ブッダ 1
『ブッダ』は、手塚治虫による日本の漫画作品。
仏教の開祖で、“釈迦”・“仏”・“ゴータマ・ブッダ”等と呼ばれるシャカ族の王子、シッダルタの僧としての生涯を描いた仏教のストーリー。潮出版社の少年漫画雑誌『希望の友』(後に『少年ワールド』→『コミックトム』と改題)にて、1972年から1983年まで連載された。
アメリカ合衆国でも高い評価を受けており、2004年および2005年のアイズナー賞最優秀国際作品部門を受賞した。
2010年7月には『手塚治虫のブッダ』の題名で、全三部作としてアニメ映画化されることが発表された吉永小百合、手塚治虫の傑作「ブッダ」初の映画化で声優 映画ニュース - 映画.com。2011年5月28日公開予定。
あらすじ
舞台は今から2000年以上前のインド。人々はカースト制度と呼ばれる4段階の身分(バラモン(僧侶)、クシャトリヤ(武士)、ヴァイシャ(平民)、スードラ(奴隷)、更にカースト以下とされるバリア(不可触民))のもと暮らしていた。カピラバストウ(カピラ城)の王子ゴータマ・シッダルタはクシャトリヤの身分として、何不自由のない生活を送っていた。やがては結婚し、息子誕生と共に王位に就くことになる。しかし、幼い頃よりシッダルタは、「なぜ人は死ぬのか」「同じ人間なのになぜ身分があるのか」などの疑問を常に抱えていた。そして、息子が生まれた日。シッダルタは遂に僧としての道を歩み始めた……。
登場人物
教団
- ブッダ
- 本名:ゴータマ・シッダルタ(サンスクリット語:ガウタマ・シッダールタ、パーリ語:ゴータマ・シッダッタ)。漢訳仏典では瞿曇 悉達多(くどん・しっだった)と表記される。コーサラ国の属国、カピラバストウのシャカ族の王子としてクシャトリヤの最高位(王族)の身分に生まれる。幼い頃から体が弱く、同じ人間に“身分”があることを気にかけていた。「人はなぜ生きて死ぬのか」という疑問を持ち、息子が生まれた日に僧(サモン)としての道を歩むようになる。仏典とは異なり悟りを開いてからも悩み苦しみ時には弟子に励まされたりする。あくまで弱い一求道者としての姿が今作では強く描かれる。
- なお「ブッダ(仏陀、Buddha)」は称号や尊称(普通名詞)であり特定の人名ではない為、実際の仏典では本名の「ゴータマ」で呼ばれる事も多く、本人も「修行完成者(如来=タターガタ)」等と自称する事が多かった。しかし本作では、ブラフマン(後述の神)が悟りを開いたゴータマ・シッダルタに対してそう名乗るよう命じたという扱いになっている。そのため悟って以降は本人が「私はブッダという名の者です」や「もうシッダルタではない。ブッダと呼びなさい」と発言したり、弟子でもない他者や敵対者ですらも「ブッダという名の僧が」と発言するなど、“ブッダという名前に改名した”という扱いになっている。マカダ国王ビンビサーラも、悟りを開くしばらく前のシッダルタに対してブッダの名を贈っているが、この際はあくまでビンビサーラが個人的にブッダと呼び始めたに過ぎず、自他共にブッダの呼称が使用されたわけではない。
- なお、この作品は『ブッダ』というタイトルだが、本人は第一部第7章以降の登場となる。
- ブラフマン
- 別名ブラフマー()、日本では梵天とも呼ばれる天地の創造主にして、バラモン教の最高神とされているが、今作では最高神と言うより大自然の精霊神のような存在。老人の姿をしており、ブッダに僧となり悟りを開くことへの教えを説いた。また、悟りを開いたシッダルタの額に「聖なる印」(白毫)をつけ、「ブッダ」を名乗るよう命じた。なお仏典では悟りを開き教えを世に説く事を躊躇っていたブッダに世の中に教えを説く事を勧めた「梵天勧請」という逸話が多くの仏典に書かれている。仏典では悟りを開いたブッダに謙って弟子のように教えを乞い、礼拝するような描写がされるが、この作品では悟った後もブッダの師として導いていくような描写がなされている。
- タッタ
- 架空の人物。自称ブッダの一番弟子。出家はしていない。バリア(カースト以下の身分・不可触賎民)出身。シッダルタ王子に外の世界を教えた。幼い頃に家族や親友であるチャプラとその母を殺され、コーサラ国を憎んでいる。シッダルタ登場前はほぼ主人公級の活躍を見せる。動物に乗り移ることができたが、成長するにつれて自分を自然と一体のものとみなすことができなくなり力を失う。ブッダとの約束を守りきれずコーサラ軍と戦い死亡。
- デーパ
- 架空の人物。ブッダの弟子。コーサラ国のクシャトリヤ出身のサモン。シッダルタの先輩僧として初期より行動を共にする。ある事件で、左目を失っている。シッダルタが苦行をやめようとしたり、タッタら不可触民と交流・治療をすることなどの意見の相違から一方的に敵対する。苦行林での修行者同士の内乱の際にシッダルタが味方に付かず無干渉・中立を貫いたことが直接の原因で一時完全に関係が断絶する。その後ブッダとなったシッダルタと再会、敵対状態は変わらなかったが、コーサラ国とマガダ国の戦争に巻き込まれ死にかけた際に、ブッダに命を救われたことがきっかけで弟子となる。弟子入り以降は以前の高慢な性格や態度は完全に影を潜め、最も古い友人・理解者として最期までブッダと教団を支え続けた。また、ことあるごとに「ブッダへ恩返しをしたい」と発言していた。ブッダの死の直前には「とうとう何も出来なかった」と泣きながら後悔しているものの、殺されかけ瀕死状態のブッダの命を取り留めようと治療に努めたり、ダイバダッタの反乱をいち早く伝えるなど、実際には要所要所で大きく貢献している。
- 本人の弁によると初登場以前にナラダッタの弟子だったというが、作品中でナラダッタと邂逅したシーンはない。また、ブッダがナラダッタと出会った際にはデーパの元師匠であることには気がつかなかった。
- アナンダ
- ブッダの弟子。アーナンダとも。漢訳仏典では阿難、もしくは阿難陀。本作上ではダイバダッタの異父弟としているが、仏典では兄弟、または従兄弟と伝えられている(ただし仏典によって差異があり一致しない)。また本作中では、元は名を馳せた大泥棒の殺人鬼であるが、実際はクシャトリア出身である。ブッダに会って改心した。出家後、過去の行いの報いとして、受けた迫害に耐え切る。これはアングリマーラのエピソードをアナンダに付加したもの。ただし、アングリマーラ自身はまた別にアヒンサーとして登場する。後にはブッダの世話役となる。ブッダが最も頼った人物。
- ダイバダッタ
- ブッダの弟子。本作上では元カピラバストウ国王であるバンダカ(架空の人物)の息子。またアナンダの異父兄にあたる(ただし仏典ではアナンダの兄弟とするが、諸説あり一致しない)。教団の後継者を自負していたが、後継者がサーリプッタとモッガラーナだとブッダ自ら宣言したのを境に、ブッダを憎むようになる。後にマガダ王子アジャセを後ろ盾にブッダに反旗を翻し、教団の乗っ取り、殺害を企てるがことごとく失敗、最後は毒の爪で殺害を企てるが、不注意から
負った傷口から毒が入り阿鼻叫喚の苦しみの中で絶命する。死に際、ブッダに対して「あんたになりたくてなれなかった。だから憎かった」と吐露した。
- なお、本作に限った話ではなく、仏典においても裏切者として扱われ、生きながら無間地獄に落ちたといわれている。しかし近年はダイバダッタの悪行に否定的な学説も唱えられている。
- ウルヴェーラ・カッサパ
- ブッダの弟子。漢訳仏典では優楼頻羅・迦葉(うるびんら・かしょう)。元は火を使う事火外道で、1000人の弟子を持つ仙人だったが、ブッダの教えで改心。ナディー・カッサパとガヤー・カッサパの弟2人も共に出家。カッサパ兄弟の弟子入りにより仏教団は一気に1000人を超す大教団になる。本作では、ブッダに帰依する前は弟らと共に科学至上主義者として描かれた。
- ちなみに、マハーカッサパ(漢訳:摩訶迦葉)とは別人。彼については、手塚が後書きで、登場させられなかったことを悔やむコメントを残している。
- ヤタラ
- 架空の人物。ブッダの弟子。スードラ(奴隷)の身分で、幼い頃に両親を殺される。父から貰った薬を飲んだ結果、体が巨大化し、怪物として人々に恐れられた。ルリ王子によってコーサラ国の衛兵となるが、生母を冷遇したルリ王子と対立。後、ビンビサーラ王の家来となる。ブッダに帰依し出家する。
- リータ
- 架空の人物。ブッダの弟子。口がきけなかった奴隷の少女。盗賊時代のアナンダと出会い、恋仲となる。後にブッダのおかげで口がきけるようになり、出家する。出家後もアナンダとの強い絆は変わらなかったが、マーラの使わしたコブラからブッダを庇って噛まれ、死去した。なお彼女のポジションは仏典に登場する娘プラクリティに近いが、こちらは悲劇的な最期を遂げたという記録はない。
- サーリプッタ
- ブッダの弟子。サンスクリット語ではシャーリプトラ。漢訳仏典では舎利子、または舎利弗として知られる。アナンダに導かれて、サンジャヤ聖者の教団からブッダの下に移る。他人には見えない精霊が視える。教団の跡継ぎになる予定だったがブッダより前に死亡。本作では事故で死亡した事になっているが、仏典では病にて寂したと伝えられている。また仏典ではアナンダではなく、ブッダが最初に化導した5人の比丘の一人、アッサジによってブッダの教団に改宗したとされている。
- モッガラーナ
- ブッダの弟子。サンスクリット語ではマウドゥガリヤーヤナ。漢訳仏典では目連、または目犍連として知られる。サーリプッタほか同門250人共々ブッダに帰依する。予知能力を持つ。サーリプッタと共に教団の跡継ぎになる予定だったがブッダより前に死亡。本作では病気で亡くなったとされるが、仏典では竹林外道(執杖梵士)の迫害により瀕死となり寂したと伝えられている。
マガダ王国
- ビンビサーラ
- マガダ国国王。漢訳仏典では頻婆沙羅(びんばしゃら)王。ブッダの在家信徒。ブッダとは同い年で、ブッダの良き協力者。友人であるブッダには「陛下」と敬称で呼ばれる事を嫌い、本名の「セーニャ」と呼び捨てさせている。また、ブッダと会話する際は一人称を「予(余)」ではなく「僕」に改める(数年を経て「私」に変化)。ブッダが悟りを開いた後は帰依し、在家のまま弟子となる。その際に、竹林精舎を寄進した。王子アジャセが成長すれば父を殺すだろうというアッサジの予言に苦しむ。なお仏典では予言したのはアッサジではなく単に占い師となっている。
- 本作でシッダルタをブッダと呼んだ最初の人物だが、その時点ではシッダルタ自身は悟りは開いておらず、ブッダと自称してもいない。
- アジャセ
- マガダ国王子(後に国王)。サンスクリット語ではアジャータシャトル。漢訳仏典では阿闍世王。ある事件(手塚の創作であり実際の仏典とは大いに異なる)をきっかけに、ダイバダッタと組んでアッサジの予言を成就させることを目指し、国を奪って父ビンビサーラを死に追いやる。しかしその罪に苦しみ、生死を彷徨う病に倒れる。自分をブッダが救ってくれたことにより、ブッダに帰依するようになる。
- イダイケ
- マガダ国王妃でアジャセの母。夫と息子の対立の間で苦しむ。
- ハラゲーイ
- マガダ国の宰相。
- ジーヴァカ
- マガダ国の重臣で高名な医師。
コーサラ国
- パセーナディ
- コーサラ国国王。原典ではバーセナディ、プラセーナジットとも。漢訳仏典では波斯匿(はしのく)王と表記。後継者のいなかった前王の遠縁だったため、この地位についた。元プロレスラーで横暴な性格(ただしこれは本作上での設定)。属国である釈迦族に妃の提供を求めたが、自尊心の強い釈迦族がクシャトリアではなくスードラ(奴隷)の女を妃として納めたことを恨み、釈迦族を滅ぼそうとする(これも本作上の設定で仏典と少し異なる)が、それを果たす前にビドーダバに位を簒奪された。仏典上では、ブッダに帰依している在家の仏弟子である。
- ビドーダバ
- コーサラ国王子(後に国王)。ヴィドゥーダバとも。漢訳仏典では破瑠璃王、流瑠王などと表記される。額にはめ込まれた瑠璃球になぞらえて、「ルリ王子」とも呼ばれる。クシャトリヤの身分だが、母はスードラ(奴隷)という事をカピラヴァストゥで知らされ屈辱を受ける。その後、己を貶した者を両親の目の前で全員殺害し、さらに母を幽閉する。本作では、出自に苦しむ自分を救ってくれたブッダに帰依するが、不可抗力とはいえシャカ族を滅ぼしたのも彼である。なお仏典ではブッダに帰依せず、ブッダが「7日後に彼とその兵は滅亡する」との予言どおり、予言の7日後に川遊びをしていて暴風雨の増水によって溺死し城も炎上したとされる。
- ジェータ
- ビドーダバの息子。漢訳仏典では祇多、祇陀等と表記。スダッタ長者に土地を譲り、そこをブッダの寺院祇園精舎とした。なお、仏典ではビドーダバの息子ではなくパセーナディの息子であり、ビドーダバの兄に当たる。
- チャプラ
- 架空の人物。幼い頃のブッダが登場するまでは彼をメインに話が進められていた。スードラの身分で、タッタとは義兄弟の契りを結ぶ。剣の腕が良く、コーサラ国の勇士にまでなるが、後に身分が発覚。母ととも串刺し状態で崖から突き落とされ処刑された。
- ブダイ将軍
- 架空の人物。コーサラ国の将軍。ワニに襲われたところをチャプラに助けられ、チャプラを養子として迎える。チャプラ亡き後の消息は不明。
カピラバストウ
- スッドーダナ
- カピラバストウ国王。シュッドーダナ、スッドダーナとも。漢訳仏典では浄飯(じょうぼん)王。ブッダの父。コーサラ国の脅威に怯えている。本作上の設定では仏典の伝える説とは異なり、シッダルタの出家後、一時的に遠縁であるバンダカに位を譲ったが、バンダカの戦死後に復位した。
- マーヤ
- スッドーダナの妃で、ブッダの母。漢訳仏典では摩耶夫人(まやぶにん)と表記。出産の為に里帰りをする途中でブッダを産む。里帰りの必要がなくなったため引き返しカピラバストウへ戻るもその途中で病に倒れ、カピラバストウへ到着し夫である王に子を託すと使命を遂げたかのように死去した。
- パジャーパティ
- ブッダの生母マーヤの妹で、スッドーダナ王の後妻でありブッダの継母。パーリ語ではマハー・パジャパティ、サンスクリット語ではマハー・プラジャーパティー。漢訳仏典では摩訶波闍波提(まか・はじゃはだい)と表記。血縁上ではブッダの叔母にあたる。死去した実母マーヤの代わりにブッダを育て上げた為、実質上母の役目を果たしブッダ自身も彼女を「母上」と呼ぶ等、実の母親のように接していた。本作では王族のままであるが、仏典では仏弟子となり出家している。仏教史上初の女性出家者といわれている。
- ヤショダラ
- ブッダの生母マーヤ、養母パジャーパティと同じコーリヤ(拘利)族出身。サンスクリット語やパーリ語による原典ではヤソーダラー。漢訳仏典では耶輸陀羅(ヤショダラ)と表記。スッドーダナの妹であるアミター妃の子(という漫画上の設定)で、釈迦族に嫁ぎ、シッダルタと結婚、ラーフラを生む。本作では王族のままだが、仏典ではマハーパジャパティと共に出家。史上初の女性出家者達の一人である。
- ラーフラ
- シッダルタ(ブッダ出家前)とヤショダラ妃との間に生まれた息子。漢訳仏典では羅睺羅(らごら)と表記。本作ではシッダルタが出家した日の未明に誕生(仏典では出家後に生まれたとされる)。ブッダに再会した後、ブッダに帰依。本作では出家を願い出るも断られ在家弟子に留まっているが、仏典では出家している。原典では出家後もブッダの実子であるが故に他の弟子らより特別扱いを受けたり、高慢な性格があったと記録されている(後にこれを改める)。
その他
- アシタ聖者
- 当時のインドで最高峰のバラモン(僧侶)。漢訳仏典では阿私陀仙人。シッダルタがブッダ(覚者)、あるいは世界の王となることを予言する。
- ナラダッタ
- 架空の人物。バラモンでアシタの弟子。尊い人を探すために旅に出るが、コーサラを訪れたバンダカと決闘して重傷を負ったチャプラの命を助けるために、罪のない動物たちの命を奪ったとして、アシタにより畜生道に落とされる。以後40年を経て、ブッダと巡り会う。
- ミゲーラ
- 架空の人物。スードラで元盗賊の頭。かつては好意を寄せたシッダルタの恋人だったが、そのために捕らえられ、盲目にされた。後にタッタの妻となり、子供3人をもうける。
- アッサジ
- シッダルタの修行時代の仲間。漢訳仏典では阿説示と表記。熱病で生死の境をさまよった際に予知能力を持つようになり、ビンビサーラ王、自分の命日を予言。最期は、自分の体を狼に食べさせた。死後、精霊となってアナンダを守護し、サーリプッタとモッガラーナに引き会わせる。なおアッサジの本作上の設定は仏典とはかなり異なる(後述)。
- スジャータ
- 苦行中のシッダルタに乳粥を施し、苦行の無意味さを理解し悟りを開くきっかけを与えた少女。シッダルタを愛する様になるが、僧(サモン)の彼は彼女の思いに答える事ができず、思いはかなわなかった。悲しみのあまり飛び出した園で毒蛇に噛まれ死ぬが、そんな彼女にシッダルタは命を助けるという何物にも代えがたい功徳をもって彼女の思いに答えた。
- アヒンサー
- 別名アングリマーラ(指の首飾り人、漢訳仏典では央〈鴦〉掘摩羅などと表記)と呼ばれる殺人鬼。99人の人を殺して小指を切り取り、「100人目として世界一の坊主を殺す」ことを宿願としてブッダを付け狙うが、穴に落ちて死ぬ。死の直前に、ブッダに帰依する。
- ただし仏典では改心して仏弟子となっており、帰依した直後に死去した訳ではない。前述の通り、帰依後の彼の苦悩や迫害は本作ではアナンダが受けている。また、アングリマーラの本名をアヒンサーとしたのは本作においての創作であり、ブッダがアヒンサー(非暴力)を定めたきっかけを彼にちなんだという作品上の設定の為である。
- ユーデリカ
- 架空の人物。ブッダへの反抗心からブッダの命を狙ったアジャセ王子が、父によって幽閉された際、彼に仕えることになった奴隷の少女。西方の国(現在のアフガニスタンからイランにかけての地域と思われる)出身で金髪で碧眼。元は奴隷ではなく戦争捕虜から奴隷にされた出自である。ユーデリカに強く惹かれるようになったアジャセは身分を捨て、駆け落ちすることを決意するも、それが発覚したためユーデリカはその責を科せられ処刑されてしまう。アジャセはこの事件により父に強い憎悪を抱くことになった(この事件そのものは手塚の創作)。
- マーラ
- いわゆる悪魔。漢訳仏典では魔王・波旬(はじゅん、パーピヤス)。普段は妖艶な蛇女の姿で現れる。昔、神との戦いに敗れ以来復讐の機会を伺い続け、アナンダに悪魔の洗礼を授け死なない体を与え殺戮の道へと踏み込ませ、様々な形であるいは姿で人間界に神の使わしたブッダを付け狙う。
- ヴィサーカー
- シッダルタとデーパ、アッサジが立ち寄った街の長者の娘。シッダルタに結婚を迫るが断られる。のちに薬物中毒が悪化したところをブッダに救われる。
スター・システム
手塚作品の例に漏れず、他の作品の登場人物と同じ容貌の人物が珍しくない。
- アッサジ
- 『三つ目がとおる』の写楽保介(額にバンソーコーを貼った状態)
- ウルヴェーラ・カッサパ
- 『火の鳥』の猿田博士
- ナディー・カッサパ
- 手塚常連キャラクターのフランケンシュタイン
- 若い頃のビンビサーラ王
- 手塚常連キャラクターのロック・ホーム
- スードラの烙印/スーカラマッタヴァ(ブッダの死因となったキノコ)
- ヒョウタンツギ
- ダイバダッタ
- 『火の鳥』乱世篇の源義経
- タッタ
- 『火の鳥』乱世篇の弁太
他、若干の架空の人物達。
仏典との違い
- 大泥棒アングリマーラのエピソードが、アナンダとアヒンサーの2人の人物に分けて用いられている。この内、作品中でアングリマーラの名を持つのはアヒンサーである。仏典ではアングリマーラは生きて入信し、本作中でアナンダが受けているような迫害に耐える。一方アナンダはクシャトリヤの身分から出家しており、泥棒だったというような重い過去はない生真面目な人物である。
- アッサジの設定は仏典ではかなり異なる。アッサジはスッドダーナ王の要請でシッダルタの修行に同行した5人の修行者(本作上でも登場する、五比丘)の一人。本作上ではアナンダがサーリプッタとモッガラーナを導いたという設定だが、仏典に基づけばアッサジが仏教に改宗させている。また本作ではアッサジがマガダ国のビンビサーラに、王子が成長して殺されるという予言をしたという設定になっているが、仏典では単なる占い師とされる。
- またアッサジの最期はジャータカでブッダ自身の過去世の1つとされているものに酷似する((狼ではなく)虎に自分の体を食べさせた、薩埵王子)。また仏典ではアッサジがそのような最期を迎えた場面はない。
- パセーナディは仏典では仏教に帰依したとされる。逆に息子のビドーダバは仏典では仏教に帰依することなく、ブッダの「彼とその兵士達は7日後に滅ぶだろう」という予言どおり、川遊びをしていて時ならぬ暴風雨に遭い流されて亡くなったとされる。
単行本
- 希望コミックス『ブッダ』 潮出版社、全14巻
- 手塚治虫漫画全集『ブッダ』 講談社、全14巻
- 愛蔵版『ブッダ』 潮出版社、全8巻
- 潮ライブラリー『ブッダ』 潮出版社、全8巻
- 潮ビジュアル文庫『ブッダ』 潮出版社、全12巻
アニメ映画
全三部構成で、第一作目『手塚治虫のブッダ -赤い砂漠よ!美しく-』(てづかおさむのブッダ あかいさばくよ!うつくしく)が2011年5月28日に公開予定。
キャスト
- ナレーション / チャプラの母 - 吉永小百合
- チャプラ - 堺雅人
- スッドーダナ王 - 観世清和
- シッダールタ - 吉岡秀隆
- シッダールタ幼少期 - 折笠愛
- チャプラ幼少期 - 竹内順子
- ブダイ将軍 - 玄田哲章
- ミゲーラ - 水樹奈々
- ナラダッタ - 櫻井孝宏
- ジョーテカ - 観世三郎太
- マリッカ姫 - 黒谷友香
スタッフ
- 原作 - 手塚治虫
- 監督 - 森下孝三
- 脚本 - 吉田玲子
- 演出 - 古賀豪
- 音楽 - 大島ミチル
- 歴史アドバイザー - ひろさちや
- キャラクターデザイン・総作画監督 - 真庭秀明
- 美術監督 - 行信三
- イメージアート - 岡野玲子
- 製作 - 「手塚治虫のブッダ」製作委員会
- 制作 - 東映アニメーション
- 制作協力 - 手塚プロダクション
- 東映 / ワーナー・ブラザース映画 共同配給
- 助成 - 文化芸術振興費補助金
出典
外部リンク
ko:붓다 (만화) nl:Buddha (manga)
sv:Buddha (manga)