県立海空高校野球部員山下たろ-くん 12

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県立海空高校野球部員山下たろーくん』(けんりつうみそらこうこうやきゅうぶいんやましたたろーくん)は、『週刊少年ジャンプ』にて1986年44号から1990年32号まで連載されていた、こせきこうじ原作の漫画作品。単行本全21巻。 また、それを原作としたアニメ映画。

社会人となった主人公を描いた続編として『週刊コミックバンチ』(コアミックス)で連載された『株式会社大山田出版仮編集部員山下たろーくん』、『山下たろーくん うみとそらの物語』の2作がある。

概要

作品解説

タイトル通り高校野球を題材としたスポーツ漫画である。基本的な描写は試合が中心で、学校の授業風景や登場人物の私生活はおろか、練習風景すらほとんど描かれていない。また、ほとんどの登場人物が苗字のみで名前も設定されていない。1試合は15-25回前後で完結し、次の試合までのインターバルも1-3回程度。試合の描写が長くなりがちな野球漫画の中ではテンポがよい作品である。

荒木飛呂彦が「この作品が『ジョジョの奇妙な冒険』を描く上で最も影響を受けた作品」という主旨の文章を単行本5巻に寄稿している。

ストーリー

史上最高を目指す史上最低の野球部員、山下たろー。彼の所属する海空高校野球部は、やる気の無い常に1回戦コールド負けの弱小チームだった。ある日の練習中、同じ地区の強豪・山沼高校が練習試合の帰りに偶然立ち寄ったのを偵察に来たと勘違い。さらに山沼の選手たちのお世辞を信じ込んだ海空ナインは猛練習を重ね、またたろーの野球への情熱に感化され、怒涛の勢いで勝ち進むのだった。

登場人物

打順・守備位置は主なもの。

なお連載開始前に掲載された2本の読切『海空高校4番三塁 山下たろーくん』『海空高校5番投手 山下たろーくん』(以下「4番三塁」「5番投手」または「読切」)では、たろーや辰巳を除いて登場人物の設定が異なっている。高倉に似た暴力恐怖症の主将や、若月や吉行に似た風貌の人物も登場しているが、その他の人物は連載版には引き継がれなかった。

県立海空高校(千葉・栃木・群馬・埼玉の4県のどこか)

校舎は2階建ての木造であり、中央の大きな時計がシンボルである。男女共学。関東のどこの県にあるかは最後まで明らかにならなかったが、単行本4巻の野球場に僅かに「千葉」の文字の一部が見えていること、また「海空」「大潮」など海にまつわる校名が多いということ(他の3県は海に面していない)からも、千葉県の可能性が高い。野球部はバックネット付きのグラウンド、専用部室、テレビ、ビデオといったAV機器を所有するなど必要な設備は整っている。校名通りユニフォームは青が基調である。

山下たろー
主人公。投手。「史上最高の野球部員」となることが目標。ナガシマに憧れ、野球を始めた。何をやってもダメな高校生で

周りから苛められていたが、辰巳との出会いで隠された野球の能力が開花していく。1つのことに気をとられると他が極端に疎かになる、辰巳曰く「ド不器用」だが、技術の習得や咄嗟のひらめきによる順応性により強敵に対する打開策を見出す。通称「発展途上人間」。江河原戦では右打席に立ちまたサウスポーでの登板も行うなど、架空の野球選手の中でも稀なスイッチヒッターかつスイッチピッチャーでもある。普段は右投左打。「たたかれても、踏みつぶされても平気な」頑強な身体が持ち味だが、故障も厭わず限界以上に身体を酷使したことが続編の伏線となっている。

「~(だ)ど」「~(だ)もんね」など、言葉遣いは独特。ただし一人称の「おで」は「俺」がなまったわけではない(サインにもそう記している)。他者からの呼称は「たろー」「山下たろー」で、苗字のみで呼ばれたのは「4番三塁」の場内アナウンスの1度のみ。
1973年2月2日生まれ、身長152cm(1989年3・4合併号より)。
投球・守備
温和な顔に似合わず、勝負度胸のある強気なスタイルで、常に真っ向勝負が信条(作中では敬遠は必要に迫られた1度のみ)。かつハーフスピードの直球をど真ん中に投げる、超スローボールを駆使するなど相手打者の虚をつく大胆さも持ち合わせている。スローカーブ、チェンジアップ、フォークボール、サンライズボール(後述)など球種も豊富。得意球は全身をムチのようにしならせる「大速球1号」と、さらに腕の関節の柔らかさを加えた「大速球2号」。
選抜高校野球大会(以下甲子園)で吉田や辰巳が投手の際には捕手を務めたが、捕球技術は高くない。読切では三塁手も務めている。
打撃・走塁
主に4番(大中央学園戦は3番)。本来は右打ちだが、一塁に近いからという単純な理由で左打ちに転向。最初の2球を空振りして追い込まれることは多いが三振の描写は極端に少なく、ファウルで粘った末に打開策を見つけ、結果を出す。長打率が高く、読切を含めた本塁打数は二桁に達する。
ここぞという時の走力は攻守両面に活かされている。特に一見無謀な本塁突入や俊足で鳴らす相手へのタッチプレイが勝敗を左右することも多い。
なお春の甲子園での4本塁打(内2本はランニング本塁打)は実際の記録をも上回る。さらに紀伊國戦及び大中央学園戦で外野の好守に阻まれ本塁打を1本ずつ損しており、「全試合」「5試合連続」「計6本の」本塁打の大記録を逃した。
辰巳亮介
三塁手。右投右打。中学時代は投手だったが、当時の監督に指図されたのが気に食わず暴行事件を起こし、たろーと出会うまで野球をやめていた。大柄で血の気の多い粗暴な性格で、何かに付けてたろーを殴って蹴って張り倒す。もしたろーと出会っていなければ、殴って蹴って袋叩きが趣味の、単なる危ないヤツだったであろうというのが、周囲の一致した見解。一方、チームが勝利した時でも歓喜の輪には加わらず後ろで腕組みをしながら微笑むようなクールな一面も持つ。打撃力・守備力ともに高く、新開に「海空の一番の実力者」、佐々木に「メジャーリーガーに匹敵する」とまで評価されるほど。あわもり戦では先発投手を務め、驚異的な握力でフォークボールを連投し、咄嗟の思いつきでスプリットフィンガード・ファストボールを投げ込むなど高い野球センスを見せつけた。普段は恐ろしい形相であるが、集中力が高まると無表情になる。
試合外の私生活が描写された数少ない人物。2階建ての一軒家に住んでおり、「ジョジョ」に登場する石仮面を所持している(前述の通り荒木と交流がある為のジョーク)。
須永
二塁手。右投左打。海空が誇るリードオフマン(最初の山沼戦のみ9番)で通称「さすらいの賭博師」。高校生ながら「競馬・すごろく・麻雀」など各種ギャンブルにより常に勘を研ぎ澄ましており、勝負師としてのセンスは抜群。北野も認める芸術的な打撃と守備を誇る。辰巳に勝るとも劣らない実力者であり、須永を起点に相手投手を攻略することも多い。冷静沈着で孤高の人物という印象を与えがちだが、仲間を思う絆と勝利にかける執念は人一倍。一方私生活はナインでも知る者はおらず、辰巳曰く「人に寝ている姿を見せたことがない」。常に帽子を外さない。初期は性格や口調・口数など若干キャラ設定が異なっており、表情も豊か。
高倉
一塁手で主将。右投右打。「暴力恐怖症」という一面を持つが、慢心しているナインを殴って気合いを入れようとした辰巳に自ら「やってくれ」と頼む、観客の野次に激高した大内山の頬を叩いて落ち着かせる、辰巳に求められ殴って気合いを入れる、など随所で主将らしいリーダーシップを発揮するようになった。明陵戦では、立原の「左の狙撃兵」への恐怖心を克服して犠牲フライを放ち、突破口を開いた。
田中
捕手。右投右打。家が農家であり、普段家では農業を手伝っている。鍬を振り下ろすような独特のダウンスイング「農耕打法」が特徴。素朴な顔に似合わず冷静沈着な性格であり、リードは正攻法を主体としながらも時に大胆なものに切り替え、相手を撹乱する。江河原戦でたろーの球をスイカに例えてその気にさせるなど、女房役としてたろーの操縦法を心得ている。バントの名手であり出塁率も高いことから関東大会までは2番で固定だったが、吉田の加入以後は補欠となり、外野手としても出場するようになる。短所は作中で何度か指摘されている通り足が遅いこと。
熊田猪一郎
左翼手。右投右打。巨漢で、スイング時にすっぽ抜けたバットが左翼手の守備位置まで届くほどの怪力を誇り、強打とチーム一の強肩を持ち合わせている。一方チーム一気弱で、手強い相手の前では震えていることが多い。また非常に涙もろい。
大内山
中堅手。右投右打。チーム一短気。かつてたろーをバカにしていたが、やがて感化され、海空ナインとしての自覚をもつようになる。山沼・近藤に強く、関東大会決勝で本塁打を含む4安打を放った。甲子園では大中央学園戦で足を負傷し、以降の試合は欠場した。
吉行
遊撃手。右投右打。あご髭が特徴。ど真面目で要領が悪く、たろーに似たタイプの選手。真ん中高めが得意(だが最初の山沼戦では真ん中高めが苦手だった)。チーム一地味で、打撃成績は高くないが、ジャストミートした時の打球の鋭さはチーム一である。南浦戦で初打点を記録した。最初の山沼戦では一番バッターだったが、唯一活躍した南浦戦では7番、以降さらに8番へと下がっていった。打率が悪いのに7番なのは鋭い打球を期待されていたからだったが、その後はもはや期待されなくなった模様。
若月
右翼手。右投右打。肥満体型であるが俊足(100m走11秒台)であり、通称「身の軽い肥満体」。その足を活かし、好守で何度もピンチを救っている。甲子園では大中央学園戦での度重なる負傷が災いし、以降の試合は欠場した。
新開
補欠・マネージャー。地区大会前に入部。野球の理論や技術論に精通し、ナインが質量揃った練習をすることができたのも彼の知識によるものが大きい。海空ナインの頭脳的存在で基本的には解説役や助言役に徹しているが、選手層の薄さなどの理由から自らもグラウンドに立つ(主に右翼手)。「運動神経がプッツリ切れてる」「運動神経が存在しない」と自他共に認めるほどの運動音痴で戦力としては他のナインに劣るものの、卓越した知識、及び努力と根性でカバーし、フェンスオーバーの打球をはじき返して本塁打を阻止するなど随所で勝利に貢献している。
海空ナインで代打及び代走(臨時代走)での出場描写があるのは彼のみであり、かつ代打では打率10割である。
大林監督
野球をよく知らず、甲子園でのインタビューでは質問に答える事が出来なかった。ただ時に的を射たアドバイスを送ることもある。なぜか帽子を被った場面は一度もない。
校長
甲子園の準決勝で裸の上半身に選手達の似顔絵を描いて応援するなど母校愛に溢れ過ぎている人物。辰巳は呆れ、たろーは感動していた。
池田
読切に登場した野球部員。背番号10。眼鏡を着用しており中学時代は投手。たろーをからかってバカにしていたが、次第にたろーのやる気に引きずられていく。試合時は補欠であった。
岡村
読切に登場した野球部員。背番号11。連載版の田中に似た風貌。池田同様にたろーをバカにしていた。試合時は補欠であった。

海空高校と同県内の各対戦校とその選手

私立山沼高等学校

開校10年目の新しい高校であるがエリート校であり地域の優秀な人材が集まっている。野球部は開校以来9年連続の地区優勝を果たし、10年目に海空と対戦した。照明、スタンドを設備した専用野球場、生徒用の寮が存在している。海空とは3度(地区大会決勝・関東大会決勝・甲子園決勝)対戦している。

佐々木
4番・三塁手、投手。実力も人格も県を代表する選手で、その注目度は関東大会にプロのスカウトが駆けつけるほどであり、海空の選手が最大のライバルとしている。感情をあらわにせず静かに闘志を燃やすタイプ。打撃では内角低めが唯一の弱点であり、県大会の江河原戦ではそこにつけ込まれて敗戦したが、ひそかに特訓を重ねて克服し、再戦時には場外本塁打を放ち、また完投勝利して雪辱を果たした。投手として海空との初対決時には、ストレートを目で追う事すらさせず、コントロールミスが1球も無かった程であった。しかし村西監督によると本来は打たせて取る投球スタイルとの事である。海空に1度敗れてからは、他の部員同様、海空を最大のライバルとして認めていた。本作最後の対戦打者。
長尾
背番号10の投手・二塁手。地区大会のマウンドを任せられていたが、決勝の海空戦で打たれ、佐々木に交代。吉田に「プライドが服を着て歩いてる」と言わせたように、地区大会では佐々木にライバル意識を燃やし、高慢さが目に付いていた。しかしたろーの不屈の闘志に感化され、山沼にプライドをかなぐり捨てて勝利を目指す執念を浸透させた。関東大会の海空戦では、決め球を打たれて動揺した近藤を叱咤するなど人間的に成長した面を見せ、辰巳を感嘆させた。
近藤
5番・投手。左腕。作中で海空打線と複数回対戦した唯一の投手。児童養護施設の出身で地区大会では背番号15の補欠であったが、時々顔見せに施設を訪れる時は自分が山沼のエースだと嘘をついていた。海空に山沼が敗れた途端、一気に情熱を燃やし関東大会で二塁手のレギュラーを手に入れる。施設で妹のように可愛がっていた毬子の死を越え、嘘を本当にするため彼女との約束である「いちばん」を目指して決勝戦で初めて投手として海空に挑んだ。当初はたろーを挑発したり見下したりと嫌味な性格が目についたが、死力を尽くして勝負したことで分かり合い、甲子園ではたろー達を心配したり、応援やアドバイスを送ったりと誠実な面を見せた。
吉田よりストレートは速く、カミソリシュートが決め球と思われているが、実際にはフォークボールが決め球。ただしたろーのフォークよりは威力が落ちる。
山崎
1番・一塁手。名前と姿が登場するぐらいでストーリー上目立つことがない選手。しかし、自身のエラーを直後のファインプレーで帳消しにするなど強豪高のレギュラーに恥じないプレーを見せた。
佐野
2番。地区大会では遊撃手だったが、関東大会では右翼手にコンバートされていた。
村西監督
地区大会決勝ではサングラスを着用していたが、以後はかけなくなった。

県立大潮商業高等学校

山沼高校が完敗したこともあるほどであり、海空高校がチーム一丸で勝利したときは、かなりボロボロであった。山沼の選手は「佐々木みたいのが9人いるようなもの」と評していた。

棟方(兄)
5番・投手。100年にひとりの超大物といわれている。中学時代のたろーの友人で、素質はあったが制球が悪いためにレギュラー落ちした際、その屈辱に耐えられず1度は野球から離れた。しかしたろーの姿に感化され復帰し、また課題の制球もたろーに頼まれて投げてみせたアンダースローの習得により克服した。そのためたろーを尊敬して「心の師」と公言している(もっともたろーは棟方のことを覚えていなかった)。
アンダースローで絶妙のコントロールを駆使して打ち取ると思えば、オーバースローの剛速球でねじ伏せる投法も使い、さらにチェンジアップも織り交ぜ、先発と抑えの二役を1人でこなしてしまう「無敵のピッチング」で海空を苦しめた。また打撃も「安打製造機」と呼ばれ、綿密なデータを基に相手投手が投げた瞬間にボールの軌道・球種を頭の中に描くことができる。このため、際どいコースのボール球や、ストライクからボールになる誘い球などが全く通用しない。また、試合中たろーが急にアンダースローで投げた時のように、データにない相手に対してもボールを寸前まで見てコース、球種を見極め瞬時に適応する。
フェアプレー精神の持ち主でもあり、たろーが極度の疲労で足の痙攣を起こした時、公平に勝負するために針治療を施し一時的に復活させた。
東山
4番・一塁手。巨漢の主力選手。安打の8割が長打。試合中三塁へ滑り込んだ際、たろーと辰巳をまとめて軽々と吹っ飛ばしながら、本人はケロリとしていた。
黒田
6番・左翼手。「直球殺し」の異名の通りストレート打ちが得意であり、ストレートだけに狙いを絞る打法を身上としているが、変化球にも対応する。

県立江河原高等学校

県大会準決勝で山沼に勝利し、決勝で海空と対戦。後に関東大会の準決勝で山沼と再戦、延長14回の激闘の末惜敗して甲子園出場を逃す。柄の悪い新設の男子校(推定)でチームはリードされても次の回で追いつき逆転して勝利するのが特徴。

吉田
2番・投手。1年生の左腕。自信家かつ短気で高慢だが気弱なところがあり、また「ひねくれもここまでくると立派」と北野に言わしめるほどの天邪鬼。投球は立ち上がり制球に苦しむが、やがて球威・球速ともに別人のようになり、プレートの外側いっぱいを使ってストライクコースに投げ込む「対角線投法」を得意とする。運動神経がよくウエストボールにも飛びついて安打にすることもできる。
甲子園出場直前、海空へ転入する。海空では投手以外に捕手や三塁手も務め(いずれも実際には左投げが極端に少ないポジション)、たろー以外で唯一4番に座った。北野の影響もあってか木製バットを使って「バットの芯とボールの芯」を合わせるバットコントロールを習得し、海空打線に厚みを持たせた。実力は高いが怪我をしてしまうことが極端に多く、五体満足な状態でプレイすることは少なかった。なお単行本20巻の表紙ではなぜか左手にグラブを着けている。
北野
4番・一塁手。飄々としながらも絶対の自信とカリスマ性を持つ。先輩に無礼な口を聞くことも多い吉田や大田原も頭が上がらず、たろーでさえも緊張した面持ちで接する。弾丸の様な鋭いライナーを打つ打撃スタイルであり、スタンドに突き刺さる特大のファウルは打つものの本塁打の描写はなく、中距離打者タイプである。口にくわえた楊枝がトレードマークで、本気になると楊枝が上を向く。その「隙のない打法」は佐々木でさえも吸い込まれるように打たれてしまった。
北沢東へ転入しての甲子園1回戦では、その打法をさらにパワーアップさせた「隙だらけの打法」で吉田やたろーを圧倒した。転校の理由は明らかでないが、吉田の成長を促す意味があったのではないかと新開は感じていた。なお右投げだが、1コマのみ右手にグラブを着けている。
なお吉田と北野のように親の都合などの理由以外で転校した場合、本来なら1年間公式戦には参加できない。
大田原
3番・三塁手。巨漢の1年生。県大会準決勝で佐々木から3打席連続本塁打を放った。外見に似合わず、しなやかな身のこなしと冷静な判断力を持つ。作中の描写はないが、緊急時のリリーフ投手も務められる。
井上
5番・遊撃手。主将。生徒達からはちゃんづけで呼ばれている。どんな球でも粘り強くファウルにし、相手投手が根負けしたところを安打にするか四球で出塁する。当たりは決して良くないのに人のいない場所に打球が飛ぶその打撃は佐々木から「かまぼこを切るようないやらしい打撃」と評される。
村田
1番・二塁手。2年生。俊足で、短距離走では県下一の実績を持つ。監督と1つ進塁するごとに1000円をもらう約束をしていた。
平山
9番・捕手。鈍足で、スタメン1成績が悪いとのこと。9回裏に三塁に向かった際に辰巳・たろーの守備でアウトにされる。

他の対戦校

三下工業や五州高校とも対戦。いずれも1点差で勝利。

関東大会の対戦校とその選手

私立(推定)南浦高校(茨城県代表)

私立高校で偏差値はあまり良くないと思われる。他の野球名門校の入学試験に落ちた、性格の問題でチームにとけ込めなかったなどの「あぶれ者」が多く、野球以外のスポーツの出身者もいる。声をかけてくれた鈴木監督への恩義から、チームの団結力や向上心は作中屈指である。

後述のような背番号ミスやバットが極端に短く描かれるなど作画レベルが最も低かった(特に試合前半)時期であった。

池田
5番・遊撃手、投手。主将だがいい加減で時間にルーズ、試合でも遅刻した。「情熱野球」が身上で、ナインに活気を与える太陽のような存在。小柄な身体だが、豪快にフルスイングする打撃が特徴で、オジー・スミスばりの遊撃の守備もトップクラス。沢村の後のリリーフも務め、ベース手前でホップする「サンライズボール」の使い手。相手の心理を巧みに操るピッチングで海空打線を翻弄したが、それゆえ冷静沈着で勝負勘に優れる須永を苦手としていた。作中、背番号が6だったり1だったりのミスがあった。
松岡
4番・三塁手、捕手。巨漢でバットを折りながらも球をスタンドに運ぶ怪力である。佐々木とは同じ中学校で、互角以上の才能を認められていた。学力はあまり高くなく山沼をはじめいくつかの高校の入学試験で落第し、街中でケンカに明け暮れていた。その後池田の紹介で南浦に野球推薦で入学。悪球打ちの松岡と呼ばれ、ど真ん中を苦手としていたが、海空戦では佐々木のフォームを再生するかのような打撃を繰り出し克服していた。池田とは犬猿の仲だが、バッテリーを組めば一変して阿吽の呼吸を見せる。作中、背番号が11・5・2の3種類描かれてしまっている。
沢村
3番・投手。1年生。美男子であり、女子への人気は作中随一。言葉遣いも非常に丁寧で、南浦ナインの中でもまるで色が違う存在。心臓病のため、強豪高には進学出来なかった。「蝶のように舞い蜂のように刺す」絶妙なコントロールと鋭い速球を持つ。対戦相手のデータを熱心に分析し、打たせて取るピッチングで関東大会1回戦ではノーヒットノーランを達成している。池田に教わった「サンライズボール」は、著しく体力を消耗するため多投は出来ない。海空戦では自身の限界球数を超えるピッチングを見せ、大きな成長が描かれている。途中で池田にマウンドは譲ったが、外野手として最後までグラウンドに立ち続けた。
石井
捕手、三塁手。作中では田中のファールボールを追ってフェンスに激突するなど、沢村を庇って激しいプレーを見せる。
矢口
1番。異常なほどの短気な性格。元ラグビーのバックスで、守備妨害すれすれの走塁で高倉を蒼白させていた。

私立東相大学付属明陵高校(神奈川県代表校)

前年度関東大会優勝校。登場時点での最強チームと呼ぶに相応しく下位打線が無く、5番を挟んで1番から4番と6番から9番までが二段構えの上位打線とされる。作中、海空が唯一2点差をつけて(15-13)勝利したチームであるが、そのあまりの強さに、普段は決してへこたれないたろーですら、危うく野球への情熱を折られかけたほどであった。

高杉
4番・三塁手(投手)。背番号1。寡黙な剣の達人で中学校では剣道で全国制覇している。たろーとは幼なじみであり、小中学校が同じ。たろーが「史上最高」を目指し、野球を始めるきっかけとなったキーパーソンでもある。明陵高校の野球部入部試験では無条件で合格した。たろーとの対戦では1打席目こそ中飛に終わったが、2打席目ではバックスクリーン横に突き刺さる本塁打を放った。バットから放出される気迫は佐々木をして「真剣をバットに持ち替えただけ。まさに剣豪」と言わしめる。投手としては抑え担当だが、海空戦では立原にスポットが当たったため、登板はなかった。現実には珍しい左投げの三塁手。
棟方(弟)
2番・投手。背番号5。1年生。大潮商の棟方の弟。顔はそっくりだが、兄とはまるで性格が違い、中学校では喫煙をするほどである。兄に劣らない実力の持ち主で、兄を最大のライバルと考えている。先に野球を始めたのは弟だが、性格にむら気があったせいで兄のほうが早く上達したとのこと。打撃は「安打製造機」の兄に対して「安打製造人間」と評され、投球はモーションと球のギャップで相手を幻惑する「詐欺師投法」を武器とする。
立原
9番・遊撃手、投手。作品中もっともたろーに近いキャラである。1年生時入部試験に落第し、再度試験を受けるも並以下の数値ではあった。しかし、点数こそ低いもののすべての項目で驚異的な数値の伸びを見せたことに西室監督が驚嘆し、監督推薦で入部する。「影の4番・努力の4番」と呼ばれるほどの根性が認められ、ナインから推されて主将となる。

チーム全員の「導火線の火付け役」と呼ばれ、出塁すると大量得点に結びつくケースが多い。

投手としては監督譲りの左のアンダースローから繰り出される鋭いクロスファイヤーのストレート「左の狙撃兵」(球がホームベースをわずかにかすめるだけなので、ストライクゾーンのボールが右打者では体に当たるほどの内角いっぱいのコースになり、左打者ではバットが届かないコースに決まる)を完成させた。故に観客に「プロでも打てない」と言わしめている(この投球スタイルは実在のプロ選手で言えば永射保が近い)。
江崎
1番・一塁手。俊足である。3打席目で三直に倒れるまでの出塁率は100%であった。
島岡
3番・二塁手。外見は「ぼーっと」しているが、通称「塁上のそうじ人」の強打者。

甲子園の対戦校とその選手

私立北沢東高等学校(西東京代表)

優勝候補と評され、マスコミが発表した甲子園出場校の評価も最高のAランク。予選では1試合平均得点7.6を誇る打撃のチーム。甲子園直前の山沼との練習試合では、一軍半のメンバーでコールドゲームで破っている。最も試合時のページ数が多かった。

山田健太
3番・投手。1年生。キセコ島で祖父と2人で暮らしていた、根っからの自然児。合宿に来ていた野球部員との合同練習で、並外れた身体能力と怪力で部員達の度肝を抜き、そのまま入部する。性格は天真爛漫で細かい駆け引きは苦手。重い「豪速球」と超スピードの「超速球」を使い分ける。打撃の実力も超一流。
斉藤
捕手で主将。山沼との練習試合では4番だが甲子園では9番で、チームの選手層の厚さを物語っていた。性格は凶暴で、ポカをする山田をよく殴る様はたろーと辰巳の関係に似ている。打撃では「地を這う様な弾丸ライナー」を打つことを得意とする。
大場
1番・左翼手。合宿で山田の底知れない体力に驚愕し、巨木割りのトレーニングに人一倍励み、チップしたボールに焦げ臭さが残るほどの腕力を手に入れた。巨体ながら本来は器用なタイプのためバントも得意。
坂本
5番・三塁手。北沢東の元4番で195cmの長身。北野の加入で5番に降格させられた為、監督に心の中で悪態をついている。監督は坂本の反骨心を期待していた。「一本足打法」を得意とし、偶然たろーの「大速球1号」のタイミングが合っていたため、これを最初に完璧に打ち崩した打者となった。なお最初坂本に設定されていた選手は長嶋一茂をモデルにしていたらしく、雑誌掲載時北沢東が甲子園に初登場した際はストレートのタレ目の長身の選手が描かれていたが、後に設定が変わったらしく、単行本収録時はこの選手は坂本に変わっていた。
石川
2番。流し打ちがうまく、どんなに狭い三遊間でも抜いてしまうといわれている。リストが強く引っ張った打球も鋭い。

県立紀伊國高等学校(和歌山県代表)

他の甲子園出場対戦校と比べてやや地味な対戦校であり、ランキングもCランクだった。

中村大造
2番・投手、捕手。右投左打。野球を始めて3週間と報じられた「未完の大器」だが、実際は共に甲子園に行くことを目標にしていた幼馴染のよし男の事件まで、幼少から野球経験を重ねており、野球知識も豊富。野球は手早くスマートに進めるのが信条らしく、たろーを「どんくさい」と馬鹿にする。「大カーブ1号」が武器だが、須永に弱点を見切られてしまう。阪神タイガースファン。登場当初は喫煙や海空ナイン相手の詐欺行為など問題行動が多かった。名前は同名の当時の編集担当者から取られている。
小林
9番・三塁手、投手。右投左打。普段は雑用係で公式戦に出場するのは海空戦が初めてであり、負傷した選手に代わっての出場であった。超俊足の上、バットがボールに当たるか当たらないかのうちに打球の方向を見極められる守備勘も持っており、一塁ファウルフライを三塁からあわやキャッチ寸前まで追いついてしまうほど。「超合金リスト」と呼ばれるほどの脅威の手首の持ち主で、中村の後を受けてマウンドに立つと驚異的なスピンがかかった速球を繰り出す。精神レベルは幼稚園児並みで、たろーと「打つ」「打たせない」と不毛な口喧嘩を始めるほど。
武田
1番・捕手、三塁手。右投右打。大柄の不良で別名「大魔神武田」。野球部以外に、柔道・ボクシング・空手など複数の部に在籍している。中村とは喧嘩仲間で、よし男とのエピソードに感激し真剣に野球に取り組むようになった。試合中、真剣にプレーするたろーを馬鹿にする人間に激怒して殴っていた(たろー曰く「辰巳よりすごい」。実際の試合ならもちろん退場ものである上、審判にまで手を出している)。

私立大中央学園高等学校(徳島県代表)

前年の夏の甲子園の優勝校で、名実ともに史上最高のチーム。当然Aランク。「選手ひとりで1点を取っていく野球」が持ち味。

高木
7番・三塁手、投手。文武両道の何をやらせても完璧な天才で、熱中できるものがなく退屈な日々を過ごしていたが、たまたま妹と観戦していた地区大会の海空-山沼戦でたろーの存在を知り、自分と対等に戦える相手と認める。海空が「いずれ全国に出てくる」と直感し、たろーと対戦すべく東大進学を蹴ってまで野球の名門の大中央学園に転校した。スイッチヒッターでミートタイミングのセンスがずば抜けており、軽いスイングながら流し打ちの本塁打をたろーから放った。さらに高速スライダーを武器にするスイッチピッチャーであり、打者によって左右を使い分ける(試合終盤は左投げに専念)。投手としては「大中央学園最後の切り札」として温存されてきた。
作品全体では登場回数は少ないものの、才能の上に胡坐をかかないハンサムな努力家ということもあって、読者人気投票では第2位を獲得した。
真田
投手、三塁手。海空戦で先発。長い腕から繰り出す速球が持ち味。その球は須永曰く「山田の超速球であり豪速球」であり、本気で投球した際には速度、球質共にそれ以上の投球を見せた。山田以上のパワー型投手だが、変化球も使えるようで、作中ではスローカーブを投げている。夏の甲子園準決勝では完全試合を達成しており(実際の夏の甲子園では達成されていない)、海空戦まで54イニング連続無失点を記録していた。
山崎
1番・一塁手。出塁率98%を誇り、1番打者として出塁した時は必ずホームに戻ってくる(チームが得点する)といわれる俊足である。社交的で性格が軽く、相手を小ばかにすることがあるが根は真面目。本来はエース(右投げの真田との二枚看板か?)のようでKOされた真田に替わってマウンドに上がろうとするも、たろーに「高木だもんね~!」と止められる。「大速球2号」の初期の弱点(真ん中に投球が集まる)を見切る。
山本
3番。眼鏡がチャームポイントの選手。生真面目な外見で打球の行方や投球の癖に関する見切りが優れている。
左翼手(名前不詳)
特徴ある釣り目に大柄な体の選手。高木とともに「眠っていた主力選手」として描かれていたが、最終的に名前が出てこなかった。海空を知らない山崎らチームメイトに向かって、海空が次の対戦相手だと指摘するところから、試合前に相手を調査するタイプと思われる。最後まで誰か描かれなかった4番の可能性もある。
捕手(名前不詳)
眉毛が繋がっており、鱈子唇をしている。9回裏、若月の本塁突入をブロックで阻止した。

(私立・公立どちらか不明)あわもり高等学校(沖縄県代表)

初出場でありながら、これまでの試合をすべて逆転で勝ち抜き、準決勝に進出した通称「逆転のあわもり」。ランキングは不明。連載終盤であった為、ページ数がやや少なく描写の掘り下げが少なかった。

比嘉
投手。背番号3。小太りで常に何かしら食べている食いしん坊であるが、底知れないパワーを発揮する。監督にもいつか大成することを期待され、よく打たれるにもかかわらず準決勝までのマウンドを任されてきた。準決勝前日、たろーに大速球1号を教えてもらうが、比嘉自身の体力がたろーを大きく上回るため、その爆発力はたろー以上であった。なぜか試合開始直後は帽子をかぶっていなかった。
上原
4番・一塁手。背番号1。普段は飄々としておりバッティングも頼りないが、得点圏に走者が出ると、驚異的な集中力を発揮して高打率を誇る。「逆転請負人」の異名を持つ。投手としての実力は短いイニングなら比嘉以上。
友利
1番。プロ並みのスイングスピードを持つ。打球の鋭さは吉田でさえ見失うほど。凄まじい俊足で、盗塁成功率は10割。ジャンプ力も吉田を飛び超えるほどである。顔はどの角度から見ても片目が必ず隠れている。
仲田
2番。巨漢だが体型に似合わず器用である。
ベンチでのみ登場(名前不詳)
海空を馬鹿にした言葉をしばしば口にしていた。 ハンサムでしばしば登場し、目立ってはいたが結局活躍はなく、名前も明らかにされなかった。連載終盤であった為にボツになったキャラの可能性が高い。

その他の登場人物

長尾の弟
名前は「義男」。小学生と思われる。メガネをかけており、兄弟でありながら兄には似ていない。大潮商戦の前に友人達と一緒にたろーの特訓につきあっていたことがあり、たろーを「弟子」と呼んでいた。
毬子
野球のボールを握り締めたまま、近藤の育った施設に置き去りにされていた少女。近藤に妹のように可愛がられた影響か将来は野球選手になりたいと夢を持ち、ずっと補欠だった近藤の嘘を信じて彼が「いちばん」の野球選手になることを願っていた。

近藤が二塁手のレギュラーを手に入れ、その翌日から関東大会に連れていこうとした矢先に交通事故に遭い死亡。その死は近藤と、人づてに毬子の話を聞いたたろーに大きな影響を与えた。

施設の園長
調子に乗ると油断する近藤の悪い癖を指摘していた。
山田の祖父
小笠原の孤島で山田と2人で暮らしていた。野球に関する知識が深く、甲子園の北沢東ベンチに忍び込み、選手に助言を与える。
記者
スポーツ新聞の記者で、甲子園出場校を取材していた。海空に紀伊國戦前に取材した際、たろー達に中村について逆に質問されたことがある。海空なら大中央学園に勝つかもしれないという予感がし、見事に的中している。
よし男
東南高校の野球部員。紀伊國・中村の幼馴染で野球仲間。中村と一緒に甲子園に行くことが夢だったが、自分に才能がないことを悟り、中村にすべてを託す。これが紀伊國ナインの結束力を強固にした。
中村の父
熱心な阪神ファンで、自身も野球の腕に覚えがあり、リトルリーグ時代の中村の相手もしていた。
高木の妹
野球に興味のある好奇心旺盛な少女(女子高生?)。兄を強引に地区大会の海空戦に誘った。たろーにも興味があるらしく、海空ナインが甲子園を初めて訪れた時たろーにサインをねだっており、ミミズが這ったような字を見て「わあ、じょうず」と言っている。
比嘉の父
比嘉の活躍を見て「どんなときでもメシだけは、たらふく食わせてきた」と言っていた。

映画版

  • 「ジャンプアニメカーニバル」の一作品として制作され、1988年9月23日に公開された。

読み切り版のストーリーをベースに江河原高等学校との対戦を追加して再構成されたもの。

主題歌

  • OP「TARO」(作詞:岡田冨美子 作曲:都志見隆 編曲:飛澤宏元 歌:橋本舞子)
  • ED「ファインプレイに拍手を」(作詞:岡田冨美子 作曲:都志見隆 編曲:飛澤宏元 歌:橋本舞子)

関連項目

  • 株式会社大山田出版仮編集部員山下たろーくん - 本作の続編。但し野球が主題でない。詳細は項目参照。
  • ペナントレース やまだたいちの奇蹟 - 次作の野球漫画。