナー
ピーベリー作の9体目(ノイン)の機能特化型であり、運動神経機能特化型人造人間。「人造人間を斃すための人造人間」。リッパー=ホッパーとの戦いで切り札(ジョーカー)である究極の9体目として覚醒。
主要登場人物の項を参照。

サブキャラクター

DEAD BODY and REVENGER

エーデル=ワイス
声 - 平野綾
人間。人造人間による馬車の襲撃事件があった5年前に、ヒューリー、レイスと居合わせ記憶喪失となった少女。年齢は15歳。ワイス卿の養女。
ワイス卿に人造人間にされかかるが、ヒューリーに助け出される。その後、レイスに狙われたところをヒューリーごと撃ち抜かれて死亡。
コンセプトは『身代わり人形』。名前であるエーデルワイスは花言葉で『幸せな思い出』を意味する。
シェイド=ジェイソン
人造人間。ワイス邸で働く男性。年齢は32歳。吹雪の中、エーデルを抱えるヒューリーの姿を見つけた人物。
元猟場番でヒューリーとレイスの上司。猟場番を辞めた際にワイス卿により人造人間に改造されており、ヒューリーと対峙。最後は弟子でもあるヒューリーから自分を鍛えてくれたことへの感謝の言葉を伝えられ、一瞬だけ笑みを浮かべて破壊された。
コンセプトは『急造』。
ロバート=ワイス
人間。子爵の称号を持つ元大学教授。
5年前ヒューリーらの家族を殺したティターンを造った張本人であり、その際ヒューリー、レイス、エーデルを保護、ヒューリーとレイスには猟場番の職を、エーデルには名前を与え、養女として迎え入れる。素材の調達用に救貧院をいくつも建設している。
離婚歴があり、元妻との間に本物のエーデル=ワイス(後のヴァイオレット)という娘がいる。離婚の際連れ去られる形で引き離され、その消息をたどっているうちに禁書を見つけ、「本物のエーデルの代わりに新しいエーデルを造る」という歪んだ考えに行き着く。しかしその企みはヒューリーによって阻止され、挙げ句の果てに禁書をレイスに奪われ、射殺された。
コンセプトは『矮小な黒幕』。
ティターン
人造人間。5年前にヒューリー、レイス、エーデルの親を皆殺しにした人造人間。
創造主はワイス卿であり、複数の死体を合わせて造られた人造人間で失敗作扱いながらパワー研究と冬場の素材収集用として使われた。
コンセプトは『やられ役担当』。

INTERMISSION

ヴィクター=フランケンシュタイン
人間。最初の人造人間(ザ・ワン)を生み出した博士。彼の研究ノートの写本が「禁書」として人造人間製造者たちの羨望の的になっている。ヴィクトル=フランケンシュタインと呼ばれることもある。

DEAD BODY and LOVER

読み切り版のみに登場する人物については『DEAD BODY and LOVER』を参照。

フィリップ=ウィルキンソン
人間。迷子のエルムを見つけたカップルの片割れで、リバプールの海運商の嫡子。
アザレアと結婚するためにグレトナ・グリーンへ向かう最中、カタヴェリックに襲われ瀕死の重傷を負うが、ウィルキンソン家のSP達が見つけ一命を取り留める。エルムに別れを告げ、アザレアとともにリバプールに戻った。
最終話で再登場し、アザレア、ヴァイオレットと共にスコットランドヤードのブラックミュージックに呼ばれてエルムと再会、そしてアザレアと正式に結婚したことを伝えた。
コンセプトは『人畜無害お坊ちゃん』。
アザレア=ミレー
人間。迷子のエルムを見つけたカップルの片割れで、リバプールの大衆酒場で女給(バーメイド)の経験を持つ。
上述のように最終話で再登場し、フィリップと正式に結婚したことが明らかとなった。
コンセプトは『やさぐれヒロイン純情派』。名前であるアザレアは花言葉で『貴方を愛しています』を意味する。
カタヴェリック=スパスム
人造人間。皮膚強化型で皮膚の角質を圧縮して超硬化出来る。フィリップに重傷を負わせ、エルムを圧倒するが、アザレアが連れてきたアシュヒトの逆鱗に触れてしまった挙げ句、再起したエルムに皮膚を引き千切られ、エルムを傷つけたことへの制裁としてアシュヒトに粉々にされた。
コンセプトは『見た目実力中の上』。名前であるカタヴェリック・スパスムは医学用語で『死後硬直』を意味する。
ハーピー
キメラ型人造人間。人間の脳と声帯をミミズクに移植している為、言葉が話せる。カタヴェリックと組んでいたが逃げ延び、負傷したレイスと出会い、レイスを倫敦のブリッツ=ブルーダーへいざなう。
コンセプトは『便利なメガネ君』。名前であるハーピーはギリシャ神話に登場する怪鳥ハーピーから。
ゾンネウアー
人間。アシュヒトの武器を作る本部御用達の武器職人(マイスター)。アシュヒトに対人造人間用50口径拳銃「鋼鉄の腕(アイゼン・デア・アルム)」を作った。

DEAD BODIES in LONDON&DEAD BODY and NEAR-DEATH MIND

マイク=ロフト
人間。イギリス政府の高官だが、本職は会計監査。
逃亡したメアリを見つけるため、アシュヒト達を呼び出し、探偵である「弟」にピーベリー達を見つけさせた。「マイク=ロフト」という名前は偽名であり、実はあの有名な名探偵の兄であることが様々な描写から暗示されている。
藤田和日郎の漫画作品『黒博物館ゴースト アンド レディ』の最終話にも登場。
コンセプトは『秘密の英国諜報員』。
エーデル=ヴァイオレット=ケリー
人間。ワイス卿の本当の娘。
離婚後、娼婦となった母親から虐待に近い扱いを受けながら倫敦で暮らしていた。母親の死後、(母親の)借金のかたとして娼館の下働きとして働き、13歳の時に客を取ることを命じられたが母親と同じ道を歩むことに反発して脱走。以降、イースト・エンドの泥ひばりとして仲間達と助け合いながら生きていた。
ブリッツ=ブルーダーの人造人間達に仲間を皆殺しにされ、生きる意味を失うが、ヒューリーの言葉によって立ち直る。その後、マイク=ロフトを後見人にイギリス政府の援助を受け学校に通うことになった。
最終話で再登場し、アバーラインからヒューリーの遺言を伝えられる。また、一人でも多くの命を救うべく看護学校に入った。
コンセプトは『真・エーデル』。名前であるヴァイオレットは花言葉で『小さな幸せ』を意味する。
メアリ=ジェーン=ケリー
人造人間。ワイス卿の元妻でヴァイオレットの母。
切り裂きジャックの5人目の犠牲になり、証言を得るために人造人間化されたが、創造主を殺害し逃亡する。人造人間になる前の彼女は浪費家で身勝手な性格であり、ワイス卿に離婚を言い渡された際にはその腹いせにヴァイオレットを連れ倫敦へ。以後は堕落して娼婦、街娼として身を立てていた。
ヴァイオレットに再会し、彼女を求めるが生前の自堕落な行為を責められ拒否される。
生前悪女だったのが人造人間になって良母となったことから、ヒューリーは『元となる人間がいなければ「狂う」ということはあり得ない』ということを自覚する。
しかし瀕死の切り裂きジャック(リッパー=ホッパー)によって狙われたヴァイオレットの身代わりになり、首と電極を切断され、彼女から憐れみと憎しみの混じった言葉をかけられながら機能停止した。
コンセプトは『史実の犠牲者』。

DEAD BODY and MEMORIES

グロース=フランケンシュタイン
ポーラールートの領主。ヴィクター=フランケンシュタインの遠縁にあたる人物。ポーラールートの一番上に立つ存在として、人々から敬愛されている。
ジョン=ドゥの正体が「ザ・ワン」であることを知るとリヒターに廃棄を命じるが、その直後「ザ・ワン」として覚醒したジョンに瀕死の重傷を負わされる。
その時の死への恐怖と生への執着から、人造人間に不老不死と永遠の命の法を求め、市政を放り出し、人造人間に必要な死体をポーラールート市民に求め、彼らを生贄として人造人間に強制的に変えるようになった。
自分に取り入ってきた死体卿にポーラールートのすべてを任せ、寝たきり状態になりながらも、死体卿に永遠の命の法ができるかどうかを確認し続けていたが、アシュヒトを処分しようと地下から上がってきたゲバルトと永遠の命を求めて口論の末、激昂して互いに発砲。相討ちとなって死亡した。
コンセプトは『統治者』。
Dr.リヒター(ゲバルト=リヒター)
ポーラールートにおける人造人間研究の第一人者でアシュヒトの父親。究極の8体を作り出し、大創造主と呼ばれている。実質ポーラールートのNo.2に位置する人物。どんなに深刻な事態に直面しても、「〜くらいで私の創造は何一つ揺るぎはしない」が口癖だが、それは自身には「それ以外になにもない」という事実の裏返しであり、妻であるダリアと家族を得たことで初めて人間らしい感情を知った弱い男である。
ジョン=ドゥの正体が「ザ・ワン」であることを知ると創造の根源を秘めていることから研究しようと考え、グロースの廃棄命令に抗う。しかし、その直後「ザ・ワン」として覚醒したジョンに重傷を負わされ、顔の半分を失う。
自らが創造した究極の8体はあくまで自分の地位確立と才能披露のための実演(デモンストレーション)程度と考えており、自分の作品であるにも関わらず破壊することにためらいがない。
妻であるダリアの病死をきっかけにして、自分と家族に記憶と人格をそのままに人間を人造人間化する「永遠の命の法」を施して『楽園(エデン)』を作ることを望むようになる。過去との決別を決めたアシュヒトに保存されていた妻とエルム(人間)を破壊されたことで本格的に心の拠り所を失い、アシュヒトを殺して新たな家族を造ろうという破綻した考えに行きつく。アシュヒトを追って地上に上がった先で出くわしたグロースと口論の末、激昂して互いに発砲して相討ちとなる。即死こそしなかったが、助けを求めようにもすでに周囲には誰もおらず、永遠の命の法が失われることを懸念しながら死亡した。
コンセプトは『マッドサイエンティスト』。良い父親にするか悪い父親にするか最後まで迷っていたが、最終的に悪い父親にした。

DEAD BODY and DYSTOPIA&DEAD BODY and OLDMAN

トロイマン=ワーグナー
人間。ポーラールートの即応班長で、真面目一徹の性格だが、当初は融通の利かない面もあり、人間の命よりも上司の指示を優先させていた。
10年前の6番体試験体暴走事件で、グロースの命を無視してアシュヒトとエルムを助けようとしたジョン=ドゥに感化され、彼に特別な感情を抱いていた。
ポーラールートが暗黒郷と化し、難民たちを脱出させるときにもその性格は変わらず、老人から子供まですべての人間を守ろうとしていた。しかし、ジョンとウンゲホイヤーの戦いに巻き込まれそうになった子供をかばって致命傷を負い、最期はジョンに皆を守るよう頼みながら、ウンゲホイヤーの筋繊維攻撃を受けて肉片一つ残されず粉砕されてしまった。
コンセプトは『真面目』。もともとは名前もないモブキャラ扱いだったが、崩壊していくポーラールートで律儀に仕事をこなす彼が和月の目に留まり、名有りのキャラに昇格した。
エルム母フランケン
エルム(人造人間)をおびき寄せるために、死体卿に用意された人造人間。
エルム(人造人間)が一途にアシュヒトを想う気持ちに感激し、共に行動をとるようになった。
Dr.リヒターの研究室までエルムと行動を共にしていたが、アシュヒトとDr.リヒターの戦いに巻き込まれ、エルムをかばって胴体と電極を切断される。
最期まで自分がエルムの母であることは否定していたが、やがてそれを受け入れ、エルムとアシュヒトに母親としての言葉をかけて機能停止した。
コンセプトは『偽りの母』。

DEAD BODY and FAMILY

ダリア=リヒター
人間。アシュヒトの母で、Dr.リヒターの妻。
心優しい女性で幸せな家庭を築いていたが、ポーラールートの住民としては珍しく、人造人間に対して疑問を感じていた。
12年前に病死した後、その死体はDr.リヒターによって永遠の命の法が確立されるまで新鮮な状態で保管されていた。
Dr.リヒターは最初に彼女に永遠の命の法を施そうとしていたが、過去を取り戻すことはできないと悟ったアシュヒトによって、彼女の死体はエルム(人間)共々破壊された。
コンセプトは『ゲバルトにとってのエルム』。名前であるダリアは花言葉で『感謝』を意味する。
エルム=L=レネゲイド(人間)
人間。生前はアシュヒトの幼なじみで、花と刺繍が好きなとても優しい女の子。
10年前、起動暴走したジョンによって殺された後、表向きはその死体を素体に人造人間化されたとされてきた。しかし実際は永遠の命の法人造人間創造において死体は可能な限り新鮮でプレーンな方が望ましいとされており、人造人間からの再創造では永遠の命を施すのに失敗する可能性が高いと踏んだため。とアシュヒトの精神崩壊阻止のため、その死体は新鮮な状態でダリアと共に保管され、アシュヒトにはエルムと全く関係のない数千個の死体を集めて彼女と産毛一本黒子一つ違わぬエルム(人造人間)を造りだしていた。
ダリアとともに永遠の命の法を施そうとDr.リヒターは考えていたが、アシュヒトによってダリアの死体共々破壊された。
人造人間のエルムについては主要登場人物の項を参照。

読み切り版のみの登場人物

『DEAD BODY and BRIDE』

ジョン=ドゥ
主要登場人物の項を参照。
リトル・ロゼ
人間。ジョン・ドゥの相棒で援護と整備を担当。一人称は「ボク」一人称等から『DEAD BODY and BRIDE』のエピローグまでリトル・ロゼが女性と気付かなかった読者も多く、作者も言及している。
普段は自称「博士の卵」として、気の弱い娘を装っている。だが、その正体はジョン・ドゥの失われた記憶と目的を呼び起こさせない為の監視役であり、詳細は不明。人造人間用の縫合糸と針を武器に使う。
容姿が幼少時のアシュヒトと似ているが、両者の関係は不明。
マリゴールド
人間。『エンバーミング -DEAD BODY and BRIDE-』における実質的なヒロイン。
死体卿により家族を殺された上に両脚を切断されて奪われたことで、人生を滅茶苦茶にされ病に臥す薄幸の少女。ジョン=ドゥに死体卿の破壊を依頼し、達成された時は危篤状態に陥っていたが、ジョン=ドゥの見せた情により、安らかに息を引き取った(両脚を切断されたことによるショックからか、元々病弱だったかは不明)。死体卿に奪われた彼女の両脚は、報酬としてジョン=ドゥの花嫁のパーツとなった。
死体卿(したいきょう)
人間。死体愛好家で博士。本名不明。
1年前、マリゴールドらの住む地に現れ、彼女の父が保有していた工場を奪いそこを根城とする。墓を掘り起こすだけでは飽き足らず、生身の人間から人造人間用のパーツを奪うという残虐さを持つ。約50体の人造人間を創り、自らを「神」と呼ばせている。「禁書」を所持していた。最期は激昂したジョン=ドゥによって殺される。
裁断者(ザッパー)
人造人間。死体卿により創造された。
選りすぐりの100人分の筋繊維を基盤の死体に移植された、機能強化型。大剣を振るう怪力の持ち主。
執事(バトラー)
人間。元々マリゴールドの家に務める執事だったが、死体卿と裏で繋がっていた。
人造人間の魅力に惹かれたらしいが、劇中ではその理由については触れられていない。最期はリトル=ロゼに始末されたと思しき描写が描かれる。

『DEAD BODY and LOVER』

DEAD BODY and LOVERも参照。

キーファー
人間。流行り病によって壊滅した廃村の生き残り。三つ編みおさげの女性。
死んだ兄を人造人間として蘇らすために先生(ドクトア)と協力し、彼の研究材料とするため廃村に旅行者を誘き寄せる。だが、その病んだ心をエルムに救われ、傷心を癒される。
先生(ドクトア)
人間。人造人間創造に執着する狂気の博士。前作の敵である死体卿と同じく、本名不明。額に大きなつぎはぎ跡がある。
技術力は乏しく、大量の死体を繋げた“墓場の住人”のようなレベルの低い人造人間しか創ることが出来ない。最期はアシュヒトの電撃により黒焦げになって死亡。
“墓場の住人”(フリートヘーフェ)
人造人間。先生(ドクトア)により創造された。
大量の死体(流行り病により壊滅した村人達やキーファーによって騙された観光客や旅人)を複数並列で繋げられた巨体を誇るが、人造人間としてのレベルは低い。中枢はキーファーの死亡した兄。
アシュヒトの電撃で行動不能にされた後、キーファーの望みで中枢である彼女の兄の活動を停止させられた。

用語&道具

人造人間(フランケンシュタイン)
物語から150年ほど前、ヴィクター・フランケンシュタインが死体を基盤に生み出した人間に在らざる人間。身体には「電極(プラグボルト)」と呼ばれるパーツが埋め込まれておりこれを破壊されると機能を停止する。単一死体形成(ワンショットビルド)や複合死体形成(ミキシングビルド)、複数の動物の死体から造られるキメラ型人造人間など、さまざまなタイプが存在する。元々が死体なので多少の損傷で機能を停止することはないが、後述の機能特化型の更に限られたタイプを除いて自己修復機能を持たない。損傷は技術者によって修復しない限り治ることはなく、機能を維持するには定期的なメンテナンスも必要。
どのように創造されたとしても生前の人格か記憶のどちらか(もしくは両方)が失われていたり壊れたりしている。また、素材となる死体は新鮮かつ単純であることが、術後の仕上がりをよくする秘訣となっている。
機能特化型人造人間(きのうとっかがたフランケンシュタイン)
特定の身体機能を強化した物の中でも更に特化した能力を与えられた特別製の人造人間。リヒター家門外不出の技能が使われている。現在確認されている機能特化型はヒューリーと究極の8体の計9体である。
究極の8体
ポーラールート製の機能特化型人造人間の通称。Dr.リヒターが創った人造人間であり、ピーベリーの標的でもある。4体目から6体目はピーベリーと顔見知りで、1体目から3体目はピーベリーが研究記録で知ったが、7体目以降はピーベリーがすでに印付きのため詳細不明である。和月曰く、何体かのフェイクが含まれているとの事。リッパー=ホッパーとの戦いで、ピーベリーが生み出したヒューリ